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設立

1890 年

所在地:大阪府
https://www.kubota.co.jp/

40%

顧客メルマガの開封率

課題

・顧客との関係を維持するため、営業担当者の負担が増していた

・既存顧客の対応にリソースが必要であり、新規顧客の開拓が難しかった

・webサイトのアクセスは増加していたが、営業活動の支援につながっていなかった

成果

・顧客の課題解決策を提案するメルマガを定期的に発行し、継続的なコミュニケーションを支援

・見積もり依頼キャンペーンを実施し、オンラインから新規リードを獲得

・webサイトをリニューアルし、データ収集を強化。One to Oneマーケティングの基盤へ

「様々な人の得意分野を持ち寄り、強みに変えることができる。それがマーケターという仕事の醍醐味です」

農機国内企画部 マーケティング推進課 主任 若園 真理恵氏

株式会社クボタは、国内農業従事者の減少と高齢化、規模拡大する担い手農家など変化する市場に対応する営業活動に課題を感じていた。従来の営業スタイルだけでは、農家の多様なニーズへの対応が難しくなっていたのだ。この課題を解決するため、同社のマーケティング推進課ではwebマーケティングを導入し、営業現場を支援する取り組みを開始した。

顧客を取り巻く環境変化により営業へのニーズも多様化

クボタは農業機械を製造販売するメーカーであり、全国の販売会社(クボタ子会社、関連会社)などに製品を卸す。実際に顧客へ製品を販売するのは、各販売会社が担当している。農業機械は高額で、かつ買い替え期間が約7年~15年と長い商材だ。営業活動は農家を訪問して販売を行うスタイルが中心となっており、クボタの強みは顧客密着のきめ細かな営業とアフターサービスにあった。しかし近年、農業機械事業を取り巻く環境変化が同社の課題となっていたという。農機国内企画部 マーケティング推進課長の能登 貴文氏は、次のように語る。

「当社のお客さまである農家に対し、購買プロセスのすべてを1人のセールスが担う営業スタイルは、効率面などで課題が増えてきていました。また、離農した農地を引き受けて大規模な経営をする『担い手農家』が増加しています。収益性をより重視し、水稲以外の複数作物を栽培するなど、ニーズが多様化。営業担当者はこれらのニーズにも応えていかなければいけないため、1人での対応では負担が増えてしまっている状況でした」


農機国内企画部 マーケティング推進課長

能登 貴文氏

そして、 担い手農家の増加に伴い、webサイトの運営担当だったマーケティング推進課 主任の若園 真理恵氏は、チームのメンバーとサイトの役割や今後の方針について議論するようになる。

その際、営業現場にも意見を求めたが、webからの送客を期待する声は聞かれなかったという。 「web由来の見込みには漠然とした不信感があるようでした。でも、何かできないかと思い、ユーザーとのタッチポイントを整理するため、カスタマージャーニーマップを作ることにしました」(若園氏)

そのマップを見ながら、顧客である農家に情報を伝え、購入につなげるためにはデジタルマーケティングが有効であることを知った若園氏。そして、偶然資料としてダウンロードしたマーケティングツールの導入事例で、Adobe Marketo Engageを知ることになる。「アドビの営業の方から説明を受けて、自分たちの探していたことがすべてできるツールだと感じました」

必要なセキュリティの条件などからツールの候補が絞られる中で、若園氏が重視したのは、自分たちで施策を実施できる自由度だった。「候補に残った別のツールは、コンサルタントを長期的に活用する前提の提案になっていました。私たちは、自社で試行錯誤しながらコミュニケーション設計をしていくプロセスが大事だと考えており、それができるAdobe Marketo Engageに魅力を感じました」

これらの理由により、マーケティング推進課ではAdobe Marketo Engageをツールとして選択。折しもコロナ禍で、デジタル施策の強化が必要になったこともあり、デジタルマーケティングで目指す姿をプレゼンすることで会社の承認を獲得し、20年11月に導入を行った。

メルマガによるOne to Oneマーケティングの実現

同社では、Adobe Marketo Engage導入後の21年4月より「Kubota NEWSLETTER」というメルマガの配信を開始。月に1回、顧客である農家の課題を起点にした情報を送るメールは、HTMLのリッチな画像付きコンテンツだったことも奏功し、開封率は40%超、クリック率も30%超と非常に高い反応を得ることができたという。

この成功を受け、マーケティング推進課では、さらにコンテンツの充実を狙う。営業本部内の担当者を集めて「メルマガ編集会議」を開催し、顧客課題を基にしたメルマガの作成法の指導を開始したのだ。

しかし、現場が作るメルマガのコンテンツは、若園氏から見るとスペック情報が多く顧客視点が足りないと感じられ、都度修正を入れていたという。コンテンツを書いたメンバーからも「勝手に直される」というすれ違いにつながっていく。

「私が考える『顧客目線』の基準が、メンバーには正しく共有されていないことに気付きました。これはいけないと思い、どうすれば顧客目線になるのかをチェックシートで確認してもらうことにしました」(若園氏)。これによってコンテンツの方向性は顧客志向に統一され、作成者が、これまでなぜ修正されたのか納得できるようになったという。

農機国内企画部 マーケティング推進課 主任

若園 真理恵氏

そしてチェックシートによる改善の結果、メルマガの開封率は安定して40%以上をキープするようになった。22年からメルマガの配信数は前年の約2倍に増えているが、開封率は高い状態を維持できている。

「 メールでお問い合わせをいただいたお客さまから、最初に『いつもメルマガでお世話になっています』とのメッセージをいただきました。お客さまにとって、自分のための情報として見てくださっていると感じ、うれしくなりました」(若園氏)

初めての成約が大きな自信につながる

One to Oneマーケティングの実現に向けたメール施策は、実際にビジネス成果にもつながっている。マーケティング推進課で「見積もり依頼キャンペーン」のテスト実施したところ、そこから新規顧客の獲得につながったのだ。

「見積もり依頼キャンペーンは、13社ある販社の3社で先行して開始。最初に決まった成約は、そのうちの1社である北海道の販売会社のお客さまでした。そのお客さまは他社ユーザーで、営業をかけていた先ではないのですが、メールを起点に見積もりの依頼をいただき、営業担当者が訪問したところご契約をいただきました。この事例は全国の販社で共有しています」とマーケティング推進課 主任の吉岡 雅之氏は話す。

その後、見積もりキャンペーンを実施する販社は増え、まもなく13社すべてで実施できるようになるという。新規にキャンペーンを開始する際は、吉岡氏らのメンバーが販社1社ずつに対して丁寧に説明。その結果、マーケティング推進課が主導する営業施策が販社にも認知され、営業の業務効率向上とデジタルマーケティングの理解促進につながった。

「カスタマージャーニーを考える上で、Adobe Marketo Engageと顧客管理アプリケーションとの連携も重要です。現在、アドビの担当者にも相談しながら連携を進めています」(吉岡氏)


農機国内企画部 マーケティング推進課 主任

吉岡 雅之氏

webサイトをコミュニケーションのハブにする

同社では現在、webサイトの情報からマーケティング施策につなげることで、One to Oneマーケティングをさらに前進させようとしている。

23年4月には、webサイトをフルリニューアル。各ページを、顧客起点で分かりやすくなるように、URLから再設定したという。サイトのコンバージョンとしてリード獲得を明確に設定し、従来上手く活用できていなかったカタログ請求フォームをAdobe Marketo Engageに切り替え、マーケティング施策に使えるようにした。

前述の見積もり依頼キャンペーンも、メールだけでなくwebサイトからもエントリーができるようにテストを始めている。webサイトとメルマガ、営業担当者の間で情報を共有するカスタマージャーニーが稼働し始めたのだ。

「現在、マーケティングから営業への情報の流れができたところです。今後は逆に、営業現場からのフィードバックをマーケティング施策につなげることもしていきたいですね。Adobe Marketo Engageの能力を生かし切ることが目標です」(能登氏)

若園氏はAdobe Marketo Engage 導入から約2年半の取り組みが評価され、2023 Japan Adobe Advocate に選出された。「日本の農業の維持発展にビジネスを通じて貢献したい」とクボタに入社。試行錯誤している中で、アドビのオンラインイベント“Experience Makers Live”を視聴し「顧客体験を作るマーケターになりたかった」という気づきを得てから、より顧客視点のコンテンツ制作に集中できるようになり、各マーケティング施策が社内で高く評価されるようになったという。学ぶべきことも定まり、社内のマーケティング勉強会を積極的に開催。社内のマーケティングレベルを上げていける手ごたえを感じているとのこと。

産休、育休を経て会社に復帰した若園氏にとって、マーケターという仕事は自身の武器であり、モチベーションにもなっている。「私と同じように、働く時間に制約がある人もいると思います。そういう人にとってマーケターは、自分に合った働き方ができ、施策のPDCAを回すことで成果につながる、やりがいもある職種です。ぜひ知ってほしい」とマーケターに対する情熱を語った。

長年培った農家との関係性を維持し、課題解決を営業現場と連携/融合したデジタル施策で支援することで農業の発展を支える。クボタのマーケティングの取り組みはまだ始まったばかりだが、向かうべき方向性は明確に定まっている。

※掲載された情報は、取材当時(2023年9月)のものです。

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