Adobe Summit Sneaks 2023:未来のEコマースとマーケティングを見据えたAIイノベーションの数々を紹介

アドビは年に一度の「Sneaks」イベントで、社員から募集した研究開発中のプロジェクトの数々を、最新テクノロジーを活かした次世代の顧客体験として披露しています。今年は、女優でコメディアンのティグ ノタロ(Tig Notaro)をホスト役に迎え、「Adobe Summit 2023」、でライブイベントとして開催しました。

今回のSneaksのファイナリストは、人工知能と「Adobe Sensei GenAI」を主要テーマとして、顧客体験のパーソナライゼーション、顧客のコンバージョンの向上、ロイヤルティの構築といったエクスペリエンス主導型の成長を実現するイノベーションを紹介しました。これらはすべて、マーケターや消費者が日々直面している重要な課題を、これまでにないやり方で解決するものです。

独創性に富んだSneaksプロジェクトの数々はすべてAdobe Experience Cloudを活用し、よりインテリジェントでインタラクティブ、かつ利用しやすい顧客体験を提供します。

Sneaksの最終選考に残ったプロジェクトは以下の通りです。

Limitless options

パーソナライズされたキャンペーンはオーディエンスとの効率的なエンゲージメントを可能にしますが、その大規模な実施には大量のコンテンツが必要で、これまではその制作がマーケティングチームの時間とリソースの負荷となっていました。Adobe Journey Optimizerにシームレスに統合された「Limitless Options」はAdobe Fireflyを搭載し、パーソナライズされたコンテンツをジェネレーティブAIで自動生成します。これにより、マーケターはパーソナライズされたキャンペーンやコンテンツの迅速な作成、修正、展開が可能になります。

ジェネレーティブAIを活用してコンテンツ制作のスピードを上げれば、マーケターは時間とコストを節約しながら関連性のあるオーディエンスにリーチできます。数十の異なるセグメントのコンテキストに正確に合致した美しい新作コンテンツを一挙に作成することも可能になるのです。

Path wise

クロスチャンネルキャンペーンにおけるジャーニー設計には、アイデア段階から完成まで専門家でも最大数週間かかりますが、「Path Wise」があればこの作業を数分に短縮できます。

「Path Wise」は、Adobe Experience Platformに蓄積されたデータを取り込み、カスタマージャーニー内の各タッチポイントがどれだけのトラフィックを受け、コンバージョンが期待できるかを機械学習によってシミュレーションします。さらに、Adobe Sensei GenAIを活用して、開始前の新しいジャーニーであっても、ユーザーが各ステージをどうたどってジャーニーに関与するかについて、データに基づいた正確な予測をしてくれます。これにより、マーケターは積極的にジャーニーを変更修正することが可能になり、顧客が求めるデジタル体験を実現できます。

True colors

「True Colors」は、Adobe Commerceのwebサイトに訪問した買い物客が、自分の肌色に最も適したカラーパレットの衣料品を探しやすくし、デジタルショッピング体験における包括性を受容・促進します。

True Colorsは買い物客が投稿した1枚の写真をAIで分析し、肌のアンダートーンや顔のパーツごとのコントラストなどを特定します。この分析結果はアドビの数十年にわたる膨大な色彩理論の研究や、Adobe PhotoshopAdobe Photoshop Lightroomなどの技術をもとに、顧客の肌色と調和する色とのマッチングに使われます。この情報をもとに、webサイトはその色の在庫がある商品を絞り込んで表示することができます。これにより、買い物客は商品ごとに自分の肌色に合った在庫を調べる必要がなくなり、最も似合う服をより早く見つけることができます。

True Colorsは誰も取り残さないショッピング体験の提供に加え、パーソナライズされた顧客体験によってEコマースのマーチャントの成績を向上させます。データを包括性のために活用することで、このプロジェクトはあらゆる人々のショッピング体験を向上します。

Custom clips

特定のオーディエンスや配信チャネルに合わせたマーケティング資料の作成には時間がかかります。動画マーケティングともなれば、ビデオの作成と編集おける技術や専門知識が求められ、複雑さはさらに増します。

「Custom Clips」は、分析や過去の動画のパフォーマンスデータに基づいて修正・編集を加えた新しい動画を自動生成し、動画マーケターの作業の手間を軽減してくれます。つまりAIの活用によって、完成した動画から対象オーディエンスやターゲットごとに最適化された派生バージョンを作成できるのです。例えば、60秒のCM動画から、ロイヤリティが高い顧客をターゲットにコンテンツを調整し15秒にトリミングしたコネクテッドTV向けスポットCMを簡単に作成できます。このプロセスを新規顧客など他のターゲットに向けて繰り返すこともできます。

Side by side

カスタマージャーニーを完全に理解し、オーディエンスのエンゲージメントを向上させる賢い意思決定をおこなうには、企業のマーケティング、製品、データチームが同じデータセットにアクセスしてコラボレーションできる環境が必要です。

「Side by Side」は、部門を超えたチームが同じプロジェクトにログインし、Adobe Product Analytics上で共同作業できる、真に協業可能な分析環境を提供します。別部門の複数のコンピューターから同じデータセットを同時に確認できるだけでなく、レポート更新は同期され、誰がログインしてアクティブにレポートを閲覧しているかも可視化されます。UI上では複数のカーソルがリアルタイムで表示され、チャットボックスでリアルタイムのコミュニケーションもとれるため、変則的なリクエストでもその場で解決して時間とリソースを節約することができます。

Fast Filtered

お買い得なテーブルと椅子のセットを見つけネットで購入したものの、配送された家具を組み立てたらサイズが自分の家に合わないことが判明したとします。これは購入前に寸法の詳細を確認しなかったための悲劇です。

オンラインショッピング体験をよりシンプルにしてくれる「Fast Filtered」があれば、そんな事態は避けられたかもしれません。このプロジェクトは、AIを活用してAdobe Commerceストアフロントのすべてのカテゴリーの商品を一斉に分析し、商品ごとに寸法・色のような共通情報から素材・機能のようなユニークな情報までを抽出します。買い物客は、それらの情報(特定のカスタム寸法など)を検索フィルターにして商品リストを絞り込んだり、商品同士を比較するために役立てることができます。

Fast Filteredのアルゴリズムによって買い物客のニーズに適合する商品が見つけやすくなるだけでなく、特許出願中の「結果から削除」機能を使ってワンタップでリストをさらに絞り込み、関連性のない商品を検索結果から素早く除外することもできます。

Segment smarts

ほとんどの組織では、膨大な量のデータやアセットが活用されないまま眠っていますが、適切なツールがあれば分析とコンテンツに再利用できます。

「Segment Smarts」は、Adobe Real-Time Customer Data Platform(Real-Time CDP)Adobe Experience Manager(AEM)のオーディエンスとセグメントをネイティブに接続し、AIを活用することで、特定のオーディエンスに最適なコンテンツをピックアップします。選定されたオンサイトコンテンツはオーディエンスのインテントとの適合性が高く、AEMやAdobe Targetを介してシームレスかつリアルタイムにアクティベーションに活用できます。

*本記事は、アドビが2023年3月22日に投稿したブログの抄訳です。