今だからこそ伝えたい、Adobe Marketo Engage導入前に知っておきたかったこと
Adobe Marketo Engage User Group では日々、Adobe Marketo Engageユーザー同士で活用について共有、ディスカッションする会が頻繁に開催されています。今回は、株式会社ニューズピックスの松本 莉奈氏による「マイナスから始める、Marketo Engage 界隈の“当たり前”をつくる大変さ」の模様をお届けします。
2018年11月にAdobe Marketo Engageを導入した同社。それまでエンジニアとしてキャリアを積んでいた松本氏が、Adobe Marketo Engageの導入から軌道に乗せるまでの過程で感じたリアルな苦悩について語りました。
今だからわかる「こうしておけばよかった」の数々。これから導入される方や、導入初期でお悩みの方が気をつけるべきポイントは、どこなのでしょうか?
もくじ
- なぜ“マイナスから”のスタートだったのか?
- 疑問を解消するには先人の知恵を拝借するのが一番
- Adobe Marketo Engageは“大人のレゴブロック”
なぜ“マイナスから”のスタートだったのか?
私は2015年にエンジニアとして入社後、「Brand Design Team(広告チーム)」専属のエンジニアチームに異動。2017年に、隣のSPEEDA事業部でインサイドセールスの導入が成功したと聞き、うちのチームでも立ち上げるべく、ビジネスサイドに異動しました。
私たちがAdobe Marketo Engageを導入したきっかけは、2018年9月頃に行ったwebサイトのリニューアルでした。それまで広告チームのwebサイトは簡易的なLPしかなく、あまりの情報量の少なさに、何のサービスかさえよくわからない状態でした。
そこでwebサイトを全面的にリニューアルするとともに、MAの導入を決定。それまでGoogleフォームとGoogleスプレッドシートを使用していたリード情報の管理を、より効率的に行おうと考えたのです。
そのときすでにSalesforceは導入済みでした。Salesforceの「Email to Lead」というAppExchangeを使って、Googleスプレッドシートからリード情報を登録していました。webサイト経由ではないリードに関しては、手動登録です。
当時はMAという言葉すら知らなかった私。知見のあるマーケティング担当者から「MAならAdobe Marketo Engage一択でしょ」と言われたことから、Adobe Marketo Engageを導入することにしました。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.live/jp/blog/fragments/page-products-adobe-marketo-engage
「これからはAdobe Marketo Engageのフォームを使って、Adobe Marketo Engageに入ったデータは自動でSalesforceに同期しよう!」と夢は膨らみます。
ところが、ここである問題が発覚しました。
実は、当時のSalesforceのライセンスが「標準オブジェクト」を使えないものだったのです。まずはライセンスのグレードを上げなければ、SalesforceとAdobe Marketo Engageを連携することができません。Adobe Marketo Engageを導入する以前に、Salesforceのオブジェクト構造の改修や項目の整備、過去データの移行など、やるべきことが山積みでした。これが今回のタイトルを“マイナスから始める”とした所以です。
疑問を解消するには先人の知恵を拝借するのが一番
そんな中でAdobe Marketo Engageの導入コンサルがスタート。Salesforceが絶賛改修中でしたので、すぐに連携して何かを始めることはできません。とりあえずAdobe Marketo Engageの構造や名称などを理解すべく、導入コンサルの方にいろいろと教えていただきました。
当時の思い出として、とにかくつらかったのが「リードコンバート」の意味がわからなかったことです。Salesforceを触っていなかったので、挙動のイメージがまったく湧かず、何度説明を聞いてもわけがわからない状態が続いていました。
そんな有り様でしたので、Salesforceのどの項目が今後の運用に必要になるのか見当もつかず、「全項目を同期しよう」と勢いでやってしまったのが、大きな失敗のもとでした。全項目を同期した結果、フィールド名の最後に(A)(L)(C)が入ってしまい、今とても苦しんでいます。コミュニティブログを検索したらベストプラクティスが容易に検索でヒットしたので、先人の知恵をちゃんと活用しておくべきだったと後悔しています。
結局、Adobe Marketo EngageとSalesforceを連携できたのは、コンサル期間の終了間際でした。実際のデータを使って条件に合うリードを抽出したり、プログラムを作成しイベントを管理してみたり、といったことができずに終わってしまいました。
不完全燃焼感が残りつつも、とりあえず導入は完了。いざ実運用を開始したものの、導入コンサルで習ったことを忘れてしまっていて、もはやわからないことだらけでした。
そんなときに、なんと社内にMarketo Championがいるということが判明。FORCASの嶋田さんです。さっそく助けを求めに行くと快く応じてくれ、今でも何かわからないことをたずねると、すぐに助けてくれます。嶋田さんがいなかったら、どうなっていたことか…。
Adobe Marketo Engageの良いところは、コミュニティが活発なところ です。嶋田さんのような人が社内にいなくても、コミュニティで相談すれば、先輩方が優しく教えてくれます。コミュニティブログやイベントも充実しているので、のぞいてみるだけでも、刺激になり勉強になります。
Adobe Marketo Engageは“大人のレゴブロック”
NewsPicksでは、書籍の出版、オリジナルの記事や動画の配信、有識者による講座など、さまざまな事業が生まれ続けています。そんな中、私たち「広告チーム」が導入したAdobe Marketo Engageでしたが、今では同じくB2Bを手がける「for Business」と「AlphaDrive」の2部署も相乗りして、Adobe Marketo Engageを使うようになりました。
部署ごとにマーケティング担当がいるので、各自が好きなように設定し放題。同じ項目を使っていると上書きされてしまったり、こちらが知らない条件でキャンペーンが動いてしまっていたりして、新たな問題が発生してしまいました。今は、わかる範囲で部署ごとの項目を使い分けるようにしてはいるものの、部署間で共通化できるところを統一することで、メンテナンスの負荷軽減につながるので、今後メンバーのトレーニングやルール作りを実施する予定です。
また、今だからわかる大事な考え方として、導入コンサルの方からいただいた言葉をご紹介したいと思います。
「 Adobe Marketo Engageは、大人のレゴブロックのようなものです。好きなように組めるけど、変な組み方をするといつか崩れます。影響範囲を考えず、それぞれをバラバラに作ると一貫性がえられず、いつか手がつけられなくなります。」
まさに、その通り。うちも危うくこの状態になりかけているので、早いうちに命名規則やフォルダ構成を整備することに取り組む予定です。
最近の動きとしては、FORCASと連携しました。Adobe Marketo EngageとSalesforceそれぞれに連携しており、リード獲得時と更新時に同期して、企業情報が付与されるようになりました。広告チームでは「顧客タイプ」の項目で「広告主/代理店/その他」を管理しており、FORCASで主要な代理店リストの法人番号リストを作成してスマートキャンペーンの条件に指定することで、自動で「顧客タイプ」が付与されるようにしています。
FORCASで名寄せをするには、企業名とメールアドレスがキーになります。より正確に名寄せするために、フリーアドレスはフォームに入力できないよう、あらかじめwebサイト側で制御し、リードインポート時は企業アドレスのみにするなど、データをきれいに保つことも大切だと思います。
実は2020年頃、NewsPicksのSalesforce担当者がSalesforce全国活用チャンピオン大会で準優勝をしたことをきっかけに、Pardotに移行する案が社内で浮上しました。社内でも意見が分かれ議論を重ねた結果、「そもそも現状で困っていることがない」「Adobe Marketo Engageのほうが断然できることが多い」「データ移行のリソースがない」「コミュニティが充実している」といった理由から、Adobe Marketo Engageを継続利用することになりました。
そこで改めて意識したのが、「結局、Adobe Marketo Engageで何をしたいの?」ということです。チームとしての戦略や目標から逆算すると、Adobe Marketo Engageでやるべきことが見えてきます。Adobe Marketo Engageは自由度が高く、何でもできてしまうので、プログラムを組むときには施策の全体像を書き出し、「どのようなデータを取得したいのか」「どのような使い方をするのか」「どのような分析をしたいのか」を設計してから実装するのが本当に大切だと思いました。
これからよりAdobe Marketo Engageを活用すべく、社内で使いこなせるメンバーを増やしたいと思っています。現状、リード管理、メール配信、イベント管理の活用にとどまっているため、今後はナーチャリングにも力を入れていきたいと構想しています。効率的なデータクレンジング、複数部署が利用しながらスケールできる状態にするなど、実施していきたいことがたくさんあります。同じようなお悩みをお持ちの方や、より良い方法をご存知の方は、ぜひ情報交換をさせていただけるとありがたいです。
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.live/jp/blog/fragments/offer-003341-why-marketing-automation