この記事を共有する:

- 1 クリエイティブなCMOに求められる12の資質(後編)
クリエイティブなCMOに求められる12の資質(後編)
2016年10月18日
CMOにとってのクリエイティビティとは何であろうか。LionbridgeのCMOであるクリント プール氏は「マーケターがどれほど多くのデータを手にしようと、絶対に必要であり続ける『世界を見る視点』」であるという。
「昨今のマーケティング幹部は、売上のノルマを抱えて常に損益の心配をするビジネスマネージャーのようになっており、クリエイティブ系の開発プロセスからは遠ざかりつつある。しかし、だからといってマーケターに必要な考え方が変わるわけではない。それは、いかに課題にアプローチし、判断を行うかということだ」とプール氏。
むしろ、誰でもデジタルが使えるようになり、万人にデータの活用機会が開かれている今、クリエイティブなCMOこそ、企業の差別化の鍵を握っていると言える。「データドリブンな会社が、同じような競合他社と差をつけられるかどうかは、クリエイティビティにかかっている」と3D印刷のMcorでCMOを務めるディードル マコーマック氏は述べている。
それでは、今日のクリエイティブなマーケターは、どんな資質が求められているのだろう? 本シリーズの前編では、12の資質のうち、最初の6つについて解説した。この後編では、残る6つを紹介する。
クリエイティブなCMOに求められる資質7:限りある資源を活用する能力
CMOには、ビジネスマネージャーとしての考え方が求められ、収益第一の視点で組織を運営することが期待される。このため、限りある人材や予算などの社内資源を工夫して使う姿勢が重要になる。
「私にとって課題のひとつは、グローバルな事業展開において、それぞれに特殊な各国市場に本社のマーケティング資源をどのように適用していくかだ」とLionbridgeのプール氏。「旧来のやり方のように、大きなコストをかけて資源の適用を拡大するのではなく、すでに各国に配備してある顧客対応資源に他の役割も任せ、現地の知見を活用しながらコンテンツのコンセプトと方針を精査するなど、全体的なプロセスにも関わってもらうことにした」と彼は言う。
また、Mcorでは、マコーマック氏がたった一人でマーケティングのすべてを担当している。「仕事そのものだけでなく、通常は複数のスタッフに振り分けられる様々な仕事をどう片付けていくか、クリエイティブに対応していくことが重要」とマコーマック氏。「タイトな納期、十分とはいえない予算、具体的な目標、どれをとっても創意工夫を要することばかりだ。その創意工夫が、Mcorの揺るぎないブランド認知度とビジネス成果にも現れている」と強調する。
クリエイティブなCMOに求められる資質8:イノベーションの余地を造る能力
ThoughtSpotのスコット ホルデンCMOは、製品マーケターとして活躍していた頃、ユースケース、デモ、プレゼンテーションなどにおいて、細部までこだわるタイプだった。「自分は完璧主義の傾向があり、ディテールを練る作業に喜びを感じていた」とホルデン氏。「しかし、創造性を活かすには、考える時間、試行錯誤する時間が必要となる。(CMOとなった今)、責任者として多くの案件を抱えているため、細部にこだわっている時間がなくなってしまった」。
そこでホルデン氏は、自分がクリエイティブに関われなくなった代わりに、チームに創造性を育むための努力を推奨している。「CMOが創造性を重視しなければ、画期的な進歩の芽となるべき日常のクリエイティブプロセスが、単なる帳簿上の経費とみなされてしまう」とホルデン氏。
クリエイティブなCMOに求められる資質9:成長のためのパートナーシップを結ぶ能力
CMOと、その他の幹部たち ( 例えばCEO「最高経営責任者」、CFO「最高財務責任者」、CIO「最高情報責任者」など)との強固な関係も、かつてなく重要な要素となっている。
「広告をはじめ、一般業務、顧客体験など、CMOの責任となる範囲が広がりつつあるが、最終的には、CMOの業績は全体的なビジネスインパクト(および成長)で計測される」と、CA Technologiesのローレン フラハティCMOは述べている。「つまり、テクノロジーに明るいITチームから、CFOオフィスの財務担当の視点まで、ビジネスにおけるすべての分野のスキルセットを持たねばならないということだ。広い分野にまたがる見識は、日常的な業務の遂行に必要なだけでなく、CEOを相手にビジネス成長に向けたアドバイスをする立場であるCMOに不可欠なものである」。
CTO(最高技術責任者)もまた、CMOが協力体制を持つべきキーパーソンである。「堅牢なブランド戦略は、マーケティング部門だけで構築できるものではなくなっている」と、 Blipparのグローバルマーケティング部長であるオメイド ハイウェジ氏は述べている。「今日のCMOは、テクノロジーのもたらした新しい行動様式を適切に取り入れていかなければならない。まずは新しい行動様式を理解し、その後イノベーションを行っていくことが必要だ」。
クリエイティブなCMOに求められる資質10:ルール破りを良しとする度胸
クリエイティブなCMOは、旧来のやり方に囚われない。
FlexのCMOであり、ディズニーとHPでもCMOを務めた経験を持つマイケル メンデナール氏は、次のように述べている。「B2BとB2C両方の業界で働いてきたが、B2B業界では、コンテンツ作成やストーリーの語り口に何かが足りないことに気づいた。B2B業界では、B2B顧客も消費者に変わりないという考え方が欠けていたのだ。業務用に購入を行っているユーザーだからといって、一般消費者と違う対応をしていいとは限らない。顧客の心を動かすような結びつきが必要なのは、B2Bでも同じことだ」。
この考えに基づき、メンデナール氏は、誰も読まないリサーチ報告やホワイトペーパーを見限り、編集/制作のチームを雇い入れ、消費者向けのものと同じグレードのB2B顧客向け雑誌を作り上げた。
「優れたCMOは、従来当然となっている知見に挑戦し、なぜこの方法でなければならないのか疑問を呈し続ける」と、Reduxioでマーケティングと企業戦略のチーフオフィサーを務めるマイク グランディネティ氏は述べている。「過去10年ほど、広告とメディア関連でB2B業界と付き合ってきたが、B2B企業はブランドアイデンティティの構築や、人間らしい体験の提供にあまり関心を示さない傾向にある」。
そこでグランディネティ氏は、B2B企業のリーダーたちに向けてB2Cアプローチを売りに出すという奇策を講じた。「過密状態の市場で、すぐに目立つ存在となり、収益増につながった」とグランディネティ氏は話している。
クリエイティブなCMOに求められる資質11:説得力のあるストーリーを語る能力
今日の消費者は、ブランドに特別な体験を求めている。「(このため)ブランドには、単にポテンシャルの高い顧客を獲得する力だけでなく、優れたストーリーテラーであることが求められる」と、デジタルエージェンシー3Q Digitalでマーケティングおよび収益責任者としてチーフオフィサーを務めるスコット レイデン氏は述べている。「単にパフォーマンスKPIを眺めているだけでは、今日のCMOは務まらない」。
顧客の心を掴むような体験や、エキサイティングな体験の提供に成功すると、必然的に収益に反映される。「クリエイティブなCMOとは、ストーリーテラー、クリエイティブ、コピーライター、コンテンツマーケターなどを適材適所で組み合わせ、顧客とより深い関係を構築するための創造を行う存在である」とレイデン氏。
現在NeustarでCMOを務めるベテランのB2Bマーケター、リサ ジョイ ロスナー氏は、今まで働いた会社のすべてにおいて、データが最も重要な資産であったという。しかし、最もインパクトが大きな戦略は、キャラクターやストーリーを使ってデータに命を吹き込むことから生まれたと同氏は述べている。
「データだけではストーリーを語ることはできない」と、プレゼンテーション用ソフトウエアメーカーPreziのCEOであるピーター アーヴェイ氏も同意している。「心からのリアクションを喚起するメッセージを作成するには、クリエイティブなマーケターが必要だ」。
クリエイティブなCMOに求められる資質12:行動すべきタイミングを計る能力
PegasystemsのCMOであるロバート タス氏は、マーケティングおよび事業展開に四半世紀に及ぶ経験を有しており、最近ではJP Morgan Chaseのデジタルマーケティング部長を務めている。自分の仕事の99%にはクリエイティビティが関わっているというタス氏は、アイデアを練るのをやめて決断するタイミングを知ることも、クリエイティビティと同様に重要だという。
「自分の場合、最も大きな課題は『時間の使い方』だ。仕事をする上でデータは重要だが、気をつけないとデータ収集に際限なく時間を取られてしまう」とタス氏。「データが十分に揃ったとどの時点で判断して行動に出るか、見極める力が大切だ。逆に、もっとデータが必要だと判断しなければならないケースもある。重要案件は無限にあるので、時間を無駄にはできない」。
CMOはまた、クリエイティブに自己管理しなければならない。「ビジネス目標から逸脱しないエネルギーの使い方が肝心だ」と、Russell Reynolds Associatesのグローバルリテール、マーケティング、デジタル化事業を率いるノーム ヤスチン氏は述べている。
CMO.com
関連資料
ビジネスの成長には、組織力の強化が欠かせません。このレポートでは、米調査会社ForresterとForbesの合同調査をもとに、CMOとCIOが部門の壁を越えてどのように協調すべきかを提言します。