ジェネレーティブAIがコンテンツマーケティングに与えるメリットとは

コンテンツマーケティングにおけるジェネレーティブAI

アドビは3月21日(現地時間)、ジェネレーティブAIAdobe Firefly」および「Adobe Sensei GenAI」を発表しました。

Adobe Fireflyは、テキストプロンプトを入力することで、数億点の画像をもとに様々な画像の自動生成を可能にします。マーケターは、商業利用の安全性が考慮された仕組みの上で、パーソナライズされたコンテンツを自動生成することができるようになります。将来的には、ユーザーのスタイルやブランドガバナンスに基づいて、画像、動画、音声を組み合わせたコンテンツを生成できる予定です。

Adobe Sensei GenAIは、「ChatGPT」や「FLAN-T5」など複数の大規模言語モデル(LLM)を活用し、あらゆる顧客接点においてテキストベースの体験の瞬時な生成および修正を可能にします。また、ブランドガイドライン、製品ボキャブラリー、顧客インサイトといった各企業独自のニーズを満たすために、これらのLLMの中から適切なものが選択されます。

これらは、顧客データとコンテンツを1つの共通言語モデルのもと組織横断で統合するAdobe Experience Platformを基盤として提供されるため、蓄積された自社データセットでジェネレーティブAIモデルをトレーニングし、マーケティングコピーやキャプション生成といった形で各社の文化に沿って微調整されたアウトプットをすることが可能になる予定です。

今回は、今後開発が急速に進んでいくジェネレーティブAIをマーケターが活用する上でのポイントや、限られた時間とリソースをどこに投資すべきかなど、日常的にジェネレーティブAIを活用することになる近い将来に向けて、マーケターが今から備えるべき点についてご紹介します。

* 記載内容には、「Adobe Summit 2023」で発表された開発中の機能の情報が含まれています。

もくじ

  • ジェネレーティブAIとは
  • ジェネレーティブAIがコンテンツマーケティングに及ぼす影響
  • コンテンツマーケティングにおけるジェネレーティブAIのユースケース
  • マーケターが今から取り組むべきポイント

ジェネレーティブAIとは

ジェネレーティブAIとして昨今注目されているのが、ChatGPTによる文章の自動生成や、画像生成AIによるテキストプロンプトからの静的な画像の自動生成です。

共通するのは、AIを活用することで、普段の会話における言葉や既存のデータをもとに、スピーディーに新たなコンテンツを生成することができるという点です。これまでは、一定の知識が必要な質疑応答はサポートセンターや専門性の高いコンサルタントが、クリエイティブ制作には単純なバナーの制作であった場合にもクリエイターへの依頼が必要でした。これからは、いくつかの簡単な単語と適切なジェネレーティブAI があれば、誰でも動画、ドキュメント、デジタルエクスペリエンス、そして数多くの画像やアートを作成することができるようになり、配信するメールマガジンに関しても、クリックされやすい件名や、説得力のある本文を自動的に生成することができるようになります。

しかし、ジェネレーティブAIの利用には、自動生成される文章に関する情報の不正確さや、生成される画像や動画における著作権侵害、盗用および剽窃などのリスクも伴うことから、マーケターが安易に利用してしまうとブランド毀損につながりかねません。

あくまで、ジェネレーティブAIはマーケターのサポート役としての文章の下書きの作成やイメージの醸成に役立つクリエイティブの生成に利用すべきであり、最終的な配信の判断はマーケターが行う必要がある点に注意が必要です。この点を考慮し、アドビでは、説明責任、責任、透明性という AI の倫理原則に従って、ジェネレーティブ AI を開発、展開しています。

アドビでは、説明責任、責任、透明性という AI の倫理原則に従って、ジェネレーティブ AI を開発、展開しています。

ジェネレーティブAIがコンテンツマーケティングに及ぼす影響

ここからは、アドビが提供するジェネレーティブAI がコンテンツマーケティングに対して今後どのような影響を及ぼすかについてご説明します。

時間の節約:2022年7 月の Capterra社の調査(*1)によると、マーケターの約 3 分の 1 がコンテンツの作成に最大 75%の時間を費やしています。ジェネレーティブAIを使用すると、パーソナライズされたキャンペーンやコンテンツを作成する上での単純な執筆タスク、オーディエンス作成、コンテンツ管理、および配信のすべてにかかる時間が短縮されるため、マーケターは高品質なオリジナルコンテンツの作成を含む高度な顧客体験管理に集中できます。

コンテンツの生成:ジェネレーティブAIにより、メールの件名やソーシャル投稿文、ブログ、画像などを高速に生成することができます。また、AI により文法上の誤りを修正し、ブランドのスタイルとトーンに合わせてコンテンツを自動作成することもできるため、マーケターの業務効率化や生産性向上に大きく貢献します。これにより、数十の異なるセグメントのコンテキストに対して最適なコンテンツを一挙に作成し、スピーディーにパーソナライズされた体験を配信することも可能になるでしょう。

分析の自動化:現在、マーケターが担っている市場調査やアクセス解析に代表される分析業務の一部も、ジェネレーティブAIによりスピーディーにインサイトが得られるようになります。パーソナライゼーションを実現する上で重要なオーディエンスの作成も自動化されることで、マーケターの限られたリソースのみでは実現が難しかったパーソナライゼーションの規模の拡大が、現実味を帯びてくるでしょう。

コンテンツマーケティングにおけるジェネレーティブAIのユースケース

マーケターを対象とした 2022年の Aira社の調査(*2)では、約59% のマーケターがAIツールを利用して既存コンテンツの最適化に取り組み、50%以上のマーケターがブログ投稿やソーシャル投稿の際のコピーの作成にAIツールを利用していることがわかりました。ここでは、ジェネレーティブ AI を使用してコンテンツを強化する上での4つのユースケースをご紹介します。

コンテンツ創出の高速化:ジェネレーティブ AIは、オリジナルのコンテンツをもとに関連コンテンツを作成することができます。Adobe Experience Cloudにおいては、画像や動画などのコンテンツライブラリを管理するための企業向けデジタルアセット管理システムであるAdobe Experience Managerが、コンテンツ制作ツール「Adobe Express with Adobe Firefly」と直接統合されることにより、企業ロゴや商品写真などの色、サイズ、オブジェクト、風景などを瞬時に変更し、各チャネルに対応したバリエーションを自動生成できるようになる見込みです。コンテンツの管理とコンテンツ制作の高速化を実現することで、顧客のロイヤルティの向上につながります(コンテンツベロシティ)。

コンテンツのパーソナライズ: パーソナライズにおいては、ジェネレーティブ AIは購入者と顧客の行動を計測し、オーディエンスをセグメント化し、パーソナライズされたコンテンツを適切なチャネル、適切なタイミング、且つ様々な言語で配信するのに役立ちます。現在開発中のAdobe Sensei GenAIでは、Adobe Experience Platformに蓄積された大量の情報を分析し、カスタマージャーニー内の各タッチポイントがどれだけのトラフィックを受け、コンバージョンが期待できるかを機械学習によってシミュレーションした上で、開始前の新しいジャーニーであっても、ユーザーが各ステージをどうたどってジャーニーに関与するかについて、データに基づいた正確な予測をしてくれるようになる見込みです。また、これまではマーケターが手作業で実施していたオーディエンスの作成についても自動化され、オーディエンスの定義と結果を継続的に改善してくれます。これにより、マーケターは積極的にジャーニーを変更および修正が可能になり、顧客が求めるデジタルエクスペリエンスを実現できるようになるでしょう。

マーケティングコピーの提案:ジェネレーティブ AIは、顧客とのエンゲージメントを向上するために重要な顧客に対する適切なメッセージおよび説得力のあるコンテンツの生成に役立ちます。あらゆるチャネルにおけるジャーニーを管理するためのAdobe Journey Optimizerでは、メッセージデザイナー内でブランドに合わせたコピーを自動化し、最適な結果をもたらすための推奨事項を取得することができるようになる見込みです。

ジェネレーティブ チャット:ジェネレーティブ AIは自然言語処理に長けているため、チャットボットにおいては顧客サポートセンターに問い合わせているかのような自然且つ的確な回答をすることができます。Adobe Marketo Engageでは、従来のチャットボットをブランドアンバサダーに変えて、ブランドの個性とトーンを取り入れた自然で状況に応じた方法で質問に答えることができるようになる見込みです。

マーケターが今から取り組むべきポイント

現在、世界中でジェネレーティブAIの開発が急速に進んでいることから、マーケターはこのジェネレーティブAIの進歩において生じるリスクや期待を把握および整理し、今から適切な備えをすることが重要です。最後に、マーケターが取り組むべき5つのポイントをご紹介します。

コンテンツ戦略に対するAIの組み込み:ジェネレーティブ AI コンテンツをどのように使用するか、またAIに対する期待値と目標を決定します。AIを利用したコンテンツ作成プロセスをコンテンツと顧客のライフサイクル戦略に組み込みましょう。

適切なスキルとリソースの確保:ジェネレーティブ AIは、ユニークで質の高いコンテンツを作成することができますが、感情やタイムリーなアイデア、新しい視点を持つコンテンツは、あくまで経験豊富なマーケターによって作られるべきです。また、従来のマーケターに加えて、データサイエンティストなどの人材を採用することを検討してください。AI によって生成されたコンテンツは、入力プロンプトと、ユーザーがツールを使用して得た経験値に左右されます。AIを適切に利用できる人材の獲得ならびに育成を進めましょう。

A/Bテストの徹底:コンテンツ作成に AI を使用する場合は、そのパフォーマンスのテストが欠かせません。人が生成したコンテンツとAIが生成したコンテンツのA/Bテストや、AIが生成した複数のコンテンツのA/Bテストを実行し、どのコンテンツが最も優れたパフォーマンスを発揮するかを確認しましょう。また、AIを活用することで、A/B および多変量テストを自動化し、より優れた、またはコンバージョン率の高いコンテンツを見出すことも重要です。

事実確認と調査:Aira社の調査(*2)では、マーケターの 90% 以上が、Al で生成されたコンテンツのレビューと編集にかなりの時間が必要であると述べています。これは、現在 AI ができることは何であっても、人間による品質管理が依然として必要であることを示唆しています。様々なデータソースをもとに AI によって生成されたコンテンツについて調査し、虚偽やコンテンツの所有権をチェックしましょう。

人間味を加える:現時点では、AI は人間に取って代わる存在ではありません。創造的なストーリーテリング、自発性、独創性が欠けているのが現状です。また、作成されたコンテンツに価値があり、ブランドを正しく表現し、AI によって作られたものと悟られないようにするためには、人間味が必要です。特に、新製品の発売やタイムリーな企業発表のコピーなど、ユニークで新鮮なコンテンツは、ブランドのスタイルやトーンに合わせる AI の能力を超えており、人間の作成者が必要です。

このように、マーケターがジェネレーティブ AIを活用することによって、コンテンツベロシティを向上するだけでなく、コンテンツの質の向上とパーソナライゼーションの規模の拡大を実現することができ、競合優位性を高めるとともに自社の顧客体験管理のレベルを押し上げることができます。

ジェネレーティブ AIを活用した高度な「顧客体験管理(CXM)」を実現されたい場合には、ぜひアドビにご相談ください

*1 Source: Capterra, “2022 AI Marketing Survey”

*2 Source: Aira, “The Future of AI in Content Marketing”