IPG Health傘下の制作会社Studio Rx、Adobe Fireflyと「カスタムモデル」でキャンペーン制作を加速
大手マーケティング代理店グループIPG Health傘下のStudio Rxは、世界有数のヘルスケアブランドと提携し、インパクトのある革新的なマーケティングコンテンツの提供を支援するグローバルな制作会社です。Studio Rxは、同社のデジタルリブランディングキャンペーンを実施するにあたり、自社が持つ生成AIの専門知識を活かし、キャンペーンの活性化に成功しました。
Studio Rxは、親会社のInterpublic Group(IPG)が導入し、グローバルネットワークを通じて傘下の代理店にも提供されるAdobe Fireflyと「カスタムモデル」を活用しました。これにより、外部からの受託案件と自社主導のマーケティングキャンペーンの両方の強化が実現できたのです。従来であれば計画から実行までに数か月はかかるような全く新しいブランドアイデンティティの実装プロジェクトを、Adobe Fireflyを使用することで、わずか数週間で完了しました。
このキャンペーンは「Rxies」という名のマスコットキャラクターとそのファミリーを中心に展開され、わずか10日間で20以上の新しいアセットがwebサイトに配信されました。当初、彼らがAdobe Fireflyを使った目的は生産性と効率性の向上でしたが、チームはこのツールが提供するクリエイティブコントロールと品質の高さに感銘を受けました。結果として、クリエイティブなアウトプットの水準を維持しながら、時間のかかるプロセスを大幅に短縮できたのです。その方法を紹介します。
スケッチをデジタルアートに変換
新しいブランドアイデンティティの計画段階から、Studio Rxは同社の揺るぎないポジティブな精神を体現すると同時に、AI制作の腕前を存分に発揮しました。 そのプロセスは、同社のデジタルアートチームによる一連の手描きイラストから始まり、同社の能力とサービスを象徴する、ユニークなキャラクター「Rxies」が生み出されました。 イラストでは、ハート型のキャラクターがトレッドミルで走っている様子や、別のキャラクターが人間の分子を模した物体を操作している様子などが描かれました。
スケッチが承認されると、Adobe Fireflyの出番です。参照画像のスタイルと構造を使用して複数のバリエーションを作成する「構成参照」と「スタイル参照」を使用し、チームは紙に描かれたアイデアを瞬時に最終的なデジタルアートへと変換しました。そして、Adobe Creative Cloudアプリケーションを使い、画像の一貫性を保つためのレタッチ作業を経て、20以上のアセットがわずか10日間で納品され、webサイトで公開されました。これは、従来のプロセスと比較して5倍のスピード向上です。このように、あっという間に「Rxies」が誕生したのです。
Studio Rxのエグゼクティブ クリエイティブ ディレクター、マット ホール(Matt Hall)氏は、次のように述べています。「このキャンペーンでAdobe Fireflyを使用したことで、私たちが求めていた効率性の向上を実現できる信頼性の高いテクノロジーであることがわかりました。同時に、コンテンツのクリエイティブコントロールも維持することができました。Adobe Fireflyによってアーティストの作品の個性やスタイルを完成した画像に反映させることができたのは、本当に素晴らしいことであり、当社のブランドを表現する上で重要な要素でした。」
Rxieを増殖させるには
新しいブランドアイデンティティには20以上の画像が必要であり、チームはwebサイトやその他のデジタルマーケティングチャネル用の新鮮なコンテンツを必要としていました。つまり、電子メールキャンペーンからSNSでの投稿までのあらゆる用途ごとに大量のバリエーションが求められていたのです。Studio RxはすでにRxiesのアセットをwebサイトに展開済みでしたが、さらに一歩進み、Adobe Fireflyのカスタムモデルを活用したバリエーション作成に取り組みました。
チームは、Rxiesの初期の画像セット(合計20枚)でAdobe Fireflyをトレーニングし、ブランドの一貫性を維持しながら、キャラクターの背景、被写体、前景を瞬時に作成できるカスタムソリューションを開発しました。このようにしてAdobe Fireflyを微調整することで、チームはコンテンツ制作のキャパシティをあらゆる用途に応じて拡張でき、手作業によるレタッチを過度に行わずに済みました。テキストプロンプトを一部変更するだけでRxiesを新しいシーンに配置したり、ポーズやスタイルを変えたりすることができるため、将来的なニーズにも対応できます。これは現在も継続して行われています。
IPG Healthのチーフ プロダクション オフィサーであるグラハム ジョンソン(Graham Johnson)氏は、次のように述べています。「Adobe FireflyのようなAIツールは、Studio Rxが効率的に高品質なコンテンツを提供することを可能にしただけでなく、ヘルスケア業界のクライアントのコンテンツニーズにも対応できる拡張性を持っています。さらに、患者や医療従事者向けに高度にパーソナライズされたコンテンツなど、制作可能なコンテンツの新しい可能性も開きます。これは、当社のクライアントが非常に興味を持っている点です。」
クリエイティブプロセスにおけるAIの役割
Studio Rxの事例は、IPG Healthにおける生成AI活用の一例にすぎません。Adobe Fireflyを通じてユーザーは、安全に商用利用できるように設計され、Adobe Stockなどのライセンスコンテンツやパブリックドメインのコンテンツでトレーニングされた生成AIモデルにアクセスできます。
Studio Rxのような代理店は、人間が主導権を維持することを前提としたうえで、生成AIがクリエイティブプロセスに与える影響について実体験とともに語ることができます。Studio Rxの場合、効率性の向上と時間の節約が、新しいクリエイティブ表現を創出する取り組みを補完しました。Adobe Fireflyは、クリエイターのアイデアをデジタル画面に瞬時に変換するだけでなく、その革新的な機能を発揮し、今では代理店のブランドアイデンティティに沿ったキャラクターファミリーをも生み出せることを示したのです。
Studio Rx は、世界で最も著名で受賞歴のあるヘルスケアマーケティングエージェンシーのグローバルな集合体、IPG Health の一員です。斬新なマーケティングソリューションを創造し、クリエイティブ、テクノロジー、サイエンス、データを駆使し、より健康であるための行動を喚起することへの健全なこだわりを持つ、6,000人の社員が世界の6大陸で働いています。IPG Healthは、2024年と2023年のカンヌライオンズにおける「Healthcare Network of the Year」の受賞をはじめとして、米アドエイジ誌「A-List」、ニューヨークフェスティバル「Health Awards」、Manny Awardsを含む数々の栄誉ある賞を受賞しています。IPG Health は、2023 年の Clio Health Awards、London International Awards、および MM+M Awards で「Healthcare Network of the Year」にも選ばれました。