アドビ、世界の1万人以上のマーケターを対象とした調査レポート「Digital Trends 2021年版」を公開

2021年のマーケティングのビッグシフトを紹介

「2021年も引き続き、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大(パンデミック)が消費者行動と企業のマーケティングに大きな影響を与え続けるでしょう。」

これが、アドビがeConsultancyと共同で世界中の13,000人以上のマーケターとIT専門家を対象に毎年行っている調査レポートの最新版「Digital Trends 2021年版」から得られた知見です。昨年のレポート「Digital Trends 2020年版」と比較すると、今年は企業がマーケティングの優先事項を大きくシフトさせていることが判明しています。今年で11年目を迎えるこの調査では、世界中のマーケティングおよびITリーダーが、顧客を一個人として、また従業員を中核的資産として捉え、デジタル顧客体験を2021年の成長および戦略の主な推進力として位置づけていることが明らかになっています。

アドビのインターナショナルマーケティング担当バイスプレジデントであるアルバロ デル ポゾ(Alvaro Del Pozo)は、こう述べています。「2020年に起きた数々のできごとは、デジタル変革を加速させました。本格的な導入は数年先だろうと思われていたトレンドやテクノロジーが現在の最優先検討事項となり、あらゆるビジネスが一斉に、同じ課題に対処することを余儀なくされました。普及が進んだテレワークや、これまでと違う行動原理で動くオールデジタルな消費者たち、加えて自社の従業員と消費者両方の良好な状態を示す『Well-being(ウェルビーイング)』の尊重などがそれです。

以下に、2021年の予想としてレポートで示されたデジタルトレンドのいくつかを掘り下げてご紹介します。

これまでと異なる新たな購買行動をとるデジタルでの顧客

2020年は企業に予測不全な状況をもたらし、ほぼすべての世代とセグメントの顧客(デジタルに慣れていない一部顧客でさえも)が加速的にオンラインを利用するようになりました。本レポートによると、顧客行動の変化はすべての業界に影響を及ぼし、B2C(63%)、B2B(57%)、消費財(72%)、製造業(56%)のすべてに、デジタルを利用する顧客の増加がこれまでになく顕著に認められます。

デル ポゾはこう続けます。「パンデミックが去った後でもデジタルが日常化した状態はずっと続くでしょう。そうなると、デジタルはもはやマーケティング、顧客サービス、製品の単なる構成要素ではありません。顧客体験とビジネスの成長の中核となる推進力としてデジタルを位置づける必要があるのです。」****

2020年の勝者は、パンデミック発生時にすでにデジタル顧客体験を完備していた企業

パンデミック以前から顧客体験(CX)に戦略的に取り組んでいたデジタル顧客体験の先進企業にとっては、過去5年間の投資が実を結んだ形となりました。今回の調査によると、デジタル顧客体験提供の観点で標準的だった企業群と、標準より優れていた企業群を比較した際、後者の70%が2020年に良好な業績を残したと回答し、前者の3倍という結果となりました。実際、新規ジャーニーの検知やマーケティングアトリビューションなど「意味のあるインサイト」を含む強固な分析能力を構築済みの企業では、「顧客がデジタル体験について肯定的である」と回答した割合が、インサイトのレベルが低い同業他社に比べて2倍以上(71%対31%)となっていました。

「デジタルの成熟度がパンデミック下の財務パフォーマンスに影響したことに疑いの余地はありません。それは、COVID-19以降の経済に移行したときでも差別化要因であり続けるでしょう」と、デル ポゾは述べます。

インサイトの迅速な取得が2021年の最優先課題に

2020年に起きたデジタルエンゲージメントの急激な増加により、CXの専門家は消費者の行動データをよりスピーディーに把握する必要性を理解するようになりました。このことは、調査によっても裏付けられています。リアルタイムインサイト取得のための強固な基盤を備えていると回答した企業は、2020年下期にビジネスがより成功したことを報告しています。さらに、マーケティングの価値を具体的に証明できる企業では、2021年に向けてより多くの予算を獲得し、デジタルエンゲージメントの拡張にさらに野心的に取り組んでいます。

デル ポゾは、デジタルに成熟したこれらの企業は、顧客獲得やリテンション(顧客関係管理)を筆頭に、マーケティング全体への投資を増やす傾向があると指摘します。****

2021年のマーケティングとコミュニケーションでは、ブランドパーパス(ブランドの社会的な存在意義)がますます重要に

今日の消費者は、自身が企業から得られる価値を理解したいと考えています。ブランドパーパスを軸にコミュニケーションやマーケティングを実施することが今年の大きなトレンドとなり、企業理念を主軸に置いた活動が顧客ロイヤルティを深め、戦略推進の原動力になると見られています。企業理念の影響を理解するため、eConsultancyは、アドビのDigital Trends調査に回答した企業のうち、ブランドパーパスを定義している871社に調査を実施しました。それによれば、自分の好きな企業のブランドパーパスを説明できる消費者は全体の27%に過ぎませんでした。一方、企業の従業員の56%が、自分の組織は理念を定義していると回答し、82%が、そのことが個人的に良い影響を与えていると答えています。

デル ポゾは、こう説明します。「ブランドパーパスを定義している企業は、競合他社よりも優れたパフォーマンスを発揮し、より幸せで楽観的な従業員を擁しています。共鳴できる企業理念によって、四半期ごとの収益追求だけでない企業価値を示すことができれば、そのビジネスに携わる者全員が鼓舞されます。」

共感こそが顧客体験の未来

本レポートでは、2021年のもう1つの重点分野が、カスタマージャーニーの分析とジャーニーへの適応であることも明らかにしています。パンデミックの期間中、多くの企業にとって顧客の動機や課題の把握が最大の関心事でした。ところが、カスタマージャーニーの途中にいる人々の行動要因や阻害ポイントについて「意味のあるインサイトを得ている」と回答したEMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ)企業は5社のうち1社に過ぎませんでした。阻害ポイントはしばしば、消費者の決断や行動のタイミングで発生し、不安や懸念から希望や興奮に至るまで、さまざまな感情を呼び起こします。カスタマージャーニー全体を見渡したうえで阻害ポイントをより深く理解できれば、企業はより深いレベルで顧客とつながることができます。

だからこそ、「顧客体験管理の進化が示すのはカスタマージャーニーの分析とジャーニーへの適応であり、それが2021年にマーケターをはじめとするCXの専門家が注力すべき優先事項」だと、デル ポゾは締めくくります。

※本記事は、2021年2月2日にアドビのエンタープライズソートリーダーシップ エグゼクティブエディターのジゼル アブラモビッチ(Giselle Abramovich)が投稿したブログの抄訳版です。

ご紹介したこの調査結果の詳細については、「Digital Trends 2021年版」レポートをご覧ください。

Digital Trends 2021年版
https://www.adobe.com/jp/offer/digital-trends-2021.html