インサイドセールスを運用するメリットとして、次のようなものが挙げられます。
商談化率や成約率の向上
従来の営業手法では、アポイントが取れた順に顧客のもとを訪問するので、営業担当者は成約確度の高さにかかわらず、すべての顧客に同等の時間と熱量を割くことになります。
例えば、商材の検討期間が長い場合、営業担当者は常に顧客にとって有益な情報を提供したり、顧客のもとを訪れたりしなくてはいけません。このような案件をいくつも抱えていると、新規顧客へのアプローチや既存顧客へのフォローが手薄になってしまいます。
しかし、インサイドセールスを運用して、ターゲットの選定や新規営業リストの作成、電話やメールによるアプローチを行えば、確度の高い顧客のみをフィールドセールスに引き継げます。結果として、商談化率や成約率の向上にもつながるでしょう。
また、従来のマーケティングではハードルが高かった双方向のコミュニケーションや、カスタマー部門では察知できない事象のフォローなどを行えることもポイントです。
人手不足対策
インサイドセールスでは、オフィスから移動することなく全国の顧客に対応できるので、少人数で多くの顧客をカバーできます。
営業担当者1人あたりが接触する顧客数を増やせるので、見込み顧客への継続した情報提供や、アプローチ数の追加も可能です。
なお、インサイドセールスの体制を確立すれば、営業活動を行う従業員の在宅勤務なども実現できます。多様な働き方を推進することは、人材の定着や新たな人材の確保につながるでしょう。
営業にかかるコストの削減
インサイドセールスの運用によって、営業コストを削減できるメリットが見込まれます。特に、webサイトのサーバーホスティングやクラウド会計システムなど、商材やサービスの単価が安い場合、対面営業では販売コストがかかりすぎます。
しかし、インサイドセールスに切り替えれば、少ない人員でより多くの見込み顧客にアプローチができます。
インサイドセールスを運用するデメリット
インサイドセールスを運用するメリットがある一方、デメリットにも留意が必要です。
適切な情報連携を行える仕組みが必須となる
インサイドセールスの効果を高めるには、マーケティング、インサイドセールス、営業における役割を明確に分けて、適切に情報共有できる仕組みを構築することが不可欠です。
具体例として、インサイドセールス担当者と営業担当者が情報共有できる体制や、インサイドセールスの担当者間で情報共有できる体制が挙げられます。
これらの実現に向け、顧客情報や商談進捗を共有できるツールなどを導入し、仕組みを整備することが重要といえます。
商品やサービスの魅力が伝わりづらいケースがある
インサイドセールスでは非対面でアプローチするので、対面式のフィールドセールスなどに比べると、商品やサービスの魅力が伝わりづらいケースがあります。
例えば、フィールドセールスの場合、顧客の表情の変化で理解度や興味の度合いを推測し、必要に応じて言葉の表現を変えるといった戦略が可能です。しかし、インサイドセールスではコミュニケーションが制限されてしまいます。
とはいえ、近年は、「360度ビュー」や「バーチャル試着」などの技術も普及しています。
これらの技術を活用すれば、インサイドセールスであっても、自社の商品やサービスの魅力を正しく伝えられるでしょう。
インサイドセールスの立ち上げ手順
インサイドセールスの立ち上げ手順は、以下のとおりです。
- 営業プロセスの設計と担当範囲の設定
- インサイドセールスチームの設置部署を決定
- 人員確保の方法を決定
- 顧客データの収集とリストの作成
- シナリオ作成、KPI設定
- インサイドセールスの実施、効果測定、改善
手順ごとのポイントについて、さっそく見ていきましょう。
1.営業プロセスの設計と担当範囲の設定
全営業プロセスのうち、インサイドセールスとフィールドセールスを適用したほうがよいプロセスは、扱う商材の種類や価格、顧客層によって異なります。
まずは、自社の営業マーケティング活動を、どのようなプロセスで進行しているのかを整理しましょう。その上で、インサイドセールスがどこまでの役割を担うのかを決めなければいけません。
具体的には、下記のような観点に沿った見直しが必要です。
- 展示会やwebサイトの集客施策で、営業予算の達成に十分な見込み顧客を獲得できているのか
- 営業担当者によるフォローが不十分で、放置されている見込み顧客がいないか
- 見込み顧客のアポイントメント数や商談化案件数は、営業予算を達成するために十分か
- 移動が伴うフィールドセールスのコストは、営業予算に対して妥当か
これらを整理し、インサイドセールスが担当する領域を設定していきましょう。
2.インサイドセールスチームの設置部署を決定
インサイドセールスチームを新たに立ち上げる場合、設置部署も決める必要があります。事例として多いのは、マーケティング部門管轄、営業部門管轄、インサイドセールス独立部門のいずれかを創設するという3パターンで、それぞれ次のようなメリットがあります。
マーケティング部門管轄とすることで、見込み顧客の獲得やイベント/セミナーの開催など、マーケティング部門主導の施策と連動した活動をスムーズに行えます。
フィールドセールスの担当者と密に連携をとりながら、ターゲットとする企業や業界に注力したアプローチや、効率的なアプローチが可能になります。
インサイドセールスを独立させることで、他部門からの干渉を受けずに独自の施策を実施するなど、大きな裁量を持って施策を実施できます。
3.人員確保の方法を決定
インサイドセールスにおける人員を確保する際は、自社人員で行う方法と、アウトソーシングする方法の2つがあります。それぞれのメリットとデメリットは、以下のとおりです。
【インサイドセールスを自社人員で行うメリット】
- 他部署からのフィードバックをオペレーションに活かしやすい
【インサイドセールスを自社人員で行うデメリット】
【インサイドセールスをアウトソーシングするメリット】
- 設備投資や人員の育成に時間やコストを割く必要がない
【インサイドセールスをアウトソーシングするデメリット】
- 顧客への見積もり送付などは外注先だけでは完結しないので、手続きが煩雑化する可能性がある
- 外注先に自社商材の研修を行ったり、最新情報をアップデートし続けたりする手間がかかる
特にソリューションビジネスの場合は、専門的な知識を持った人材を育成し、より高度な顧客体験を提供できることから、自社人員でチームを構築することがほとんどです。
また、経験を積んだインサイドセールス担当者が、フィールドセールスやマーケティング部門に異動することで、各部門の底上げにもつながります。
4.顧客データの収集とリストの作成
インサイドセールスで確度の高い見込み顧客にアポイントを取りつけて、フィールドセールスへとつなぐには、顧客データの収集とリストの作成が不可欠です。
フィールドセールスの商談成約率を高められるように、基本的な顧客情報はもちろん、自社との細かなやりとりについても引き継ぐことが大切です。
顧客の情報はリスト化し、インサイドセールスの段階でどのようなやりとりを行ったのかまで、しっかりとデータとして残しておきましょう。
なお、顧客リストの作成や、得られた顧客情報のデータ化/管理は、顧客情報管理ソフトなど、専用の管理ツールを使うのが一般的です。
5.シナリオ作成、KPI設定
インサイドセールスチーム運営の成功のカギは、Key Performance Indicator(KPI)をどう定義するかです。KPIとは、目標の達成度合いを計測する指標のこと。営業活動におけるKPIの指標は、大きく下記の3つに分けられます。
インサイドセールスの立ち上げ段階でのKPIは、アポイント創出件数や有効商談化件数/金額がおすすめです。有効商談化件数/金額が増えれば、受注件数/金額も伸びてくるでしょう。
インサイドセールスの運用が軌道にのり、有効商談化件数/金額の増加が安定すれば、受注件数/金額をKPIに含めるのもいいでしょう。この段階からは、フィールドセールスとより密な連携をとりつつ、受注件数を伸ばしていくことが重要です。
ただし、受注件数/金額のみを、KPIに設定するのは避けましょう。というのも、受注件数/金額は、フィールドセールスの力量に大きく左右されやすいからです。
また、行動量をサブKPIとすることはあっても、メインKPIに設定するのはおすすめできません。行動を優先させた結果、コミュニケーションの質が下がり、商談の獲得件数が伸びないばかりか、担当者のモチベーションも下がる悪循環になるおそれがあるからです。
インサイドセールスのKPIの設定は、アポイント創出や有効商談化の件数に重点を置きながら、スタッフのモチベーションが保てるよう柔軟に変更しましょう。
6.インサイドセールスの実施、効果測定、改善
インサイドセールスを立ち上げ、成果を挙げていくためには、日々の活動の量と質の両方を高めていく必要があり、試行錯誤が欠かせません。
KPIを達成できた/できなかった要因、あるいは効率的な営業活動に必要な施策などについて、1か月や半期ごとにチームで定期的に振り返り、改善していきましょう。
インサイドセールスを行うコツ
続いて、インサイドセールスを行うコツを5つ紹介します。
電話とメールの両方を活用して、アプローチ数を最大化する
顧客と直接対話ができる電話は、リード獲得における重要な営業手法であるものの、相手の都合や時間の制約などに留意が必要です。4回目以降の電話は着電率が大きく下がる傾向にあるので、場合によっては架電の時期をあらためるといった配慮も不可欠となります。
一方、メールは配信時間を設定すれば、アプローチ数を大きく増やすことが可能です。また、メールの開封状況を確認しながら架電することで、着電率の向上にもつながります。
架電前または架電後にメールを送れば、電話した際に認知してもらえる可能性も高まるでしょう。
タスク(Todo)を活用して、継続的にコミュニケーションをとる
顧客と継続的なコミュニケーションをとることで、データベースに顧客の情報を蓄積できます。データベースがあれば、見込み顧客の検討度合いをスコアリングでき、顧客の興味レベルに合わせた最適なアプローチも可能です。
見込み顧客の課題に合わせたコンテンツを配信する
見込み顧客の潜在的なニーズを掘り起こし、購買意欲を育てていくのもインサイドセールスの大事な役割です。
見込み顧客のなかには、自身が持つ潜在的なニーズに気づいていなかったり、予算などの制約を理由に購入を見送っていたりする方も多くいます。
インサイドセールスで定期的に有益な情報を発信するなどして、見込み顧客との信頼関係を維持し、適切な提案を行っていくことが、将来の成約につながります。
インサイドセールスの最新情報や他社情報を収集する
インサイドセールスの最新情報や他社情報を収集することも重要です。近年は、インサイドセールスにAIを活用するような動きも見られます。
例えば、企業のお問い合わせフォーム/メールの記入から送信までを、AIが全自動で実行してくれる「営業支援サービス」などがあります。このような最新のサービスを導入すれば、インサイドセールスを効率化できるほか、競合他社との差別化も図れるでしょう。
なお、インサイドセールスの最新トレンドを収集する方法として、セミナーやイベントへの参加、学習サイト、SNS、書籍の確認などが挙げられます。
インサイドセールスに適したツールを導入する
インサイドセールスを効率的に進めるには、見込み顧客の情報などを一元的に管理して部署間で共有し、連携体制を確立する必要があります。一元的な管理に活用できるツールの例として、以下が挙げられます。
- CTI(Computer Telephony Integration)
電話/FAXとコンピューターシステムを統合し、顧客情報や購入履歴を参照しながら、電話応対でのサポートを最適化できるツール。
- ABM(Account Based Marketing)
成約見込みの高いターゲット企業の情報収集や選定、営業の効果検証などをサポートするツール。
インサイドセールスに欠かせない!MAツールの役割と導入メリット
インサイドセールスを効率的に進めるには、前述したツールのなかでも、特にMAツールの導入が不可欠です。
インサイドセールスでは、膨大な量の顧客情報の収集や管理、分析、顧客アプローチの優先順位付けのほか、電話やメール、SNSなどを通じた顧客とのコミュニケーション、顧客の興味レベルに合わせた継続的な情報発信などが必要になります。
MAツールを導入すれば、この多くの部分を自動化できます。効率のよい営業活動ができるようになり、成約数の増加と収益の向上につながります。
ここでは、MAツールの役割と機能、導入するメリットについて紹介します。
MAツールの役割と機能
MAツールには、下記の3つの役割があります。
- 見込み顧客の実名化からロイヤル顧客へ至るまでの施策の自動化
MAツールは、これらの役割を支える様々な機能を備えています。
ここでは、MAツールの主な機能を確認しておきましょう。
リード情報の管理機能
管理機能では、様々なコンタクトチャネルから得た顧客の情報を一元的に管理できるほか、アプローチリストの作成などもできます。管理できる情報例は、以下のとおりです。
リードのスコアリング機能
スコアリング機能とは、見込み顧客の行動やコミュニケーション履歴をもとにスコア化し、成約に至る確度を数値化する機能です。スコアリングする際は、以下のような情報を参考にします。
この機能を活用して、スコアが高い見込み顧客は優先的にアプローチをして、フィールドセールスへと引き継ぎ、スコアが低い見込み顧客は、興味の度合いに応じた情報を送るなどしてコミュニケーションを継続し、将来的な成約を目指すといったアプローチが可能です。
メールマーケティング機能
メールマーケティング機能により、メールを活用したマーケティングを行うことができます。例えば、自社サイトの特定のページを閲覧した人のみに商品詳細メールを送るなど、セグメント別のメール配信に活用することが可能です。
キャンペーン管理機能
キャンペーン管理機能では、以下のようなキャンペーン施策や顧客情報を設定/管理できます。
- 資料請求をした見込み顧客に対し、特定の情報を発信する
- 見込み顧客が展示会やセミナーに出席した場合、成約の検討段階を1つ上げる
上記のようなキャンペーン施策や、関連する顧客情報を設定/管理できるので、マーケティング施策を最適なタイミングで実行するのに役立つでしょう。
ランディングページ作成機能
ランディングページ作成機能では、商品説明を行うランディングページのほか、お問い合わせフォームやアンケートフォームなどを簡単に作成できます。これらのフォームやページから得られた情報を自動的にMAツールに登録し、次のマーケティング施策に活用することも可能です。
MAツールを導入するメリット
MAツールを導入する最大のメリットは、営業活動の効率化が進み、成約率のアップにつながることです。そのほか、以下のようなメリットもあります。
営業とマーケティングの連携が容易
MAツールによる一元的な顧客情報管理を行うことで、営業とマーケティングの連携が容易になります。見込み顧客のスコアリングや自社とのコミュニケーション履歴といった顧客の最新情報を共有することで、より効果的に営業活動を行えます。
ボトルネックの発見/改善
MAツールの導入によって営業活動の成果を数値化し、蓄積したデータを分析することで、ボトルネックを把握しやすくなります。ボトルネックの改善に向けてPDCAを回せば、売上の向上も目指せます。
データ収集から効果検証までを同じツールで実施可能
データの管理やマーケティング施策の自動化、収益プロセス全体の効果測定をすべて同じツールで行うことができるので、効率のよい営業活動が可能です。また、SFAやCRMなどのシステムとの連携も可能です。
なお、CRMとMAツールの関係性や違いについては、以下の記事をご参照ください。
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