レガシー営業部長の営業哲学を変革させた4つのポイントとは
セールスDXを推進する上で、最も大きな壁となりがちなのは昭和型の営業部長。「セールスDXに懐疑的かつ、変化に後ろ向きな彼らの存在によって、DXが進まない」 と頭を抱えているマーケターの方も多いのではないでしょうか。
Adobe Marketo Engageのユーザー向けイベント「MUG Day Online」では、GLナビゲーション株式会社の神田 滋宣氏が登壇。自身が“典型的な昭和型の営業部長(レガシー営業部長)”であったと言う神田氏ですが、2年前のAdobe Marketo Engage導入を機に、自らの営業哲学を大きく転換し、2022 Adobe Marketo Engage Championを受賞するまでに至りました。
そんな神田氏によるセッション「The ShowaからThe Modelへの転換。レガシー営業部長は、どのように自らの営業哲学を変革させられていったのか。」では、マーケターが参考にすべき、レガシー営業部長の心を動かすヒントが紹介されました。
もくじ
- Adobe Marketo Engage導入後、2年間で月間粗利13倍を実現
- 1.MA導入の肝はオペレーション変革にあり
- 2.データの有用性を実感すれば、自然とデータは集まる
- 3.レガシー営業部長の豊富な知見はデータ分析に活用できる
- 4.インサイドセールス=大きな可能性を秘めたインテリジェンス部隊
Adobe Marketo Engage導入後、2年間で月間粗利13倍を実現
DXコンサルティングなどを手がけるGLナビゲーション株式会社は、2009年創業、従業員数65名の企業です。コロナ禍を機に売上が減少していた20年当時は、15名ほどで営業未経験の社員が多くを占める中、Adobe Marketo Engageの導入により、2年間で月間売上8.5倍、月間粗利13倍を実現するまでに急成長を遂げました。
「このグロースの要となったのは、Adobe Marketo Engageを導入し、営業とマーケティングの相互理解を徹底したことです。摩擦を解消するためのブリッジ役として、インサイドセールス組織も立ち上げました」と神田氏は語り、この手法を“Account and Person Based Management(APBM)”と名付けたと言います。
APBMでは、インサイドセールスの担当者が自らマーケティング施策を実行し、その結果を架電によって検証します。その結果について、マーケティングと営業がそれぞれの意見を持ち寄り、施策のブラッシュアップをしていくことで、互いの壁をなくしていくことができます。
そんな同社では、CRMを導入するよりも前に、Adobe Marketo Engageを導入。当時は、Googleスプレッドシートをマスターデータとして、Trelloのカードで案件管理をしていたといいます。マーケティングオートメーション(MA)を先に導入するメリットについて、神田氏は次のように説きました。
「一般的に、CRMを先に導入してからMAを導入したほうが良いと言われますが、うちのような中小企業だと、CRMを先に導入しても、入力作業の負荷が増えるだけになりがちです。それならMAで売上を作ってから、CRMを導入したほうが良いと考えています」
そもそもレガシー営業部長だった神田氏が、Adobe Marketo Engageの導入によるセールスDXの推進に前向きになれた背景には、どんな心境の変化があったのでしょうか?
「レガシー営業部長は、古き良き営業哲学の信奉者であると誤解されていますが、実際は違います。本当はデータドリブンな営業をやりたい。でも自分にはどうせできないと諦めているだけ。『データドリブン営業は、自分にもできる!』 と思えるようになれば、レガシー営業部長も、僕のように変われるんです」(神田氏)
https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/page-products-adobe-marketo-engage
では実際に、営業部長とマーケティング担当者の間で、どのようなやりとりがあったのかを見ながら、レガシー営業部長を変えた4つのポイントを探っていきましょう。
1.MA導入の肝はオペレーション変革にあり
【レガシー営業部長】
・MAみたいな高度なツールを入れて、本当に使いこなせるの? 過去にSFAを導入して失敗しているんだけど。
・Adobe Marketo Engageを入れたら、本当に売上が上がるの?
・僕はシステムのことなんて、まったく分からないよ。
【マーケティング担当者】
・営業が顧客と向き合う以外の作業に時間を取られていて、生産性が低い状態です。
・顧客状況をデータとして蓄積することで、顧客をより深く理解した提案ができます。
・システムの話ではなく、オペレーションの話なんですよ。
システムの勉強をしてみたものの、やはり難しくて途中で挫折してしまった経験のある神田氏は、「システムの知見がなければダメだという思い込みがあった」と言います。それに対し、マーケティング担当者は「重要なのはシステムではなく、オペレーションを変えることだ」と説得しました。
失注顧客をリサイクル化してMAで育成し、特定の行動が見られたらホットリードと見なして再度営業をかけていく。この“The Model型”の営業プロセスに大きく賛同した神田氏は、「これを実現するためにAdobe Marketo Engageを導入しよう」という発想に切り替わったと言います。
2.データの有用性を実感すれば、自然とデータは集まる
【レガシー営業部長】
・そもそも営業は行動が明るみになるのが嫌だし、面倒だからデータ入力なんてしない。仮に入力したとしても、データを適切に活用できなくて、工数が上がるだけになるのではないか?
・営業の皆に嫌われたくないし、自分らしく結果を出してほしい。
【マーケティング担当者】
・スコアリングならメールの開封。クリックに合わせて自動でデータが蓄積されるので、営業活動をする際の優先度づけや顧客ニーズの把握が簡単になります。
・部長がいつも言っている「確度が高い」という感覚をシステムに実装すれば、部長の指示がなくてもメンバーが動けますし、その仮説検証を重ねることで、ナレッジを高い次元に引き上げることができます。
・データを見える化すれば、皆が積極的に入力するようになりますよ!
長年、営業畑でキャリアを積んできた神田氏は、当然のことながら営業の気持ちがよく分かります。システムによって行動を管理されることになれば、営業メンバーから不満の声が上がるのは必至。営業パーソンとしての個性が消されるのではないかという危惧もありました。
それに対しマーケティング担当者は、「データ活用が営業支援につながると分かれば、自然とデータ入力するようになる」と説きます。実際、同社ではAdobe Marketo Engageのスコアリング機能を活用した優先度づけを行った結果、インサイドセールスがどんどんデータ入力を行い、それをもとに仮説検証を重ねるサイクルが回るようになっているそうです。
3.レガシー営業部長の豊富な知見はデータ分析に活用できる
【レガシー営業部長】
・メンバーは既存顧客の対応で忙しいから、ホットリードだと言われてもすぐに営業をかけるのは難しいと思う。
・そもそも僕はバリバリの文系だから、データ活用のやり方なんて分からないよ。
【マーケティング担当者】
・大丈夫です! マーケティング思考を持ったインサイドセールスを育成すれば、PDCAは必ず加速します!
・因果と相関の違いさえ分かれば、数学や統計のセンスがなくてもデータ活用はできますよ!
数学や統計に苦手意識のあった神田氏は、データ活用という響きだけで尻込みしてしまっていたのだそう。しかし、数字の裏にあるインサイトを読み解くには、神田氏が営業で培った知見が不可欠だと分かり、「自分の居場所が見つかった!」と前向きになったと言います。
4.インサイドセールス=大きな可能性を秘めたインテリジェンス部隊
【レガシー営業部長】
・インサイドセールスって、要はテレアポチームでしょ? モチベーションが下がってやめていく人が続出するのでは?
・営業力のない組織だと思われたくないし、社員のキャリアもちゃんと考えてあげたい。
【マーケティング担当者】
・領域を絞ることで早期に戦力化できますし、成果が出るまでの期間も短くできます。
・ツールの習得など、コアなスキルセットを身につけるための明確なキャリアプランを示すことで、離職も防げます。
・インサイドセールスはツールを活用するインテリジェンス部隊ですから、市場価値は高いんですよ!
これまで経験と勘が営業力の要だと信じて疑わなかった神田氏は、当初、インサイドセールスというキャリアに疑念を持っていたそうです。しかし、Adobe Marketo Engageを導入したもともとの狙いは、経験の浅い営業メンバーにデータという武器を与えるため。「トーク力を磨くのではなく、ツールを使いこなしてインテリジェンス化することが重要であり、それによって市場価値は上がっていく」と説くマーケティング担当者の話に納得したと言います。
そして、営業推進やマーケティング、アカウントセールスといったインサイドセールスのネクストキャリアを示したことで、インサイドセールスは非常に人気の職種になったそうです。
「このように、レガシー営業部長が持っている、データドリブン営業に対するコンプレックスや誤解を、ていねいに払拭していくことが大切です。Adobe Marketo Engageを軸に、業務効率化とデータ活用の基盤を構築したことで、営業未経験/IT業界未経験だったメンバーも1年で3億円以上の売上を作れるようになり、属人性が低くスケーラビリティのある営業組織へと変革することができました」と語り、神田氏はセッションを締めくくりました。