製造業に求められる顧客体験管理

昨今では、B2Cのみならず、B2Bにおいても顧客体験を管理することが重要になっています。B2Bでは、いかに顧客体験管理をしていくべきなのでしょうか。今回は製造業界にフォーカスを絞り、Adobe Experience Cloudのご紹介を交えながら、アドビ株式会社 今井より、アドビの考える顧客体験管理(以下、CXM)についてご紹介します。

なぜCXMが必要なのか

ブランドとお客様とのタッチポイントとなるチャネルが多様化しており、中でもデジタル接点の重要性が増していると実感されている方も多いのではないでしょうか。これらのタッチポイントにおいて、パーソナライズされた体験を提供することは現在のビジネスには欠かせない観点となっています。

お客様を深く理解し、継続的に顧客体験を最適化しながら、エンゲージメントを高めていくには、それぞれのタッチポイントでお客様を断面的に捉えるだけでなく、カスタマージャーニー全体を俯瞰して、行動に変容をもたらすコミュニケーションを行うことが欠かせません。

とはいえ、理想的なCXMを実現するには、さまざまな課題に対処する必要があります。「コンテンツを効率的に制作、管理できない」「システム間のデータ連携がうまくいかない」「顧客データを統合したが、結局、効果的に使えていない」「顧客が求める商品情報を、適切なタイミングで届けられていない」「施策ごとにツールを使い分けているが、部分最適になってしまっている」といったお悩みは、私もよく耳にするところです。

アドビでは、そんなCXMを推進するために必要な要素として「コンテンツの制作/管理」「データの取得、分析/管理」「施策実行」、さらにこれらを効率的に管理するための「ワークフロー」の4つがあると考えており、それをプラットフォームとしてAdobe Experience Cloudを提供しています。

Adobe Experience Cloudで実現できること

Adobe Experience Cloudは、3つの階層から構成されています。第1階層が、基盤となるAdobe Experience Platform。第2階層はサービス。このサービスは単体では販売しておらず、アプリケーションごとに必要なものがバンドルされる形で提供されています。そして第3階層がアプリケーションです。

アプリケーションは、コンテンツの作成、管理やECを担う「コンテンツ&コマース」、お客様のデータや匿名データを管理する「データインサイト&オーディエンス」、カスタマージャーニーに基づく施策を実行する「カスタマージャーニー」、これらの業務を効率的に進めるための「マーケティングワークフロー」の4つのカテゴリ群に分類されています。

Adobe Experience Cloudの製品群

コンテンツ&コマース

データインサイト&オーディエンス

カスタマージャーニー

マーケティングワークフロー

このようなアプリケーションを必要に応じて組み合わせながらご利用いただけるのですが、わかりやすくするために少し簡略化して大きな流れを図解したものが以下となります。

ここからは、いくつかのアプリケーションをピックアップしてご紹介していきましょう。

Adobe Experience Manager

全社のデジタルアセットを統合管理し、グローバルのデジタル顧客接点に対して、コンテンツを最適にデリバリーするCMSです。

企業内の画像やテキスト情報、PDFや動画、3Dアセットなど、さまざまな素材を統合的に管理することができるDAM機能を備えているほか、近々Adobe Experience Manager Assets Essentialsという新しいアドオンの提供も始まります。このAssets EssentialsはAdobe Creative Cloud Libraryと連携していますので、複数のクリエイターとコンテンツを共同制作する際に、高度な権限管理やメタデータ管理を行いながら、コンテンツを活用できるようにもなります。

また、まもなく提供開始となるContent Automationという機能を使えば、Adobe Experience Managerで管理されているアセットに対し、PhotoshopやLightroomといったCreative Cloud Serviceの機能を用いて、マスク処理や画像の一部を変更するような処理を自動化できるようになります。

Adobe Experience Managerは標準でGraphQL APIをご利用いただけることから、バックエンドとフロントエンドを切り分けながら、デザインの変更やリニューアルを迅速化することが可能です。API連携でさまざまなアプリケーションにコンテンツを提供できるため、従来のwebサイトだけでなく、店舗に設置されているデジタルサイネージのコンテンツ管理なども一括で行えます。

https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.live/jp/blog/fragments/offer-003291-product-product-experience-manager-2021-jp

Adobe Commerce

これまでMagento Commerceの商用版として提供していたものを、2021年よりAdobe Commerceとしてリブランディングしています。これにともない、いくつかの機能拡張を行なっています。

たとえばLive Searchという検索機能の強化です。これにより、ECサイトのユーザーが検索ワードを入力している最中に、リアルタイムで検索結果が表示されたり、オートコンプリートやスペルチェックが行なわれたりすることから、より快適な検索体験を実現できるようになりました。また、Visual AIの機能を使えば、視覚的に類似した商品を表示したり、Shopping Assistanceの機能を使えば、コールセンターに入電のあったお客様に対応しながら、バックエンドの管理画面から代理でオーダーを作成したりすることも可能です。

https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.live/jp/blog/fragments/offer-003278-product-brief-commerce-jp

Adobe Customer Journey Analytics

データインサイト&オーディエンス区分では、従来のAdobe Analytics(Web Analytics)Adobe Audience Manager(DMP)のほかに、新たにオンライトオフラインを統合したアナリティクスツールとして、Adobe Customer Journey Analyticsの提供を開始しています。

Adobe Customer Journey Analyticsは、ドラッグ&ドロップの直感的な操作で、視覚的にわかりやすい分析を行えるのが特徴です。また、オンラインの行動のみならず、コールセンターや店舗情報、外部システムのデータも含めた分析を行うことができ、クロスチャネルで顧客理解の解像度を上げられるようになっています。

Adobe Real-Time CDP

オンラインの行動情報に加え、コールセンターや店舗情報、販売情報やCRM情報など、あらゆるデータポイントから、既知顧客と匿名顧客のデータを収集、標準化、統合顧客プロファイルの構築をしながら、施策に活用できるのが、Adobe Real-Time CDPです。

昨今、GDPRやCCPA、改正個人情報保護法など、プライバシー関連の規制が強化されている中、利用目的に応じたデータガバナンスの強化が求められるようになっています。Adobe Real-Time CDPではDULEというフレームワークを用いることで、ヒトに依存しないデータガバナンスを実現できるようになっています。

Adobe Marketo Engage

マーケティングオートメーションツールであるAdobe Marketo Engage。お客様のさまざまなアクションやセグメント情報をもとにスコアリングを行い、お客様の業界ごとやお客様の興味・関心のある製品ごとに、最適なシナリオでナーチャリングを実行できるものです。

ナーチャリングを行った結果、十分に確度が上がったと判断したお客様の情報を営業担当者に引き継ぐことで、効果的なABMを実現することができます。

https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.live/jp/blog/fragments/offer-003287-product-marketo-engage-jp

Adobe Journey Optimizer

次世代のオムニチャネルジャーニーオーケストレーションツールであるAdobe Journey Optimizerは、Adobe Real-Time CDPと統合して、大量配信から1to1のコミュニケーションまで管理できるツールです。こちらを用いることで、メールやアプリのプッシュ通知など、従来、別々のツールで管理されていたものを、すべて1画面で完結できるものとなっています。

さらに、オンラインでお客様がアクションした情報を即座に取り込み、リアルタイムでメッセージを配信するなど、接客ツールとして活用することも可能。あるいは数千万におよぶ大規模なアウトバウンド配信に対応できることから、B2Cのユースケースにおいて非常に強力なツールとなっています。

アドビでもこのAdobe Journey Optimizerを用いて、ユーザーの行動履歴に応じたメッセージングを行った結果、有料会員へのコンバージョン率が15%アップ、チュートリアルの完了率が35%アップ、といった高い効果を得ています。

以上がAdobe Experience Cloudの最新状況となります。ブランドガバナンスとプライバシーを両立しながら、グローバル規模で最適な顧客体験を実現されたい方は、ぜひAdobe Experience Cloudの導入をご検討いただけると幸いです。

本記事に関連して、「製造業界における1-to-1マーケティングの未来」というタイトルで開催したイベントをアーカイブ配信しております。併せてご覧ください。