マルチチャネル戦略が切り拓く、日本のマーケティング新時代

Gaurav Sharma

05-07-2026

過去10年間、日本市場におけるメールキャンペーンを実施してきた中で、チームが明確に認識した傾向の一つは、日本市場におけるメール開封率が年々低下していることでした。さらに分析を進めた結果、若い世代向けに新たなコミュニケーションチャネルを開拓する必要性が明らかになりました。

進化を続けるマルチチャネルマーケティング戦略では、LINEをはじめとするソーシャルチャネルに注力する必要があります。アドビは、LINE経由で(LINEチャネル向けに有効化されたAJOを通じて)消費者にアプローチする戦略へと転換を図りました。これにより、新たなレベルのマルチチャネル連携ジャーニーが実現する可能性があります。本稿では、日本の消費者の行動を分析し、若い世代を効果的に惹きつけ、エンゲージメントを高めるために必要な戦略を概説します。

メール、LINE、ソーシャルチャネルを通じた新たなマルチチャネルコミュニケーションへの転換は、日本におけるメール開封率の低下を緩和する上で不可欠です。

日本のZ世代や若いミレニアル世代の消費者は、もはやメールだけを中心に情報を受け取っているわけではありません。LINE、Instagram、TikTok、YouTube、X(旧Twitter)、Discordといったソーシャルプラットフォームや、コミュニティを軸としたサービスへと、日常的な接点は大きくシフトしています。

これらのプラットフォームは、スピーディーで、視覚的で、会話的、そしてパーソナライズ分化された体験を好む若い世代の価値観と非常に相性がよく、会話の形成、ブランドの発見、購買意思決定において中心的な役割を担っています。

その一方で、メールは若い世代にとって「ややフォーマルな手段」として認識されるようになり、主にアカウント登録、認証、公式通知など、機能的・事務的な用途で使われる傾向が強まっています。しかしこれは、メールの価値が下がったということではありません。役割が変化したと捉えるべきです。

メールは、単独でエンゲージメントを生むチャネルではなく、マルチチャネルマーケティング全体を支える基盤として、今も重要な役割を果たしています。信頼性が高く、直接届き、ブランドがコントロールできるコミュニケーション手段であるメールは、長期的な関係構築、情報量のあるコンテンツ提供、メッセージの一貫性を担保する存在です。ソーシャルプラットフォームと効果的に連携することで、メールは ブランドの信頼感を補強し、より深い情報を伝え、Webサイトやキャンペーン、限定コンテンツなど、次のエンゲージメントへとユーザーを導く役割を果たします。

メールを軸にしたマルチチャネルアプローチ

ソーシャルプラットフォームは、日本のZ世代・若いミレニアル世代の日常に深く根付き、
「発見」「交流」「コミュニティ参加」に欠かせない存在となっています。一方でメールは、認証、フォローアップ、パーソナライズされたオファー、公式なブランドメッセージといった、信頼性と正確性が求められる役割を担っています。

ソーシャルチャネルの影響力と、メールが持つ構造的な強みを組み合わせることで、ブランドは「若い消費者が日常的にいる場所」で接点を持ちながら、メールを信頼・リテンション・コンバージョンを生む重要なタッチポイントとして活用する、一貫した顧客ジャーニーを構築できます。

1.若い世代が特に利用しているプラットフォーム

日本ではLINEが若者の主要なコミュニケーション手段となっており、10〜19歳の女性スマートフォンユーザーの95%以上、男性でも89.1%が利用しています。(出典)

活用事例:ヒラキ株式会社は、従来の大量メール配信から1to1のメールキャンペーンへ移行し、さらに高成果を上げていたフロー施策(カート放棄、カタログリマインド、誕生日メッセージ)をLINEにも展開しました。その結果、LINEメッセージの開封率は約90%、LINE経由の売上は前年比10倍と大きく伸長し、リピート購入率やCRM全体のパフォーマンス向上につながりました。(出典)

InstagramはZ世代の約89%が利用しており、若年層における主要プラットフォームとなっています。TikTokもZ世代の82%が利用し、商品発見に使っている割合は77%と、全プラットフォームの中で最も高い水準です。(出典)

YouTubeは世界で25〜27億人のアクティブユーザーを抱え、視聴者の60%以上が18〜34歳と、若年層との接点として極めて重要なチャネルです。(出典)

Xユーザーの59%がリアルタイムニュースを目的に利用しており、トレンド形成の場として確固たる地位を築いています。(出典)

Discord・ゲーム系プラットフォーム(コミュニティ交流)

Discordは2025年時点で月間2億5,900万人のアクティブユーザーを持ち、全サーバーの約74%がゲームコミュニティに特化しています。(出典)

2.会話型・コミュニティ主導プラットフォームの台頭

日本の若者は、スピード感があり、本音に近いコミュニケーションを好みます。そのため、ブランドにも一方通行の発信ではなく、日常会話の延長にある対話が求められています。

LINEは「新しいメール」

LINEは単なるメッセージアプリではなく、ニュース配信、決済、ロイヤルティプログラム、カスタマーサポートといった役割を担う生活インフラです。LINE公式アカウントを活用するブランドが、メールより高いエンゲージメントを得ているのは、すでに人々の生活動線に組み込まれているからです。

キャンペーンよりもコミュニティ

Discord、ゲームコミュニティ、マイクロインフルエンサー、ニッチな趣味グループなど、ニッチで親密なコミュニティが購買意思決定に強い影響を与えています。若い消費者は、こうした場を信頼しており、そこで価値を提供するブランドは、自然な形でロイヤルティを獲得しています。

3.ビジュアルファーストの文化:TikTok・Instagram・YouTube

日本の若者は、視覚的なストーリーテリングに強く反応します。Instagramは写真共有中心のサービスから、ショート動画を軸としたプラットフォームへ進化しました。ショート動画、クリエイターとのコラボ、舞台裏コンテンツは、「速く・感情的に・視覚で理解する」という若者の情報処理スタイルに合致しており、テキスト中心の施策を上回る成果を出すことも珍しくありません。

4.パーソナライゼーションは“当たり前”に

若い世代は、自分の好みに合った提案、興味関心を反映したコミュニケーション、「自分向け」と感じられる体験を当然のものとして期待しています。これをメール単体で実現するのは難しいのが現実です。

一方で、「ソーシャルアルゴリズム」「AIチャット」「行動データに基づく通知」を活用すれば、大規模かつ自然なパーソナライゼーションが可能になります。

5.オムニチャネルでつながる顧客体験

若い日本の消費者は、オンラインとオフラインを区別しません。典型的な行動は次のようにつながっています。
TikTokで商品を知る
YouTubeでレビューを見る
LINEでブランドに問い合わせる
実店舗で体験する
モバイルアプリで購入する
これらすべてが、一つの体験として認識されています。

6.これからのマーケティング:AI・AR・没入型体験

日本は新技術の受容が早い市場です。若い世代にとって、AIやARは「試すもの」ではなく、直感的に使うものになりつつあります。AIによるパーソナライズド接客や、没入型の購買体験など、マーケターにはメールを超えた新たな可能性が広がっています。

結論:メール単体ではなく、オムニチャネルへ

メールは今後も、公式なコミュニケーションや特定の層にとって重要なチャネルであり続けます。しかし、若い日本の消費者にとって、メールはもはや主役ではありません。メールだけに依存するブランドは、次世代の消費者との関係構築において、大きな機会を逃すリスクがあります。若者が集まるプラットフォームを理解し、視覚的・会話的で、コミュニティ主導の体験を設計すること。その中でメールを「核」として活かすことが、日本市場での成功に不可欠です。

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