マーケティングリーダー必見 - ソフトバンクが語る、組織変革に必要なマネージャーの役割とは

2025年8月7日にAdobe User Group – Leaders Meetupが開催されました。今回のテーマは「組織変革を起こすマネージャーの本当の仕事」。ソフトバンク株式会社 法人統括カスタマーグロース本部 本部長の原田博行氏と、同本部 オペレーション部 2課 マネージャーの住谷泰紀氏に登壇いただき、お話を伺いました。

部門間の壁をなくすために重要なマネージャーの存在

オープニングでは、アドビの松井真理子が本イベントのテーマである「組織変革を起こすマネージャーの本当の仕事」に関連する情報として、日本の労働生産性に関するデータを紹介。

それによると、日本の労働生産性はOECD(経済協力開発機構)加盟の38カ国で32位、主要先進国の中でも最下位と、かなり低い水準にあります。松井は、「労働生産性を上げるためには、業務を改善する、効率化する、無駄を省くといった曖昧な呼び掛けではなく、利益をどれだけ増やす、人をどれだけ減らすといった具体的な目標を掲げないと意味がない、と書かれていた本がありました。アドビは、そうした意識を持つマネージャーの方々を支援させていただきたいと思っています」と語りました。

イベントの前半では、2025年4月にソフトバンク株式会社 法人統括 カスタマーグロース本部 本部長に就任されたばかりの原田博行氏と、アドビの松井によるトークセッションが行われました。

原田氏が指揮することになった法人統括カスタマーグロース本部は、ソフトバンクのマーケティングと中小規模のお客様向けセールスを1つにした新しい部門です。

2つの部門を統合した理由について、原田氏は「多様化するニーズに応えるため、それぞれの専門領域に閉じた状態でお客様と向き合うのではなく、カスタマーグロースという共通目標に向かって一緒に取り組める組織を目指しました」と説明。マーケティングとセールスの融合という斬新なアプローチによって、本イベントのテーマでもある「組織変革」を実践したわけです。

原田氏は、法人統括カスタマーグロース本部の発足にあたって、マーケティングが所属する部門であっても他の営業部門と同じように予算を設定し、リスクを取ることを会社に約束しました。

「曖昧だった数字への責任を持つことで、他の営業部門の見る目が変わり、部内のマーケターも、当事者として 『動かなければいけない』 という責任を感じてくれるようになったと思います。さらに、マーケティングとセールスの垣根が取り払われたことで、互いに対話や情報交換を重ね、『カスタマーグロース』という 共通のゴール に向かっていける環境が整ったと思います」と原田氏は自信を示しました。

部門間の壁をなくすために、重要な役割を担うのがマネージャーの存在です。原田氏は日頃から各社員と積極的にコミュニケーションを取っており、単に情報を伝えるだけでなく、発信の重要性を自らの行動で示すことで、社員同士の対話を促しているそうです。

「法人統括カスタマーグロース本部が発足してまだ4カ月ですが、コミュニケーションの効果は着実に表れています。後戻りしないように、地道にやり続けることが大事だと思っています」と原田氏は語りました。

 どうすれば、スピード感を持ったビジネスが実現するのか?

イベントの後半には、原田氏と同じ法人統括 カスタマーグロース本部 のオペレーション部 2課 マネージャーの住谷泰紀氏にも参加いただきました。

オペレーション部 2課は、ソフトバンクの法人顧客向けwebサイトやデジタル広告、メールなど、コミュニケーション手段の制作/運営を担当する部署です。

住谷氏は、20年4月にソフトバンクに入社。入ってみて驚かされたのは、「意思決定から実行までのスピードが、驚くほど速いこと」だったと言います。

「入社したのはちょうどコロナ禍が始まったばかりだったのですが、孫正義会長(当時)から『お客様にマスクを配ろう』という号令が出され、すぐさまその告知サイトの制作を任されました。入社後すぐに在宅勤務を命じられ、まだ他の社員にも会っていない中で、サイト制作を担当することになったのは少々面食らいましたね」と住谷氏は苦笑しました。

それでも、やると決めたら迅速に動き、完遂させようとするソフトバンクの姿勢に感銘を受けたと住谷氏は言います。

組織としてスピード感を持った行動を取るためにも、マネージャーの役割は重要です。原田氏は、「大切なのは、マネージャーが『いつまでにやる』という期限を決めてしまうこと。その期限を経営会議で約束し、部内にもしっかり認識させることです」と、ポイントについて語りました。

また、期限通りにできなかった場合は、「リカバリーを迅速に行わせることもマネージャーの責任」と原田氏は言います。

実際にあった事例として、住谷氏が統括するオペレーション部 2課は、Adobe Experience ManagerEdge Delivery Servicesという機能を使って、webページの表示速度を上げ、ページコンテンツを簡単に作成できる仕組みの構築を進めていました。

ところが、当初の予定よりも開発のスピードが遅れ、このままでは営業部門が予定している計画で新しい仕組みを利用できないことが分かりました。

「仕組みは、あくまでも使い手あってのもの。自分たちのペースで開発を進めるのではなく、使い手の計画をしっかり理解しながらプロジェクトの進捗を管理しなければならないということを学びました」と住谷氏。

このことをきっかけに、住谷氏はユーザーサイドの要望をしっかりと汲み取り、優先順位の高い機能からリリースするといったように、より柔軟で臨機応変なプロジェクト管理を実施。結果、Edge Delivery Servicesを使って新しい仕組みを構築するプロジェクトは、大幅にスピードアップしたそうです。

互いに接する時間が長くなれば、部門間の壁は越えられる

原田氏、住谷氏をお迎えしてのトークセッションに続き、参加者とのQ&Aセッションが行われました。

Q.スピード感を持ってプロジェクトを進めるには、意思決定をいかに権限委譲するかも大事だと思います。ソフトバンクでは、どのように権限委譲を行っているのでしょうか?

住谷氏:「なぜ、これをやるのか?」「どのような責任を持ってほしいのか?」といったことは、普段のコミュニケーションの中で行っています。仕事に取り組むことの意義や、こちら側の期待をしっかり伝え、腹落ちしてもらうことが大切だと思います。

原田氏:私は、何かをやってもらうときには相手にすべて任せて、口出ししないようにしています。専門的なことは、その人でなければ分かりませんからね。ただし、マネージャーとして結果に責任を取らなければならないので、出来上がったものについては率直な感想を述べ、悪いものには修正を求めます。忌憚のないフィードバックをすることが、ある意味、現場への権限委譲につながっているのではないでしょうか。

Q.コミュニケーションが大切だというお話でしたが、上長と話すときは、どうしても萎縮しがちです。マネージャーとして、話しやすい雰囲気づくりを心掛けられていることはありますか?

原田氏:仕事以外のときは昼食やゴルフといった趣味の話をするなど、なるべく話しやすい雰囲気になるように心掛けています。いつでも部下と対話ができるように週5は出社していますし、会議室にこもらず、常にオープンな場所にいるようにしています。

Q.マーケティングとインサイドセールスはカルチャーが異なるため、どうしても交わりにくい部分があるかと思います。何か工夫をされていますか?

原田氏:一番良いのは、なるべく同じ場所で一緒に働くこと。互いに接する時間が長くなればなるほど、人と人として通じ合うものですからね。後は、交わり合いの中で共通言語を作ることでしょうか。マーケティングとインサイドセールスでは、カルチャーだけでなく、言語も異なります。相手に分かりやすい言葉に翻訳しながら対話を重ねることが、互いの理解につながり、カルチャーの融合に結びつくのではないでしょうか。

イベント最後のクロージングでは、アドビの今村康弘が登壇。

原田氏、住谷氏とのトークセッションを踏まえ、「部門が分かれていても、『お客様の成長』を支援するというビジネスの目的は1つ。その目的を果たすために、全員が共通認識を持って取り組むことが、いかに大切かということを学びました。ちゃんとコミュニケーションが取れれば、ビジネスは前に進むのだということを再認識できたのではないでしょうか」と、参加者に問い掛けました。

イベント終了後には、参加者の皆様と、原田氏、住谷氏、アドビのスタッフによるネットワーキングが行われました。今回のテーマである「組織変革を起こすマネージャーの本当の仕事」について、様々な意見交換が行われ、参加者同士の交流を深められていました。

Adobe User Group – Leaders Meetupは今後も定期的に開催する予定ですので、ご興味のある方は、ぜひお気軽にご参加ください。