MQL/SALを約2倍に導いたNTTドコモビジネスの“営業が動きたくなる”マーケティング改革とは
2025年10月16日、シティホール&ギャラリー 五反田にて、Adobe Marketo Engageのユーザー200名が集結した「Marketers Forum - Adobe Marketo Engage User Group Day」を開催しました。
ユーザーの皆様にご登壇いただいたセッションの中から、本稿ではNTTドコモビジネス株式会社の石渡薫平氏による「B2B 事例セッション:成果につながる“使われる仕組み”をどう作るか ― 部門を越えて取り組んだマーケティング改革の実践と学び ―」の模様をお届けします。
なぜNTTドコモビジネスはマーケティング改革が必要だったのか
2025年7月にNTTコミュニケーションズから社名変更したNTTドコモビジネス。法人向けICT事業として、通信/クラウド/データ活用など、幅広いソリューションを提供されています。
そんなNTTドコモビジネスで保守運用や法人営業の現場経験を経て、現在は同社の統合マーケティング部にて営業とシステム/サービス部門の橋渡し役を担っているのが石渡薫平氏です。ちなみに、同社の法人営業には約2000名、統合マーケティング部には兼務も含めて約150名のメンバーが在籍しているそうです。
「法人事業の収益最大化に向けた商談創出と営業支援」と「データドリブンによる営業生産性の向上」の2つのミッションを掲げる統合マーケティング部では、次の3つの課題を解消するために、マーケティング改革の必要性を感じていたと言います。
統合マーケティング部
石渡 薫平氏
<課題>
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事業構造の変化
ドコモグループの一員となったことで、提案領域が拡大。かつての商材はネットワークが中心だったが、クラウド、セキュリティ、データ活用、さらには地域/産業のDX支援まで、提案領域が一気に広がったことで、お客様の課題も複雑化/多様化。
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マーケティングでの課題
リードを営業に渡してもなかなか引き取ってもらえず商談化に至らない。単発で属人的な施策で終わってしまい、再現性がない。
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組織/データの課題
データが各組織に点在していて、同じデータを見ながら議論ができない。お客様の全体像がわからない。成果の把握も難しい。
そこで定められたマーケティング改革の基本方針は、次のとおりです。
・顧客データを一元化し、部門横断で活用する
→マーケティング/インサイドセールス/営業が共通の顧客視点を持つ
・営業とマーケティングを効果的に連携し、「動きたくなる商談」を創出する
→質の高いリード/商談を継続的に生み出す
・単発施策ではなく、再現性のある仕組み作りを重視
→データと人が循環し、成果を高めるサイクルへ
これらの基本方針に基づいて、石渡氏は具体的にどのような取り組みを行われたのでしょうか。次に詳しくご紹介します。
組織に根付くマーケティング改革の進め方
NTTドコモビジネスのマーケティング改革では、「①基盤の整備と仕組み化」「②MA活用の再定義」「③顧客への戦略的アプローチ」「④“使われる仕組み”の定着」を“改革の柱”として取り組みを進めていきました。その内容について、1つずつ見ていきます。
改革の柱①:基盤の整備と仕組み化(CDP/MA/SFAの統合基盤の構築)
これまで各組織やシステムごとにデータが分散/個別管理されていたことから、マーケティング/営業/システムなど10部門以上が参画する全社横断プロジェクトを立ち上げ、顧客情報を一元管理できる仕組みを整えることに。
CDPを中心に、約40万件の顧客データ(名刺情報、属性情報、外部データ、行動情報、商談情報や活動情報など)を統合。リード創出から営業活動まで、部門やシステムを横断して、共通の顧客情報をもとに活動できる環境を整えました。
さらに、データをためるだけでなく活用できるよう、現場での使い方を意識したデータ設計へと変更しているそうです。
改革の柱②:MA活用の再定義(顧客フェーズに沿った設計)
以前からAdobe Marketo Engageを導入してはいたものの、一斉配信/単発キャンペーンが中心で継続的な育成が難しい状態でした。また、開封率やクリック率のような短期的な指標でしか評価ができておらず、各施策が商談化にどのように影響したのかを明らかにすることができていなかったと言います。そのため、営業にリードを渡しても、担当者によって対応にばらつきが見られる状態となっていたのです。
そこで同社ではAdobe Marketo Engageの活用法を根本的に見直し、お客様の購買プロセスにおけるフェーズや興味関心に応じたシナリオを設計。各フェーズで届けるべき内容とチャネルを明確化した上で、お客様の反応や行動によって次のフェーズへと自動的に遷移するよう、Adobe Marketo Engageの「エンゲージメントプログラム」を活用しながら、中長期的にお客様を育成できる仕組みを整えていきました。
その際、石渡氏が特に意識したのは、“シナリオ設計を属人化させないこと”でした。そのために「エンゲージメントプログラム企画シート」のようなテンプレートを作成したことで、各項目を埋めれば、誰が対応しても設計思想がブレることなく、効率的かつ再現性のある施策を実行できるようになりました。また、こうして標準化されていることにより、振り返りもしやすくなり、他部門への共有もしやすくなったことから、継続的な改善につながっています。
シナリオ設計の他に「スコアリング設計も見直した」と言う石渡氏。行動スコア(メール開封/web閲覧/セミナー参加など)と、属性スコア(部署/役職/立場など)、商材や課題のテーマを組み合わせてスコアを算出。その数値はマーケティング/インサイドセールス/営業の3者間の共通言語として活用するために、定期的にスコアリングルールの見直しも行っています。
さらに、石渡氏は「営業への示唆出し」にも工夫していると言います。それはスコアやリードを、単なるデータとして渡すのではなく、“タイムリー”かつ「今すぐ動くべき理由」という“文脈付き”で情報を渡すことで、営業が動きたくなるように仕掛けているのです。そして、示唆を届けた後は、営業の反応や実際の活動につながったのかどうかを確認しながら、示唆出しの内容や配信タイミングを調整しているとのことです。
改革の柱③:顧客への戦略的アプローチ(商談有無×デジタル行動有無)
改革を行う以前は、マーケティング/インサイドセールス/営業の間で、それぞれの担当領域が曖昧だったことから、どの部門が担当すべきなのか、最適なアプローチを設計し直すことに。「商談の有無」と「デジタル行動の有無」によって4象限でお客様を分類し、象限ごとにアプローチの方向性を定め、役割分担も明確にしていきました。
改革の柱④:“使われる仕組み”の定着(現場サポート、文化の定着)
「仕組みやプロセスは作っただけでは成果につながりません。いかに現場で“使われ続ける仕組み”として定着させられるかが肝心です」と語る石渡氏。そのために力を入れたポイントとして、次の3つを挙げました。
- 現場に寄り添った設計にする…営業が直感的に使いたくなるUIや情報の粒度になるよう、徹底的にこだわる。
- 継続支援とアップデート…説明会を開く、FAQを作成するなど、粘り強く支援する。フィードバックを反映しながら、仕組みを進化させ続ける。
- 文化として根付かせる…使うことを前提に、業務サイクルの中へ仕組みを埋め込む。成果が上がる体験を重ねて、“使う文化”を醸成する。
“使われる仕組み”で継続的な成果を生み出す
こうした取り組みにより、MQL/SALともに前年比約2倍を達成。新規受注も増え、施策の精度も向上しています。マーケティングで創出したリードを起点とした商談数も増えており、営業から「質の高いリードが増えて商談化しやすくなった」という声が上がっている他、インサイドセールスからも「お客様の状況や興味が分かる状態でコールできるので、会話のきっかけがつくりやすくなった」と好評を得ていると言います。
また、マーケティング/インサイドセールス/営業が一体化して、データドリブンで動く文化が根付き、マーケティングが戦略部門としての役割を確立しつつあるという大きな変化も生まれています。属人性の高かった運用が仕組みによって再現可能となり、継続的に成果を出せる体制を整えることができたとのことです。
最後に、「成功のカギは、人を巻き込み、自分の味方になってくれるファンをつくり、“使われる文化”を育てることです」と語った石渡氏。現場に寄り添いながら、“共感”を軸にデータドリブンな組織文化を醸成した同社の取り組みを、ぜひ皆様も参考にしてみてはいかがでしょうか。