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営業組織の支援を起点としてAdobe Marketo Engageを導入し、全社マーケティング活動へ発展

サイボウズ株式会社

設立

1997年

所在地:東京都
https://cybozu.co.jp/

約20万件

リードの確保

導入製品:

Adobe Marketo Engage

課題

  • 商談につながらなかったり、失注やペンディングになってしまったリードの活用ができておらず、フォローされることがなかった
  • リードの行動を把握するツールがなく、アプローチのタイミングは営業担当者の経験と勘に頼る状況だった
  • 営業が管理しているリードは、直接問い合わせとして入ってきた案件などに限られ、リードの絶対数が不足していた

成果

  • 営業にわたった後で商談化しなかったリードをAdobe Marketo Engageでリサイクルするプログラムを導入。取りこぼしを解消した
  • リードの行動をAdobe Marketo Engageに登録し、kintoneアプリと連携することで営業担当者に自動通知。アプローチのタイミングを最適化して属人化から脱却した
  • 他のMAツールや購買システムなどで独自に管理していたリードをAdobe Marketo Engageに集約し、約20万件のリードを確保

「営業部門で最初に導入したAdobe Marketo Engageですが、良さを伝えていくうちに、社内で“使ってみたい”と手を挙げる仲間が増えていきました」

事業戦略室 Sales Opsグループ 吉見 梓氏

チームワークを支援するツールを開発する企業であるサイボウズ株式会社は、業務現場の課題を解決するローコード開発ツール「kintone」の販売を拡大してきた。kintoneの直販部門では、営業活動に注力しながらリードのフォローを進めることが困難に陥っていたという。そこで同社が進めた、営業視点による顧客体験向上のための施策とは。

営業支援の目的でAdobe Marketo Engageを導入

サイボウズの営業部門は、販売代理店経由による「間接販売」と、直接企業の担当者にアプローチする「直接販売」部門に分かれている。同社の吉見梓氏、高橋栞氏は、このうち直接販売を担当する営業組織を支援するSales Ops部門に所属している。

同社では自社製品であるkintoneで開発した顧客管理アプリを導入しており、顧客の商談状況は詳細に管理できていたものの、商談に至らないリードの情報は社内に散在しており、同社全体として何件のリードが存在しているのか把握できていなかったという。

働き方改革が叫ばれていた2019年から、コロナ禍によるリモートワークが始まった2020年は、DXの取り組みが拡大し、同社のkintoneへの問い合わせも急増。月間300~400件にも達する数の新規問い合わせが、直接販売の営業部門に入っていたという。営業部門の対応は優先度の高いリードに集中し、それ以外への対応ができずにいた。

この頃の状況を、高橋氏は次のように語る。「リードに対して営業がアプローチしても、そのときの検討度合いが低く商談につながらないリードは放置されていました。また、すぐではないが、検討するという意志がある層に対しても、多忙な営業がフォローすることは困難でした」

当時Sales Ops部門のマネジャーを務めていた谷口修平氏は、構造的な問題も指摘する。「ベテランの営業が、『そろそろこのお客様にフォローしよう』『セミナーの案内を1本入れておくタイミングかも』といった、勘と経験に頼ったスタイルで商談をまとめていく傾向が顕著でした。属人化した状態を改善する必要がありました」

事業戦略室
副室長 国内ソフトウェア事業統括
谷口 修平氏

この時期、営業に確度の高いリードを渡すためにインサイドセールス部門を設置したものの、リードの活用を進めるためにはMA(マーケティングオートメーション)ツールが不可欠だという結論に至り、Sales Ops部門ではツールの検討を開始。

一方で、同社には別にマーケティング部門が存在していた。だがその主たる目的は、製品に興味を持ってくれた顧客への認知度向上であり、顧客管理の視点は入っていなかったという。そのため、マーケティング部門では独自のMAツールを導入していたが、匿名のリードに対しての行動を把握する意味合いが強く、営業との連携もされていなかった。その結果、同一の顧客に関する情報が、営業とマーケティングで別々に管理されている状態だった。

こうした状況下、Sales Ops部門では営業支援を目的にしてMA製品であるAdobe Marketo Engageを導入し、商談につながるリード(SQL)の最大化に向けて一歩を踏み出したのだった。

Adobe Marketo Engageに全社のリード/社内の顧客情報を集約

Sales Opsチームで、Adobe Marketo Engageの導入を担当した高橋氏は、kintoneで作られた顧客管理アプリとAdobe Marketo Engageのつなぎ込みを主導。「システム的な連携に関しては、当初考えていた部分はすべてクリアすることができました。開発中は課題にぶつかっても、私たちの目的をアドビのコンサルタントと共有し、一緒に手段を探ることで、自分たちも手を動かしながら解決していくことができました」(高橋氏)

事業戦略室
Sales Ops Group
高橋 栞氏

1年ほどの開発期間を経て、2020年10月にAdobe Marketo Engageは本稼働を開始し、イベントの告知メールの配信などで活用。その少し後の2021年5月に、吉見氏がSales Opsチームに合流。営業企画部門に所属していた吉見氏は、デジタルマーケティングについては未経験だったが、ここから営業支援の取り組みをスタートさせたという。

進めたのは、営業がアプローチできなかったリードのリサイクルと、リードへのフォローのタイミングを自動的に通知する仕組みの構築だった。

リードのリサイクルについては、kintoneでリードのデータを管理するためのアプリを作成。リードの情報にステータスを設定し、営業が失注、または商談に至らずとしてドロップしたリードに「リサイクル」のステータスを付与する。するとそのリードは自動的にAdobe Marketo Engageのエンゲージメントプログラムのメンバーに追加され、メールナーチャリングの配信が行われる。

kintoneアプリで管理するリード情報には営業担当社の名前も入っているため、ナーチャリングのメールの送信者はその営業担当者の名前で送ることができた。送ったメールに対して開封率やクリック率を計測し、顧客の反応を見ながらメールのシナリオを調整することが可能となった。

また、営業へのフォロー通知は、Adobe Marketo Engageのカスタムオブジェクト機能を活用。それまで社内の担当部署がバラバラに管理していたセミナーやイベントの出欠、製品の試用登録といった情報をAdobe Marketo Engageに集約し、リードの行動がカスタムオブジェクトに登録された際、kintoneのリード管理アプリ経由で営業担当者にアラートとして届くようにした。「リサイクルに回ったリードが自動的にフォローされ、その反応が通知されてくるので、営業担当者は自分たちの仕事に集中して、パフォーマンスを発揮できるようになりました」(吉見氏)

この2つの施策によって、営業の業務改善とリードの再活用が一気に進められたものの、Sales Opsチームではまだ課題を感じていた。それは、社内には営業が有効活用できていないリードがたくさん眠っていることだった。

「この段階では、Adobe Marketo Engageで管理しているのは、営業が把握しているリードだけでした。そのため、チャネル別の商談化率や契約率を出すことができず、施策の有効性を判断できていませんでした」(吉見氏)

例えば展示会やイベント、リージョナルや他部門のSales/Opsが管轄していないセミナーの申込は、別のアプリを利用しており、Adobe Marketo Engageとの直接連携はできていなかった。そのため、kintoneアプリやスプレッドシートでリストを整理し、営業との情報共有をへてISに送客して架電をしてもらっていたが、送客までに時間がかかってしまっていたことから、イベント直後の熱量が高いタイミングを逃していたという。

そこでSales Opsチームでは、顧客情報を管理している各kintoneアプリとAdobe Marketo Engageとの連携を積極的に推進。マーケティング部門が管理している別のMAツールの情報もAdobe Marketo Engageに統合し、顧客に関する情報の一元化を図った。

「別のMAツールで行っていた施策をすべて引き続き実施できる前提で、マーケティング部門の担当者と協力して、移行や購買システムとの連携を進めました。切り替え時には緊張しましたが、無事に引き継ぐことができました」(吉見氏)

事業戦略室
Sales Ops Group
吉見 梓氏

ウェビナーの視聴状況も把握

吉見氏は、さらなるリード獲得とMAへの実装を進めた。

同社ではライブで行っていた2つのウェビナーをオンデマンドに切り替えることで、準備や運営の工数を1年間で252時間削減。これに伴い吉見氏は、オンデマンド配信の視聴情報を、Adobe Marketo Engageに取り込み、視聴後にキャンペーンを行うこととした。視聴率が8割以上のリードには翌日インサイドセールスからのフォローを行うことで、開封率約45%、クリック率20%以上という高いレスポンスを獲得。オンデマンド化による視聴数の低下もなく、MAとの連携によって月間70~80件のリードを安定して獲得できているという。

「オンデマンドウェビナーは好きな時間に見ることができるため、関心が低いリードも含まれます。そのぶん、視聴率によって施策を切り替えることは重要です」(吉見氏)

加えて、Zoomを使ったライブのウェビナーについても、Adobe Marketo Engageとの連携を実現。マーケティング部門がAdobe Marketo Engageを使うようになったことで、現在kintoneセミナーの約8割はこの方式で運営している。さらに、web上の「導入相談フォーム」もAdobe Marketo Engageによる管理に移行した。

この3つの取り組みにより、現在約20万件のリードをAdobe Marketo Engageに格納することに成功。営業への問い合わせを待っていた状態と比べて、格段に多いリードを安定して確保できるようになった。

販売代理店支援にもMAを活用したい

こうした営業支援の取り組みが評価され、吉見氏は「2023 Japan Adobe Advocates」を受賞した。「Adobe Marketo Engageという1つの製品を通じて、社外のみなさんと勉強する機会と刺激をいただいています。何より嬉しいのは、社外のエキスパートの方々と出会えたことで、得られたノウハウを社内に持ちかえり、お客様のために活用できることです」と語る。吉見氏は、Adobe Marketo Engageとkintoneを組み合わせて活用するユーザーコミュニティの「kinKETO(キンケト)」発足人でもあり、両ツールを同時に使うユーザーに情報共有の場も提供している。

今後のSales Opsについて、谷口氏は「現在は、Adobe Marketo Engageを直販部門だけで活用していますが、より取引量が多い間接販売の領域でも、販売代理店支援のツールとして活用していきたいと考えています」と話す。

販売代理店経由の顧客と直販の顧客は、重複や検討段階のズレなどがかなり多いのではないという仮説もある。それをAdobe Marketo Engageに統合して可視化できれば、顧客体験をさらに向上することができるとみている。

高橋氏は、Adobe Marketo Engageの導入によって可能になったリードのリサイクル、ナーチャリングの精度をさらに上げることで、商談率の向上を目指していきたいと語る。

また吉見氏は「Adobe Marketo Engageを活用して、接点に合わせた柔軟な施策を続けることにより、幅広いお客様の体験を向上することができます。これからもお客様の支援になるコミュニケーションを続けていきたいと思います」と語った。

※掲載された情報は、取材当時(2024年2月)のものです。

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