カスタマーエクスペリエンスとは?重要性と向上に必要な取り組み

カスタマーエクスペリエンス(Customer Experience)とは、顧客が企業やブランドとの取引を開始してから終了するまでの期間(顧客ライフサイクル)において、顧客が得る体験や価値、メリットなどを指す用語です。

カスタマーエクスペリエンスの言い替えとしては、「CX」という略語が使われます。日本語では「顧客体験」や「顧客経験」「顧客経験価値」と訳されます。

また、カスタマーエクスペリエンスを向上させること、すなわち、CXを適切に保つ企業の一連活動を、「CXM」(Customer Experience Management)と呼ばれます。CXMは、日本語で「顧客体験管理」と訳されます。

カスタマーエクスペリエンスは、インターネットの普及による顧客の消費行動の変化や、市場の成熟に伴う新規顧客開拓が困難になっていることを受け、デジタルマーケティングの領域を中心に注目を集めています。
ここでは、カスタマーエクスペリエンスの定義や重要性のほか、向上に必要な取り組みについて見ていきましょう。

目次

  • カスタマーエクスペリエンスはなぜ注目されているのか?
  • カスタマーエクスペリエンスを向上させるメリット
  • カスタマーエクスペリエンスを向上させる方法
  • カスタマーエクスペリエンスにおける感情的な価値とは?
  • カスタマーエクスペリエンスの向上にMAを活用
  • MAの導入でカスタマーエクスペリエンスを向上させよう

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カスタマーエクスペリエンスはなぜ注目されているのか?

顧客が企業やブランドとの取引を開始してから終了するまでの期間に、顧客が得る体験や価値、メリットなどをカスタマーエクスペリエンスといいます。
具体的には、下記のような内容がカスタマーエクスペリエンスに含まれます。

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<カスタマーエクスペリエンスの例>

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物質や金銭といった定量的な価値だけでなく、心理的な満足度や印象といった定性的な価値も重視されているのが特徴です。

カスタマーエクスペリエンスが注目されている背景

カスタマーエクスペリエンスが注目されている背景には、インターネットの普及による顧客のデジタルシフトがあります。
従来の企業と顧客とのタッチポイントは、実店舗や広告、口コミ、コールセンター、テレアポ、ルート営業などが中心でした。企業は、各タッチポイントにおいて一方的かつ長期的に製品やサービスの情報を提供し、購入へとつなげていたのです。
しかし、インターネットが普及したことによって、企業と顧客とのあいだには、下記のような変化が生まれました。

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<インターネット普及後の企業と顧客の関係の変化>

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こうした変化によって、企業は情報発信における優位性を失ったため、デジタルならではの双方向性、検索性、即時性を踏まえて、他社との差別化を図るようになりました。
カスタマーエクスペリエンスは、差別化のための指標のひとつであるといえます。

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カスタマーエクスペリエンスを向上させるメリット

他社との差別化を図るためには、カスタマーエクスペリエンスを向上させる必要があります。カスタマーエクスペリエンスを向上させるメリットを、マーケティングを行う視点から具体的に解説します。

口コミによる紹介客の増加が期待できる

カスタマーエクスペリエンスを向上させるメリットとして、口コミによる紹介客の増加が期待できることが挙げられます。
カスタマーエクスペリエンスの向上によって、製品やサービスの購入前後に良い印象を抱いた顧客は、「製品の良さをほかの人にも伝えたい」「すばらしい接客をたくさんの人に知ってほしい」といったプラスの感情にもとづく行動を起こします。それが、口コミやSNSでの情報のシェアです。
実際に使った顧客からのポジティブな情報は、企業からのプロモーション以上に潜在顧客の心を動かすことがあります。

ブランディングにつながる

ブランディングにつながることも、カスタマーエクスペリエンスを向上させるメリットのひとつです。
カスタマーエクスペリエンスの向上に継続的に取り組むと、顧客の製品に対するロイヤリティ(愛着)が高まり、一定数がファン化します。ファン化した顧客が増えれば、ブランドイメージが高まり、他社との差別化につながって、既存顧客からの売上増加と新規顧客の流入に期待できます。

乗り換えや解約を阻止し、リピーターを獲得できる

ファン化した顧客が、「製品を購入することでブランドに貢献できている」「私がこのサービスを支えている」といった感情を持つようになると、簡単には製品やサービスから離れません。
ファン化した顧客は、解約や乗り換えのリスクが低減し、リピーターになってくれる可能性が高まります。

安定した収益を継続的に得るには、リピーターの獲得が非常に重要です。優れたカスタマーエクスペリエンスは、「もう一度、この会社の製品を購入したい」という満足感につながり、顧客のファン化に貢献します。顧客のファン化を促進することで、広告などで購入を促さなくても製品を買い求めてくれるリピーターを獲得することができるのです。

カスタマーエクスペリエンスを向上させる方法

カスタマーエクスペリエンスを向上させるには、顧客のニーズを調査し、段階を踏んで施策を実施する必要があります。続いては、カスタマーエクスペリエンスを向上させる方法をご紹介します。

顧客データを適切に維持管理する

顧客のデジタルシフトによって、企業は顧客に関するあらゆるデータを収集、蓄積できるようになりました。潜在顧客、リード(見込み顧客)、既存顧客、それぞれのデータから得られる情報には、カスタマーエクスペリエンス向上のカギとなる顧客ニーズが詰まっているといっていいでしょう。
顧客の属性や行動履歴、購買履歴といったデータを適切に管理することが、カスタマーエクスペリエンスの向上につながるのです。

顧客データを分析し、カスタマージャーニーマップを作成する

顧客のニーズを今後のマーケティングに活かすために、集めた顧客データを分析し、行動を把握します。このときに役立つのが、「カスタマージャーニーマップ」と呼ばれるフレームワークです。
カスタマージャーニーマップとは、顧客の感情や思考を含めた行動パターンを時系列で可視化したもの。顧客と企業との接点(タッチポイント)において、適切なタイミングで適切なカスタマーエクスペリエンスを提供するための青写真のようなものです。各タッチポイントでどのような体験をしてもらうのか、しっかりと定義しておきましょう。

カスタマージャーニーマップについては、下記の記事で詳しく解説しています。

価値観や行動指針を示し、企業全体で共有する

カスタマーエクスペリエンスを向上させるには、すべての社員が同じ方向を向いて、価値創造に取り組める環境を作ることが大切です。
「どのようなタイミングで、どのような価値を顧客に提供したいのか」「そのために、何に取り組むのか」といった価値観や行動指針を具体化し、企業全体で共有しましょう。

フィードバックを集め、評価して改善する

カスタマーエクスペリエンスには、成果が見えにくく、現状の正確な評価や改善につながりにくいという問題があります。各タッチポイントでKPIを設定し、効果を見極めましょう。KPIとしては、平均ページビュー数、顧客獲得率、コンバージョン率などが挙げられます。

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カスタマーエクスペリエンスにおける感情的な価値とは?

ここまでは、カスタマーエクスペリエンスを向上させるメリットや、実際に向上させる方法について解説してきました。カスタマーエクスペリエンスには、感情的な価値が多く含まれるため、カスタマーエクスペリエンスの向上にはその理解が欠かせません。感情的な価値は数値化して理解するのが難しいですが、分類することで理解しやすくなります。
経験価値マーケティングの第一人者で、コロンビア ビジネススクールのバーンド H シュミット氏は、著書である「経験価値マネジメント」において、感情的な価値を「Sense」「Feel」「Think」「Act」「Relate」の5つに分類しました。それぞれの価値について確認していきましょう。

1. Sense:感覚的経験価値

「Sense」とは、感覚的経験価値と呼ばれ、人間が持っている五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)によってもたらされる価値を表します。実際には体験していない、「美しいに違いない」「おいしそうだ」といった感覚もこれに含まれます。
五感で感じる価値の例は、下記のようなものです。

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<Senseの例>

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Senseが高い場合、コーヒーの味や香りが好きだといったことや、内装や外の景色に満足することでリピーターになるといった行動が期待できます。

2. Feel:情緒的経験価値

「Feel」は情緒的経験価値、すなわち顧客の感情に訴えかけることによって顧客の中に生まれる価値です。製品やサービスそのものよりも、購入前の親切な説明や、購入後の手厚いサポートに心を動かされ、結果として企業全体に対する評価が高まった、企業が好きになったという経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。

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<Feelの例>

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Feelが高い場合、接客がすばらしいホテルを何度も利用する、売上を寄付する企業に共感して何度も購入するといった行動が期待できます。

3. Think:創造的経験価値/認知的経験価値

「Think」は顧客の探究心、自尊心、満足感などに働きかけることによって生まれる価値で、創造的経験価値、または認知的経験価値と呼ばれます。
顧客が持つ旧来の価値観や期待を覆すことも可能ですが、顧客の「知りたい」「もっと理解したい」という知的好奇心に対して、企業側が十分な情報開示をする必要があります。

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<Thinkの例>

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Thinkが高い場合、製品を利用した際に「新しい技術にふれている」と感じて自尊心が刺激され、先進的な企業のリピーターになるといった行動が期待できます。

4. Act:肉体的経験価値

「Act」は、日本語では肉体的経験価値と呼ばれ、体を使った経験によってライフスタイル全般に変化や影響を及ぼすもの全般を指します。
Actの向上を意識することで、製品やサービスが人々のライフスタイルになじみ、受け入れられることによって、リピーターになってくれる可能性が高まります。

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<Actの例>

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Actが高い場合、スポーツジムでトレーニングした結果、体調が良くなり、継続して通うようになるといった行動が期待できます。また、自宅にいながらビデオ通話アプリで会議に参加するというような、新しいライフスタイルの創出につながる体験もActに該当します。

5. Relate:準拠集団や文化、社会との関連づけ

「Relate」は、準拠集団や、文化、社会と関連づけられることによって生み出される価値のことです。人の価値観、信念、態度、行動などに大きな影響を与える集団のことを準拠集団と呼び、自分がそこに所属しているかいないかにかかわらず、何かを決めるときの基準になったり、ライフスタイルに影響を及ぼしたりします。
Relateを向上させることで、競合企業への乗り換えリスクを低減させられます。

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<Relateの例>

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Relateが高い場合、サッカーチームを応援するためにユニフォームを購入する、特典にステータスを感じてクレジットカード会員の契約を継続するといった行動が期待できます。

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カスタマーエクスペリエンスの向上にMAを活用

カスタマーエクスペリエンスが、購買までのあらゆるフェーズで顧客が感じる体験価値を指すことはご理解いただけたと思います。カスタマーエクスペリエンスを向上させるには、顧客のデータを収集、管理し、そこから得られる知見や発見にもとづいた個別のマーケティングを展開する必要があります。

しかし、膨大な顧客データを管理し、個別のシナリオを作って最適なマーケティング施策を実行する過程は、非常に複雑で工数も多いため、マーケター自身の手で行うのは現実的ではありません。マーケティングプロセスを効率化してくれるMAの活用をおすすめします。

MAの活用により効率化できること

MA(マーケティングオートメーション)は、マーケティング業務を自動化するツールです。主に、下記のようなマーケティングプロセスで効率化することを得意としています。

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<MAで効率化できるマーケティングプロセス>

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MAとCRMやSFAを連携させる

カスタマーエクスペリエンスの向上には、カスタマージャーニーにもとづく顧客の感情や思考、行動の把握が欠かせません。そのために役立つのが、MAに蓄積された顧客データです。
MAの強みは、これまでは手作業で個別に管理してきた顧客データを集約し、SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)などのツールとも連携しながら管理できることにあります。行動履歴や購買履歴を分析して新たな知見や気づきを得たり、潜在的なニーズを割り出したりすることができるので、カスタマージャーニーマップの作成にも役立ちます。

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MAの導入でカスタマーエクスペリエンスを向上させよう

働き方改革やテレワーク、リモートワークの拡大によって、顧客行動のデジタルシフトは今後ますます加速することが予想されます。企業も、カスタマーエクスペリエンスを意識しながら、デジタルチャネルを活用したマーケティングをより強化していく必要があるでしょう。

アドビのMA製品である「Adobe Marketo Engage」は、マーケティングの効率化に貢献するMAツールです。カスタマーエクスペリエンスを向上させるために、マーケティング部門の強化やマーケティングプロセスの見直しに取り組みたい方は、下記の資料もご覧ください。

https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-ma-digital-marketing-evolution-pt1

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次のステップ

MA分野のリーダーであるAdobe Marketo Engageについてより詳しく知りたい場合は、アドビにお問い合わせください。

https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/page-request-consultation-marketo-engage