Adobe Digital Economy Index:オンラインインフレが継続~目立つ日用品の値上がり~

COVID-19の感染拡大以降、日用品から電子機器まで様々なカテゴリーの商品でオンライン価格が上昇。2014年からオンライン上の消費行動を追跡するアドビのAdobe Digital Economy Indexから見えた最新のオンライン価格のトレンドを紹介します。

COVID-19のパンデミックは、それまで消費者が持っていた、「大抵のものはオンラインのほうが安く買える」という考えを逆転させました。この背景には、ショッピング需要の急増、サプライチェーンの停滞、そして、値引きなしでも売れる商品カテゴリーの成長があげられます。オフラインほどの急激なペースではないものの、オンライン小売のインフレ傾向は一向に衰える気配を見せません。

小売業全体に占めるEコマースの割合が高まるにつれ、オンラインインフレは消費者の懐を圧迫する大きな懸念となっています。サプライチェーンの問題が解決したとしても、小売業者はフルフィルメントコストの削減やマージンの確保を図ろうとするため、需要の増加が値引き機会の減少に直結する可能性があります。Adobe Digital Economy Index(2014年以降のオンライン価格を追跡)の最新の数値と分析結果は以下の通りです。

全体的な傾向

2021年7月の米国におけるオンライン価格は前年同月比で3.1%上昇し、前月比では0.7%低下しました。現在、オンラインではオフラインよりも価格の変動が大きく、月ごとの増減は予想の範囲内となりました。前月(2021年6月)のオンライン価格は前年同期比2.3%増で、前月比0.6%増でした。

オンライン価格が毎年平均3.9%下落していた2015年から2019年までを基準に比較すると、ここ数か月の傾向として、Eコマースの価格トレンドが反転していることがわかります。ちなみに、オフラインの価格を示す消費者物価指数(CPI)は、2021年7月に前年同月比で5.4%、前月比で0.5%の上昇となっています。

以下のグラフは、消費者物価指数とアドビのデータ(「デジタル価格指数」を意味する「DPI」で示しています)を比較した推移です。このグラフは、アドビが初めて米国のオンライン価格の追跡を開始した2014年1月を基準に、毎月の価格変化を示しています。パンデミックの始まった2020年3月に引かれた点線は、それまでのトレンドが方向転換し、オンラインインフレが始まった時期を示します。

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カテゴリー別分析

Adobe Digital Economy Indexが追跡している18のカテゴリーにおいて、パンデミック前(2015年~2019年の平均)と比較すると、オフィス用品を除くすべてのカテゴリーで2021年7月に価格が上昇しました。注目すべきは、消費者にとって定番となっている日用品がより高価になっていることです。例えば、7月の食料品の価格は、6月の0.47%およびパンデミック前の0.51%よりも高い上昇率1.28%を示しています。

パーソナルケア製品などその他の日用品においては、パンデミック前に平均1.23%値下がりしていましたが、2021年7月には同程度(1.23%)上昇しました。ペット用品も同様の傾向で、パンデミック前の価格が平均で1.12%下落していたのに対し、7月は1.37%上昇しました。また、7月の非処方箋薬の価格は5.66%と、COVID-19以前の平均0.01%に比べて大幅に上昇しています。

電子機器とコンピューターは、消費者が毎年より良い製品をより安く購入したいと期待を寄せるEコマースの代表的なカテゴリーとして知られていますが、オンラインでもオフラインと同様のインフレ傾向が続いています。パンデミック以前のコンピューターの価格は、9.24%の下落が通常でしたが、2021年7月には6.97%しか下がっていません。また、電子機器は、パンデミック前の9.06%に対し、7月は2.04%の下落にとどまりました。

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不動産市場が活況を呈し、消費者がより多くの時間を自宅で過ごすようになったことで、家具/寝具、ホーム/ガーデン、工具/ホームセンター、家電製品などのカテゴリーでオンライン価格のインフレが持続しました。これは、パンデミックの影響で消費者の行動が変化し、ソファやガーデニング用品などをオンラインで気軽に注文する人が増えたためです。これらのカテゴリーでは電子機器やコンピューターなどに比べて大幅な値引きがないため、需要の高まりがこのまま継続するのであれば、引き続きオンラインインフレを牽引していくことになるでしょう。

Adobe Digital Insightsの主席アナリストであるヴィヴェク パンドゥヤ(Vivek Pandya)は、こう述べます。「オンラインショッピングがより一般的になり、消費者が日用品をEコマースで注文することに慣れてきていることから、オンラインのインフレ率は今後も上昇し続け、オフラインの価格とより密接に連動していくものと思われます。デジタル経済の拡大に伴い、オンライン価格の動向は、経済全体のインフレ率の測定方法や理解に大きな影響を与えるようになるでしょう。実際に、2021年の最初の7か月だけで、消費者はすでに4,810億ドル以上をオンラインで消費しており、2019年の同時期と比較して61%増という驚異的な成長を示していることを考えてみてください。」

分析方法について: Adobe Digital Economy Index(DEI)では、Eコマースにおけるの価格を追跡するにあたって、Fisher Ideal Price Index(フィッシャー理想物価指数)を使用しています。これは、基準時(例:ある月)と比較時(例:その前月)それぞれで購入された同一商品の数量をもとに、カテゴリーごとに価格変動を算出するものですが、アドビの分析では、前後する2つの月に購入された製品の実際の数量によって重み付けをしています。DEIでは、Adobe Analyticsを使って測定した小売サイトへの1兆回の訪問と、18の製品カテゴリーにおける1億以上のSKUを分析しています。商品分類は、CPI Manual(消費者物価指数マニュアル)で定義されたカテゴリーに準拠し、機械学習と手作業を組み合わせてアドビが行っています。この分析手法は、シカゴ大学ブースビジネススクール経済学教授であるオースタン グールズビー(Austan Goolsbee)氏と、スタンフォード大学経済学部教授であるピート クレノー(Pete Klenow)氏という2名の経済学者の協力を得て開発されました。

※本記事は、2021年8月26日にアドビが投稿したブログの抄訳版です。