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- 1 広告運用とサイト運用の一体化で生まれる投資効果(Data Driven Forum 2016 レポート)
広告運用とサイト運用の一体化で生まれる投資効果(Data Driven Forum 2016 レポート)
2016年09月08日
【POINT】
- 広告運用とWebサイト運用の一体化を目的とした、広告とマーケティングというふたつのテクノロジー領域の連携が注目されている
- 広範なデータを集約することで、広告の費用対効果は大幅に改善できる
- 分析から実行までの時間を短縮できれば、費用対効果を高めるためのテストと最適化に集中できるようになる
毎年常に発生する企業の支出費目のひとつに、宣伝広告費がある。そのなかでもデジタル広告の占める比率は年々高まっていることだろう。その支出から得られる成果、つまり広告ROIを向上させることは、売上に直接貢献する。このデジタル広告の投資最適化に関する最新動向を、Adobe Marketing Cloud Data Driven Forum 2016のセッションの内容から見ていこう。データを起点とした広告運用のあるべき姿とは、どのようなものだろうか。
顧客に寄り添うために求められる、テクノロジー連携
デジタル広告の世界では、媒体企業側と広告主企業側との間で広告在庫や広告クリエイティブが取引され、これを効率化する様々なテクノロジーが発展してきた。これらはアドテクノロジーやアドテク(Ad Tech)と呼ばれる。一方、顧客との関係強化を図るために企業が自ら展開するマーケティング活動についても、これを支えるテクノロジーの目覚ましい展開がみられる。昨今のマーケティングオートメーション(MA)やデータ管理プラットフォーム(DMP)、デジタルエクスペリエンスプラットフォーム(DXP)といった多様な領域が広がっている。これはマーケティングテクノロジーやマーテク(Mar Tech)と呼ばれる。
どちらも市場環境の激変へと企業が対応するために求められるテクノロジーとして発展し続けている訳だが、いま注目されているのは、ふたつのテクノロジー領域の連携、統合だ。新規顧客を開拓し、潜在顧客を引き付け、既存顧客のロイヤルティを向上することは、企業活動の根源となる。そして、ブランドとの出会いから購買や利用に至るまでの顧客の「旅」(カスタマージャーニー)に寄り添う必要がある。そのためには、広告展開と、企業のコミュニケーション展開の連携が不可欠という訳だ。
しかし複雑化する一方の様々なテクノロジーを連携させるのは大変な困難が伴う。またそれと併せて、企業内の体制にも変革が求められる。
さいわい複雑化の問題には解決策がある。統合ソリューションだ。Adobe Media Manager プロダクトマネージメント ディレクターのビル ムンゴバン氏は、市場にある様々なマーケティングテクノロジーと違い、Adobe Marketing Cloudならアドテクノロジーとマーケティングテクノロジーをひとつの統合基盤として包括的に提供していると述べた。もちろん単独でも利用できるが、両者を連携させて利用すれば、自社の広告運用とWebサイト運用を一体的に行うことができるようになる。複雑なテクノロジーコンポーネントの組合せやデータ連携のしくみを意識する必要はない。
広告運用を最適化するアドテクノロジー
現在、アドテクノロジーの分野では、データに基づくデジタル広告のリアルタイム購入/運用/最適化を行う「プログラマティック」(広告自動取引)が注目を集めている。様々なチャネルやデバイスの広告運用を自動化しつつ、一貫した顧客体験に配慮しようというものだ。
アドビの提供するアドテクノロジーの中核には、検索/ディスプレイ/ソーシャルの広告運用を行うAdobe Media Managerがある。予算と出稿についてチャネルを横断的に自動調整することで、ビジネス貢献度を高める。

またアドテクノロジーとマーケティングテクノロジーの両者を統合したアドビならではの特色として、ムンゴバン氏は、「オーディエンス」「メディア」「クリエイティブ」の領域をカバーすることだと述べた。ではこの3領域をどのように効率化するのだろうか。

新規顧客に認知してもらう場面と、認知した顧客の行動を促す場面では、広告の役割も自ずと異なる。商品に興味を持つであろうまだ見ぬ人を探して声をかけるのと、自社サイトを訪問して知識を得た人への提案では、本来なら広告も出し分けるべきだ。そうした広告を見るべき人の属性を見分けるのが、「オーディエンス」データだ。オーディエンスデータは「データ管理プラットフォーム(DMP)」と呼ばれる仕組みで管理される。また、広告メディアの持つデータ、自社サイトの訪問者データなど、様々な「メディア」のデータも人の属性を見分けるのに有用だ。前者はDMPの代表格であるAdobe Audience Managerが、後者はAdobe Analyticsがカバーする。そして、その人にどのような広告を提示するかも、広告に接触する人の体験を左右するために重要である。この領域ではAdobe Creative Cloudとの連携が有効だ。さらにアドビは、動的にクリエイティブを最適化するテクノロジーも用意している。まさに、一人ひとりのカスタマージャーニーに寄り添う体験を、広告とwebサイトの連携によって提供する訳だ。
アドビ自身の取組み事例に見る、データ起点での広告運用のしくみ
アドテクノロジーとマーケティングテクノロジーを連携させると、どのような成果が得られるのか。ECサイトを運営するアドビ自身のマーケティング活動事例からひも解いていこう。アドビ マーケティング本部 サーチマーケティングマネージャーの松本恵美子氏は、Adobe Media ManagerとAdobe Analyticsの連携によるデジタル広告運用により、大きく次の3つの効果を得たと言う。
意思決定
異なる情報源のデータから相関を見出すのは、どのような場面でも困難が伴う。ところが広告データと自社サイト内の行動データを分析し、施策を実行するのに、同氏は「従来は分析から実行まで1週間かかっていたが、それを1日に短縮できた」と明かした。また広告予算を的確に配分することもできるようになった。データにもとづくシミュレーションや予測、自動配分など、テクノロジーを使うことの意義が発揮された訳だ。その結果、マーケターはより早く、より多くの意思決定に時間を割くことができるようになる。
作業量
広告運用の多くはこれまで手作業に頼ってきた。検索キーワードの設定もそのひとつだ。Adobe.comへのトラフィック流入は約6割が検索エンジン経由であり、最適なキーワード設定がその成果を左右する。テクノロジーを使うことにより、そうした作業量は「従来比で52%減になった」という。また、例えばGoogleとYahoo!の両方で行っていた作業が一度で済み、これだけで作業量は半分になる。手作業が減ることで、新たなキーワードの探索やA/Bテストなど、コンバージョン向上につながる業務へと時間の使い方をシフトすることができる。
パフォーマンス
顧客がカスタマージャーニーのどの段階にいるのかによって、広告の役割、Webサイト内での行動は異なる。そして最も売上が高くなるよう、広告投資を含む施策全体を調整しなければならない。例えば、Webサイト訪問者が広告を経由してサイトに来る際、すぐに購入に至る場合もあれば、体験版をダウンロードしてから購入に至る場合もある。そこで広告投資の重み付けを、購入50%、体験版50%と設定したり、状況に応じて変更したりすることになる。これをテクノロジーによって自動化することにより、「マーケティングROIは4倍増になった」という。
重要なのは、予算に応じた最適化と説明責任
近年のWebサイト訪問者の目的は多様化している。Webサイトに来る目的は購入とは限らず、情報収集かもしれない。マーケターには、たとえすぐの購入には至らなくても、最終的には購入に至る質の高いサイト訪問者を増やすことが求められている。そのためには、分析よりもむしろテストや最適化のための十分な時間の確保が鍵となる。
広告はサイト訪問者を増やす手段であるが、お金を使う以上結果が問われる。予算の制約の中で、チャネルやクリエイティブの最適化をスピーディーに行うには、テクノロジーの支援が欠かせない。マーケターにはビジネス貢献度を説明する責任があるが、説得力のある説明さえも、テクノロジーが支援してくれるのだ。
UNITE編集部