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webサイトと業績の関係を数字で明確化。テストの効率化でコンバージョン率160%を達成

パーソルキャリア株式会社

設立

1989年

所在地:東京都

https://www.persol-career.co.jp/

1.6倍

コンバージョン率

導入製品:

課題

  • 自社webサイトの改善目標、評価方法が定まっておらず、散発的な改善が繰り返されていた
  • webサイトを改善するためのA/Bテストの運用が煩雑で、改善活動が限定されていた
  • 複数ツールを運用する方針のため、新たにツールを使い始める社員の習得が必要になっていた

成果

  • Adobe Analyticsによる測定結果をwebサイトの指標として社内共有。改善の目的と評価が明確化された
  • Adobe AnalyticsとAdobe Targetの連携でテストと評価の高速サイクルを実現。改善の積み上げで、コンバージョン率1.6倍に
  • A/Bテストの結果を迅速に数値で把握できるようになり、施策の評価や改善サイクルを高速で回せるようになった

「計測ツールとテストツールを統合することで、施策の実施と評価がシンプルでスピーディに進むようになりました」

P&M本部 データビジネス部
ビジネスプランニンググループ シニアエンジニア
小林 裕也氏

大手人材サービスのパーソルキャリア株式会社では、主要なビジネスチャネルである自社webサイトの運用体制が役割ごとに分かれており、共通の目標設定が十分ではなかったという。2018年にデータアナリスト兼データエンジニアとして入社した小林裕也氏は、webサイトの計測基盤を再構築し、共通のビジネス指標を設定。改善結果が事業にどうつながっているかを定義した。サイトの数字を共通言語にした部門横断の改善活動が活発化している。

改善プロセスの課題を克服し、部門間の連携を強化

パーソルキャリアは、転職サービス「doda(デューダ)」などの運営をはじめ、求人メディアの運営、転職/就職支援、採用/経営支援、副業/兼業/フリーランス支援サービスの提供などを手がける人材サービス企業である。

幅広くHR(人材)サービスを展開する同社のビジネスは、企業からの求人広告を掲載するメディア事業だけでなく、人材紹介サービスも担っている。オンラインでの情報提供や検索サービスを提供し、カスタマー(転職希望者)とクライアント(企業)とのマッチングを図ることが、最終的なビジネスのゴールだ。

同社 P&M本部 データビジネス部 ビジネスプランニンググループ シニアエンジニアの小林裕也氏は、データアナリスト兼データエンジニアとしてマーケティングとエンジニアリングの両面からサービス改善を続けている。

小林氏が入社した当時、同社にはすでにAdobe Analyticsなどのアドビ製品が導入されていた。前職でアドビ製品を使ったサービス開発やデータ分析業務を手がけていた小林氏は、早速同社でアドビ製品の管理と活用を任される。

その際、小林氏は、同社のアドビ製品の活用が一部に限定されていると感じていたという。「使い方が個別特化しているという印象でした。アドビ以外に、広告の分析に強い計測ツールも使っていましたが棲み分けが明確でなく、組織的にも各施策の実施部門とデータ分析部門の距離が遠く、連携が難しい状況でした」。

当時すでに転職サイトの業界では屈指の実績と規模を持っていた同社のサービスだが、小林氏は、まだまだ改善できる「伸びしろ」があると見ていた。そこで小林氏は、まずデータ分析/活用の知見を棚卸し整理することと、Adobe Analyticsを中心にしたデータ基盤の再構築から改革に着手。

「転職希望者のオンライン上の行動分析は重要度を増しています。web解析ツールの役割も、これまでのように単にweb/Appでのアクセス数値だけを定量的に出せば良いのではなく、当社のサービス全体のデータ計測基盤としての役割を果たさなければいけません」


P&M本部 データビジネス部
ビジネスプランニンググループ シニアエンジニア
小林 裕也氏

例えば、「doda」のwebサイトやアプリ上での提供機能について、単発の機能の改善をビフォーアフターで比較して良くなったかどうかを判断するのではなく、その機能がカスタマーにどう変化をもたらしたのか? それがサービス全体のKPIにどう影響しているのか? を細かく分解/評価分析しサービスの価値貢献に繋げていくことが重要であると語っている。

適材適所の計測ツール活用で全体最適を目指す

小林氏が特に工夫を加えたのが、適材適所のツール活用だ。

「ビジネスの目的を明確にして、そこに向けてどの分野にどのツールを使うべきかを考えました。その結果、web広告の運用は既存の広告評価用ダッシュボードやeCPMなどの評価機能を持つツールを活用。一方で、プロダクト評価にはAdobe Analyticsを採用することで、各ツールの強みを最大限に生かし企画/分析/モニタリング/レポーティング/データエンジニアリングの効率化を図りました」

その上で、従来は別部門が一括して担当していたwebサイトへの計測タグの設置業務のうち、サイトの機能に関わる部分のタグ設定はプロダクト開発部門が実務を担当し、その要件出しはプロダクト企画やコンテンツマーケティング組織が業務委託と協業して進める体制に見直したという。

「計測データを正確に理解するためには、何を計測するかをwebサイトの機能に合わせる必要があると考えました。その設定をスピーディに行うため、関連部門との協業体制を整えました」

小林氏はこれらの構想を実現するために部署間を調整し、入社から約1年後の2019年には、Adobe Analyticsに関する評価分析のデータ連携/分析データ化の確立と運用体制の見直し、分析観点の展開と課題点の展開など、計測データの横断的な活用を実現。

また、計測データの指標化は、Adobe Analyticsのデータを外部連携しデータベース化することで、分析からモニタリングにつなげる状況を作り、プロダクト評価指標として、計測データでしか表現できないユーザー行動の指標化を行った。

ナレッジ共有で組織全体の活用レベルを向上

Adobe Analyticsの活用体制が整ってから、小林氏はツールのナレッジを組織全体で共有するための取り組みをスタート。

「Adobe Analyticsを初めて使う人が理解しやすいように、説明コンテンツを独自にまとめました。ツールは手段でしかありませんから、機能の説明ではなく、基本的な考え方を中心にまとめ、Wikiページとして社内に公開しました」

このWikiページは、プロダクト企画やコンテンツマーケティング組織など、既存でAdobe Analyticsを利用している社員だけでなく、これから企画分析業務で使う利用者に向けたものとして活用されている。現在では、開発組織側でも「サイトやアプリへの実装と本番挙動を理解する」ためにAdobe Analyticsを使い始めており、組織全体での活用レベルが向上しているという。

Adobe Targetの導入でテストと評価の効率化を実現

Adobe Analyticsの活用体制が整ったことで、2020年よりwebサイトのテストツールである「Adobe Target」も導入。

「既存のA/Bテストツールの切り替え検討のタイミングと合わせて、Adobe Analyticsとの連携が可能なAdobe Targetの導入を決定しました。Adobe Analyticsの高度な分析機能を活用した評価が可能となり、利用レベルの底上げも期待できました」

導入、展開後には、Adobe Targetを使いプロダクトUIデザインの改善を組織横断で遂行していく部署から「テスト実施、評価分析の効率が上がったため、企画/事業組織と連携して改善検討を行えるサイクルが増えた」という声が届いている。

テストと計測の高速回転で、改善サイクルが大幅向上

Adobe Analyticsによるwebサイト計測の高度化は、同社のwebサイト運営を確実に改善している。

「例えば当社のサイトに応募いただいている人が、どういったルートからサイトやアプリに訪れてどういうコンテンツや機能に接触し、何に関心を持って、どういった求人にエントリーいただいているのかなどに対する改善活動が、サービス/事業/組織のミッションに対してどう貢献したのか、どの成果指標に貢献できたのかを明確にし、サービスの成長や日々の活動につなげられることが重要です。特にプロダクト企画改善に関わる施策は、この指標と関連する評価分析となっています」

Adobe AnalyticsとAdobe Targetの連携を含めた運用が確立されたことで、webサイトの機能改善と運用効率化は数字でも表れている。

Adobe Targetはwebサイト改善をメインに導入/活用展開が進んでおり、各組織での取り組みも相まってテストの回数が大幅に増加。多い月では十数本、年間では数十のテストが稼働しているという。

「今使っていない部署からもAdobe Targetを使ってみたいという声が挙がっており、この数字は今後もっと増えると思います」

改善施策を高速回転できるようになったことで、webデザインやUIの改善によってユーザーのマッチングにつながる成果が1.6倍になった施策も出てきている。

「webサイトのデザインからコンテンツ、機能設定に携わるすべての部署で、改善の意欲が高まりました」

自分がすべきことを絞り込んで確実に進める

こうした成果が認められ、小林氏は2024年にAdobe Analyticsの「Japan Adobe Advocates」に選出された。Adobe Analyticsのユーザーでは唯一の選出だが、小林氏は受賞を謙虚に振り返る。

「私が仕組みを全部作り上げたわけではありません。最初の一歩の部分で、周りのメンバーをリードしただけです。そこから施策の精度を上げることができたことや、良い企画を生み出してくれるメンバーに恵まれたのが、今の成果につながっていると思います」

一方、今回の受賞によって様々なB2B、B2Cのアドビユーザー企業との交流ができたことは、大いに刺激を受けていると話す。

「お話をしていると、当社が進んでいると感じる部分もありますが、逆にまだまだできていないと感じる部分のほうが多いことを改めて知りました。さらに伸びしろを感じていますが、何でも手を付けられるわけではないので、むしろ、今の環境の基礎の部分をもっと固めていかなければいけないと強く思うようになりました」

限られたリソースの中でサービスを進化させる同社にとって、アドビのサポートプラン「Ultimate Success」により提供される支援体制にも助けられたという。

「アドビのサポートは、手厚いと感じており、安心できます。踏み込んだ問い合わせでも、すべて答えを持ってきてくれるのはありがたいですね」

小林氏は、これからwebサイトの計測や運用を見直したいと考える企業の担当者に対して、次のように話す。

「AIなどの新しいテクノロジーや便利な機能は次々と登場しますから、そこを追いかけるのは大変です。そこから少し引いて、自社の状態を俯瞰で捉え、自分が何をすべきかをドライに決めることが大事です。決めたら、できることから一歩ずつ、割り切って進めればいいと思います」

また同社では、Adobe AnalyticsやAdobe Targetの利用/展開にも内製化の方針を打ち出している。小林氏の入社当時と比べ、Adobe Analyticsのデータ計測の設計や要件定義、Adobe Targetでのテスト設計や実装、評価分析には業務委託などに依頼することなく各組織側でデータ分析や要件定義、実施結果の管理運用を担う動きも増えてきた。

「自分たちで手を動かすかどうかは別にして、自社のサービスとして、開発やデータ管理、データ分析、運用も含めてどこで何が起きているかを組織で理解していることが、非常に重要です。“中の人”に知見がたまっていかないと、当社のような規模のサービスでは大きなリスクです」と、小林氏は最後に語った。

※掲載された情報は、取材当時(2024年9月)のものです。

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