なぜ製造業で顧客体験のパーソナライズが必要なのか

スマートフォンの普及やコロナ禍といった環境の変化により、パーソナライズによる顧客体験のアップデートがより一層求められるようになっています。今回は製造業界にフォーカスを絞り、アドビ株式会社 稲田より、アドビの考えるパーソナライズの重要性と実現の具体化についてご紹介します。

B2C/B2Bを問わずパーソナライズが重要視されている理由とは

消費財を中心に、B2Cの領域では、スマートフォンの普及により、SNSやECの利用が浸透しました。また、D2C(Direct to consumer)市場の拡大も顕著であり、チャネルが多様化しています。これらの背景により、顧客の購買プロセスは複雑化しており、“Personalization at scale(大規模なパーソナライゼーション)”が求められるようになっています。

2025年には市場規模が3兆円に達すると予測されているD2C市場では、デジタル接点でのブランドのストーリーに共感して購入する消費者が増えてきています。webやアプリなどで顧客体験を高め、ブランドへのロイヤリティーを育成し、直接的にLTV向上につなげられることから、売上にも直結するマーケティングテーマのひとつとなっているのです。

次に、産業材等のB2Bの領域をみてみると、コロナ禍による対面営業の減少にともない、購買担当者(業者やサプライヤー選定者)への非対面営業でのアプローチが不可欠となりました。そこで“Digitally Empowered Customer Engagement(デジタルで顧客のエンゲージメントを向上させる)”という文脈に注目が集まっています。

顧客からの期待値の変化について調べたMarketingSherpaの調査結果によると、B2Bの取引において顧客が満足しているポイントについて、以下のような結果が出ました。

一方、B2Bの取引において顧客が不満を感じているポイントは以下の結果になりました。

これらの結果から、「いかに一貫してよい経験を提供できるのか」、「いかに(顧客課題を解決するための)価値を届けられるのか」を追求することが重要になってくると考えられます。

顧客体験をパーソナライズするとは、どういうことか

上記B2C/B2Bの製造業のトレンド踏まえ、顧客の期待に応え、エンゲージメントを高めるための“顧客体験(CX)のカギ”について、下記5つがポイントとなります。

上記踏まえ、B2C/B2Bともに、販売サイクル全体にわたって一貫性があり、パーソナライズされた顧客体験を提供すことが求められています。販売サイクルは、以下の図の通り、「ATTRACT→ENGAGE→PURCHASE→EXTEND」と進みます。

さらに、この販売サイクルにおいて顧客体験を変革するには、次の5つのDX要素が重要だと考えています。

  1. Single Customer View…販売流通業者とのやりとりを含めた全体で、顧客の単一ビューを作成する。
  2. Find & Nurture…高価値が見込める顧客の発見とナーチャリングをスケール化する。
  3. Personalization…主要セグメントごとにパーソナライズされたジャーニーを定義して配信する。
  4. Online…顧客が製品やソリューション、部品をオンラインで購買できるようにする。
  5. Scalability…最適化されたコンテンツとプロセスを、サブブランドとグローバルサイト全体で一貫してスケール化する。

これら5つの要素からもわかる通り、顧客のエンゲージメントをデジタルで向上させることがトレンドとなっています。

顧客体験のパーソナライズを実現した2社の事例

ここからは、パーソナライズを実現されたお客様事例をご紹介させて頂きます。

まずはB2Cの事例として、Nike様の事例をご紹介します。Nike様は、従来の店舗にデジタル製品のコンセプトを取り入れることで、店舗体験を再定義しました。また、モバイルアプリで多くの顧客データを収集し、そのデータをパーソナライズされた体験の提供に活用することで顧客満足度を高め、リピート購入を生み出し、顧客1人当たりの購入額増加につなげています。

Nike様が実現したパーソナライズされた体験を、顧客視点でも見てみると、まずアプリを起動すると、行動履歴や購買履歴に応じてパーソナライズされたコンテンツが表示されます。プレミアムな会員に対しては、メンバーのみの限定商品や先行販売などの特典がオファーされるようになっています。また、アプリで足のサイズをスキャンすると、製品の提案や販売のサポートをリアルタイムで受けることも可能で、商品の配送を選択することもできれば、店舗受け取りの予約もできるようになっています。あるいは、店舗で買い物をしていて、欲しい商品の在庫がなかったときには、バーコードをスキャンしてECで購入することが可能ですとなっており、カスタマージャーニー全体でコンテンツとツールを提供されているのがNike様の特長です。

アプリを店舗内でも利用するツールにすることで、より多くのデータが収集できるため、あらゆる体験をパーソナライズできているのです。Nikeアプリを利用するお客様は、アプリを利用しないお客様に比べ、Nike全体の小売店で平均40%の高い売上を達成されています。

次にB2Bの事例として、Steelcase様の事例をご紹介します。Steelcase様は、オフィス家具でグローバルをリードされているお客様であり、建築家やデザイナーといったパートナー向けのエコシステムを強化された事例です。

同社がどのような取り組みをされているのか、カスタマージャーニーに沿って見てみると、まず認知のフェーズでは、リサーチ記事を公開したり、ウェビナーを開催するといった、コンテンツマーケティングによりリードを獲得しています。そして検討フェーズでは、UI /UXを最適化し、3Dモデルや表面素材といったデジタルアセットを活用したデジタル体験を提供しています。さらに購入のフェーズでは、代理店システムや経費精算システムと連携した購買管理ポータルを用意しています。

具体的に、Steelcase様が実現しているUI/UXの最適化について、3つのポイントについてご紹介します。

  1. 商品検索において、フリーワード検索およびフィルタリングできるようにすることで、商品ページの機能性を向上させています。
  2. 商品情報の提供においては、豊富な商品情報を分類して体系的に提示しており、タブの切り替えで表示することで煩雑さを抑えたレイアウトを採用しています。購入方法や商品オプションを明示するなど、購買検討を促進させる豊富なコンテンツを配備しています。
  3. 商品購入への遷移においては、ECや代理店の検索など、商品の購入につながる導線をわかりやすく配置することで、商品の購入を促進しています。

上記のようなUI/UXの改善のインプットとして、顧客行動の分析が必須になります。コンテンツを用意し、顧客行動を把握・分析し、UIを改善するだけでなく、顧客の行動に合わせてパーソナライズされたコンテンツを出し分けることで顧客とのエンゲージメントを高めていくことが可能となります。

アドビでは“最高の顧客体験は最高のコンテンツから始まる”と考えています。https://www.adobe.com/jp/products/photoshop.htmlPhotoshophttps://www.adobe.com/jp/products/illustrator.htmlIllustratorなどクリエイティブで培われたさまざまな技術をベースに、コンテンツの作成・管理・提供・最適化といった顧客体験を提供していくために必要なプラットフォームをご提供しています。

今回解説した内容に加えて、製造業のマーケティングについて、顧客の行動を予測し、適切なタイミングでリテンションをかけたメールマーケティングの事例やグローバルサイト管理と顧客の行動に合わせたコンテンツの出し分けによるエンゲージメント強化の事例等、より詳しい情報を、過去開催したウェビナーでご覧いただけます。是非あわせてこちらのウェビナーをご覧ください。