第9回Adobe Analytics ユーザー会セッションレポート:『“流入経路不明”状態からのAdobe Analytics導入とアドビ製品だから実現するデータ分析』

第9回目となるAdobe Analytics ユーザー会が、12月23日にパーソルキャリア株式会社の大手町オフィスにて開催されました。当日はおよそ15名のユーザーの方々がご参加され、パーソルキャリア株式会社 (以下パーソルキャリア社) の塚本氏、ディップ株式会社(以下ディップ社)の小林氏による事例紹介セッションや、ユーザー同士でのディスカッションなどを通して、活発な意見交換が行われました。

スピーカー:

パーソルキャリア株式会社

クライアントP&M本部 / クライアントマーケティング部 / リードジェネレーションG

塚本 裕美 氏

塚本氏のご経歴

パーソルキャリア社では、新卒採用/中途採用、管理職・エグゼクティブ層、バイリンガル人材まで幅広い領域の仕事探し/採用支援を、HRサービスとして行っています。「人々に『はたらく』を自分のものにする力を」をミッションに掲げ、『doda』などの転職サービスや、採用マッチングサービスを提供しています。

塚本氏は、2014年にパーソルキャリア社へ中途入社され、入社後は営業企画やto Cマーケ部門を経て、7年前からto Bマーケ部門で主にABテストやwebサイト運用を担当されています。

「doda」におけるマーケティング

中途採用中の企業と転職活動中の個人をマッチングする転職サービス『doda』は、パーソルキャリア社が提供する様々なサービスの中においても主力のサービスですが、このサービスに関わる部門として、企業の人事向けである「to Bマーケ」と、転職活動中の個人向けである「to Cマーケ」という2つの部門が社内にはあり、さらにwebサイトも別々のドメインでそれぞれ存在しています。今回のセッションでは、その内のto Bマーケ部門におけるAdobe Analyticsの導入背景・導入後の効果や、実際の分析事例を中心にお話しくださいました。

※パーソルキャリア社におけるto Bマーケの特徴

1. to Bマーケはプレゼン

to B領域では関係者が多く、情報収集→社内稟議→意思決定というプロセスをたどることが多く、サイト閲覧者が1人で意思決定したり直感的に判断したりすることは、ほぼない。会社としての意思決定がスムーズに進むように論理的かつ整理された情報を提供する必要がある。

2. to Bはリダイレクトテストが多くなりがち

to Bでは「どんな情報を提供するか」が最重要のため、デザイン変更などのテクニカルな改善よりも、訴求そのものをガラッと変更するテストの方が効果が出やすい。そのためLPを大幅に変えて2つの訴求の良し悪しを比較するリダイレクトテストが多くなりがち。

3. 人材サービス業界はタイミングキャッチが重要

「急な退職があった」「急な増員が…」などの要因で突発的に採用サービスを探す企業が多い。そして、多くは一度に複数の人材サービス会社のサイトを見て問い合わせ先を検討し、一斉にお問合せをされる。よってサイト訪問回数は1回のお客様が多く、そのタイミングを逃せば改めて訪問してくれる可能性は低い。つまり1回のチャンスをどうつかむかが重要。

Adobe Analytics導入背景① ~流入経路問題~

to Bマーケ部門では、Adobe Analytics導入以前は分析ツールとして他社製品を使用していましたが、その分析ツールの原因不明のバグによって一部のデータが流入経路不明の状態に陥ってしまっていました。その結果、どこからの流入が減っているのか / CVRが悪いのか、というようなことすら正確な分析ができず、なんとかこの問題を解消しようとバグの原因と考えられる事項を検証・調査を行ったものの、状況の改善には至りませんでした。

Adobe Analytics導入背景② ~リダイレクトテストで計測が狂う問題~

もう1点、Adobe Analytics導入前に発生していた問題として、「リダイレクトテストで計測が狂う」というものがありました。to Bマーケ部門では、よくリダイレクトテストを行っていたのですが、テストを実施してもなぜか不具合が発生してしまい、結果として分析が正しく行えない状態となっていました。

Adobe Analytics導入背景③ ~ツール選定~

これらの問題を解決するべく、ツールの切り替えを決断することになったのですが、切り替えにあたり以下3つのポイントを重視してツール選定を行った結果、Adobe Analyticsを導入するに至ったそうです。

1. 口コミ

せっかく導入したのに、計測がおかしいなどの不具合があっては意味がないので、計測不良などの口コミが少ないことを重視。

2. ABテストツールとの連携

解析ツールとABテストツールを連携し、ABテストの詳細分析を行うことが多いため、ABテストツールと解析ツールが連携できることが必須。

3. リダイレクトテスト

リダイレクトテストの実施がとても多いため、リダイレクトテストを実施しても計測に影響を与えないツールがあればなお可。

Adobe Analyticsを導入した結果…

Adobe Analyticsを導入後、課題となっていた「流入経路問題」「リダイレクトテストで計測が狂う」問題はそれぞれ無事解消され、流入数やCVなどの数値が流入経路ごとに正しく取得できるようになりました。

また、旧分析ツールでは広告経由の流入が実際よりも多く計測されていたという事実も判明しました。これはAdobe Analyticsの計測データと、旧分析ツールの計測データを比べてみてわかったことであり、例えば以下の様な流れでサイトに流入してきた場合、to B サイト側の計測においては本来なら流入元として『リファラル』 が計測されるべきところが、『広告』として計測されてしまっていたといいます。

現在どんな分析をしているか

Adobe Analyticsを導入し、無事流入経路の問題が解消された現在では、ページごと・流入経路ごとの流入数やCV数、CVRを正しく見ることができるようになり、様々な視覚化機能を活用しながら分析を行っています。

また、webサイト上の問い合わせフォームへの入力内容 (商材/サービスごとの問い合わせ数)をAdobe Analyticsで計測し、CV数 (問い合わせ数) の推移や、商材ごとに設定されている月次の目標数値に対する達成状況、そしてチャネル別に見るとどの商材のCV数が多いのか、などに関しても分析を行っています。仮に目標数値に届いていない商材があった場合は、その商材のポップアップをサイト上で表示させるなどしてLPに誘導する、といった施策を行うこともあります。

さらに、実施したABテストのテスト案ごとに、クリックされているボタンとボタンクリック後のCVRや、CV商材の内訳を分析するなど、Adobe Targetと連携した分析も行っています。

今後の展望

現状、他製品との連携に関してはまだ旧分析ツールを使用しているのですが、連携にあたって先述したような一部の不備のあるデータを手動で修正する手間がかかってしまっているため、今後はこの部分に関してもAdobe Analyticsに切り替えていくことを検討しているそうです。

スピーカー:

ディップ株式会社

メディアプロディース統括部 CRM部 CRM課

小林 晴 氏

小林氏のご経歴

ディップ社では、Labor force solution companyとして、「バイトル」「はたらこねっと」等のサイトを運営する人材サービス事業の他、DX事業も開始しています。

小林氏は、2021年にディップ社へ新卒として入社され、コンテンツマーケティング企画を経て、2021年12月からCRM課でメルマガ改善やMAツールの設計・実装等をされています。

顧客行動に寄り添うパーソナライズ戦略 ー CRM施策×Adobeツール連携の実践例

ディップ社のCRM課では、Adobe製品を活用しながら、顧客ごとの行動データに基づいたアプローチを実践しています。今回は、その取り組みの一部をご紹介します。

行動データに基づくメルマガ配信の最適化

現在同社では、メルマガを中心とした既存顧客向けの情報提供を行っています。配信に際しては、「誰に・いつ・どんな情報を届けるべきか」をユーザーの行動データに基づいて設計しています。たとえば、ある行動を起こした後○日目に特定の内容を届ける、といったシナリオ配信もその一つ。

このパーソナライズを実現するために活用しているのが、Adobe Analytics(AA)とAdobe Target(AT)。ユーザーのサイト内行動を細かく取得・分析し、それをマーケティング施策に還元する形です。

データ連携のしくみとツール活用

分析で得られたデータは、CRMツールと連携され、メルマガ配信のセグメント設計やレコメンドコンテンツに活用されています。

構造としては、AA側での取得データを、定期的に中間データ領域に送信。そこに会員データや案件情報などを突合させて、配信用のパーソナライズ情報が生成される仕組みになっています。これにより、「その人に今必要な情報」を的確に届けられるようになりました。

また、レコメンドコンテンツについても、サイトに表示しているATレコメンドの情報を一部活用。Adobeの変数領域にデータを格納し、レポートを経由してCRM側へ連携することで、メールでのパーソナライズにも応用しています。

内製化によるPDCAサイクルの高速化

従来のように開発チームへの依頼が必要な施策実行フローでは、スピードに限界がありました。そこで、Adobeのデータを柔軟に扱えるような環境を整えたことで、マーケティングチーム単独でPDCAを回せる体制 が構築され、施策展開のスピードと柔軟性が大きく向上しています。

実際に、こうした取り組みによってメルマガ経由のコンバージョン数は前年比で153%を記録するなど、成果も明確に現れています。

今後の展望:チャネル拡張とデータ活用の深化

現時点での主軸はメルマガ施策ですが、今後は アプリプッシュ通知 といった他チャネルへの展開も視野に入れているとのこと。また、施策実行データとホーム移行後の行動データとの連携によるより高度なシナリオ設計も検討されています。

≪Adobe Analyticsユーザーグループについて≫

Adobe Analyticsユーザーグループ(AA UG)は、日本国内のAdobe Analytics、Adobe TargetおよびData Insightsに関連する製品のユーザーコミュニティです。 ユーザー同士のベストプラクティスの共有、問題解決、ネットワークの構築を行うことで、製品の知識や活用を高めましょう。各回では業界のリーダーであるユーザーの方々が集い、様々なトピックを取り上げ、専門知識を共有されています。

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