効果的なカスタマージャーニーマップとその作成方法
カスタマージャーニーを作成することは、容易なことではありません。多くの作業が必要であり、顧客のタイプごとに別々のマップを作成する必要がある場合もあります。
しかし、その作成プロセスを段階的に学ぶことで、カスタマージャーニーマップを管理するだけでなく、容易に作成できるようになります。ここでは、カスタマージャーニーマップとは何か、なぜそれが重要なのか、どのように作成すればよいのかを解説し、できるだけ効果的に作成する方法を紹介します。
また、カスタマージャーニーマップの作成に役立つさまざまなリソースについても紹介します。これらを活用することで、より速く、より効率的にマップを作成することができます。
カスタマージャーニーマップとは?
カスタマージャーニーマップとは、顧客が企業とやり取りする過程で通過する道のりを視覚化したものです。 つまり、顧客体験を理解し、最適化するためのビジュアルストーリーテリングです。
ほとんどのカスタマージャーニーマップは時系列で設計されており、顧客体験を時系列のイベントとして表現しています。しかし、実際には、ブランド認知から顧客ロイヤルティに至るまでの一連の道のりであるカスタマージャーニーは、多くの場合、直線的ではありません。むしろ、顧客は複雑なマルチチャネルの道のりをたどりながら、企業とやり取りします。たとえば、オンラインとオフラインの両方の販売チャネルがある場合、同じ期間に両方で購入することがあります。
カスタマージャーニーマップでは、カスタマージャーニーが直線的ではないこと考慮する必要がありますが、同時に、時系列で顧客体験を表現することも必要です。適切なバランスを保つために、ジャーニーマップには以下の項目を含める必要があります。
- 顧客接点: 顧客が企業と何らかの接触を持つたびに、それが間接的であったとしても、
その顧客接点をカスタマージャーニーマップに記載する必要があります。 - カスタマーモメントオブトゥルース(真実の瞬間):カスタマーモメントオブトゥルー
スとは、ある出来事がきっかけで、顧客のブランドに対する認識が変わる瞬間のことです。これは極めて重要な出来事であり、カスタマージャーニーマップに記載する必要が
あります。 - 顧客の悩み: デジタルセールスツールの不具合や配送の遅れなど、顧客がブランドと接
する際に経験する障壁や課題をマップに記載し、ブランド全体のイメージにどのように
影響を及ぼしているのかを把握する必要があります - 望ましい行動: カスタマージャーニーマップには、コンテンツへの関与や購入の完了など、顧客に望む行動を記載しておく必要があります。
- 完了した行動: 顧客の実際の行動を記録することで、顧客の行動が望ましい行動と一致
する頻度を把握することができます。
カスタマージャーニーマップにこれらの情報を盛り込むことで、全体像を把握することができ、最大の効果を発揮することができます。
カスタマージャーニーマップを使用する利点
自社の顧客体験を理解することは非常に重要です。Dimension Dataの調査によると、顧客体験に投資している企業の 84%が、売上を向上させています。また、PwCのレポートによると、顧客体験の質の低下は、顧客がブランドへのロイヤルティを失う主な理由になっています。
投資収益率(ROI)の向上やより強固なブランドの構築は、もちろん十分な目標ですが、カスタマージャーニーマップはその実現にどのように役立つのでしょうか。ジャーニーマップの活用には、次のような利点があります。
- ターゲットを絞った顧客インサイト: 顧客の行動や嗜好を把握することで、マーケティングやセールスのプロセスをさらに最適化することができます。
- 顧客エンゲージメントの向上: カスタマージャーニーマップは、顧客が求める興味深く有益なコンテンツを制作するために必要なインサイトを提供し、インバウンドマーケティング施策の効果を向上させます。
- 顧客維持率の向上: 満足した顧客はリピーターになります。Zendeskによると、61%の顧客がたった一度の不愉快な体験でブランドから離れてしまいますが、逆に71%の顧客は信頼するブランドからより多く購入します。
- 最適化された顧客接点: 顧客接点の中には成功率が高いものがあり、カスタマージャーニーマップは、最も効果的な顧客接点を特定するのに役立ちます。たとえば、ある広告チャネルがエンゲージメント率の低さと関連していることがカスタマージャーニーマップから明らかになれば、それに対処するために、マーケティング費用をより効果的な顧客接点に振り向けることができるかもしれません。
- 顧客志向の向上: カスタマージャーニーを作成することで、顧客を企業活動の最優先に位置づけ、顧客体験を損なう可能性のある課題に先回りして対処できます。たとえば、顧客の急増が予想される場合、事前に遅延が予想されることを伝え、代替案を用意することができます。
- 新規ビジネスの拡大: 既存顧客の動向を把握することで、新しいタイプの顧客ペルソナに対応した施策を展開することが可能になります。
- 部門間の連携強化: カスタマージャーニーマップは、各部門が顧客体験に与えるそれぞれの影響を可視化するのに役立ちます。また、カスタマージャーニーマップを活用することで、部門をまたいだ顧客対応力を高めることができます。
つまり、カスタマージャーニーマップは、さまざまな部門の関係者が顧客に対する理解を深め、ビジネス全体の成功に繋げるために役立つのです。
カスタマージャーニーマップの作成方法
カスタマージャーニーマップの作成は、5つの重要なステップに分けることができます。
1. 目標の設定
まず、明確な目標が必要です。単にカスタマージャーニーマップを作成するのではなく、マップを通じて何を達成したいのか、どのような顧客をターゲットにしたいのか、マップでどのような体験に注力したいのかを決めます。また、カスタマージャーニーを作成する際の目標は、売上の増加や顧客維持率の向上など、企業全体の目標を反映させる必要があります。
カスタマージャーニーマップを作成、使用する際に、追跡可能な関連指標も必ず決めてください。明確な目標を設定しても、それを測定する指標がなければ意味がありません。
2. ペルソナの定義
マップを作成する際に、ターゲットとする顧客のペルソナを決定します。
ペルソナが定まっていない場合や、ペルソナを更新する必要がある場合は、アンケート、インタビュー、お客様の声、レビュー、顧客担当部門からのフィードバックなどを通じて、必要なインサイトを得ることができます。こうした部門は、購入までの過程において、どのような理由で顧客が離脱するのかを把握している場合も多くあります
顧客が誰で、何を求めているのかについて、より具体的に把握することができれば、カスタマージャーニーマップはより効果的なものになります。
3. 顧客接点の決定
カスタマージャーニーマップ上に記載する顧客接点を決定します。顧客接点とは、顧客と企業の間に存在するあらゆるエンゲージメントポイントを指し、カスタマージャーニーマップの基礎となるものです。
顧客と関わりを持つ可能性のある、あらゆる場所を考慮に入れてください。自社が管理する直接的な顧客接点だけでなく、顧客が第三者のサイトで触れる自社に対するレビューのような間接的な顧客接点も考慮しなくてはなりません。あらゆる顧客接点が顧客のコンバージョンを促進する可能性があるため、あらゆる可能性を記載することが重要なのです。
4. 現在のバイヤージャーニーのマップ化
顧客と顧客接点を特定したら、購入者が購入に至るまでにたどるステップをマップ化します。異なるタイプのセールスチャネル、複数の製品バージョン、少量購入や大量購入など、バイヤージャーニーのあらゆるバリエーションを記載することを忘れないでください。
5. 理想のバイヤージャーニーをマップ化
特に、新しい製品やサービスをリリースし、それに伴って望ましいバイヤージャーニーが変化した場合、顧客にたどって欲しいジャーニーが実際のジャーニーとは異なる可能性があります。理想的なバイヤージャーニーを、実際のバイヤージャーニーと併せてマップに表現することを心がけます。
カスタマージャーニーマップの最適化
カスタマージャーニーマップの作成は、顧客体験の可視化、新しいペルソナへのリーチ能力の向上、部門間の連携向上への大きな一歩です。しかし、カスタマージャーニーマップが「完成」することはありません。最適な状態を保つためには、定期的な見直しと更新が必要です。
製品やサービスの内容が変われば、カスタマージャーニーマップも変更する必要があります。同様に、価格、ブランドの信頼性、製品の機能など、顧客に影響を及ぼす新しい要素を発見するたびに、カスタマージャーニーマップにそれらを追加する必要があります。
また、オムニチャネルマーケティングを自動化するツールに投資することで、これらのマップを最適化することができます。そうしたツールにより、特に顧客が複数のチャネルを通じて企業とやり取りしているような場合、カスタマージャーニーマップの作成と更新をより効率的におこなうことができます。
カスタマージャーニーマップの関連リソース
カスタマージャーニーマップの作成は一見複雑に見えますが、作成プロセスを管理可能なステップに分解すると、実はとてもシンプルです。
Adobe Analyticsは、オンラインとオフラインの両方のインタラクションを最適化できるため、データを利用してカスタマージャーニーを最適化し、包括的なカスタマージャーニーマップを作成することができます。同様に、Adobe Customer Journey Analyticsは、クロスチャネルでの顧客とのインタラクションを可視化するのに役立ちます。
顧客体験を追跡し、把握するプロセスを自動化する能力が高ければ高いほど、カスタマージャーニーマップのプロセスはより効率的かつ効果的なものになります。