スコアリングとは?必要な理由や種類、取り組み方を解説
スコアリングとは、見込客(リード)を属性情報や行動情報によって点数化し、アプローチの重要度を優先順位づけするための取り組みです。
近年では個人、法人どちらにおいても、顧客の購買行動はオンラインの比率を高め、さらに検討期間は長期化しています。
検討の初期においては、オンライン上で情報収集し、自ら調査、評価を済ませた上で、展示会での名刺交換や問い合わせなどを通じたオフラインの接触、対面での商談に移っていく事が明らかになっています。つまり、リードが企業に問い合わせる時点では、ある程度購買意思が固まっているのです。
そこで、製品やサービスを提供する側としては、見込客のオンライン上での行動を把握しながら関係を深め、同時にセミナーや展示会などのオフラインの行動を含めて、購買意欲を適切に評価しながら購買タイミングを予測し、購買行動を示した適切なタイミングでアプローチできるかが重要になります。
デジタル時代の営業活動にはマーケティング施策による接点作り、そして「適切なタイミング」を把握するために、見込客の動きを可視化し、営業とマーケティングが連携することが欠かせないのです。そこで本記事では、「適切なタイミング」を明らかにする上で用いられるリードスコアリングと、リードスコアリングを行う上で重要な役割を果たすMA(マーケティングオートメーション)を活用した取り組み方をご紹介します。
目次
- スコアリングとは
- スコアリングがなぜ必要なのか
- 行動スコアリングの種類
- MAがスコアリングに取り組む上で必要な理由
- MAを活用したスコアリングの取り組み方
- スコアリングのROI(投資対効果)の測定について
- スコアリングで注意すべきこと
- スコアリングのまとめ
スコアリングとは
スコアリングとは、見込客(リード)を属性や行動によって評価し、自社との相性、お客様の関心領域の理解、そしてアプローチの優先順位を決めるための評価方法です。スコアには、大きく分けると「属性スコア」と「行動スコア」の2つのスコアがあります。
属性情報のスコアリングでは、企業名や顧客情報などの情報が正しく入力されているか、その上で企業属性や個人情報などをもとに優先度合いを判断します。
一方で、行動情報にもとづくスコアリングは、webサイトの閲覧やメールの開封、クリック、広告経由での資料請求、セミナーへの参加など、見込客のオンラインやオフラインでの行動を基準に実施します。
< 行動の評価例 >
- 価格ページを見たら+10点
- 資料請求したら+7点
- メールをクリックしたら+3点 等
< 属性の評価例 >
- B2B : 部長なら+10点 従業員数1000名以上なら+20点
- B2C : 年収800万円以上なら10点 年収600万円以上なら5点 等
以下の章ではスコアリングの必要性やその手順をご紹介して参りますが、具体的にリードスコアリングを実践したい方は、リードスコアリング完全ガイドをご覧ください。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-ma-dg2ls
スコアリングがなぜ必要なのか
RainToday.comのレポートによると、webサイトの資料ダウンロードやイベント参加など新規で入って来るリードのうち、購入目前の状態に達しているリードは25%未満です。
残り75%のリードには、購入意欲を高めてもらうためにリードナーチャリング、つまり継続的な情報提供をを行う必要があります。しかしながら、一定期間リード獲得施策を行っているとリードが徐々にハウスリストに蓄積されていき、営業やインサイドセールスの数に対して既存リード数が多くなってきます。その結果、全てのリードをフォローしきれなくなるという事態が発生します。
そこで有効になるのがリードスコアリングです。
ここでは、リードスコアリングが必要な理由を3つに分けてご紹介します。
営業生産性の向上
例として、営業スタッフ1名に対して休眠リード含め1,000件のリードが割り当てられている場合をあげます。1日20件ずつ連絡していったとしても全員に連絡し終えるのには50営業日かかってしまいます。仮にリスト内に1ヶ月以内の導入を検討していた方がいたとすると、その方へのコミュニケーションが遅れる可能性があり、機会損失につながりかねません。
そこで、メールのリンククリック、webサイトのページ閲覧、セミナー登録参加など、何かしらの購買に繋がる行動を捉えてその履歴をスコア化し、スコアの高い順にアプローチすると、検討の見込みが高い方から優先的にアプローチできます。その結果、営業効率を高める事ができます。
また、メールやwebサイトのどこをクリック、閲覧したかをスコアで数値化することで、見込客の関心領域に応じたアプローチをすることが可能になります。
収益サイクルの強化
上記のように、検討度合いの高いリードを絞り込んで営業に共有することは重要ですが、一方で、まだ検討度合いが高くないリードを放置してしまうことも機会損失につながってしまいます。リードスコアリングによって、見込客の検討度合いを数値化し、そのスコアにもとづいた情報提供をマーケティング施策を通して続けることで、見込客の検討を促進し収益サイクルの循環を強化します。
これはB2Bビジネスだけでなく、人的なアプローチを行わない通販サイトや、オンライン上で店舗への送客を促す施策を行う場合も、顧客の検討、購買ステージに応じて広告やコンテンツ、キャンペーンの出し分けを行う際に有効です。
営業とマーケティングの連携
営業とマーケティングの間で、リードスコアリングにもとづいた見込みの高い有望リードを定義することで、営業フォローの基準とプロセスを明確にできます。その結果、不注意によるリードの放置やアプローチ漏れを防ぐことができます。
また、リードスコアリングを継続すると、マーケティング部門がリードの動きに関する情報を蓄積できるようになり、それを営業部門にも共有することができます。一方で、営業部門からもスコアリングに関してのフィードバックを通じ、購買行動につながる行動とそうでないものに関しての情報が蓄積されるようになり、より高い精度でリードを理解できるようになります。
行動スコアリングの種類
行動スコアを実装する上では、いくつかの切り口があります。これらのスコアを組み合わせながら、顧客行動の理解を深めていきましょう。
一般的な行動スコアリング
メールのリンククリック、フォームの入力、ウェビナー参加などに対し、行動種別ごとに一律でのスコアを実装していきます。
重要度の高い行動のスコアリング
上記の行動スコアに加え、購買行動につながる特定の行動に対しては、追加でスコアを上乗せすることで優先度をつけます。
具体的には、メールの中でも、ターゲットにしている特定の業種や企業に向けたメールのリンクをクリックする、などが挙げられます。
減点スコアリング
スコアリングにおいて重要なのは、リードの「今」の購買可能性を明らかにすることです。そのため、過去の行動を蓄積していくだけではなく、一定期間行動がなければリセットしたり、定期的に減点していくようなスコアの実装が欠かせません。
また、この方は購買の可能性がないだろう、という特定の動きをもとに減点することも、行動スコアの信頼性を高めるのに役立ちます。具体的には、採用ページからエントリーした方や上場企業における株価情報などを継続的に見ている方は、webサイトに訪れる目的がサービスや製品の購入ではない可能性が高いため、営業対象としないように点数を下げる、などといった対応が挙げられます。
MAがスコアリングに取り組む上で必要な理由
先ほどお伝えしたように、スコアリングはリードが多くある際や、人的にアプローチを行わない場合にも有効です。
とはいえ、顧客の行動一つ一つをスコアリングするのを人的に行う事は難しく、またメールの開封やwebサイトのページ閲覧を確認する事もテクノロジーなくしての実現は困難です。
そこで必要となってくるテクノロジーがMA(マーケティングオートメーション)です。
ここでは、MAが必要となる理由を3つご紹介します。
クロスチャネルの行動を一元管理できる
MAを使うことで、見込客のwebサイト上の行動や、送信したメールの開封、クリックといったオンラインの行動を把握できるようになります。それだけでなく、MAはその他の施策もそれぞれのプログラムとして管理することができるため、オフライン施策を含めた様々なチャネルでの行動をスコアリングすることができます。
例えば、デジタル広告経由の訪問で特定のページからコンバージョンした、展示会で名刺交換した、DMに記載したQRコードからwebサイトのキャンペーンページを訪問した、といった様々な行動を管理し、それぞれに対してスコアを付与していくことができます。
スコアリングに応じてシナリオを自動化できる
MAは、まだ検討度合いが低く、情報提供が必要なリードに対してのコミュニケーションを自動で行うことができます。この中長期的な情報提供をナーチャリングと呼びますが、MAを活用することで、行動スコアの上下に応じた緩やかなシナリオ設計が可能です。一方で、リードの急激な行動の増加に対しても、スコアの高まりをトリガーに、即時のシナリオを自動で実行する事ができます。
スコアリングのPDCAが回せる
一度設定したスコアリングモデルが最善なものであるとは限りません。そのため、高スコアのリードが受注や商談に繋がっているかを振り返り、また、営業からのフィードバックを受けながらスコアリングモデルを定期的に改善していくことが欠かせません。MAを活用することで行動ベースのスコアリングモデルを実装していくことができますが、このモデルを柔軟に組み替えることができるのもメリットとして挙げられるでしょう。
さらに、MAをCRMと連携させることで、受注や商談に至ったリードを抽出することができ、それらのリードがどのような行動をとってきたかを理解することができます。もし受注と相関性の高い行動を見つけることができれば、それをスコアリングモデルに追加し、スコアに重みづけをして営業に素早く共有する仕組みを構築することができるでしょう。
MAについては、以下の入門ガイドにてユースケースや機能、活用事例などをご紹介しています。是非一度ダウンロードしてご覧ください。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/offer-marketo-dg2ma
MAを活用したスコアリングの取り組み方
ここからは、MAを活用したスコアリングの取り組み方をご紹介します。
(1)スコアリング展開前の準備、(2)スコアリング展開後の最適化の2つに分けてご説明いたします。
(1)スコアリング展開前の準備
展開前の準備として構築したスコアリングモデルを実行に移す前に、既存の商談中のリードをサンプルとして、望ましい形でスコアが加点されているかテストしてみましょう。
- 会社のCRMシステムから、サンプルとなるリードや受注/失注顧客を無作為に選択する。
- 各コンタクトの属性上の特徴および行動を検証する。
- 各リード/顧客に対し、新たに作成したリードスコア リング基準にもとづき、スコアを割り当てる。
- アプローチ対象のリードとしての条件を満たすサンプルの割合を調べる。
例えばマーケティングツールを提供している企業の理想的なリードが、Fortune 500社に選ばれた企業のマーケティング担当取締役で、製品特化のウェビナーに出席した事がある場合には、これらの属性の組み合わせは購入目前の条件を満たすスコアに達しているべきです。
(2)スコアリング展開後の最適化
結果が出始めてきたら、ただちにスコアリングと関連するプロセスの見直しを行いましょう。市場動向の変化や新製品などに応じてスコアリングを最適化する必要があります。
マーケティング部門と営業部門との間で月1回など定期的にミーティングを開き、最も正確なスコアを更新することが前提条件となります。展開初期は週1回でも良いでしょう。
- 受注/失注顧客のスコアを再検証します。最上位の顧客は最上位のスコアを有していたか?
- 高スコアを獲得しながらアプローチしてみたら購入前でなかった、又は購入へ至らなかったリードを詳しく確認しましょう。
- 地域、役職、企業名に関する属性セグメントのスコアを確認し、不適切にされていないか検証しましょう。
- 高スコアのリードが取ったアクションが最適な採点がされているかどうか、オンライン上の行動を見て確認しましょう。
マーケティング部と営業部との間で定期的な交流が持たれる事で、互いに得た知見にもとづいてスコアリングモデルを分析し、順応させることができ、改善に向けて何をすべきか、共通のアイデアを培っていくことができます。
スコアリングのROI(投資対効果)の測定について
当然ながら様々な施策を実施する際にROIがあったのかを評価する事は必須になります。
スコアリングについても(1)購買サイクルの期間短縮、(2)営業生産性の向上の2つのポイントで評価する方法をご紹介致します。
(1)購買サイクルの期間短縮
感知できる一般的な購買サイクルは、有望なリードがCRMもしくはマーケティングオートメーション(MA)に入力された時点から購入成立までの期間を測定します。
この購買サイクルでは、リードが購入目前となった時にスタートし、製品の購入で終わります。このサイクルが発生する期間の平均日数を割り出し、そのデータセットに歪みを生じさせる可能性があるあらゆる異常値を除去してください。具体的には、購買までの期間が著しく短い商談などです。こういったものは何らかの特殊な要因が働いている可能性があります。
スコアリングによって購買サイクルの期間が短縮されることが明らかになるはずです。購買サイクルの期間の改善を把握するために、まずはスコアリング前、またスコアリング後の、一般的な購買サイクルの期間を記録する必要があります。スコアリングモデルを最適化する度にこの指標を再確認し、継続的な影響を測定しましょう。
(2)営業生産性の向上
受注に至るまでの営業活動は多岐にわたりますが、重要なのはリードの態度変容を促し、検討を促進することです。時間の大半を適切かどうか分からないリードへの無作為なテレアポもしくはフォローアップに費やす営業担当者は、ターゲットとなる属性のリードにアプローチし、サービスについて説明し、独自の価値を伝えることができている競合他社に遅れを取ってしまいます。営業担当者がスコアリングを開始する「前」と「後」で、どのように時間が使われたかを記録することで、営業生産性に対するMAとスコアリングの影響力を測定することができます。アウトバウンドの電話件数、サービス説明回数、また顧客訪問などを測定する企業にとって、その指標は容易なものです。スコアリングの実施前と後では、各営業担当者によってどれだけの収益が生み出されているのか?ここで明らかになった増加分については、皆様の組織にとってスコアリングがどれほどの成功をもたらしたかを判断する、最終的な評価基準となるでしょう。
スコアリングで注意すべきこと
スコアリングに取り組む上で注意すべき事を2点ご紹介致します。
(1)資料ダウンロード時のフォームでBANT条件(*1)を確認しても評価を高くし過ぎない事
BANTは、購買モードに入っているリード、特にB2B企業に対しては有効ですが、フォームからBANT情報を記入してもらう際、意思決定に関与しないため予算など関知していない、営業アプローチを避けたいためなど、不正確な情報が提供される可能性があることを注意して評価を高くし過ぎないようにしましょう。
※1: BANTとは、B:Budget(予算)、A:Authority(決済権)、N:Needs(ニーズ)、T:Timeframe(導入時期)の頭文字をとった言葉です
(2)購買行動は100%予測可能にはならない。
購買行動は規模、業種、市場成熟度などにより変わり、購買者の見込度、予算、購買プロセスがより明確な可能性があるため、十分に整備、セグメンテーションされたデータベースからは、より安定した予測可能なスコアリングモデルが生まれます。
上記を注意してスコアリングを行うようにしましょう。
スコアリングのまとめ
リードスコアリングはホットリードを抽出し、営業の効率化に貢献するだけでなく、収益サイクルの改善、営業とマーケティングの連携強化など、ビジネスに様々なメリットをもたらします。顧客がオンラインに移行した現在においては、リードの属性情報に加え、行動情報にもとづいたスコアリングを組み合わせることで、1人ひとりにあわせたコミュニケーションを実現し、リード獲得から受注、ロイヤル顧客に至るまでの遷移率の向上、そして売上の増加につながることが見込まれます。
スコアリングは1度作成して終わりのものではありません。MA(マーケティングオートメーション)などのアプリケーションを適切に活用しながら継続的に改善を進め、スコアリングの精度を高めながら成果をより確実なものにしましょう。
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