


出遅れたB2BマーケティングをMAで挽回。 新規顧客から問い合わせが25倍に
三菱電機株式会社

100件
月間新規顧客数
導入製品:
課題
・営業効率化に必要な、マーケティング~インサイドセールス~フィールドセールスの流れができていなかった
・単一のメールキャンペーンによる開封率は18.4%、クリック率1.7%と低迷
・ソリューションサイト公開時は問い合わせのみのアクションで、新規顧客獲得が月間4件にとどまっていた
成果
・アドビのコンサルティングによるサポートや、既存CRMとAdobe Marketo Engageの連携によってパイプラインを構築
・Adobe Marketo Engageのエンゲージメントキャンペーンでメールを出し分け、開封率30.2%、クリック率15.2%を達成
・Adobe Marketo Engageによる資料ダウンロード用フォームを新設。誘導施策も追加し、新規顧客は月間100件に
「顧客の様々な課題を起点に、10の事業本部のソリューションを組み合わせて提供できることが当社の強みです。そのためには、コンテンツとマーケティングの共通基盤が必要でした」
水沼 慶徳氏
営業本部 デジタルマーケティング推進プロジェクトグループ インバウンドグループマネージャー
三菱電機株式会社は、2021年から事業本部をまたがる形で、営業本部内にデジタルマーケティング推進グループを立ち上げ、自社のB2Bマーケティングの刷新に取り組んでいる。その要となるのは、全事業本部の個別事業を統合する顧客起点のソリューションサイトと、そこから得られるリードを営業へとつなげるMA(マーケティングオートメーション)思想に基づくプロセス構築だった。改革の現場で奔走したキーパーソンが語る。
コロナ禍でデジタルマーケティングの出遅れに焦る
同社の事業範囲は「家庭から宇宙まで」と言われるほど幅広い。B2B事業だけを取っても、タービンやエレベーターなどの重電機器、工場のFA機器、通信機器や電子デバイスなど多岐にわたる事業を行っている。
営業本部 デジタルマーケティング推進プロジェクトグループ インバウンドグループマネージャーの水沼慶徳氏は、20年4月に本社の経営企画室に異動したが、その直後に新型コロナウイルス感染症の感染が急拡大、急きょ、コロナ禍を生き残る三菱電機グループのあり方を検討するメンバーとして議論の場に招集された。
そこでは、ポストコロナの経営課題における主要テーマの一つに、「マーケティングの革新」が掲げられた。約1年の議論を重ね、21年にデジタルマーケティング推進グループ(デジマ推、22年よりデジマプロ)が正式に発足。水沼氏はそのマネージャーとして、同社のB2Bマーケティング改革に着手することとなる。
同社のB2Bビジネスは10の事業本部に分かれており、それぞれの事業が鮮明に縦割りされている。水沼氏は、この縦割りを超えたマーケティングを行うために、統一感を持ったwebサイトを作らなければいけないと感じていたという。
各事業本部のwebサイトは、既存顧客に対し、製品をカタログ的に深く詳細に情報提供するには適しているが、特に新しい顧客が有する様々な課題に対しては、同社が持っている多様な事業を連携させて応えることができずにいた。
「事業本部が発信するコンテンツを飛行機に例えると、飛行機が着艦する空母であるプラットフォームを作ることで、複合事業体ならではの当社のメリットが生かせると考えました」(水沼氏)
そこで、フロントエンドに顧客起点のソリューションサイトを構築、それを支えるバックエンドシステムであるマーケティングツールと、社内向けのコミュニティサイトを立ち上げ、これを「3本の矢」として開発に当たった。
ソリューションコンテンツ制作の標準化を進める
社内に対しては、全社共通のwebサイトにコンテンツを掲載する過程を通じて、デジタルマーケティングに適したコンテンツ制作プロセスの標準化を狙った。水沼氏と同じく、21年のデジマ推発足時から初期メンバーとして参加している営業本部 デジタルマーケティング推進プロジェクトグループ インバウンドグループの千葉清香氏は、次のように語る。
「空母に着艦する飛行機のスペックは標準化しておかなければいけないということで、ワークフローの標準化は、非常に重要な課題でした。どの事業本部のソリューションでも制作物の仕上がりに統一感を出すべく、試行錯誤し、今の業務フローを作り上げていきました」
三菱電機株式会社 営業本部
デジタルマーケティング推進プロジェクトグループ
インバウンドグループマネージャー
水沼 慶徳 氏
三菱電機株式会社 営業本部
デジタルマーケティング推進プロジェクトグループ
インバウンドグループ
千葉 清香氏
例えば、webブラウザが読み込む「キーワード」「ディスクリプション」といったHTML上の構成要素も、デジマ推が共通仕様を作り、PDCAサイクルを回しながら、共通仕様の改善と標準化を2巡、3巡と進める中で統一を図っていったという。
こうしたプラットフォームの基本的な構成要素に関わる作業を進め、ソリューションサイトを構築。デジタルマーケティングの準備を整えていった。
マーケから営業へのパイプラインを定義する
水沼氏は、同社のデジタルマーケティングに関する取り組みの遅れを実感。
「コロナ禍で直接営業ができなくなったとき、それまでにすでにデジタルマーケティングを進めていた企業は一気に追い風に乗っていました。それに比べて、当社は出遅れており右往左往していました。サイト構築と共に、営業プロセスのパイプラインを作ることが重要だと感じたのです」
パイプライン構築とは、見込み顧客(リード)を育成し、インサイドセールスを経てフィールドセールスが商談化するという、基本的な送客の流れを作ることだ。バックエンドのMAには、このパイプラインをスムーズに構築できるシステムが必要だった。
同社の営業本部では、すでにCRM(Microsft Dynamics 365)を導入しており、それと親和性が高い連携が組めることが必須条件。水沼氏のチームは、書籍の『THE MODEL』やウェビナーなどから情報を収集し、検討を進めたという。
同社の事業規模の大きさも考慮し、MAの選考は、アドビを含むグローバルベンダーの3社に絞られた。
他の1社は、すでに社内の一部の事業本部で使用していたMAではあったが、カスタマイズ項目が非常に多く、全社に展開した場合、コストがかさむことが予想されたため候補から除外。もう1社は、機能的には条件を満たしていたが、プログラムの思想が同社には難解で、直感的な理解が難しく、運用が困難に思われた。そして最終的に、十分な機能がありながら使いやすいと判断したAdobe Marketo Engageに決定したという。
「各社の担当者と会話のキャッチボールをして、最もしっくりきたというか、この会社となら一緒にやっていけると感じたのがアドビでした」(水沼氏)
ツールが決まり、アドビのコンサルタントの指導を受けながら、実際のデータを使った運用ルールの作成に入った。MAで獲得したリード(MQL)に対してフォローをし、商談可能なリード(SQL)へと育てるパイプラインのルール作りを進めつつ、インサイドセールスの立ち上げも実施。当初は少数の有志で始めたが、22年度からは人員も増強し、インサイドセールスは正式なチームとして機能強化している。
導入時にもう1つ苦労したのが、営業部門のCRM運用に、MAからのリードを合流させていくプロセスだったという。「MAに関する基本用語を、社内でそろえるところから始めました。その後、実際にデータを落とし込んで営業が活用できるリードになっていく過程を、共通認識として確認していくところにかなり時間をかけましたね」(千葉氏)。
ソリューションサイトからの新規顧客獲得が25倍に
営業へのリード引き渡しのルールを整えてから、ソリューションサイトを起点にしたマーケティング活動を本格的に開始。2週間に1回をめどにして、コンテンツへの誘導を促すメルマガを配信し、その反応を受けてリードを育成していった。
当初は、単独メールを約2万件のリードに対して全件送信したが、初期5回のメルマガ開封率は平均18.4%、クリック率は1.7%と低迷。メールの件名をA/Bテストするなど、PDCAを回したが効果は上がらなかったという。
そこで、顧客の関心事に合わせて異なるコンテンツを紹介するメールを出し分ける、エンゲージメントキャンペーンの施策に切り替えて実施。その結果、送ったメールの中には開封率が30.2%、クリック率はなんと15.2%を記録するものも出るなど、大きな成果を上げた。
「MA施策を改善していくときに、Adobe Marketo Engageのコミュニティの存在は非常にありがたかったです。定型化した質問でなく、『こういうときにどうすれば?』のような質問でも回答がもらえるのは、本当に心強く感じました」(千葉氏)
こうした改善によって、ソリューションサイトへの顧客誘導は大幅に増加。ソリューションサイト公開当初、得られた問い合わせは月間わずか4件だったが、Adobe Marketo Engageで資料ダウンロードの入力フォームを追加し、自社サイト内からの誘導も増やした結果、新規顧客獲得数は25倍の月間100件に増加したのだ。
自らの経験を発信し、コミュニティへの恩返しをしたい
同社が取り扱う製品には、これまで接点がなかった新規事業や非常にニッチなソリューションもある。顧客になり得る企業は限定的となるが、水沼氏は新規市場の創造や新たな顧客接点の創出こそMAが威力を発揮するはずだと考えている。「事業部側も、ニッチな製品や新規事業は手探りのところがあり、最近ではデジタルの力を期待して我々に相談に来ることが増えています」。
こうした取り組みと成果が評価され、同社は22年の「Adobe Marketo Engage Champion」で「Marketing Team of the Year」を受賞。水沼氏は、「これでようやく、スタートラインに立てました」と話す。また千葉氏は「少人数のチームで取り組んでいたことが、社外から評価されたことは非常に大きいと思います。社内向けのコミュニティサイトでも大いにアピールしたいですし、マーケティングの重要性を全社に広めるきっかけになると思います」と語る。
デジタルマーケティング推進プロジェクトグループのメンバー。左から西川氏、泊氏、千葉氏、水沼氏。
今後同社は、パイプラインの運用をさらに効率良くしていくと共に、ウェビナーなどのコンテンツ拡充も計画している。また、顧客のスコアリング、さらに属性情報なども加えたMA施策も検討中だ。
コロナ禍で露呈したデジタルマーケティングの遅れを不断の努力で巻き返しつつある同社のデジマチーム。最後に水沼氏と千葉氏は、企業のマーケターに対して、以下のメッセージを送った。
「大企業でデジタルマーケティングを一から始める場合、社内的に不安定なポジションでもあり、苦労が多いと思います。そんなときは、アドビのコミュニティにいる、同じ課題を克服してきた同志たちが支えてくれます。私たちはまだまだ駆け出しですが、欧米に対し20年遅れているという日本のB2Bマーケティングを一緒に盛り上げていきたいです」(水沼氏)
「これまでは、社内の組織ができたばかりで、がむしゃらに走ってきた感があり、コミュニティには助けてもらうことばかりでした。これからは、自分たちの経験を発信していくことで、少しでもお役に立てればと思っています」(千葉氏)
※掲載された情報は、2022 年9月現在のものです。
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