この記事を共有する:

- 1 キャンペーン戦略に欠かせない、広告にまつわる6つのトレンド
キャンペーン戦略に欠かせない、広告にまつわる6つのトレンド
2016年07月14日
【POINT】
- 企業と顧客のあらゆるタッチポイントでは、必ず人間の感情が動いている
- 企業のブランドに明確なパーソナリティが込められていると、「自分が望むものを提供してくれる存在」として信用され、選ばれる可能性が高い
- 消費者の注目を得るひとつの方法は、お決まりのパターンや慣習を破り、ありふれた言い方をしないこと
広告がモバイルへのシフトを続けているが、このトレンドに今さら驚くマーケターはいないだろう。しかし、マーケターが注目すべき広告トレンドは、モバイルへの移行ばかりではない。ほかにも、考慮すべき様々な戦略がある。
SEO(検索エンジン最適化)におけるソーシャルメディアプラットフォーム対応の強化、普及が進むソーシャルの「購入」ボタン、急増する動画検索、コンテンツの見直し、アドブロックなどは、様々なマーケターが対応を始めているトレンドのほんの一部だ。こうしたトレンドは周知の件かもしれないが、中には意外なものもあるだろう。たとえば、アメリカでSnapchatがスタンダードなマーケティングプラットフォームになりつつあるのは、想定外なトレンドの一例ではないだろうか。
以下、キャンペーン戦略に反映していかないと「マーケターの怠慢」と言われかねない、今後要注目の重要トレンドをまとめてみよう。
1. ソーシャルメディアに注目した検索最適化
ソーシャルメディアプラットフォームに注目したSEOが重要になってきている。Facebookでは、「Instant Articles(インスタント記事)」を通して「パブリッシャープラットフォーム」としての新しい役割をテスト中だ。サードパーティのコンテンツを表示する「インスタント記事」により、ユーザーは記事の全体を読むためにリンクをクリックしてFacebookの外に出る必要がなくなる。
ソーシャルメディアでシェアされることが、自然検索での可視性に影響する傾向が続いている。特に、2016年の米大統領選挙戦が本格化する中、このトレンドが顕著になっている。たとえば、バーニー・サンダースを支持する一連のウェブサイトは、ソーシャルシェアの数が多く、それがオーガニック検索結果に大きく反映されている。
2. ソーシャルメディアに広がる「購入」ボタン
ソーシャルメディアがマルチタスクメディアへと変貌しつつある。Facebook、Twitter、インスタグラムなどのソーシャルメディアサイトから、企業のサイトに移動しなくても直接商品を購入できる「購入ボタン」が爆発的に増えている。
購入ボタンにより、消費者の「今すぐ欲しい!」がクリックひとつで簡単に実現する。ショッピングの達人なら購入ボタンを危険視するかもしれないが、マーケターにとってはありがたい存在だ。オンライン決済は、以前より便利に効率よく利用できるようになっている。Apple Payをはじめとするモバイル決済サービスは、オンラインで購入するユーザーの決済方法や発送先などの情報を保存し、すぐに購入が完了するようになっている。
3. マーケティングプラットフォームとしてのSnapchat
アメリカではSnapchat仕様の縦型動画が市民権を獲得した感がある。今や、企業、セレブ、政治家まで誰もがSnapchatを使っているが、Snapchatは単なる流行では終わらないだろう。ミレニアル世代や、リアルタイムなやり取りに馴染んだ17歳から34歳あたりの世代という「金脈」を取り込める可能性を秘めているからだ。
ESPN、Comedy Central、P&Gなどのブランドは、すでにSnapchatを使用してミレニアル世代の消費者にリーチしている。
最近P&Gでは、コスメブランド「CoverGirl」キャンペーンの一環として、Ultra(化粧品・スキンケアの全米チェーン)店舗の近辺を狙ったエリアターゲティング広告を展開した。Snapchatでは、広告から購入へのトラッキングができる方法を提供してはいないが、閲覧数、ブランドフィルターを使用した人数、ブランドフィルターをスワイプした回数など、貴重なデータを提供してくれる。
4. 急増する動画検索
Googleが動画広告を検索に組み込むことになったが、これはユーザーがオンライン動画広告に慣れてきたことを示しているだろう。少なくとも、そう考えているマーケターは多く、動画広告、特にモバイル端末向けの動画広告に多大な労力を費やしている。
ハイインパクト広告は、どんなサイズの画面でも高いエンゲージメントを実現する。ドル箱であるモバイル端末ユーザーの取り込みを目指すマーケターたちは、モバイル動画広告の力を借りている。実際、2016年のスーパーボウル(Super Bowl 50)は、モバイル端末からの広告閲覧がいかに多くなったかを端的に表していた。開催中に発生した3億3千万という広告閲覧数の60%がモバイルからという、試合中の広告閲覧の過半数がモバイルに占められた初めてのスーパーボウルとなったのだ。
5. コンテンツの見直し
オリジナルコンテンツは、より深く掘り下げたストーリーテリングへと変わりつつある。時代にあったブランドづくりをし、検索順位の向上を狙うマーケターは、長尺のオリジナルコンテンツを制作している。保険大手のProgressiveやAllstateなどのブランドは、もう何年もストーリーテリングの手法を使っている。
マーケターたちは、浅く広く手を出すのではなく、特定のチャネルにコンテンツを集中させるべきと気づきつつある。この戦略は、市場の飽和が進むにつれて、より重要になってくるだろう。
また、ホワイトペーパーや動画広告などにも、より対話型のコンテンツが使われるようになり、診断チェックリストやクイズなどを組み入れたものが多くなっている。さらに、広告から直接購入できる手段を提供し、消費者とのエンゲージメントを高めている企業も存在する(家庭用品オンラインストアWayfairなど)。
6. アドブロックの停滞
自社メディアで広告を展開している企業のマーケターは、ブラウザーで広告遮断を行う技術、アドブロックの動向を注視していることだろう。アドブロックは回転が速く、新しいアドブロック技術が登場したと思ったら、すぐに姿を消していく。アドブロックは、これから再び停滞期に入ると見ていいだろう。ただし、これはマーケターが現状に甘えて良いということではない。
マーケターは、ユーザー体験を最優先とした上で、アドブロックとの戦いを続けている。表示されるまでに時間がかかりすぎる広告は消費者に嫌われる。コンテンツを求める消費者は、広告対コンテンツの比率が悪く、広告に重きを置いているサイトは避けて通るようになる。
コンテンツと広告のバランスをとり、すばやく表示されるように広告を提供するマーケターは、消費者の広告に対する許容度を上げることができる。ユーザーの気に触らなければ、広告はブロックされない。それだけで、アドブロックとの戦いには勝ったも同然なのである。
(2016年4月12日 CMO.comの記事より)
Richard K. Kahn(eZanga.com の創業者 / CEO)