大成功を収めたプリンセス・クルーズのリモートワークフロー

Lisa McNamara

10-14-2024

アラスカの雪山で撮影している11人のビデオクルー。

クルーズ船での旅は、冒険旅行とは限りません。しかし、プリンセス・クルーズでのアラスカツアーは、他では味わえない冒険、たくさんの人がそれぞれ独自の物語を紡ぎ出せるような冒険への扉を開いてくれます。

最新のユーザー事例を取材するため、アラスカの海と大地を巡るパッケージツアーのために「10年に一度」のマーケティングコンテンツを制作したビデオチームに同行しました。この少数精鋭の勇敢なチームは、7台のカメラとともに人里離れた地域へ赴いて15TBのフッテージを撮影し、世界各地に分散したポストプロダクションクルーや関係者との共同作業を経て、同社CMOが「ホームラン級」と太鼓判を押す成果を挙げました。

今回のMade in Frameでは、メディア制作担当シニアマネージャーのScott Martin氏と編集担当のKristin Rogers氏に話をうかがいます。記憶に残る結果を目指して新しいFrame.ioの機能を探り尽くした2人です。

高みへの航海

18隻の客船を有するプリンセス・クルーズ社(世界最大のクルーズオペレーターCarnival Corporationの傘下)は、7大陸100か国超に及ぶ330の目的地へのクルーズを運航しています。中でもアラスカ地域へは他のどのクルーズラインよりも多くの乗客を運んでおり、冒険に満ちたアラスカ旅行をまさに牽引する存在です。この地域に就航して55年以上の実績を持つプリンセス・クルーズは、アラスカの海路を熟知しているだけでなく、列車でのランドツアーや空から行く氷河ツアーなども提供しており、さらに、内陸で5つの宿泊施設も運営しています。

雪に覆われたアラスカの山々を背景に、小型の赤と白の飛行機の隣にいるビデオクルー。

プリンセス・クルーズがアラスカで提供している、空から行く氷河ツアー

成功し続けるためには、見る人をあっと驚かせるようなコンテンツを配信し続けなければいけません。プリンセス・クルーズ社にはその自覚があり、それにふさわしいチームがあります。具体的には、Frame.ioとアドビのクリエイティブワークフローを駆使して、場所を問わず、かつてなかったほど野心的な撮影を実現できる、まさに完璧といえるチームを同社は作り上げました。

15年来の夢

Scott Martin氏が率いるこのプロジェクトは、意欲的なブランド再構築を象徴しています。未体験の人でも偉大なるアラスカの大地に親近感を持てるように、プリンセス・クルーズでしかアクセスできない雄大な風景を強調しながら、真実味に富んだ、感情に訴える瞬間にスポットライトを当てる。これほどの規模の撮影は、10年に一度の大仕事です。完全新作のビデオアセットやフォトアセットを含む成果を上げるためには、広範囲に及ぶBロールの把握と、AとBという2つのフォトチーム、ドローンチーム、製品コンテンツを撮影するチームの配備が必要でした。

https://video.tv.adobe.com/v/3444070

人里離れた土地での動画撮影を専門としてキャリアを積み重ねてきたMartin氏にとって、このプロジェクトは15年来の夢の集大成です。困難を伴う仕事ですが、その困難こそがMartin氏の創造意欲を駆り立てています。「20代の頃は、アラスカで多くの時間を過ごしていました。私はアラスカの人々から、少ないものでより多くを行うという貴重な映画制作の教訓を学びました。それは、粘り強さです。そして、タフさにおいても、映像作家として学ぶべきところがあると思います」とMartin氏は語ります。

夕日や朝日に照らされたデナリ山は、チームがぜひとも捉えたい画像でした。これを一目拝むことをアラスカ旅行の目的に据える人も多く、プリンセス・クルーズにとってはキャンペーンに欠かせない要素です。「最大の難関は、デナリが見える確率は約3割に過ぎないということです。つまり残りの7割では、この山の姿を映像に収めることができません。できそうにない、という言葉を何度も耳にしましたが、それこそがチームにとって最大のモチベーションになりました。『不可能』と言われた瞬間、私は、このチームがデナリパークロードの62マイル(100km)地点で朝日や夕日に美しく照らされたデナリ山と対峙するに違いないと感じました。私たちなら必ず実現できると確信していたのです」とMartin氏は語ります。

雪に覆われたデナリ山(北米大陸最高峰)の遠景。

デナリの決定的瞬間

そして、チームは確かにやり遂げました。とはいえ、綿密な準備、この環境下で通算300日超を過ごしたキャリアに裏打ちされた自信、さらには天候に恵まれるという強運あってこその成功でした。

「細かく計画を立てて入念に訓練し、あらゆることにA、B、C、D、Eの代替案を用意しました。アラスカでの豊富な経験が、チームの何よりの支えでした。私たちは母なる大自然の厳しさを熟知して、その挑戦を受け入れたのです。これこそがアラスカでの撮影の醍醐味だと思います。アラスカは、自分の思いのままに撮影したい人には向いていません。一方で、いつでも準備万端でありたい人や、一日中気を引き締めた状態で逆境と変化に満ちた撮影を経験したい人には、うってつけの場所です」とMartin氏は語ります。

描かれる航路

目的地よりもさらに重要なのは、そこへ行く理由でしょう。「私たちには、長年にわたって積み重ねてきた信頼と、小規模チームで人里はるか離れた環境へ身を投じてきた実績があります。しかしそれでも、関係者にこれが健全な投資であると納得してもらうことは重要です」とMartin氏は語ります。

重要性が高い撮影であるため、実行計画の面ではもちろん、クリエイティブな面においても、チームは準備を万全にして足並みをそろえる必要がありました。関係者に加えて、4人のスタッフメンバー、さらに35人ほどの請負業者が制作コンポーネントを支えていました。もちろん、チームは分散しています。メンバーはコロラド州やテキサス州から、ロンドンやさらに遠方まで、ばらばらの場所にいました。全員が常に最新情報を共有するうえで、プリプロダクションの当初からFrame.ioが重要な存在であったことは言うまでもありません。

約100日の準備期間に、プロデューサーや関係者と協力して確実に全員の認識をすり合わせる必要がありました。「撮影の目的と目標を一致させることに重点を置いた100日間でした。クリエイティブで楽しい作業に入る前に、この点に多大な時間をかけたのです」とMartin氏は語ります。

さまざまなファイル形式で利用可能なアセットが表示されているFrame.ioのスクリーンショット。

プリプロダクションから配信まで、Frame.ioはすべてのアセットと情報を一元化するプラットフォームとして活躍

Frame.ioがプリプロダクションで重要な役割を果たす理由はここにあります。「プリプロダクションとポストプロダクションにおいて目的を一致させる必要があります。映像作家として、こういうことをもっと早く学んでおくべきでした。10年ないし15年のアセットライブラリを活用できたことが、今回の成功につながります。Frame.ioのおかげで、既に持っているものを最初の段階から正確に把握でき、そのため足りないものも正確にわかるのです」とMartin氏は付け加えました。

Martin氏によると、チームがAdobe Creative Cloudに全面的に信頼を寄せている理由も同様です。「プリプロダクションでは、スクリーンショットのまとめや、DP、プロデューサー、クルーに向けたストーリーボード作成にかなり時間をかけるので、頻繁に Adobe Photoshopを使います。特定の場所の画像を使うときなどに、邪魔になるようなものが写っていることも少なくありません。そういうものはPhotoshopで消します。クリエイティブ担当者には細かいところにまで集中してほしいからです」とMartin氏は語ります。

Adobe InDesignもまた、プリプロダクションで多用されるCreative Cloudツールです。マーケティングクリエイティブディレクターのDani Bartov氏は、InDesignを活用して「ある特定のシーンのアクションや構図から衣装や髪型、メイクまで、あらゆるもののムードボードやビジュアルリファレンスを作成する」と述べています。

勢いは火のごとし

出発は、昼間の時間が長い7月。日の入り時と日の出時のデナリの撮影スケジュールは、真夜中から午前4時という不便な時間帯に詰め込まれていました。それでもMartin氏が動じることはありませんでした。

チームは、Alexa 35を含む7台のカメラ、REDラプターを装備したヘリコプター、8ミリフィルムカメラを用意しました。「最終的には約15TBのフッテージを撮影し、なんと撮影終了からたった24時間後には厳選したリールを配信できました」とRogers氏は語ります。

何よりも、Martin氏は撮影現場にいる間に、Rogers氏や関係者と緊密に連携する手段が必要なだけでなく、時間が押し迫っている中で何が既に編集済みで何がまだ足りないかを知る必要があります。

進行中のビデオの選択したセグメントを表示し、雪に覆われた山々の間を飛ぶ赤いヘリコプターをフィーチャーしているFrame.io。

現場にいるMartin氏がショットを選択してくれるおかげで、Rogers氏の作業効率も向上

Rogers氏は次のように述べています。「プリンセス・クルーズの別プロジェクトの編集作業では、Martin氏も私も普段どおり日中に仕事をします。しかし、今回Martin氏は1日に18時間も現場で撮影していることがあります。なぜ知っているかというと、午前3時[1週目、Rogers氏がテキサス州オースティンにいたとき]にFrame.ioから通知が来るからです。例えばドローンチームが4,800km弱の距離を走行しているなど、多くのことが同時進行するのですが、Martin氏はマネージャーとしてすべてを管理しています。Frame.ioのおかげで、効果的なコミュニケーションが可能です。Martin氏はたとえ遠くで撮影しているときでも、iPadやスマートフォンを持っているからです。Martin氏はデナリにいる間もFrameを開き、選択した画像にマークして私に送ることができます。すると、朝食時やコーヒータイム、または夕食時[2週目、Rogers氏がアラスカにいたとき]に、ちょっとしたチャットやFrame.ioのメモをもとにMartin氏から必要な情報をすべて得られます」

Frame.ioでデイリーを確認できるので、Martin氏自身はそれまでの撮影成果に自信が持て、まだ撮れていないものがあれば方向転換もできます。そのうえチームの共同作業がさらに迅速かつ効果的になることは、Martin氏にとってより大きな利点です。

iPad上で、手作業でビデオ撮影のデイリーズをレビュー用に選択している様子。

デイリーにアクセスできるので、Martin氏は撮影中でも編集の構想が可能

「ディレクション時の認識が実際のフッテージの内容と大きく異なることは珍しくありません。Frame.ioでは最新情報にアクセスできるので、私はディレクションをしながら頭の中で編集の構想を練り、Frame.ioにコメントできます。Frame.ioでデイリーを見てコメントするようになり、また編集者にタイムリーに連絡できるようになったので、当社の共同作業の速度は一変しました。クリエイティビティを発揮したいときに忘れてはいけないのは、モチベーションは一瞬の火花のようなものであり、それを燃え盛る火にするには勢いに乗る必要があるということです」とMartin氏は語ります。

不可能を可能に

勢いに乗ったチームは、控えめに言っても難しく、不可能とまで思われたことを成功させました。

Rogers氏はこう振り返ります。「私がラジオ編集をしていたときに、キャンプデナリから戻ってきたばかりのMartin氏のところに緊急のメールが届きました。プリンセス・クルーズのミーティングまでに厳選したリールを作成できるかと尋ねる内容でした」(ミーティングのスケジュールは、撮影終了からたった36時間後でした。)

山の画像を背景にしたパソコンの画面に表示された緊急のメール通知。

ていねいに綴られた緊急リクエスト

リーダー陣はこのメールを送りながらも自分たちのリクエストの難しさを重々承知していたため、チームに過度なプレッシャーを与えることはしませんでした。それだけに、チームがリクエストに応えられたことに誰もが驚き喜びました。

「長年制作に携わってきましたが、これほどすばやく業務を遂行したのは初めてでした。すべてはFrame.ioのおかげです。Rogers氏に14日間のフッテージをすばやく見せて、かつてない迅速さでコミュニケーションが取れました」とMartin氏は語ります。

Frame.io導入以前であったら、リクエストに応えるまでに少なくとも1週間はかかっただろうとMartin氏は推測しています。Frame.ioがお客様の費用と時間の節約につながる話はこれまで何度もしてきましたが、このようなフィードバックにはお金で買えない価値があると言えるでしょう。

Frame.ioに投稿されたチームへの2件のコメント。

プリンセス・クルーズ幹部の喜びの反応

もちろん、アドビのクリエイティブワークフローを使うことでターンアラウンドが迅速になるケースはこれだけではありません。

「制作現場では、何もかも予定どおりにいくとは限りません。例えば、ドローンチームはプリンセス・クルーズの船と走り去る列車を同時に捉えようとしていましたが、船と列車のタイミングがなかなか合いませんでした。船は美しく撮れても列車が写っていない、列車がきれいに撮れたと思ったら今度は船が写っていない、といった具合です。Frame.ioとアドビのおかげで、VFXアーティストのCharlesさん[ロサンゼルス在住]にAdobe Premiere Proからショットを送り、それをAdobe After Effectsに取り込んでシームレスに合成してもらうことができました。外部のポストプロダクション会社に合成を依頼して戻ってくるのを待つ代わりに、Frameのおかげで、Charlesさん自身が作業してすぐに私に送れたのです」とRogers氏は語ります。

こういった撮影にはペイントワークも必要でしたが、Frame.ioのアンカーコメント機能を使うことで、Martin氏はVFXアーティストに具体的な修正点を簡単に提示することができました。「Martin氏が私の編集を確認し、Charlesさんにタグ付けして、『この位置を変更して、空に配置してください』とコメントしました。するとCharlesさんがアラスカにいるMartin氏の意図をすぐに理解してあっという間に変更を加えて返送してくれるので、私はそれを自分の編集に取り入れられました」とRogers氏は説明します。

複数のビデオセグメント、レビュー中のセグメント、添付ファイルを含むコメントが表示されたFrame.ioのスクリーンショット。

添付ファイルにコメントを付けて送信し、曖昧さを排除

添付ファイルにコメントを付けて送信できる機能は、Rogers氏にとって即戦力となるものでした。「Martin氏が以前のアラスカ撮影から今回のフッテージに含まれない素材や静止フレームをアップロードして、『追加でこのショットを使ってはどうだろう』と提案することがありました。この機能のおかげで私はどこからその素材を取り込めばいいか正確にわかるので、大変気に入っています」とRogers氏は述べています。

包括的なプラットフォーム

Frame.io導入以前、Martin氏のチームが所有するアセットは、複数のハードドライブ、RAID、NAS、、クラウドシステムなどに分散していました。今では、すべてのアセットが一元管理されており、共同制作者や関係者も一目瞭然です。

「社内外の多くの人がFrame.ioを使って当社のシステムにアクセスしています。編集者、VFXアーティストやプロデューサー、また外部業者も含めた全員が、Frame.ioを使って必要な情報やリソースを入手できます。米国、カナダ、英国、オーストラリア、アジア諸国を拠点とする人もいて、四六時中絶えずレビューリンクが送られています。法人向け機能のおかげで、必要に応じて誰とでも共同作業できるからです」とMartin氏は語ります。

プロジェクトに必要なものがすべてそろって一元管理され、適切な安全対策が備えられている場所があることで、Martin氏とチーム、そしてプロセスに関わる人々は、クリエイティブなプロセスに専念できています。

「法人向け機能のおかげで、必要に応じて誰とでも共同作業できるからです」

「Frame.ioを実装して以来、ポストプロダクションのプロセス全体が劇的に改善しました。様々な理由がありますが、クライアントとコミュニケーションを取る方法や、クライアント同士が実際にコミュニケーションを取り合う方法が大きなものとして挙げられます。編集したものをクライアントに向けて投稿すると、1本の編集動画に対して15人の関係者がコメントを付けてくれ、コメントを通じて意見をまとめてくれます。個別に連絡を取らなくていいので助かります。私は全員宛てに返信して、意思決定を引き出せばよいのです」とRogers氏は語ります。

Martin氏にとって、これはクリエイティビティの解放です。「大きな組織は、創造性を9時から5時までの時間枠に押し込もうとして苦労するものです。クリエイティビティは流れ続ける中で最も発揮されるものだと私は信じています。ただ、共同制作者が常にオンラインであることを期待するのは、相手に対して失礼極まりないことです。自分のスピードに合ったコミュニケーションが取れるから、Frame.ioは特別なのです。Frame.io登場するまで、チームの想像力が広がるスピードに追い付けるツールやソフトウェアや技術はありませんでした」とMartin氏は語ります。

左側にアセットが表示され、右側の大きなパネルにクルーズ船のレビュー中のビデオが表示されているFrame.ioのスクリーンショット。

Frame.ioならアセットのアクセスも共有も1か所で実現

「私たちがレビューリンクを送信すると、関係者や共同制作者は曜日や時間を問わず、24時間、365日、いつでもそのリンクにコメントできます。そのため、コンテンツベロシティが向上します。例えば、コロラド州の山岳部時間に私が投稿したコメントを、バンクーバーにいるプロデューサーが朝目覚めて最初に目にします。また、複数のコミュニケーションチャネルを使わずに済むようになります。Frame.io導入以前はTeamsのチャットやWhatsAppを使っていましたが、複数のチャネルを使うことでクリエイティブなレビュー処理が台無しになっていました。処理を分散化させた途端、リーダーシップやクリエイティビティも本質的に分散してしまうからです」

明らかに、Martin氏は一か所にじっとしているタイプではありません。その点でもFrame.ioはMartin氏のライフスタイルに欠かせないものです。「Rogers氏が編集作業をしていて、そのFrame.ioリンクを私に送ってきたとしましょう。そのとき私がデスクにいても、子供の柔術教室に付き添っていても、またはピクニック中や散歩中でも、問題ありません。Frame.ioの使い勝手の良さは、スマートフォンやiPadでも変わりません。プラットフォームを問わずに使えるのです。いつでも指先ひとつでFrame.ioにアクセスできます」とMartin氏は語ります。

手に持ったiPhoneの画面に表示されているFrame.io。

Martin氏はどこへ行くときにもFrame.ioと一緒

オーダーメイドのワークフロー作成

クリエイティブ職の人たちは、世の中に2つとして同じプロジェクトはないと口をそろえて言うでしょう。たしかに、どの仕事でも、撮影、編集、配信などの作業は共通していますし、進行中の作業を共有してフィードバックと承認を得ることも必要です。

しかし、特に遠く離れたロケ地に出向いているときや、ドキュメンタリー形式のインタビューを撮影しているとき、そしてBロール(背景素材)が気象条件やアクセスに大きく左右されるときは、大量のフッテージをソートし、管理可能なものに整理できるワークフローが不可欠です。

「メタデータはFrame.ioの機能の中でも特に気に入っていて、手持ちのアドビの編集ツールすべてで使っていますFrameには32の標準メタデータフィールドが用意されていますが、それ以外に、カスタムしたフィールドも使えます。ワイドショット、ミディアムショット、クローズアップに分けてラベル付けもできます。あるいは、今回の撮影のように、Alexa 35と素晴らしいレンズを使用することで、美しいレンズフレアを演出することができました。特定の照明効果を施したショットを実際にマークできるのは、素晴らしいことでした」とRogers氏は語ります。

「Commercial Campaign」と題された動画アセットのコレクションが表示されているFrame.ioのスクリーンショット。

メタデータのおかげで膨大なフッテージが整理され、Rogers氏は求めているものを容易に発見できる

カスタムしたメタデータフィールドを自身のメディアに追加すると、コレクションという新機能が有効になり、タグを使うことで、割り当てた条件でグループ化したアセットを含むスマートフォルダーを作成できます。「標準的なファイル構造では、1つひとつファイルを確認しなければなりません。しかし、メタデータを使用すれば、特定のキーワード、時間、フレームレートなど、さまざまな条件で実際にソートすることができます」とRogers氏は語ります。

Martin氏によると、メタデータの利用はチームにとって重要な利点があります。その1つは、ワークフロー内でのステータスをカスタマイズできることです。「以前は、Frame.ioで当社のポストプロダクション処理に合ったマッピングはできなかったのですが、今はFrame.ioがガイドとなり地図となって、誰がいつ何を提出するかがわかりやすくなりました」

Martin氏が指摘するように、これによってコンテンツベロシティが高まります。しかし、さらに重要となるのは、高額な撮影に投資した際です。現行プロジェクトにおいても将来においても優れた利用価値があるものを余さず得られたという確信を得たいときに、大変役に立ちます。

つまり、Martin氏が言うところのアセットあたりのコストです。「まるでストックやポートフォリオのように、時間の経過とともにアセット獲得のコストが下がります。新しいバージョンのFrameを初めて使ったときは、コレクション機能を操作してみて本当に興奮しました。様々な人に送るべき膨大なアラスカライブラリが目に飛び込んできたからです」

クリエイティビティソリューション

Martin氏は、明確なビジョンを持つクリエイターとして、Frame.ioの機能によって広がる可能性に鼓舞されています。「クリエイティブになるなら、今が最高の時代だと思います。現在の映像作家のあり方は、50年前、いえ、20年、10年、5年前ともまったく違います。アドビが開発するクリエイティブツールは素晴らしく、しかも、私が使いたいと思うものばかりです。使う前から役に立つとわかりますし、人里離れた環境にいるときは、その信頼性と一貫性が大きな意味を持ちます」とMartin氏は語ります。

また、チームのワークフロー全体がCreative Cloudをベースにしていることも、Martin氏にとっては重要な点です。「ツールのブランドを大手ひとつにそろえておくと、組み合わせて使うときに、雑多なカスタムツールよりも使い勝手が良いという利点があります。最大の難関のひとつは、私たちには手作業のタスクが多く、様々なシステム上でのワークがあることです。手作業のタスクを減らせれば、それだけチームの大部分が同じ場所に集まることができ、共同作業の速度は増す一方になります」とMartin氏は語ります。注目すべきは、プリンセス・クルーズのチームでAdobe WorkfrontやAEMをアドビのエコシステムに加える動きが拡大し、制作ワークフローの合理化がさらに進んでいることです。

Adobe Premiere Proで編集中のビデオを映し出すノートパソコンの画面。

オフィスでも現場でも、Premiere ProはRogers氏の頼れる味方

Rogers氏もまたアドビ製品の大ファンです。「編集プラットフォームは、ツールのパレットのようなものだと思っています。ありとあらゆる編集プラットフォームを使ってきました。Premiere Proは21年ほど使っています。ドキュメンタリーの仕事が多い私にとって、最もシームレスに使えるプラットフォームです。ミキシングもPremiere Proでやっています。オーディオトラックが20~31あっても自分でできるのです。After Effectsも同様です。タイムラインを右クリックすればシームレスにAfter Effectsに行けるところが気に入っています。Photoshopのドキュメントを取り込めますし、結合するかどうかも選べます。どの製品もうまく組み合わせて使用することができます」とRogers氏は語ります。

Brand Photographyというタイトルのアセットコレクションを示すFrame.ioのスクリーンショット。

フォトやビデオのワークフローをまとめて、チームのクリエイティビティを簡単に連携

アドビの環境のおかげでビデオとフォトのワークフローをまとめやすくなったことにも、Martin氏は喜んでいます。「Frame.ioでビデオチームと作業していて、別のところでフォトチームと作業していると、2つのチームの間に、物理面やソフトウェア面で障壁が生じ、自然と分断が生まれてしまいます。あちらがフォトチームでそちらがビデオチーム、といった具合です。ディレクターとしては好ましくない形です。チームには同じ場所に集まっていてほしいのです」とMartin氏は語ります。

「フォトワークフローもビデオワークフローと同様に好ましい状態です。招待したフォトグラファーやレタッチャーが、当社のビデオチームの人々と同じ場所に集うようになりました。私に言わせれば、Frame.ioはビデオソリューションではありません。クリエイティビティソリューションです」

「私に言わせれば、Frame.ioはビデオソリューションではありません。クリエイティビティソリューションです」

さらに、統合環境で作業することによってクリエイティブ担当の共同作業者の状況がより可視化されて、進捗やプロセスも理解しやすくなったことも、Martin氏にとって喜ばしいことです。「Frame.ioで、パイプライン上の各レンズ用のスペースを作成できるようになりました。編集者、関係者、プロデューサー、ディレクター、DPなど役割を問わず、その人専用のスペースがあるので、誰の意見も届く状態で、誰もが無視されていないと感じられます。Frame.ioは、優れた映像制作に必要な情報を求める様々な人々の視点でできた様々なレンズを与えてくれます」

変化の影響

Martin氏が飽くなき創造力を持ったクリエイターであることは言うまでもありません。Martin氏が毎朝機嫌よく目覚められるのも、映像制作があるからです。そしてFrame.ioが開く可能性の扉は、その一端を担っています。

「究極のチーム創造領域であり、世界クラスのチームメイトが共同作業できることが最大の魅力です。チームの想像力のスピードに追い付けるソフトウェアやテクノロジーは、Frame.ioが初めてです。初日から存分に活用することもできる一方で、自分のペースで学ぶこともできます。Frame.ioを初めて使う人に知ってほしいのは、その速さや直感性、そしてクリエイティブに特化して作られているということです」とMartin氏は語ります。

雪の積もった遠くの山を背景に、4人が携帯電話を使ってセルフィーを撮影している様子が映し出されている、Frame.ioでレビュー中のビデオセグメント。

チームの共同作業が導くすばらしい成果

ここでMartin氏は少し哲学的になります。「どのような人にも共通する点が3つあり、それは墓石に刻まれる内容です。生まれた年、亡くなった年、そしてその間をつなぐダッシュ記号。このダッシュ記号に、その人が選んできた生き方が集約されています。この業界で、私たちクリエイティブ職は絶え間ない進化と変化を求められます。Frame.ioは変わり続ける私とともに変化し続けてきたソフトウェアプラットフォームです。アドビのツールは、創造性のさらなる民主化を証明してくれます。クリエイティビティはごく一部の特別な人だけのものではありません。すべての人のものなのです」とMartin氏は語ります。

変化は絶え間なく起こり続けますが、Martin氏とチームが捉えた画像は、この世界の雄大さを知らしめるものとして残っていきます。画像に感銘を受けて同じ場所を訪れ、自らの物語を紡ぐ人もいます。一方でアラスカを一生訪れる機会がない人も、Martin氏のレンズを通じてその景色を眺めることができます。光栄なことに、Frame.ioはそれを支える役割を担っています。

Lisa McNamara氏は、Frame.ioの上級コンテンツライターであり、The Frame.io Insiderの常連寄稿者です。同氏は、はるか昔から、映画とビデオのポストプロダクションの仕事に携わっています。