グロービスが挑むMarketo Engageを中心に据えた組織改革
株式会社グロービス
株式会社グロービス
全領域を網羅した顧客とのコミュニケーション
年間2,000時間の作業削減
東京・大阪・名古屋・仙台・福岡の全国5つの常設キャンパス、水戸・横浜の2つの特設キャンパスに加え、オンラインでの受講も可能な国内最大のビジネススクール、グロービス経営大学院(以下、グロービス)。1992年に開校し株式会社グロービスが運営するグロービス・マネジメント・スクールの受講生も加えると累計受講者数は約17万人に上り(2019年8月時点)、経営に関する「ヒト」「カネ」「チエ」の生態系を創り、社会の創造と変革を行っている。
そんなグロービスのMarketo Engage活用を率いるのは、マーケティングチーム マネージャー 柳田 佳孝氏。15年に1人でMarketo Engageを導入して以来、様々な苦難を乗り越えながら、今では80人超のスタッフが、日々Marketo Engageを活用するまでに育て上げた。導入から約1年後に取材をした16年当時も振り返りつつ、柳田氏の挑戦の軌跡をたどる。
グロービスのマーケティングチームは、総勢25名。柳田氏が担当しているCRMの他に、Webコミュニケーション・ブランド・データ分析を主に担当する4つのチームから成る。柳田氏の率いるCRMチーム以外のマーケティング担当者はMarketo Engageを触ってはおらず、逆に顧客と接している部門全体の8割強に当たるスタッフがMarketo Engageを日々実務で活用しているというから驚きだ。
Marketo Engageの導入当初は、入学前の見込み顧客に対し、顧客の検討度に応じて、知りたい情報をベストなタイミングで提供することにより、体験クラスの申し込みへつなげることが目的だった。
Marketo Engage導入前後を比較すると、メール経由での体験クラスの申し込みが2倍超に増加したり、AdBridgeを活用したFacebook広告のCPAが半減するなど、定量的な成果を上げた。加えて、データを基にマーケティングやセールスを行う意義がスタッフ間に浸透したことにより、その後、約2年をかけて、全キャンパスで約30名がMarketo Engageを活用しながら、日常的に顧客コミュニケーションを行うようになっていったのだ。
「Marketo Engageの活用において昔から変わらず今も追求し続けているのは、マーケティングのROIを高めながら顧客提供価値をどのように最大化していくか。今では、単にコンバージョンを増やすだけでなく、"グロービスを知って、入学して、卒業する。さらには卒業後、一生涯にわたるキャリアのサポートまで"の全領域を網羅した顧客とのコミュニケーションを、Marketo Engageで設計するようになっています」(柳田氏)
「単に
コンバージョンを 増や すだけで なく、 "グロービスを 知って、 入学して、 卒業する。 さらには 卒業後、 一生涯に わたる キャリアの サポートまで "の 全領域を 網羅した 顧客との コミュニケーションを、 Marketo Engageで 設計するように なっています」
マーケティングチーム マネージャー 柳田 佳孝氏
入学前の見込み顧客に対する施策では成功を収めていたものの、「在学生や卒業生のエンゲージメント向上を図るためには、学校運営を目的として設計された既存システムでは限界がある」と感じていた柳田氏。
Marketo Engageを中心に据えた顧客コミュニケーション環境の実現を目指し、既存システムをSalesforceに置き換えて、Marketo Engageと連携させた。このプロジェクトにおいて、柳田氏のプロジェクトチームは社長賞を受賞。グロービスが最も重視している大学院の入試への出願数も大幅に増加しているという。
もちろん、これだけの業務改革を行う上で、抵抗勢力がまったくなかったわけではない。しかし、システム基盤の刷新によって、マーケティング・セールス・カスタマーサポートの3つの顧客接点の要で、Marketo Engageがなければ業務が回らない、あるいはより付加価値のあるサービス提供ができない状態を業務設計とシステム設計のレベルから作り上げたことで、どうにか業務改革を成し遂げることができたと言う。セールスやカスタマーサポートの現場でMarketo Engageに関して何かわからないことがあったら、すべて自分に問い合わせが入るという苛酷な状況の中で、柳田氏を突き動かしたのは、「スタッフ全員がマーケターになれば、必ず強い組織になれる」という熱い想いだった。
「幸い、グロービスのスタッフは顧客と組織目標に本気で向き合う人たちが多いので、『Marketo Engageを入れることで、これまで解決できなかった課題が解決できるようになる。そうすればお客様もうれしいし、現場の業務効率化も図れる』と説くと、比較的スムーズに理解してもらえました。裏側の設計を地道に考えたり、大量かつ地道な設定作業をミスなく行うのは大変でしたが、実際に作ってしまえば、後は早かったですね。テレビ会議で各キャンパスと高頻度にミーティングをしながら、あるキャンパスで生まれたベストプラクティスを別の拠点にも展開する形で進めていきました」と柳田氏は語る。
システム刷新が終わり、次に柳田氏が着手したのは在学生と卒業生に対する施策だった。在学生に対しては、学習サポートや授業を欠席した人向けのフォローアップ、履修登録やキャリア相談の促進など、Marketo Engageを通じて、様々なサポートを行っている。また、卒業生に対しても、有益な情報提供を行いながら、長期的に顧客ロイヤリティが高い状態を保つための施策を行っている。
施策の具体例を挙げてみよう。Marketo Engage導入前はほとんどできていなかった、卒業生向けのメール配信。今では毎週配信しているという一斉メールの開封率は40%前後だという。グロービスでは以前、学生同士の連絡手段としてメーリングリストを活用していたが、システム刷新を機に、学生同士がつながれる場としてクローズドのSNS機能を実装。在学生や卒業生がより活発なコミュニケーションを図れるようにした。そのクローズドSNSでは学生が所属する企業の宣伝や求人情報を出してもよい。SNS内の投稿の中からいいね!やコメントの多いものなどをオススメ投稿としてピックアップし、卒業生にメールで配信しているのだ。
在学生に対するフォローアップメールの開封率も70%を超える。柳田氏は、メール配信の担当者の企画ミーティングほぼすべてに参加し、アイデアを出しているそうだ。「今、Marketo Engageでメール配信をしているあるチームは、もともと入学式や卒業式を執り行うことがメインの業務内容でした。Marketo Engageでのメール配信を担うようになって、お客様のアクティビティからインサイトを探る習慣が身についてきた結果、例えば式典のプログラムを考える際に"学生とのエンゲージメントをどうやって高めようか"という思考ができるようになり、オンラインだけではなくオフラインでのコミュニケーションの質も上がってきていると実感しているようです」(柳田氏)。
Marketo Engageを導入した結果、グロービスでは様々な場面で変化が起きているというが、中でも際立つのが業務効率化である。柳田氏は「この半年間だけでも確実に年間2,000時間は作業時間が削減できている」と語り、「2,000時間は1.5人分の作業時間にあたりますが、学校全体の業務の中で2,000時間なので、まだまだ削減できる余地はある。今まさに各チームと業務効率化プロジェクトを立ち上げて、手動でやっていた業務をどんどん自動化しようとしています。空いたリソースは、もっと人の価値が出せるところ、お客様に対する価値創出に割いていきたい」と意気込みを見せる。
グロービスにとって、卒業生の活躍こそが学校の価値を作り、ブランドを築き上げる。今、グロービスには日々、卒業生の活躍がメディアを通じて入ってくる。そんな卒業生に「成果を出せたのはグロービスのおかげ」と言ってもらえる状況をいかに作っていくか。そのためには、在学中から学生の能力開発やネットワーク構築を促進することで学校に対するロイヤリティを高め、卒業後もその関係性を維持し続けることが肝要だ。
「エンゲージメントの高い卒業生が増えることで自然と、『グロービスに入りたい』と思ってくれる見込み顧客も増えるはず。この好循環を回す仕組みをMarketo Engageで構築していきたい」と柳田氏は語った。
取材日:2019年9月6日