アドビソリューションで実現するコンテンツサプライチェーンの最適化

アドビソリューションで実現するコンテンツサプライチェーンの最適化 marquee

最近アドビが行った調査(*1)によるとCX(顧客体験)の専門家の61%が、企業が作成すべきコンテンツ量と速度が2024年末までに現状の5倍になると予想しています。その背景としてデジタルコンテンツの消費が増えていることが挙げられます。 Emarketerの調査(*2)によれば、平均的な人々は1日あたり8時間のデジタルコンテンツを消費しているとされており、真のビジネスインパクトをもたらす魅力的な顧客体験を提供するためには、より迅速にデジタルコンテンツを制作し、パーソナライズされた顧客体験を大規模に提供していく必要があることが分かります。

以下の図は、あるグローバル企業において必要となるコンテンツの数を試算したものです。1,000個の製品ごとに25個のアセットがあり、それらを15の地域ごとに用意するとなると、約38万個のアセットが必要になります。さらに数千の顧客やコンテキスト毎に、動画や静止画などの様々なフォーマットを用意するとなると、必要なコンテンツ数は数百万件を超える膨大な数になることは想像に難くありません。

Adobe Summit illustration

<参照元:https://business.adobe.com/summit/2023/sessions/do-more-with-less-with-an-intelligent-content-supp-s713.html

そのため、企業において顧客体験管理を高度化する上では、必要となる大量のコンテンツをいかに効率的に素早く生成していくかが重要になっています。

こういった課題に対して重要な打ち手となるのがコンテンツサプライチェーンの最適化です。Adobe Summit 2023では、このコンテンツサプライチェーンを最適化させるソリューションや新機能の発表がありました。

本記事では、コンテンツサプライチェーンの概要と、コンテンツサプライチェーンを最適化をするためのアドビソリューションおよびポイントをお伝えしていきます。

もくじ

  • コンテンツサプライチェーンとは何か
  • アドビソリューションで実現するコンテンツサプライチェーンの最適化
  • コンテンツサプライチェーンを最適化する上でのポイント

コンテンツサプライチェーンとは何か

コンテンツサプライチェーンとは、コンテンツを計画、制作、配信、分析する一連のプロセスを呼びます。このコンテンツサプライチェーンを最適化し、迅速にそのプロセスを回すことで効率的に大量のコンテンツを制作/配信していくことが重要です。

一方で、コンテンツサプライチェーンの最適化は容易ではありません。なぜならば、コンテンツを制作/配信していくプロセスでは、クリエイターやマーケターを中心として多くのステークホルダーが関わり、さまざまなタスク管理や情報共有が必要となるためです。誰がどんなタスクを何のために行っていて、今何が起きているのか、そういったことを把握し、スムーズにプロセスを回す必要があります。

Adobe Summit infographic

このような状況を解決するために、コンテンツサプライチェーンの最適化が求められています。

次に、コンテンツサプライチェーンの最適化のステップについて解説します。最適化されていないコンテンツサプライチェーンにおいては、計画から制作、配信、分析までの一連のプロセスは自動化がされていない上、チーム毎に情報が分断(サイロ化)されています。コンテンツ制作の簡素化と加速化、オペレーションの最適化、コンテンツとキャンペーンのパフォーマンス向上を実現する上では、以下の「コンテンツの計画から制作までのプロセスの最適化」と「コンテンツの配信から分析までのプロセスの最適化」の2つのステップが重要です。

Adobe Summit chart

コンテンツの計画から制作までのプロセスの最適化

コンテンツの計画から制作までのプロセスの最適化においては、以下のような点が重要になります。

コンテンツの配信から分析までのプロセスの最適化

コンテンツは大量に生成するだけでなく、それぞれのコンテンツを適切な顧客に対して適切なチャネル、適切なタイミングで配信し、その結果を効果検証することが重要です。このコンテンツの配信から分析までのプロセスの最適化においては、以下のような点が重要になります。

アドビソリューションで実現するコンテンツサプライチェーンの最適化

Adobe Summit 2023ではコンテンツサプライチェーンを最適化させるツールや新機能の紹介がありました。それらをステップごとに紹介します。

Adobe Summit chart

計画

マーケティングコンテンツの全体的な戦略、予算、スケジュールを立案し、コンテンツサプライチェーンを開始するステップです。ステークホルダーとの要望の調整やチーム内の役割分担の明確化、作業プロセスの整理が必要になります。

Adobe Workfrontによるスムーズなフローの進行と可視化

コンテンツの計画を立てる段階ではAdobe Workfrontを活用することによって、プロセスが整理/可視化され、各作業工程でもツール上でオープンにコミュニケーションが行えるため、スムーズなコラボレーションが可能になります。

またAdobe Workfrontではタスクを依頼する際にタイプと呼ばれるフォーマットを定義することができます。これによってタスクを実施する際に情報が足りずに作業が止まってしまうことがなくなるでしょう。例えば、新しいアセットを作成する際、リクエストタイプを予め定義しておくことで、依頼時に必要なアセットのサイズや用途、言語などが確実にクリエイティブチームへ伝達されるようになります。

Adobe Workfront screenshot

<参照元:https://business.adobe.com/summit/2023/sessions/connect-adobe-clouds-in-just-minutes-with-workfron-s611.html

Adobe Workfrontを活用した作業の効率化については以下のセッションで詳細に紹介されています。

https://business.adobe.com/summit/2023/sessions/connect-adobe-clouds-in-just-minutes-with-workfron-s611.html

制作

マーケティングコンテンツを制作し、審査/承認を通じて配信の準備を整えるステップです。コンテンツに必要なアセット準備し、さまざまなメンバーが連携しながらコンテンツを制作/修正を繰り返して承認までを迅速に行う必要があります。

Adobe Workfrontと Adobe Creative Cloud の連携による制作の高速化

制作段階でもAdobe Workfrontが威力を発揮します。 Adobe Creative Cloud との連携によって、制作ツール内でタスクを確認でき、その場で指示やコメントを見ながら作業が可能になります。

Manage the entire work management process from request to approval graphic

<参照元:https://business.adobe.com/summit/2023/sessions/connect-adobe-clouds-in-just-minutes-with-workfron-s611.html

Adobe ExpressAdobe FireflyAdobe Sensei Gen AIによる非クリエイターの制作支援

Adobe Expressを活用することで、これまでクリエイターが対応していた作業をビジネス担当が実施することができ、コンテンツ制作を加速させることができます。具体的には、Adobe Experience Manager Assetsと連携し、色、オブジェクト、風景などの画像コンポーネントを変更し、Webサイト、モバイル、電子メールなどのチャネルに対応したバリエーションを自動的に生成することができます。

また新たに発表されたAdobe Firefly、Adobe Sensei Gen AIの活用によってクリエイターでなくても商用利用可能な画像の生成や、コピーの自動生成が可能です。

上記のアップデートの詳細は以下をご参照ください。

https://www.adobe.com/jp/news-room/news/202303/20230322_adobe-experience-manager-new-innovation.html

コンテンツマーケティングにおけるAdobe Sensei Gen AI活用のメリットについては以下の記事をご参照ください。

https://business.adobe.com/jp/blog/the-latest/dx-generative-ai-in-content-marketing

配信

制作したコンテンツを各チャネル経由で顧客へ配信をするステップです。顧客ごとに最適なコンテンツを各チャネルに適した形式で配信する必要があります。チャネルが多様化する中で、効率的に複数チャネルに適したコンテンツを用意、配信しなければなりません。

Microsoft Wordを用いたAdobe Experience Managerの更新

新しいAdobe Experience Managerにより、Microsoft WordやGoogle Docsなどの一般的なツールで作成されテンプレート化されたドキュメントから直接、Webサイトやモバイルアプリなどあらゆるオンラインチャネルのコンテンツを自動的に更新できるようになります。

CMSの専門知識がなくても、同じドキュメントから作成、編集、公開が可能になり、配信のプロセスを加速させることができます。

上記のアップデートの詳細は以下をご参照ください。

https://www.adobe.com/jp/news-room/news/202303/20230322_adobe-experience-manager-new-innovation.html

分析

配信されたコンテンツがどのようにビジネス目標に貢献したかを評価し、次のコンテンツ企画にフィードバックしていくステップです。コンテンツでよく用いられる閲覧数(PV等)だけではなく、コンテンツのビジネス目標を踏まえた際にどのようにコンテンツが貢献していたかを把握する必要があります。

Adobe Senseiによるコンテンツの詳細分析

コンテンツの分析においては、閲覧数やアクション(クリック)数だけに着目しがちですが、コンテンツの本質的な改善にはより詳細な要因分析が重要になります。

Adobe Senseiの機能によって、コンテンツを属性レベルで分析し、色、オブジェクト、構成、書き方などの属性が、異なるオーディエンスに対するパフォーマンスにどのような影響を与えるかを計測することができます。その結果を用いて、次回のコンテンツへフィードバックを行い、きめ細やかなPDCAが可能になります。

Adobe Senseiを用いた分析については、以下のセッションの中で紹介しています。

https://business.adobe.com/summit/2023/sessions/do-more-with-less-with-an-intelligent-content-supp-s713.html

コンテンツサプライチェーンを最適化する上でのポイント

ここまでコンテンツサプライチェーンの概要やステップ、アドビソリューションを活用した最適化について紹介してきました。最後に企業がコンテンツサプライチェーンを最適化する上で重要になるポイントを3つ紹介します。

1.プロセスにおけるボトルネックの把握と改善案の明確化

コンテンツサプライチェーンを最適化する上で最初に実施する必要があるのが、ボトルネックの把握です。現状のプロセスにおいて何が課題で、どんなことが真因となっているのかを明らかにする必要があります。

例えば、コンテンツの制作時に時間がかかっている際に、審査や承認に時間がかかっているのか、最終的な微修正に時間がかかっているのか、といった点を明らかにしていきます。その上で、優先的に取り組むべき課題を決め、改善案を洗い出していきます。

これを実施しないまま、新しいツールやプロセスを導入すると、メリットが明確でないため賛同が得られず最適化が思うように進まない事態になってしまいます。

ボトルネックを把握し改善案とメリットを明らかにしておくことで、新しいプロセスによる成果も明確化されて最適化がスムーズに進んでいきます。

2.横断的な組織の組成と改善案の実施および評価

コンテンツサプライチェーンとは、その名の通り、チェーンのような強い連携がプロジェクトメンバーに求められます。プロジェクトには、プランニングや制作を行うマーケティング部門やシステムを管理するIT部門、コンテンツのアセットを管理する商品部門など様々な部門のメンバーが必要です。それらのメンバーが互いに協業し、これまでの業務を変えて効率化を進めなければなりません。

そのためには部署を横断して変革を実施していく横断的な組織を立ち上げることが重要になります。それぞれの部署の業務を理解し、連携や改善を促進する役割を担います。

横断的な組織を立ち上げた後は改善案を実施し、その結果を積極的に評価していきます。新しいプロセスやツールを導入する際には、既存のプロセスを変更する必要があり、一時的には作業負荷が増えます。そういった場合でもきちんと改善案とメリットが明確になっており、それらの評価を可視化していくことで最適化へのモチベーションが維持され、コンテンツベロシティが向上します。

3.ビジネス目標と照らしたコンテンツ評価とフィードバックサイクル

コンテンツの制作や配信が容易になった結果として発生しがちなのが、コンテンツを配信すること自体が目的化し、公開および配信数や閲覧数といった足元のKPIにだけ着目してしまうことです。閲覧数やそこからのアクション(クリック)数が増えたことで一喜一憂してしまい、本当に重要なビジネス目標への貢献まで考えられていないケースがあります。

この事態を防ぐためには、戦略策定のフェーズにおいてKBOツリーを策定し、各KPIを改善するためにどのようなコンテンツを誰に対してどのチャネルで配信するかを整理することが重要です。

また、コンテンツを評価するためのKPIをモニタリングできる分析ツールを整備することも重要です。例えば、コンテンツをクリックした顧客が、その後コンバージョンに至っていたのかといった一連の流れを計測できるようにしておかなければなりません。

以上がコンテンツサプライチェーンを導入するためのポイントになります。

アドビではコンテンツサプライチェーンに必要なツールの導入からプロセスの整備/改善までを一気通貫で支援しています。アドビと一緒にコンテンツサプライチェーンを最適化してきませんか。

*1 Source: Adobe CSC Global Research

*2 Source: Emarketer 2021