グローバルな建築・エンジニアリング・デザイン会社であるBDPで入札提案を担うマーケティング・事業開発アソシエイトのMaxine Pierce 氏にとって、1件の提案書をまとめるには数日を要することもありました。過去のプロジェクトから関連するユーザー事例を探し出し、社員の資格情報を確認し、コンプライアンス認証を調査し、契約書の文言を照合するなど、多岐にわたる作業が必要だったからです。
BDPはこれまでのプロジェクトを通じて膨大な知識を積み上げ、多種多様なドキュメントとして蓄積してきました。しかし、知識が増えるにつれ、必要な情報を迅速に見つけることが難しくなり、特に競争入札の準備においてその課題が際立っていました。Adobe Acrobatソリューションを活用することで、BDPはドキュメントに蓄積された数十年分の組織知識を、社員が容易にアクセスして実務に活かせる形へと変えています。
Knowledge BaseはAdobe Acrobat Studioの新機能で、BDPのチームは厳選されたドキュメントのコレクションをアクセスしやすい知識へと変換し、引用元が特定の文章や画像、さらには表のセルに直接リンクされた信頼性の高い回答を数秒で見つけることができます。一方、PDFスペースは、チームが入札回答の起草・レビュー・精査を行える共有ワークスペースを提供し、見込み客の入札招請書 (ITT) のすべての要件を提案書に確実に反映させる支援をします。
埋もれていたドキュメントデータを、信頼できる知識へ
アドビとの協業前、BDPはイントラネットベースのライブラリを構築して組織の知識を一元管理していました。しかし、インテリジェントな検索機能がなかったため、社員は必要な情報を見つけるためにフォルダやファイルを手動で調べるしかありませんでした。
Knowledge Baseの導入により、BDPは信頼性の高い企業知識のソースを確立しました。過去のドキュメントから知識を引き出すために手動でデータを検索・取得・統合する必要はなくなり、このソリューションはBDPのドキュメントリポジトリに接続して、関連する入札コンテンツ、ユーザー事例、資格情報をオンデマンドで数秒以内に提示します。さらに、すべての回答はファイル名やページ番号だけでなく、ソースドキュメントの特定の文章レベルまで引用が付いています。
PDFスペース内でKnowledge BaseとAcrobat AIアシスタントを連携させることで、チームメンバーは入札書類の要約、下書き回答のギャップの特定、AIを活用したレビューによる最終提出物の強化をすべて1つのワークスペースで行うことができます。自然言語で質問を入力し、必要なフォーマット、文字数、業種・分野を指定できるため、最終的な入札書類の作成においてより高い柔軟性と創造性を発揮することができます。
作業完了後、チームメンバーはプラットフォームを活用して、見込み客の入札招請書 (ITT) に対するBDPの回答を自動的にチェックします。これにより、回答のギャップを補い、見落としていた関連ユーザー事例を洗い出し、入札のすべての要件が漏れなく対応されているかを確認することができます。
「Knowledge Baseを活用することで、入札プロセスにおける盲点に気づくことができました」とPierce 氏は語ります。「社内のあらゆる知識に、質問一つでアクセスできます。各見込み客のニーズにより完全に応えながら、BDPの総合力を余すことなく示すことができるのです。」
AIインサイトを連携ワークフローに活かす
BDPにとって特に大きな恩恵の一つは、チームがAcrobatプラットフォームソリューションをすぐに活用し始められたことです。長期にわたる導入作業やITプロジェクトは一切不要でした。若手チームメンバーがPDFスペースで入札の初期回答を下書きし、経験豊富なスタッフが同じプラットフォーム上でレビューと改善を行います。この協働アプローチにより透明性と信頼が高まり、提出物の品質とチームの成長の両方が強化されます。
入札書類の下書きが完成したら、チームは提案書をPDFスペースにアップロードし、Acrobat AIアシスタントに最終レビューを依頼します。これにより、手動レビューでは見落としやすい点、例えば確認が漏れた入札要件や記載し忘れた重要なプロジェクト実績などを洗い出すことができます。
Adobe AcrobatとMicrosoft SharePoint、Microsoft Teamsの連携により、BDPは部門横断的に従業員が活用できるプロジェクト固有の情報リソースを構築しました。SharePoint連携により、意思決定に役立つ最新の情報源をチームが簡単に検索できるようになり、Teams連携によりアプリケーションを切り替えることなくKnowledge Baseに直接クエリを実行することができます。
信頼性が高く出典の明確な情報をすぐに手元で活用できるBDPのチームは、アーカイブの検索に費やす時間を削減し、建築・デザインの道に進んだ本来の目的に集中することができます:クライアントの複雑な課題を解決することです。
AIワークフローへの信頼を築く
入札プロセスは、BDPにとってAI活用の出発点に過ぎませんでした。各チームがAIを通じて組織の集合知をより効果的に活かせると気づくにつれ、導入の範囲は入札管理を超えて広がっていきました。今日では、人事部門から技術部門まで、多くのチームが自らのドキュメント業務にAIを積極的に取り入れています。
BDPのリーダーシップ層が、かつてセキュリティ、ガバナンス、トレーサビリティを理由にAIエージェントへの信頼に慎重な姿勢を取っていたことを踏まえると、この変革の大きさはより一層際立ちます。
たとえば入札においては、AIが正確な回答を提供するだけでは十分ではありません。その回答は、自社ならではの経験を反映したものでなければなりません。BDPが行うあらゆる主張は自社のプロジェクト実績に基づく必要があり、エンタープライズグレードの引用・出典機能を備えない汎用AIツールでは対応できません。同様に重要なのは、チームが日々作成・共有する情報が根拠に基づき、適切に管理されているという確信を持てることです。
「私たちは、人を中心に据えたデザインというビジョンを大切にしながら、常に限界に挑戦し、社会にポジティブな影響をもたらすことで評価を積み重ねてきました。制御の仕組みなしにAIを活用することは、その使命と相反します」と、BDP 最高執行責任者のAlistair Kell 氏は語ります。
アドビの信頼性の高いソリューションを活用することで、BDPは実証された成果と精度・ガバナンス面での安心感を両立することができました。この信頼により社内でのAIに対する見方が大きく変わり、各チームは現在アドビと緊密に連携してAcrobatプラットフォームのロードマップ策定に参画し、デザイン系企業向けに構築されたAIを活用した機能の実現にも貢献しています。
Acrobatプラットフォームとともに歩んだBDPの取り組みは、かつてリーダーシップ層が疑問視していたことへの答えを証明しました。AIは、精度・出典明示・クリエイティブの誠実さという企業の根幹をなす基準を損なうことなく、デザイン会社の働き方を高度化できる、ということです。入札プロセスにおける実験として始まったこの取り組みは今や、BDPの全社チームが60年以上にわたって積み上げてきた組織の知識に、アクセスし、理解し、活用するための指針となっています。
「最良のAIソリューションは、Fisher-Priceのおもちゃのようなものだと思っています」とKell 氏は言います。「単純という意味ではありません。シンプルで堅牢、そして信頼できる、ということです。アドビとの関係が強固なのは、ドキュメントワークフローにおけるAIの活用方法を何か月もかけて検証し、議論し、磨き上げながら築いてきた信頼があるからです。」