
課題
コアなファンだけでなく幅広い層のファンに合ったマーケティング施策を実施し、エンゲージメントに合わせたさまざまなコンテンツを提供してファンの育成を図りたい
成果
ファンクラブのデータベースをAdobe Marketo Engage と連携し、One to Oneマーケティングを実現
独自の計算式で、MA導入前と導入後のコンバージョンを比較し、目標以上の効果を確認
ファン育成プログラムを構築し、ユーザーの好みや状況に合わせたコンテンツ案内のメールを配信
球団のスポンサー営業としてメール配信を実施し、新規顧客の獲得に成功
「ファン向けのコンテンツを担当する各部署が1つにまとまり、一丸となって共通の目標に向かうことができるようになりました」
事業企画部 企画グループ 主任 洞井 知彦氏
プロ野球オリックス・バファローズ(以下、バファローズ)は、ファン向けのユニークな企画を行う球団として知られている。例えば女性に人気の高い選手と交流できる「Bsオリ姫デー」を開催するなど、コアなファンを引きつけてきた。
一方で、バファローズの運営を担当するオリックス野球クラブの事業企画部 企画グループ 主任を務める洞井知彦氏は、企画面では成功しながらも、球団のマーケティングについて課題を感じていたという。
「確かに、コアなファンに対しては選手をアイドルのように打ち出す企画などが成功していました。しかし、幅広いファン層に対するアプローチはほとんどできていないという問題意識は常に持っていました」

球団のファンクラブ会員には「無料・有料」などの区別があるが、従来行っていたマーケティングは、データが整備されていた有料会員に対するものがほとんどで、それ以外は各部門がばらばらに顧客データを管理し、独自にマーケティングを行っていたという。
そこで球団では、ファンクラブデータベースにすべてのユーザーデータを統合し、それと連携できるマーケティングツールの導入を検討。洞井氏が中心となり、マーケティングツールの選定を開始した。
約1年の検討の結果、球団ではAdobe Marketo Engageの導入を決定。その理由を、洞井氏は次のように語る。
「ユーザーの育成プログラムを実施するには、ユーザーの分類をはじめ、ステージ管理やスコアリングといった機能が必要でした。そのため、単純なメールマーケティングの機能しかないツールは除外されました。多機能なツールのベンダー各社の説明を聞いた中で、Adobe Marketo Engageの提案内容が、機能だけでなく伴走体制も一番しっかりしていると感じたため、決定しました」
Adobe Marketo Engageを導入したタイミングで、チーム成績は急上昇。2021年、22年は2年連続でパシフィック・リーグを制覇。22年は日本シリーズも制して念願の日本一に輝いた。チームが強くなり、一般の野球ファンに対するマーケティングの重要性がさらに高まったところで、タイミング良く新しいマーケティング施策を導入できたのである。
ファンの育成シナリオをAdobe Marketo Engageで設計
Adobe Marketo Engageによるファン育成のシナリオは、次のように進んでいく。
会員登録したユーザーに対して、最初は「(ファンとしての)初心者サイト」へ誘導し、バファローズの基礎知識を知ってもらう。その2週間後に、まず公式アプリのインストールやYouTube、Twitterのフォロー、LINEの友達登録など、軽めのコンテンツ登録を案内。
加えて、ファンがそれぞれ登録した「お気に入り選手」に関する情報なども適宜発信して、エンゲージメントを高めていったという。
クロスセルのご案内も、Adobe Marketo Engageの導入でスムーズにできるようになりました。数十万円以上するシーズンシートのキャンペーンをご案内したところ、ご購入いただいたこともあります」
ファンによっては、選手ではなく球団の公式チアチームである「BsGirls」のグッズをよく買っている人もいる。そういう人にはBsGirlsの写真をコンビニでプリントできるサービスの案内を送るなど、ファンそれぞれの「推し」の内容に合わせたOne to Oneのコミュニケーションができるようになった。
マーケティングの効果測定に独自の計算式を開発
洞井氏のチームでは、Adobe Marketo Engageの導入効果を独自の基準で計算し、常に評価している。「Adobe Marketo Engageを使うと、使わなかったときと比べて何倍のコンバージョンが得られたかを計測しています」
効果測定は、ファンクラブ会員に対して実施。コンバージョン(CV)率は、例えば、ある商品に対してメールで販促したグループの購入率を、同じくメールで販促をしなかったグループのCV率と比較する。これが1より大きく、例えば1.5倍であれば、Adobe Marketo Engageによる効果は1.5と定義した。
「ただし、もともとメール登録をした人は、していない人と比べて購入意欲が高く、例えばグッズ購入においてその比率は1.14倍高いことが分かっていました。そこで、先ほどの結果を1.14で割ることで、実態に近い効果をスコア化しています」
球団では、この数値が常に1倍を超え、さらに向上するように毎年のマーケティング施策を企画している。
「この数値は、熱量が比較的低い新しいファンが入ってくるほど低くなってくると思いますが、チームの成績などによっても変動します。ただ、会員数が増えるほど、比率に対して金額面での貢献は大きくなりますから、効果測定は重要だと考えています」

B2BマーケティングにもAdobe Marketo Engageを活用
球団では最近、スポンサー獲得の営業支援にもAdobe Marketo Engageの利用を開始。「スポンサー候補の企業に対して、メールでパートナープログラムの案内を送ったところ、そこから複数件の商談につながり、受注にも至りました」
23年度は、前年の400社から700社に拡大してメール施策を実施する計画だ。
現在、球団のマーケティング施策はメールが中心である。今後はLINEやアプリのプッシュ通知なども積極的に活用していきたいと洞井氏は話す。Adobe Marketo Engageは様々なチャネルに対応しており、データを連携させてユーザー体験を高めることに期待しているという。
洞井氏は最後に、マーケティングの再構築に悩む企業に対して、「当球団にとってAdobe Marketo Engageは、顧客育成に向けて全社でデータを使い、取り組むことを考えるきっかけになったツールです。他の企業でも、マーケティングを見直したい、一貫性のあるマーケティングを行っていきたいなど、課題をお持ちのところでは役に立つツールだと思います」と語った。
関連するトピックス
/jp/fragments/customer-success-stories/cards/b2ed26fd173cac93cbee56f25908a1a8
その他の関連トピックスを見る