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既存リードの再活性化に向け 属人化しないナーチャリングチームを構築

株式会社SmartHR

創業

2013年

所在地:東京都

https://smarthr.co.jp/

100以上

有効リード上乗せ

1.5倍

商談率

導入製品:

課題

・既存リードに対して最適なアプローチを実施したい

・ナーチャリングチームの人員が増える中、チームへのオンボーディングとスキル取得を支援したい

・既存リードのインサイドセールスへの送客

成果

・Adobe Marketo EngageにSFAなどのデータを取り込み、顧客を状態によって3つのグループに分類、細分化した施策が可能に

・独自の運用マニュアルとテンプレートを充実させ、標準スキルをそろえながらレベルアップを図ることに成功

・リードのwebアクティビティを観測し、タイミング良くインサイドセールスが架電することで、有効リード100以上を上乗せ。商談率も1.5倍に

「お客様に対しては、受注ありきではなく『当社を好きになってほしい』という思いでマーケティング活動を行っています」

マーケティンググループ  原 聡汰氏

企業向けに人事・労務クラウドサービスを提供している株式会社SmartHRでは、新規獲得リードから成約に至らなかった顧客のフォローに課題を抱えていた。そこで、ナーチャリングチームの陣容を大幅に拡大し、既存リードの再活性化を目的にした取り組みを始める。属人化を防ぎ、部内だけでなく他部門との情報共有も密にしたプロジェクトの中心メンバーが語った。

成長の裏で既存リードの活性化が課題に

従業員の入社手続きや給与明細、人事評価、年末調整など、人事・労務に関わる業務を効率化するクラウドサービスを提供するSmartHR。現場従業員にとっても、面倒な人事・労務に関する手続きを簡単に済ますことができるサービスが好評で、サービス提供以来、順調にユーザー数を拡大している。

業務効率化だけでなく、収集したデータを活用し、組織改善や従業員のパフォーマンス向上を支援する人材マネジメント機能により、顧客企業の成長にも寄与するサービスであることが特徴だ。

同社のマーケティング活動は、広告や展示会で獲得したリードを成約につなげる新規獲得に重点が置かれていた。引き続き新規顧客へのアプローチは成長のために重要だが、その裏で、成約に結びつかなかったリードが膨れ上がっていたという。マーケティンググループ ナーチャリングユニットのチーフを務める原聡汰氏は、次のように話す。

「競合のサービスも増えたことやメインターゲットとなる方々のリード保有率が高まり、今後、新規リードの獲得ペースは徐々に緩やかになると予想されました。一方で、一度当社と接点を持っていただいたものの、受注につながらなかったお客様の数が増えてきており、既存リードとのエンゲージメントの重要性が増していると感じていました」

同社では2017年からマーケティングツールとしてAdobe Marketo Engageを採用し、営業部門の顧客管理にはSalesforceを連携させて使用していた。現在、マーケティンググループのソリューションユニットでリード管理やシステム連携の業務を担う青山茉里絵氏は、Salesforceのダッシュボードから変化を感じ取っていたという。

「マーケティンググループが獲得していたリードから、SmartHRで課題が解決できそうなお客様を営業部門にトスアップするのですが、そこに至るまでに何段階かのKPIがあります。その数字を追っていると、営業のキャパシティに対して送客できるリードが明らかに不足してきていました」

トスアップする母数が枯渇する兆候が明らかになったところで、さらに新規リードの獲得を増やすための広告費用の投下やイベント展開の拡大なども行われたが、既存リードへ良質な顧客体験を届け続けることへの期待は全社的に高まっていった。

この課題感の下、同社では20年にマーケティング組織内にナーチャリング専門のチームを設立。組織を拡大させながら、リードの再活性化に向けた取り組みを開始させた。

既存リードを3つのグループに分けて施策を最適化

ナーチャリング強化の取り組みは、獲得後のリードを再活性化するアプローチと、SmartHRをすでに利用しているユーザーに対するアップセル、クロスセルの両面で実施された。

獲得後のリードへの再アプローチに際しては、「すぐにアプローチできないリード」「一度インサイドセールスが架電したが、商談化できなかったリード」「商談したものの成約に至らなかったリード」の3つのグループに分類。

「従来は、この3つのグループのすべてに対して、同じメールを送るような施策をしていました。しかし、各グループのお客様は課題感が異なるはずなので、別のアプローチが必要です。個別の施策に必要なデータをそろえていきました」(原氏)

営業が商談を進めていたリードに対しては、Salesforce上に商談や失注にまつわる情報が蓄積されていたため、ナーチャリングチームではそのデータを1件ずつ確認。失注の理由をはじめ、成約に至らなかった顧客がどんな課題を持っているのかを確認していったという。

「課題によって大きくカテゴライズして、Adobe Marketo Engageでセグメントを作り、メールを送って課題解決となる情報提供を進めました」(原氏)

商談化できていないリードに対して、インサイドセールスが架電している案件は、商談化できなかった理由を再度チェック。そして、その理由を商談後に失注したリードと見比べて、関連性を探っていった。こうした顧客データの再収集と丁寧な確認が、マーケティング施策の再構築に非常に重要だったと原氏は語る。

そして、さらに情報が少なく、アプローチが十分でなかったリードに対しての施策について、ナーチャリングを担当する八木綾氏は次のように語る。

「MAL(Marketing Accepted Lead)といわれるリードの中でも、情報が少なすぎてアプローチができない層と、ある程度アプローチはしているものの、インサイドセールスが架電するほど当社サービスの理解が十分ではない層に分かれていることが分かりました。ここでも、セグメントを分けてステップメールを設定していくことで、深掘りが可能だと考えました」

株式会社SmartHR
マーケティンググループ

原 聡汰 氏

株式会社SmartHR
マーケティンググループ

青山 茉里絵 氏

株式会社SmartHR
マーケティンググループ

八木 綾 氏

マニュアルとテンプレートで“脱属人化”

同時に、マーケティングチームではAdobe Marketo Engageをハブとしたデータマネジメント、可視化にも取り組んだ。

単にマーケティンググループだけが使いやすいものではなく、リードジェネレーション担当者や営業部門を含めた全社にヒアリングを行い、情報のアウトプットを分かりやすくすることにも注力。

Adobe Marketo Engageは他部門で使っている他のツールとの連携が可能なこともあり、他部門と意見を交わすうちにリードの成熟度について定義が共通化され、Adobe Marketo Engageに格納されるデータも充実していったという。

「マーケティンググループが顧客体験の視点で他部門にアドバイスし、逆に意見ももらいながらシステムに落とし込むことができました」(青山氏)

また、ナーチャリングチームの業務拡大に対応するため、人材の採用が進められた。新しく参加したメンバーでもAdobe Marketo Engageを使って一貫した顧客体験を届けられるように、オリジナルの運用マニュアルとテンプレートを充実させたことも、マーケティング革新のプロジェクトの中で重要だったという。マニュアルは原氏が、テンプレートは青山氏が担当した。

原氏は同社に入社してから初めてAdobe Marketo Engageに触れたことから、自分自身が理解するために書き留めたノートの内容を、メンバーにマニュアルとして共有したという。

「当社にとって、ナーチャリングは将来必要不可欠な業務になるという思いがありました。メンバーが増えたときに、ツールの扱いが属人化してはいけないという使命感を持って、マニュアルを整備していましたね」(原氏)

ウェビナー開催時にAdobe Marketo Engageをどう設定するか、またはホワイトペーパーをアップロードするにはどうすればいいかなど、細かい操作について、テキストだけでなく動画のマニュアルも作成し、部内で共有。

このマニュアルは部内でも好評で、急増しているメンバーが操作を覚えることに非常に役立っているという。八木氏もその恩恵を受けた一人だ。

「正直、感動しました。私は前職でもAdobe Marketo Engageを使っていましたが、担当していたのが私一人だったので、マニュアルを残すという意識がありませんでした。当社では非常に詳しいマニュアルがそろっており、すぐに新しい使い方に慣れました。また、私の後にすでに10人ほど入社していますが、そのメンバーのオンボーディングにもマニュアルが大活躍しており、全員のスキルが標準化されているのは大きな強みになっていると思います」

人が増えるほど、業務は複雑化するが、マニュアルもアップデートを繰り返している。

一方の青山氏が担当したテンプレートも、ウェビナー、イベントなどの基本的な施策について簡単な設定で済むように登録されている。ただし、何も考えずに使えるテンプレートとはひと味違う、と原氏は話す。

「テンプレートにはちょっとした“余白”が含まれており、使う人が機能の裏にある考え方を理解していないと使えないようになっています。すべてが自動的にできてしまうと、指示通りの業務しかできなくなってしまう恐れがあります。当社のテンプレートには施策実行者として自主性を持たせる思想が組み込まれているのです」

6カ月間で100件以上のリードを活性化

リードの細分化と、再活性化に向けた施策の検討が進み、21年から本格的な活動を開始。

特に効果的だった施策がある。従来ナーチャリングチームが扱うリードの中で、明確なアクションがなかった人に対しては、一律に無効なリードと扱われていた。そこで、webのアクティビティログを活用して、webサイトの回遊情報をもとにしたメールマーケティングを実施。新しい判定基準を設けてインサイドセールスにトスすることにした。

この施策によって、6カ月間で100件以上の有効リードを上積みすることが可能になり、その後の商談化率も約1.5倍という成果を上げることができたのだ。また、インサイドセールスの架電のタイミングも、Slackの通知機能を自動連携することで、リードのweb上の行動に合わせてよりタイムリーにアプローチできるようになったという。

「従来の判定基準でコンバージョンしなくても、SmartHRに興味のあるお客様は存在することが証明されました。現在では、どのページを見たかによってメールを出し分けるなど、さらにきめ細かな施策を行っています」(八木氏)

小さな種を持ち寄り、チームで多くの花を咲かせる

今回紹介したマーケティングプロジェクトの取り組みが評価され、「2022 Adobe Marketo Engage Champion」では「Marketing Team of the Year」を受賞。

マーケティンググループ ナーチャリングユニットのチームメンバー。

原氏は、「素直にすごくうれしいです。特に、個人ではなくチームとしての受賞は、私たちが目指している属人化させない仕事のスタイルを評価していただけたからだと思っています」と語る。

青山氏は「ツールの使い方に正解はないと思います。小さなことでも、画面を共有しながら話し合いができるチームであり続けることが、大事だと思っています」と話す。

また八木氏は、一人マーケターとして奮闘する人にエールを送る。「もし、社内に相談できる人がいなければ、アドビの担当者に頼ってみるのもおすすめです。当社もチームで情報を共有するだけでなく、CSやフィールドセールス担当の方へ相談させていただいています」

同社のマーケティングは、細かい分業体制を取りながらも、チーム間で情報をオープンにして常に意見を交わしながら業務を進めていることが強みにつながっている。

「当社には情報を常にオープンにするという社風があります。例えば新しい企画を提案する際に、100%のものを初めて共有する企業もあると思いますが、当社は2%ぐらいのアイデアの種でも、こんなのどうですかと見せ合っています。皆で種を持ち寄って、最終的にたくさんの花を咲かせるというのが、強みにつながっていると思います」(原氏)

個人間、部門間のつながりを強化し、点から線へ、線から面の施策を進めていく同社のナーチャリングチーム。原氏、青山氏、八木氏の3人は、「これからも、売るためというより、SmartHRを好きになってもらいたいという思いでマーケティングを実施していきます」と語った。

※掲載された情報は2022年11月現在のものです。

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