顧客の状況の可視化でカスタマーサクセスを実現
HENNGE株式会社
課題
SaaSサブスクリプションのチャーンレート抑制
成果
メール開封率が30~40%から50~60%へと向上
「テクノロジーの解放で世の中を変えていく」をビジョンに、2019年、株式会社HDEから変化(HENNKA)と挑戦(CHALLENGE)を掛け合わせた新商号に生まれ変わったHENNGE(へんげ)株式会社。
中核のサービスであるSaaS認証基盤「HENNGE One」は、クラウドサービスへのセキュアなアクセスとシングルサインオンを実現するID管理ソリューションとして、導入企業は1,600社以上、ユーザーは約190万人を達成。
テクノロジーの力で顧客企業の安心安全をサポートするとともに、社内でも先端的ソリューションを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進している。
同社では以前からマーケティング部門にてAdobe Marketo Engageを活用していたが、17年、カスタマーサクセス部門においてもAdobe Marketo Engageを導入。「HENNGE One」の顧客に対して、いかにAdobe Marketo Engageを活用し、カスタマーサクセスに取り組んでいるのか。同社カスタマーサクセス部の澤将志氏、清水彩永氏、兼岡賀代氏に話を聞いた。
ハイタッチを主体にテックタッチの活用を推進
同社のカスタマーサクセス部は、オンボーディングチーム(導入フェーズ)、オンゴーイング(導入後フェーズ)を担うテクニカルサポートチーム、利用促進チームなど複数のチームに分かれている。
澤氏と清水氏はカスタマーサクセスマネージャーとして顧客フロントで導入後の利用促進サポートに従事し、兼岡氏はカスタマーサクセスの運用支援担当として、Adobe Marketo Engageなどを活用したカスタマーサクセスマネージャーのフォローを実践している。
同社ではカスタマーサクセスのアプローチとしてハイタッチを主体としているが、その理由として「当社サービスはB2Bで、かつ企業規模の大きいお客様も多く、障害や問題が発生した際の業務影響が大きいということが挙げられます」と澤氏。
ACV(年間契約発注額)もSaaSの中でも比較的高価格帯だという。
SaaSソリューションとして個別の手厚い対応に注力することで、チャーンレート0.16%という低い水準を維持しているが、「近年では、人的リソースも限られる中、ハイタッチへのリード獲得、足掛かりのアプローチとしてロータッチ、テックタッチの活用のあり方を摸索するようになりました」と清水氏。
そのソリューションとして、MA(マーケティングオートメーション)を検討。すでにAdobe Marketo Engageを積極的に活用し、Marketo Championにも選ばれたことがある同社顧客フロントフォローのデジタルインテリジェンスチームに所属する水谷博明氏の薦めもあり、Adobe Marketo Engageの導入を決定。具体的な施策を進めていくことになる。
郵送DMの併用でアンケート回答率がアップ
まず、第1の課題として取り組んだのが「オンボーディング後のサーベイ回答率の向上」だ。
同社では以前より、NPS(ネットプロモータースコア)やCS(顧客満足)を図るため、契約した顧客向けに手動でアンケートを送っていたが、開封率やクリック率、回答率といった可視化ができていなかったという。
そこでAdobe Marketo Engageを使ってメール送信を継続し、反応を視覚化。より広く顧客の意見を吸い上げるべく、「回答率アップを目標にメールの内容や送信のタイミングを変えたりしたものの、もっと向上できるはず、という思いでした」と兼岡氏は当時を振り返る。
そこで、アナログなアプローチを組み合わせてみては、という着想でデジタルインテリジェンスチームとも連携し実践したのが、郵送DMの活用だ。
Salesforceの顧客データを利用し、オンボーディング完了をトリガーに、デジタルDMソリューションであるgoofのAPIを利用し、自動的に顧客へWelcome DMを印刷・郵送。
DM郵送後、Adobe Marketo Engageにより、自動でアンケート(オンボーディングサーベイ)が発送される仕組みを構築する。
この施策によって、「以前は平均して22.25%だった回答率が、27.48%にアップしました」(兼岡氏)。営業や導入フェーズでの顧客満足度、導入直後の状況、さらに次の更新につながるNRS(ネットリピータースコア)などを把握することで、問題があった際には適切にフォローできる体制を実現する。
2つ目の施策として行ったのが、「オンボーディング後から初回更新までの顧客の状態の可視化」だ。「サーベイを集めるだけで、すべてのお客様の状態を把握する仕組みや組織横断的に情報を共有する場がなかったことから、サーベイの回答にかかわらずお客様のステータスと回答を可視化し自動共有する仕組みを構築しました」(兼岡氏)。
具体的には、先のgoofで郵送したDM配送状況(不達・配達済)、オンボーディングサーベイの回答状況などの顧客の反応をBIツールのMotionBoardを使って可視化。サーベイ未回答の顧客にはAdobe Marketo Engageを活用して自動でリマインドメールを送信している。
「MotionBoardで視覚化した情報は、営業部門も把握できるようSalesforceに連携し、Slackでも全社で共有するようにしています」(兼岡氏)
Marketo Sales Connect活用でメール送信も省力化
同様に、「初回更新までの顧客状態の可視化」を目的に、3つ目の施策として実践したのが、初回のサーベイ送信後、Adobe Marketo Engage を使った120日後の状況ヒアリングメールの自動送信だ。
ただし、何度もアンケートをするとなるとカスタマーサクセスどころか、顧客の負担にもなりかねない。そこで、HTMLメールに「現時点でのHENNGE Oneの運用負荷について教えてください」というボタンを配置するようなアンケートを配信。クリックするだけでOKの仕組みにしているのが特徴だという。
4つ目が、「次年度の更新を決めた顧客の状態の把握」だ。この施策についても、「アンケートなどの回答の負担を少なくするために、『契約更新ありがとうございます』というお礼のメールに、オプションとして今の利用状況を診断できる『診断ツール』を付加する形にしています」(兼岡氏)。回答を受けて顧客の利用状況を把握するとともに、希望者には詳細な診断結果を送付する施策だ。
具体的にはAdobe Marketo Engageを使って、契約更新をトリガーにメールを送信。より注目を集めるべく、Adobe Marketo Engageのメールテンプレートを利用したリッチなHTMLメールを送信したところ、開封率が30~40%程度から50~60%へと向上したという。
「イチからHTMLメールを作成すると時間がかかるところ、テンプレートを使うことで短時間でできるのもいいですね」と兼岡氏は語る。
5つ目には、寄せられたHENNGE Oneの機能要望に対して、機能実現を知らせるメールの未開封者へのリマインドメールもAdobe Marketo Engageのスマートリストを利用し、自動化。
「以前は手動で行っていた作業が半減したことで、その分を他の業務に注力できるようになりました」と兼岡氏は明かす。
6つ目の施策では、Marketo Sales Connectを活用している。CRMやメーラーと連携してオートメーションとパーソナライズの両立を実現するソリューションで、「お客様に送るメールはすべてMarketo Sales Connectを使って送ることで、Salesforceに配信記録を保持し、社内で共有しています」と兼岡氏。
また、Marketo Sales Connectのテンプレート機能を使って、メーラーからテンプレートを呼び出し、Salesforceの顧客情報を参照して宛名を自動付与するなど省力化も実現。個別の顧客に合わせたメール内容の一部編集も簡単にできるのがポイントだという。
ハイタッチなアプローチにも相乗効果を生む
Adobe Marketo Engageおよび他のテクノロジーも組み合わせた様々な施策で、カスタマーサクセスを実践している同社。
メール開封率や回答率向上といった成果以外にも、「個別にお客様に対して『利用促進のミーティングをしませんか』といったアプローチもしていますが、継続的なコンタクトをとることで、お客様との距離も縮まり、ご反応もアップした印象を受けています」と清水氏。
ソリューションを活用したロータッチ、テックタッチのアプローチをすることで、狙い通りハイタッチの効果も相乗的に向上しているという。
今後の目標としては、「部署としてお客様が感じられる導入効果のアップとNPS向上を掲げており、それに向けたさらに大規模なサーベイやお客様の自律的な運用のサポートをスケールしていきたいですね」と語る澤氏。
清水氏も「いくらいい機能を持ったソリューションでも、知られなければ意味がありません。HENNGE Oneの良さを知っていただき、より広く活用いただけるような施策をさらに拡大していきたいですね」と語る。
実際にAdobe Marketo Engageの運用を担う兼岡氏も「まだ当社が実践する利活用支援をお届けできていないお客様も多くいらっしゃいます。そういう方々に向けてどういうアプローチができるのか、Adobe Marketo Engageを中核にその他のソリューションを活用した自動化の仕組みももっと工夫していきたいと考えています」と語る。
同じステージに立ち止まることなく、ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチと様々な手法を組み合わせ、試行錯誤をしながらカスタマーサクセスの進化を推進する同社。
カスタマーサクセスにおいてもどんな"変化"をもたらすのか、今後のチャレンジにも期待したい。
取材日:2020年11月24日
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