リーン生産方式のための5S手法

Two workers look at an iPad to learn about the 5S methodology for Lean manufacturing.

安全で整理整頓された職場をつくることは、チームメンバーが生産性、効率性、設備生産量を最適化するのに役立ちます。問題は、リーン生産方式を促進する標準化された職場環境をどのように整備するかということです。

リーンオペレーションをサポートするために開発されたのフレームワークは数多くありますが、物理的な空間で働くチームにとって最適なもののひとつが5Sとして知られています。5Sは、世界の製造業に革命を起こしたトヨタ自動車株式会社を起源とする、作業空間を清潔に保ち、整理整頓し、安全を確保するための方法論です。5Sを導入することで、チームは生産性を向上させ、企業はより収益性の高い運営をおこなうことができます。

しかし、ビジネスリーダーやチームマネージャーが、5Sとは何か、なぜ5Sが役立つのかについて、必ずしも理解しているわけではありません。この記事では、5Sの概念や利点、組織への導入方法など、5Sについて知っておくべきことを学びます。

主な内容:

  1. 整理(Sort)
  2. 整頓(Set in order)
  3. 清掃(Shine)
  4. 清潔(Standardize)
  5. 躾(Sustain)

5Sとは?

5Sとは、作業空間を整理するための方法論です。5Sは、「整理(Sort)」、「整頓(Set in order)」、「清掃(Shine)」、「清潔(Standardize)」、「躾(Sustain)」を表しています。現在では、6番目のSである「Safety(安全)」を加えることもあります。

5Sはもともとトヨタ自動車が開発したもので、リーン生産方式に含まれるものです。しかし、その誕生以来、5Sは幅広い業種の企業で採用されています。

製造業であれば、どのような企業であっても5Sを活用することで利点が生まれます。利点には、次のようなものがあります。

5Sは何十年も前から存在していますが、この実績ある手法の利点に、今ようやく気付いた組織もあります。

たとえば、インド政府は、近年、中小零細企業(MSME)向けにリーン生産方式と5Sの実践を奨励するための新しい取り組み開始しました。MSME Competitive (LEAN) Programと呼ばれるこの取り組みは、インドの企業が生産性、品質、業績を向上させることを目的としています。

このプログラムでは、5Sに加え、カイゼン、カンバン、ポカヨケなどの原則の使用を奨励しています。インド政府は、5SがMSMEの国際競争力を高めると確信しており、今回のプログラムでは、これらの手法の導入にかかる費用の90%を拠出することにしています。

5Sとは何かということがわかったところで、その起源を探ってみましょう。

日本語からの英訳

5Sは、トヨタ自動車の専門家によって開発されたリーン生産方式のフレームワークです。

このフレームワークの考案者は、複数のビジネス課題を解決しようとしていました。すなわち、非価値付加時間の短縮、作業効率の向上、安全性の促進、組織的有効性の最適化です。

この方式は、次の5つの日本語をベースに構築されました。

  1. 整理
  2. 整頓
  3. 清掃
  4. 清潔

これらの5Sキーワードは、英語では次のように訳されています。

  1. Sort: 不要な行為や無駄な行動をなくす
  2. Straighten: 整理して残った設備、在庫、機械などを整頓する
  3. Shine: 作業空間を清掃し、点検し、使いやすくする
  4. Standardize: 5Sフレームワークの基準をわかりやすく記述する
  5. Sustain: 作成した5S基準を一貫して守る

Translation from Japanese

リーン生産方式と同様に、5Sは順を追ったステップを踏んでいきます。そのため、前の原則に適切に対処していないと、次の原則に進むことはできません。

たとえば、作業空間の清掃や点検は、無駄なものを整理し、残ったものを整頓してからでないと始めつことはできません。

5Sの原則を適用する前に、まずそれぞれの原則の範囲を理解する必要があるので、それぞれの概念について詳しく見ていきましょう。

1.整理(Sort)

これは、作業空間にあるものを分類することです。ここで必要なもの、他の場所で必要なもの、他の作業者が必要としているもの、廃棄できるもの、といった具合に分類していきます。

作業空間に必要なものを特定するのは簡単かもしれません。しかし、それ以外のカテゴリーの分類はすぐに難しくなります。

たとえば、「必要かもしれない」と「処分する」の中間のもあります。もちろん、価値があるかもしれないものを捨てたくはありませんが、ガラクタで施設が埋まってしまうのも困ります。

そこで、あるものが必要かどうかを判断する際に、次のように問いかけると整理作業がはかどります。

廃棄できるものが決まったら、別の部門に振り分けることも検討しましょう。他の部門に必要なものがない場合は、保管、販売、リサイクルすることができます。

どうしたらよいかわからないものには、赤札を付けましょう。赤札は5Sでよく使うツールで、より効率的に整理することができ、役に立つ可能性のあるもを廃棄しないようにすることに役立ちます。

赤札を付けたものは別の場所に移動し、そこを遺失物置き場とします。チームメンバーは赤札のついたもの確認して、自分の作業空間に属するものを申し出ることができます。

2.整頓(Set in Order)

「Straighten」と訳されることもある整頓とは、作業空間を体系化して使いやすい状態にすることです。不要なものを整理することで、このステップはより簡単に実行できるようになります。

整頓する際には、次のようなベストプラクティスに従ってください。

整頓の目的は、道具を探したり、行ったり来たりする無駄な時間を省くこと、そして、それにより発生する待ち時間により作業が遅れることを防ぐことです。

この取り組みの一環として、コンテナに収納できないものにはラベルを貼り、すべてのものの定位置を決めておくとよいでしょう。たとえば、手持ちの工具のシャドーボードを用意しておくと、紛失したときに一目瞭然です。

整頓では、無駄を省くことが最優先に考えてください。ここでいう「無駄」には、次のようなものがあります。

無駄を省き、すべてのものに定位置を設けることで、チームを成功に導き、生産性の目標を達成することができます。

5S手法を利用することで、コスのト削減、作業空間の安全性の向上、製品品質の向上、機器の寿命延長、作業量の増加、空間利用の最適化などが可能になります。

3.清掃(Shine)

このステップでは掃除と点検をおこないます。たとえば、機器の消毒や点検を徹底的におこなう必要があります。また、予防保全や定期的なメンテナンスの実施にも最適なタイミングです。

清掃のチェックリスト例を紹介します。

これらの作業は、清掃スタッフに任せるのではなく、全員が参加しておこなう必要があります。そうすることで、自身の職場への愛着が増し、プライドが高まり、機器などのあるべき姿に慣れ親しむことができます。

作業空間をきれいに保つことで、普段と異なる点があればすぐにわかり、問題が深刻化する前に対処することができます。
最終的に、時間と費用の節約につながります。

4.清潔(Standardize)

清潔のステップでは、最初の3つのSに繰り返し取り組むためのシステムを構築します。これは、5Sフレームワークを拡張性のあるものにするためのステップです。

清潔とは、3Sの作業の実施スケジュールを決めることでもあります。各作業のベストプラクティスを確立し、手順を詳細に文書化します。

繰り返し実施可能な方法を確立することに加えて、各ステップの実施頻度を明確にする必要があります。

たとえば、整理、整頓、清掃の工程を1カ月に1回繰り返すこともできます。あるいは、新しいプロジェクトを始める前に、各ステップを繰り返すことが、組織にとって最も効果的かもしれません。5S手法のこの側面は、自社のニーズに合わせてカスタマイズできますが、こうした期待値をチームと共有するようにしてください。

標準化された5S手順を作成する方法はたくさんありますが、ここではチェックリストを使うことをお勧めします。5S手法の各ステップをリスト化することで、作業者が5S手法に慣れるのがはるかに容易になります。また、チェックリストは監査ツールとしても有効で、全員に説明責任を負わせることもできます。

清潔のステップでは、チームメンバーからフィードバックを集めることを重要視しますあるチームが学んだことを他のチームと共有することで、ベストプラクティスを改良し、組織全体に広めることができます。

5.躾(Sustain)

整理、整頓、清掃のベストプラクティスを確立したら、その努力を持続させる必要があります。そのためには、5Sの作業の進め方について従業員をトレーニングする必要があります。また、5Sの作業が日常的に実施されていることを確認するシステムを導入する必要もあります。

これにはさまざまなことが関係しますが、5S手法を成功させるためには、経営陣のサポートが最も重要な要素です。経営陣が5Sとリーンに取り組んでいることがわかれれば、チームも取り組みます。逆に、管理職にためらいがあったり、やる気が無ければ、チームもそれに追随してしまいます。

また、トレーニングは継続的な投資であることを忘れないでください。特に、職場に大きな変化があった場合は、必ずトレーニングの機会を提供する必要があります。

たとえば、新しい製品が登場したり、機器やルールなどが導入された場合は、特別トレーニングを実施して、全員がこれらの最新情報に対応できるようにしなければなりません。

最後に、躾の取り組みには、監査とパフォーマンスレポートの組み合わせが必要です。監査により、5Sの実施が遅れているチームを洗い出すことができます。個人業績評価の面では、優秀な従業員を特定して評価することができます。

5Sは、日本の自動車メーカーであるトヨタ自動車が考案した手法で、作業空間を整理整頓し、安全に保つためのものです。

第6のS - Safty(安全)

第6のSである「安全」については、2つの有力な考え方があります。

ひとつは、5Sのフレームワークにもとづいてリーン生産方式を適切に導入すれば、結果として職場の安全性が最適化されるする考え方です。もうひとつは、安全性を重要視し、リーン生産方式とは別のステップで取り組むべきだとする考え方です。

どちらのアプローチにも強力な論拠があります。

たとえば、整理、整頓、清掃を実施すれば、職場の安全性に測定可能な影響が及びます。これらのステップにより、より清潔で、より整理され、より整頓された環境がもたらされます。また、清掃には工具のメンテナンスも含まれているため、工具に起因する労働災害の防止にも役立ちます。

しかし、5Sでは扱われていない安全対策もあります。その典型的な例が、適切な安全標識の必要性について、5Sフレームワークには明確な指示がないことです。

安全標識が「清掃された」職場環境の構成要素であると考えるのであれば、「整頓」か「清掃」の段階でこの懸念に対処することになります。しかし、この見解がチームで共有されていない場合、5S手順を進める中で安全標識が見落とされる可能性があります。

5Sの利点

Some of the benefits of 5S are saving money, achieving greater productivity, enduring more efficient use of space, and enhancing product quality.

整理、整頓、清掃などの5Sの作業を徹底することで、企業は多くの利点を得ることができます。5Sでは、次のことを実現できます。

今日から5Sに取り組むには

5Sには大きな利点があります。この実証済みの手法により、コストの削減、作業空間の安全性の向上、製品品質の向上、機器の寿命延長、作業量の増加、空間利用の最適化などが可能になります。

このフレームワークを取り入れる準備ができたら、5Sを社内でどのように展開するかを考えてみてください。どのようなアプローチをとるかは、会社の規模や、導入済みの業務管理の仕組みによって異なります。

各部門の責任者や関係者と、どのように5Sを実践していくかを話し合いましょう。次に、チームで協力して5S手法に取り組みます。これにより、この革新的なフレームワークの利点を享受する準備が整います。

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Adobe Workfrontを利用すれば、プロジェクトをスムーズに管理し、5S導入戦略を合理化し、組織全体に迅速に拡大することができます。さらに、Adobe Workfrontで5S手法のステータスを追跡し、その結果を関係者と共有することも可能です。

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