課題
新卒採用におけるデジタルマーケティングの実践
成果
エントリー数約10%増、ES提出数約60%増を達成
"全員マーケティング"の思考で採用にマーケティングを導入
セラミックスをベースとした電子部品の開発・生産・販売を行っている世界的な総合電子部品メーカーとして、エレクトロニクス産業のイノベーションを先導してきた株式会社村田製作所(以下、ムラタ)。2015年には売上高1兆円を達成し、海外売上比率は90%を超えるグローバル企業として、成長を続けている。
そんなムラタでは、グローバル市場のさらなる拡大を見据え、マルケトの日本法人が設立されるよりも早く、2013年にAdobe Marketo Engageを導入。BtoB事業においてデジタルマーケティングに取り組んでいたところ、"Adobe Marketo Engageを新卒採用に活用できる"とマーケティング&コミュニケーション部 部長の内海 克也氏は感じたという。
「2015年当時、社長が掲げた方針に、"全員マーケティング"というものがありました。この言葉には"全従業員がセクショナリズムに陥ることなく、お客様のためにきちんと仕事をしなさい"といったメッセージが込められていたのですが、それに加え"マーケティングの手法は、ビジネスだけでなく様々な業務に適用できる"という意味も含まれていると拡大解釈をした私は、新卒採用という新たな領域にデジタルマーケティングの手法を取り入れてみようと考えたのです」(内海氏)
初年度からエントリー数約10%増、ES提出数約60%増を達成
人事部から入手したデータを分析してみたところ、見えてきたのは次の2つの課題だった。1. ムラタの採用戦略に沿った人材(以下、ターゲット学生)のエントリー数を増やしたい2. エントリー後にエントリーシート(以下、ES)を提出しないターゲット学生を減らしたい。
「この2つの課題に関しては、デジタルマーケティングの力で解決できる」と確信を持った内海氏は、1. に対しては動画広告やSNS広告を組み合わせてターゲット学生のリードを獲得し、2. に対してはAdobe Marketo Engageを活用してターゲット学生に充分な情報提供をしていこうと、方針を定めた。
Adobe Marketo Engageにおいては、Web Personalizationを使って学生の属性に応じたコンテンツの出し分けを行った他、ESを未提出の学生に対して、締切日を知らせるリマインドメールを配信。2015年11月からこの取り組みをスタートした結果、2016年度の採用活動において、対前年度比でエントリー数は約10%増、ES提出数は約60%増という目覚ましい成果につながった。
データ・ドリブンで拓く採用の新たな世界
BtoBのムラタでは、採用過程で脱落した人が、将来の顧客やパートナーになる可能性が非常に高い。その人にとって初めてのムラタとの接点が採用面接であり、面接の質の向上がカスタマーエクスペリエンスの向上につながっていくと考えられる。
そこで今、実証実験を進めているのが、ムラタが開発するセンシングデータプラットフォーム「NAONA」の活用によって面接の質を高めていこうという取り組みだ。人同士の親密度や共感度、人のモノへの注目度といった、人が感覚的に認知している様々な情報をセンシングし、データ提供することを目的とした「NAONA」を面接に用いることで、面接官と候補者の間で行われるコミュニケーションを可視化していく。
このように様々な側面で、データを用いた採用革命を起こしている同社では、今後はAdobe Marketo Engageのスコアリングも活用しながら、新卒採用に比べ、より検討期間が長く、母集団も見えない、キャリア採用におけるマーケティングにも挑戦していく予定だ。
「これまではマス広告によるコミュニケーションが中心でしたが、Adobe Marketo Engageを活用することで、候補者の状況や属性に応じて、我々の想いを乗せたメッセージを出し分けられるようになり、マーケティングが質・量ともに貢献できたと実感しています。これからさらにデータ活用を進化させながら、より一層、採用の効率化を図っていきたいです」(内海氏)
2018年12月18日現在