MA移行で成功する慎重かつ丁寧な準備 - 成果につながる1年間のプロジェクト

ノートパソコンを使っている人 低い精度で自動的に生成された説明

カスタマーサクセスチームで定期開催している「Marketo Studio(通称Mスタ)」。本ウェビナーでは、毎回ゲストのユーザー様をお招きし、Adobe Marketo Engageの活⽤実践例を存分に語っていただいております。今回は、2021年8月25日に開催されたMスタで披露いただいた株式会社キャリアデザインセンター様の他社MAからの乗り換え事例について、アドビ 松井真理子よりご紹介します。

もくじ

  • 他社MAからAdobe Marketo Engageへ移行した3つの理由とは
  • 移行準備
  • 機能調査/設計
  • 実装/調整

他社MAからAdobe Marketo Engageへ移行した3つの理由とは

人材サービス業を展開されている株式会社キャリアデザインセンター様。中でもAdobe Marketo Engageをご利用いただいているのは、2020年に会員数140万人を突破した女性のためのキャリア転職専門サイト『女の転職type』を運営しているメディア事業部です。

そんな同事業部のミッションは、「良質な応募数の最大化」。良質とは、求職者と企業の両者にとって良い応募を指していると言います。Adobe Marketo Engageを導入する前は他社のMAを利用されていたそうですが、「都度、開発が必要になり、やりたいことをスピーディに実行できないこと」「ステージ管理の粒度が荒く、ユーザーときめ細かなコミュニケーションが取れていなかったこと」「施策の分析がしづらく、ボトルネックを検知しにくい状態だったこと」 という3つの課題がありました。Adobe Marketo Engageを導入すれば、「内製でスピーディに実装編集できる」「ユーザー行動ログやフェーズに沿った施策を作成、分析できる」「レポートで容易にボトルネックが可視化できる」 と、これまでの課題を解決できることをご理解いただき、移行に至ったそうです。

キャリアデザインセンター様の導入タイムラインは、「準備」「機能調査/設計」「実装/調整」のフェーズに分けられます。各フェーズにおける具体的な施策の紹介と、移行時に気をつけるべきポイントが紹介されました。

図:他社MAからAdobe Marketo Engage 移行運用スケジュール

移行準備

準備フェーズで行った要件定義のポイントは、「現状施策を把握する」「引き継ぐ施策を決める」「データ連携を検討する」の3つ。

MAをリプレースしていきなり新しいことを始めるのではなく、まずは“既存のコミュニケーション設計に沿った施策をAdobe Marketo Engageに実装しよう”という発想で、旧MAで行っていた施策の名称/配信日時/ターゲット/コンテンツ内容をすべてリスト化。そのうち、良質な応募数の最大化に最もインパクトがあるもの からAdobe Marketo Engageへ移行すべく、引き継ぐ施策を検討されたそうです。旧MAで課題感があり、移行するとなったからには目に見えやすい成果を早い段階で示していく必要があります。そうすれば、移行判断は正しかったと、マーケティングチームへの理解や信頼度が上がり、今後のマーケティング予算への投資にもつながるでしょう。

次に、Adobe Marketo Engageで施策を実装するために必要だったのが、ユーザーの会員登録情報が入った自社DBとAdobe Marketo Engageとの間でのデータ連携です。「データの抽出条件の調整には、非常に時間をかけた」と言うキャリアデザインセンター様では、システム部門と協働しながら丁寧にカスタムオブジェクトの精査を行われました。

そして、ようやくコンテンツ制作に着手していきます。しかし、ここでもいきなりコンテンツ制作を始めるのではなく、テンプレート作成や、色/フォントなどを決め、ガイドラインを策定するところから始められました。ガイドラインが完成したら、HTMLメールのワイヤーとテキスト原稿を作成し、テーブルコーディングの作業に入っていきます。

コーディングが終わり、テスト配信を行うときに必ず行わなければならないのが、徹底的に事故リスクを考慮した「チェックリストを作成すること」。キャリアデザインセンター様の場合、600項目を超えるチェックリストを作成されたそうです。

機能調査/設計

機能調査/設計フェーズでは、既存のMAでは対応しきれなかったライフサイクルステージの細分化を行うところから着手したと言います。具体的には、「会員登録からコンバージョン(求人に対する応募)までのステージ」と、「休眠になるタイミング別のステージ」の2つを細分化することでした。

なぜこの2つに着目したかというと、前者は会員登録してからすぐに応募する人ばかりではなく、様々な求人ページを見て検討を重ねる人も多いことから、それぞれの状況や心境に合わせたコミュニケーションを取ることが重要です。そして後者は、休眠になるタイミングによって、取るべきコミュニケーションが変わってくるからです。

ステージを細分化する際に大切なポイントは、それぞれの ステージに属するユーザー像をしっかりと定義 しておくこと。これにより、この後に設計する収益サイクルモデルの精度が変わってきます。とはいえ、「書き方は単純で良く、“単純ではあるけれど明確に”という絶妙な塩梅で定義することが大切だ」 と言います。お客様のことをよく理解しているマーケターだからこそできる作業と言えるでしょう。

例えば「求人詳細ページにアクセス履歴はあるけれど、応募回数はゼロの人」「会員登録後◯日間、サイトのアクセス履歴がない人」といった粒度で良いそうです。Adobe Marketo Engageの収益サイクルモデルに落とし込んだらどうなるのかも、ある程度イメージをしながら“定量的に”ユーザーを振り分けられるようにセグメントしていきましょう。

セグメントが決まったタイミングで、そのステージにいるユーザーの状況や心境を想像しながら、「その人たちは何を望んでいるのか?」「その人たちにどんな態度変容をしてもらいたいのか?」を定義していきます。そうすることで、「ユーザーに対し、どのようなコミュニケーションを取るべきなのか?」がおのずと見えてくるはずです。

では、定量的なセグメントにするために目安となる数値は、どのように設定していけば良いのでしょうか。キャリアデザインセンター様では、ユーザーをランダムに抽出して、実際の行動履歴から「ステージの遷移にどれだけの期間がかかっているのか」を分析することで、各ステージに属するユーザーの条件を設定していかれました。

それをもとに収益サイクルモデルを作成し、成功パスアナライザーを実装すれば、数値の変化を追いかける準備は完了です。今度は「このステージからこのステージへの遷移率が何%を下回ったらアラートを上げる」といった環境を整えるための数値設計に入っていきます。

キャリアデザインセンター様では経営目標として「サイト全体の総応募数」と「メルマガ経由の応募数」の数値が決まっているため、メルマガ経由の応募数のうち「Adobe Marketo Engage経由の応募数」と、「自社ツールで配信しているメルマガ経由の応募数」の2つのバランスを設計していくこととなりました。

なぜ経路が2つに分かれているのかと言うと、キャリアデザインセンター様ではデータ連携の事情から、きめ細かなコミュニケーションはAdobe Marketo Engageで、バルク配信は自社ツールで、という使い分けをされているからです。そして、様々な検討を重ねた結果、Adobe Marketo Engage経由の応募数は、対前年度比125%を目標とすることになりました。

実装/調整

そして、いよいよAdobe Marketo EngageでPDCAを回し始めます。今回は4つの施策例が紹介されました。

・メール開封率の改善

→Adobe Marketo Engageの機能である「プレヘッダー」を導入したところ、プレヘッダーの実装前後比で49.9%から50.9%に開封率が向上。「1文を追加してチェックボタンを入れるだけなので、Adobe Marketo Engageを使ってメール配信をするなら、やって損はない施策だ」と評価されていました。

Graphical user interface, application Description automatically generated

図:メール編集画面、プレヘッダーの設定

・タギング増を狙った新規メールプログラム作成

→MAでユーザー行動をトラッキングするために必要なタギング。ユーザーのCookieとDBの登録情報を紐付けることです。タギングの手段はいくつかありますが、キャリアデザインセンター様では「メールの文中にあるリンクをクリックしてもらう」という1つの手段しか持ち合わせていませんでした。そこで過去に配信したコンテンツの中から、クリック率の高いコンテンツを選定し、リンクのクリックによるタギング増を狙った一斉配信をAdobe Marketo Engageで行ったところ、タギング率はじわじわと伸び、3カ月で115%までトラッキング可能なユーザーが増加 したそうです。

・既存メールプログラムの効果改善

→Adobe Marketo Engageのメールキャンペーンの数値は、すべて日次で把握しているキャリアデザインセンター様。あるとき、とあるメールキャンペーンでCTRとCVRが落ちていることを検知したと言います。その打ち手として考えたのが、新たにコンテンツを作成するのではなく、該当コンテンツの「ヘッダーを短縮すること」と、「中身(『ノウハウコンテンツ』と『レコメンド求人』)の上下を入れ替えたこと」の2つでした。これだけで CTR180%、CVR160%とV字回復 を果たします。コンテンツは配信して終わりではなく、“数値の変化を即座に検知できる環境 を整えておくことの重要性”を改めて感じた出来事だったそうです。

Graphical user interface, application Description automatically generated 図:求人への到達を早めるためのコンテンツ修正

・ステージ遷移率を上げる新規メールプログラムの作成

→収益サイクルモデルで設定したステージごとの遷移率を見る「成功パスアナライザー」。これにより、求人詳細ページを閲覧してからコンバージョンに至るまでの遷移率が鈍化していることが分かったため、求人閲覧ステージの中でアクティブ度の高いユーザーを抽出し、次のステージへ引き上げるための新規メールプログラムを作成したと言います。ここでアクティブ度の高いユーザーをターゲットにしたのは、休眠になってしまったユーザーを成功パスに戻すよりも、今、何かしらの理由で滞留しているユーザーの背中を押す施策を打ったほうが、より高いインパクトを出せると見込んだからです。この新たな試みにより、前月比で145%の遷移率に回復 させることができたと言います。

今回は他社MAからAdobe Marketo Engageへ移行してから約1年間の活動を振り返っていただきました。「まだまだAdobe Marketo Engageでやりたいことはたくさんある」 とキャリアデザインセンター様は語り、楽しみながら試行錯誤 を重ねていらっしゃるお姿が印象的でした。今後どのような挑戦をされていくのか楽しみです。

https://main--bacom-blog--adobecom.hlx.page/jp/blog/fragments/page-marketo-user-groups