早期の収益サイクルモデル構築で、売り上げ向上に貢献
株式会社ビープラウド
1.5倍
BtoCの売上1.5倍を達成
課題
同社初のBtoC直接販売サービスの認知度アップ
成果
BtoCの売上1.5倍を達成
無料試用のCV率56%
新規有料化会員が120%増加
人工知能(AI)や機械学習などの分野でも活用され、近年人気のプログラミング言語Python(パイソン)。株式会社ビープラウドでは、先駆けて2008年よりPythonを主言語として採用し、システム開発事業をはじめ、Pythonのプログラミング教育事業、技術書執筆・監修事業なども展開し、業界内で注目を集めている。
その教育事業の一つとして、17年4月にリリースしたのが、Webブラウザで学べるPythonオンライン学習サービス「PyQ(パイキュー)」。同社で初となる、BtoCで直接販売するサービスの認知度アップを図るべく、どのようなマーケティング施策を展開しているのか。マーケティング/PRの大崎 有依氏に聞いた。
導入3カ月で収益サイクルモデルの構築、稼働を目指す
ビープラウドでは専任の営業担当者が在籍しておらず、顧客との打ち合わせもすべて現役のエンジニアが行うのが特徴。よって、PyQのセールスに関しても、開発陣が率先してマーケティングの勉強会やデータドリブンの環境構築などを実践しており、その過程でMA(マーケティングオートメーション)に着目。17年11月より導入検討をスタートした。
MAの中でも機能性や導入支援サービスの充実度からAdobe Marketo Engageに注目し、18年5月に導入となった。「データ同期もエンジニアが3日間程度で作業を終え、導入直後からAdobe Marketo Engage担当の方のコンサルを受けながら作業を進めていくことができました」と大崎氏は語る。
コンサルタントの助言も受け、まず取り組んだのが収益サイクルモデルの構築だ。「メールアドレス取得からロイヤルカスタマーまでのカスタマージャーニーマップを作成し、それに基づき収益サイクルモデルを構築。3カ月内に中長期的な関係構築を実現する機能であるエンゲージメントプログラムを稼働することを目標にスタートしました」。
カスタマージャーニーマップの作成では、エンジニアも加わり参考書籍を基に、週1回1時間のペースでワークショップを4回ほど開催。
プロジェクトの早期からエンジニアが加わるのは珍しいケースだが、「設定した施策の目的やKPIの意味を、チーム全員で共通認識として持つことができたのは大きな意味があったと思います」と指摘する。
さらに早期の段階で収益サイクルモデルの構築に着手したもう一つのメリットが、リードの遷移をクリアにすることで、見えていなかったボトルネックが可視化されたこと。エンゲージメントプログラム稼働に際しても、課題を反映した形で効果的に推進できたという。
ペルソナに沿ってメールコンテンツも工夫
では、実際にどのような課題が浮上し、具体的な施策を打っていったのか。
まず1つ目の課題は「購入以前のリード獲得方法がなかったこと」。
リード流入の入り口がなければ、施策による育成もおぼつかない。その解決策として設定したのがPython言語の最新情報・学習情報などを配信するメールマガジンの配置だ。
当時、口コミなどですでにPython経験者の間ではPyQユーザーも増えつつあったというが、ユーザーの裾野を拡大するべく、メールマガジンの内容も「プログラミングへの関心醸成」からスタートし、「Pythonへの関心」→「オンライン学習への関心」と推移し、製品購入検討に至る「無料試用」にまで育成・醸成するプロセスに基づき作成。
「ペルソナ設定の際には、『初心者にこそ使ってほしい』『Python、PyQの魅力を広く知ってほしい』と、エンジニアとも徹底して話し合ったプロセスをメルマガに反映。PDCAを回しながら、その後のコンテンツ改善に生かす仕組みの構築にもつながりました」
メルマガの内容は独自のオウンドメディアとも連携。両サイドから無料試用プログラムに誘導し、無料試用CV率アップに注力した。
加えて無料試用から購入フェーズに至る有料化率向上に向けては、2つ目の施策として無料プログラム体験中に学習コンテンツを薦めるステップメールを配信。
「7days Pythonチャレンジと称し、7日間、"プログラミングとは?"からPythonを学べるメールプログラムまで送信し、ゲーム感覚で課題クリアを楽しめる内容を工夫しました」
さらに収益サイクルモデル構築時に浮かび上がったもう一つの課題が、無料試用の際、必要となるID作成時に、多くのユーザーがクレジットカード登録まで至らず離脱してしまうこと。
1200人以上のリードが離脱していたことが分かり、何か手を打たねばと設定したのが2通のメール。一つがID作成が未完了であることを伝えるもの、もう一つが1週間後に無料体験プランを紹介するリコメンドメールだ。
「例えば電車内などで気軽にID作成を行い、クレジットカード登録の段階で後回しにして、そのまま意外に忘れているケースも多いのではと推察しました。またカード登録に心理的ハードルを感じる方向けに、無料試用の間は決して課金されないこともメール内に明文化し、しつこくない程度に無料体験プランを再度、お薦めするメールを送るようにしました」
新規有料化会員120%増を達成
ではこれら3つの施策により、どのような成果が上がったのか。
リード獲得の入り口のKPIとして挙げた、未購入リード獲得件数は0件だった状態から、常時300件の育成リードを確保。メールマガジンによる無料試用のCV率は56%を達成した。
また、無料試用開始からの有料化率は20~71%に上り、新規有料化会員は120%の増加を実現。
さらに1200件に及ぶ離脱リードからは240件の有料会員への転換(リサイクル)に成功し、その後も継続的に施策を続けることで離脱リードのリサイクル率1%をキープしているという。
「これら成果の結果として、Adobe Marketo Engage導入から1年で、BtoCの売上だけで1.5倍を達成しました」と大崎氏。
定性的な成果としても、開発チームとの連携を生かし、購入後のリードの動きを視覚化できたことで、PDCAを回しながら、データドリブンマーケティングを意識したシステム開発、コンテンツ改善につながっている点を挙げる。
マーケティング部門と開発部門の連携については、一般的には難しい課題とされがちだ。同社でスムーズなチームワークが実現できている背景には、「エンジニアとのコミュニケーションに関しては"主観"を入れず、成果を"客観的な数字"で伝えることに注力しています」と大崎氏。
マーケティングチーム内では先行指標であるクリック率などのKPIも共有するが、開発チームとの会議では、先に挙げた無料試用のCV率、有料化率といった売上につながる最終的な出口の数字を中心に共有。
それも前提として収益サイクルモデルに対する共通認識があるためで、「数字の共有だけで成果が伝わるのはレポーティング作業の省力化につながっています」と大崎氏。
営業担当者がいるような会社の場合は、リードデータ更新などに人力が加わる分、また違った形での密な連携が必要となるのでは、と指摘する。
アナリティクス業務の強化によりレポーティングの精度アップを目指す
3カ月という短い期間で施策のベースを作り、着実に成果を上げている同社だが、今後の展望として大きく3つを挙げる。
1つが、すでに着手しているBtoBプランへのAdobe Marketo Engageの活用。すでに単発のプログラムは稼働しており、売上に関しても効果が出始めているという。
2つ目がレポーティング作業のさらなる自動化と精度向上。「新メンバーとしてアナリティクスに強いデータサイエンティストが加わったので、エンジニアとも協力しながら日時データの集計作業の自動化を進めていきたいです」。
3つ目に挙げるのが、Adobe Marketo Engageを使いこなせるメンバーの育成だ。これについては19年に新たにコーディングができるメンバー、ライターの2名が加わり、フォームの実装作業やコンテンツ作成もチーム内で分担。メルマガの内容や配信頻度もさらなる改善を図っているという。
Adobe Marketo Engageをコアに会社全体で連携し、スピード感を持って施策を展開し、PDCAを回しながら施策・プロダクトの改善、成果創出に取り組む同社。テクノロジーへの知見の高さも生かしたビープラウドならではの、さらなるチャレンジにも注目したい。
取材日:2020年5月8日
関連するトピックス
/jp/fragments/customer-success-stories/cards/d1097f1905b08be881180faf4ddaf80d
その他の関連トピックスを見る