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2017年08月31日
【POINT】
世にあふれるノイズの波をかき分け、顧客の心の深い部分に届く、優れた体験。そうした人の心を揺さぶる体験を形作る要素を、“Xファクター”と呼称するとしよう。Xファクターは、人間の「感情」に訴える要素だ。ときに人を笑わせ、涙させ、ときに「想い」との強いつながりを感じさせるもの。どこにでもありそうなコンテンツ素材を、忘れがたいデジタル体験へと高めるものだ。
あらゆる顧客接点を通じて膨大な選択肢が提示されている中、突出した顧客体験を提供することは、実に重要な意味を持つ。秀逸な体験は、人間関係、娯楽、仕事など、一人の顧客を取り巻く世界との関係に強烈な影響をもたらす。友人、家族、同僚、ソーシャルメディアでの対話といった「一対一」の関係から、B2C、B2B、教師と生徒、政府と市民、芸術家とオーディエンスといった「一対多」の関係まで、影響する関係は多岐にわたる。
ではこの「Xファクター」を構成するのは何だろうか。それは次の3つの属性である。
(1)パーソナル
相手がどういう人間なのか、どこにいるのか、何を好むかを理解している。
(2)パワフル
美しく、インスピレーションに満ち、相手の心を掴んでいる。ダイナミックに展開され、どのようなデバイスでもきちんと見ることができる。
(3)ユビキタス
仕事をしているとき、なにかを読んだり視聴したりするとき、買い物をするとき、その体験は常に相手とともにある。そして、相手の好奇心に訴えるコンテクストで語りかけてくる。
この3つの属性を満たすのは、マーケターにとっては難しい課題だろう。しかし多くの場合、テクノロジーを活用したアプローチが、Xファクターの実現に役に立つ。ではそれぞれをどのように実現するのか解説しよう。
相手の心に届くコンテンツは、マーケターの戦略がはっきりしていなければ作れない。肝要なのは、次の二点をビジネスプランとしっかり結び付けることだ。
しかし、適切な効果測定の仕組みがなければ、評価を行うことは難しい。
自社が狙いとするような相手へとターゲティングし、その相手がどのようなデジタル行動を辿ったかをつかむには、テクノロジーを活用することで解決できる。デジタルKPIを設定したうえで施策を実行し、各種指標によって効果を“見える化”できるのだ。そうした指標に着目することで、ビジネス目標に直結する要因はどれなのか、見極めることができるようになる。
相手の感情に訴える体験作りは容易ではない。そのための仕組みが整っていなければ、なおさらだ。仕組みが整っていないと、施策ひとつ進めるのも長い道のりになる。例えばあるキャンペーンを展開する際に、使うべき素材が集中管理されていないと、あちこちに保存された素材のどれが最新なのか判らなくなる。場合によっては、担当者のハードディスクの中にしか保存されておらず、関係者が困ることもある。
コンテンツ素材を集中管理する「リポジトリー」の必要性は、誰もが認めるようになってきた。自社内でコンテンツを内製化している場合はもちろん、ブランド企業と制作会社との間でも、欠かせない存在になりつつある。多数のコンテンツを見分けるためにメタデータをタグ付けし、制作中から完成まで、コンテンツを施策関係者同士で共有しながら磨き上げる。そうした仕組みがあって初めて、素晴らしいコンテンツを開発し、すばやく世に送り出すことができるのだ 。
顧客の購入判断プロセスにはさまざまな段階がある。ブランド企業が顧客に働きかける際には、体験の全体を通じて連続性を保つことが目標となる。ここで課題となるのが、複数のチャネルを統合して一貫した体験を実現する「オムニチャネル」アプローチだ。これは、適切な仕組みなくしては絶対に達成できない。
一人ひとりに対し、明確な訴求力のあるデジタルブランド体験を提供することは、簡単な仕事ではない。しかしこれも、テクノロジーで解決することができる。相手が購買判断プロセスのどの段階にいるかを把握し、その段階にふさわしい対応をすることは、顧客行動をデータとして把握し、適切なコンテンツを提供するためのデジタル基盤を用いることで実現できる。そうした基盤があれば、マーケターは、「相手に寄り添った」「パワフルな体験」を、「いつでもどこでも」提供できるようになるだろう。
CMO.com
アドビは2017年6月、小売/銀行分野における消費者の購買行動に関する調査を実施しました。現代の消費者を取り巻く情報環境や消費行動を把握し、カスタマージャーニー、提供している顧客体験のあり方を見つめ直すヒントとしてぜひお役立てください。