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2017年03月09日
【POINT】
多くの企業が、顧客との間に価値ある有意義な関係の構築に苦戦している。このため、顧客の入れ替わりは速く、ブランドから離れていくユーザーも多い。広告やメールなどのコミュニケーションを拒否する「オプトアウト」も上昇を続け、大きな問題となっている。これは特に、若い世代の消費者に顕著な現象だ。若者世代は、これまでにないレベルのパーソナライゼーション(個人に特化した対応)と価値を、企業に求めているからだ。
米調査会社ERDMでは、マイクロソフト、HP、MassMutual、Gilt、QVCなどのブランドを対象に、各企業が実施した顧客アンケートをはじめとする160のVoC(Voice of Customer 顧客の声)を調査した。上記の考察は、これらの調査結果に基づいている。
当然ながら、マーケティングリーダーたちは、こうした問題を懸念するとともに、なかなか解決できない状況に苛立ちを募らせている。ERDMでは、リーダーたちの要望に応え、顧客体験の個人化と顧客ロイヤルティ向上における、企業の自己評価に役立つ8つの質問を用意した。
この記事は、前編と後編にわけて掲載する。まずは、最初の4つの質問と回答のヒント、そしていまから行うべき実践事項を見ていこう。
モバイル向けロイヤルティアプリの会社、Five Starsで製品マーケティングディレクターを務めるマイク ポルナー氏は、次のように指摘する。
「最も成功している企業では、スタッフに顧客ロイヤルティの価値を理解させ、積極的な関与を促している」
また、ボーダフォン英国法人のCEOであるユルエン ホーエンキャンプ氏は、次のように述べている。
「変革は社内と社外の両方で進んでいかなければならない…(中略)顧客の声に耳を傾け、顧客目線で「価値とは何か」を理解すると、それが顧客を中心にした変革の実現につながっていく」。
顧客体験とロイヤルティ向上を図るための実践事項:
顧客の関心を獲得することに成功している企業では、顧客理解を第一の優先事項としている。
百貨店チェーンBloomingdale社の会長兼CEOであるトニー スプリング氏は、同社のマーケティングのすべての側面において、顧客理解が必須であると述べている。参考になる同氏の言葉を紹介しよう。
「今は消費者が大きな影響力を持つ時代だ。我々は顧客が求めるやり方で関係を構築しなければならない」
「消費者は、自分のための対応をしてほしいし、プライバシーは尊重してほしいという、相反する要素を同時に求めている。顧客との関係を築く際には、信頼を根付かせることが必須となる」
また、ファッション世界最大手LVMH傘下DFSグループのブランドクリエイティブを指揮するジョン ガーハート氏は、次のように述べている。
「人はなぜ特定のブランドをひいきにするのか。ブランドに対する深い愛着を示してくれる顧客には感謝の気持ちを示したいので、この点を詳しく研究したところ、顧客の一人ひとりが独自の意見を持っており、感激した。顧客の愛着心という実に礼賛すべき価値こそ、ブランド体験の核を成すものだ」
顧客体験とロイヤルティを重視するべき理由について、社内の理解を得るための実践事項:
スーパーマーケットチェーンのSafewayでは、ロイヤルティプログラムを企画するにあたり、多くのデータ要因を調査した。その結果、意外な発見につながった要因もあるという。プログラムを企画したエージェンシーが、ひとつの重要な点に言及している。
「放っておいても買ってくれる人々に褒美を出すことは危険だ。事業を食い潰すことになりかねない。それよりも、顧客としての行動を変えて欲しい層を、プログラムのターゲットとすべき」。
プログラムを開始する前に、Safewayでは顧客に対してアンケート調査を行い、「一週間に食料品にかける金額は?」「Safeway以外に買い物をする場所は?」などの質問をした。回答は実際の消費額データと合わせて、「Safewayが占める、財布の中のシェア(ウォレットシェア)」として算出され、ロイヤルティプログラムにより、獲得を目指すべき新規機会の理解に役立てられた。
適切なデータを使用するための実践事項:
マーケティング会社GainsightのCEOであるニック ミータ氏は、顧客体験およびロイヤルティの改善に不可欠なふたつの要件を挙げた:
そして、このふたつの担うべき役割を指摘している:
「CSチームは、CMOの目となり耳となり、どういったユーザーがサービスを愛用しているか教えてくれる。消費者モニターからは、顧客側の意見や要望など、市場の生の声を取得できる。これはCMOにはできない仕事だ。CMOのようなブランドの方向性を決める役職についている人員よりも、ユーザー数のほうが圧倒的に多いことを忘れてはならないだろう」。
ふさわしいスキルを持った社員をアサインし、顧客の声を理解するための実践事項:
(2016年9月22日 CMO.com の記事より)
Ernan Roman(ERDM社 社長、“Voice of the Customer Marketing” 著者)
アドビは2017年6月、小売/銀行分野における消費者の購買行動に関する調査を実施しました。現代の消費者を取り巻く情報環境や消費行動を把握し、カスタマージャーニー、提供している顧客体験のあり方を見つめ直すヒントとしてぜひお役立てください。