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- 1 広告制作から配信まで機械任せ?!広告へのAI活用の勘どころ
広告制作から配信まで機械任せ?!広告へのAI活用の勘どころ
2017年11月16日
【POINT】
- さまざまな顧客データを使用し、テクノロジーがマーケティングの仕事をする時代が来ている
- 広告クリエイティブ制作/配信の自動化というアイデアは魅力的ではあるが、実用には考慮すべき点が多く、限界もある
- AIの可能性を最大限に活かすには、人間の情緒的な感性と、テクノロジーの効率性を融合させることが最善である
広告クリエイティブの制作/配信プロセスのすべてを自動化できるのか?
広告クリエイティブの制作には、長い過程がある。ターゲット層について調査し、インサイトを得てアイデアを出し、クリエイティブブリーフ(広告の設計書)を書き、コピー作成、デザイン、作曲、動画編集、そしてライブ配信と、様々な制作工程が存在する。しかし、すべてのプロセスを数分で完了できるツールがあるとしたら?
実は、テクノロジーによる自動化の行く先を知っている者にとっては、この「数分で完了する未来」はすでに「現実」となっている。だがそれより大きな問題は、企業がブランド広告に、実際にこうしたツールを導入したいかどうかである。
AI(人工知能)という用語が今、マーケティング関連の記事で頻繁に取り上げられている。マーケターにとっては、AIは少々恐ろしいものとして語られることが多い。ソーシャルチャネルを通じて得られる様々な消費者データを活用し、人間がやるより迅速に、かつ効率よく、機械がマーケティングの仕事をやってのけるというのだ。広告主企業は、この恐るべき勢力を実際どう使うつもりなのだろう。マーケティング担当者や広告代理店は、要らなくなってしまうのだろうか。
AIの奇跡は大量生産と検証ができること

ランジェリーのグローバルブランド「コサベラ(Cosabella)」が、最近メディアの注目を集めた。この企業はデジタルエージェンシーと決別し、ソーシャル展開をAI「アルバート(Albert)」で自動化した結果、ソーシャルメディア広告への投資から50%の回収率、広告費の12%削減など、目覚ましい結果を出したと伝えられている。しかし、メディアで語られているストーリーの裏側をよく見てみれば、クリエイティブ資産については、コサベラがすべて提供しているという。テクノロジーを使っているのは、主に配信まわりの話だ。クリエイティブプロセスの自動化というアイデアは魅力的ではあるが、実用化にあたっては様々な点を考慮しなければならないし、また、現状として限界もある。
現在、マーケティングにおけるAIの活用機会としては、主に2つの分野がある。ひとつは、上記コサベラの例に見られるような自動化。もうひとつは、高度なパーソナライゼーション(個人最適化)だ。どちらの分野においても、デジタルマーケティング戦略で実際に使える、便利で現実的なソリューションが存在している。筆者はここ半年ほど、これらの分野で目覚ましいテクノロジーを提供している50社以上のスタートアップ企業の話を聞いてきた。例えば、ソフトウェア企業Zoでは、さまざまなデータポイントにもとづき、Facebookのコンテンツや投稿を生成する技術を提供している。クライアントは、目の前でコンテンツ展開の様子を見ることができる。Picasso Labsというマーケティング企業は、AIを利用して、クライアントの市場におけるソーシャルイメージを分析し、どんなデザインやカラー、構図が最も高いROIをもたらすかを教えてくれる。
パーソナライゼーション分野はさらに興味深く、ソーシャル動画がマーケティングにおける次なるビッグチャンスになると見て間違いない。Idomoo、Photospireなどのテクノロジー企業が提供しているサービスは、ひとつの動画をもとに、ターゲット層別に異なるバージョンの動画を何百と生成して配信を行う。動画を何度も編集する必要はない。
人間の脳に匹敵するAIはない

ただし、上記のような技術は、すべてマーケティングに役立つ可能性はあるものの、AI技術だけではソリューションとして完璧からは程遠い。人間の脳にとって代わり、人間のニーズや欲求を完全に理解できる機械は存在していないからだ。つまり、人間自身でさえ完璧に理解していないシステム(脳)を複製することは難しいということだ。広告で消費者を刺激するために必要となる感情の領域は、「50%割引 - ここをクリック」といった単純なものから、「いかに消費者の心を魅了するか」「ブランド戦略の全体を支える、文化的にもブランドと関連性のあるインサイトの特定」といった複雑なタスクまで、大きな広がりがある。
それでは、企業は新しいテクノロジーの利点をどう活用すべきか。…その前に、まずは過去の例から学ぼう。例えば、ソーシャルメディアというコミュニティは情け容赦がない。ブランドの戦略意図を誤解し、あの手この手で企業を叩こうとする。しかし、それらにうまく対応している企業もある。ドミノ ピザは、悪意を持ったネットユーザーの“荒らし”をかわすべく、独特の声のチャットボットキャラクター“Dom”を導入し、成功を収めている。不特定多数の人間と玉石混交のやりとりが発生する場では、相手との距離感が非常に重要であることを示す例だ。
企業がAIの利点を活用するコツ(1):感情を伴わない

企業がAIの利点を活用するコツ、一つ目は「AIには複雑な、感情を伴わないタスクを任せること」だ。人間は、AIを活用することで空いた時間を、人間の能力に適した作業、つまりコンピュータには真似できないコンテクストの理解や共感を必要とする作業に専念するべきだ。AIの可能性を最大限に活かすには、人間の情緒的な感性と、テクノロジーの効率性を融合させることが最善となる。
企業がAIの利点を活用するコツ(2):パーソナライゼーション
二つ目は「パーソナライゼーションへの投資を真剣に考えること」。パーソナライゼーション改善のカギは、自社の顧客データをもっと活用することだ。自分たちで得た顧客情報をソーシャル広告プラットフォームに適用すると、特定のユーザー群をターゲットにすることがき、より個人に特化したブランドメッセージを生み出す機会が生まれる。
企業がAIの利点を活用するコツ(3):広告代理店との関係
三つ目は「広告代理店を見限らないこと」。優れた代理店であれば、新しいテクノロジーが彼らの仕事を取り上げてしまうとは考えない。臆することなく、新しいテクノロジーの試験的導入を勧めてくるはずだ。代理店の真の価値は、クライアントのビジネスと消費者の間に、感情に訴えるつながりを生み出す方法を理解している点だ。これだけは、今のところは自動化して対応できない分野である。
何よりも重要なことは、消費者の感情を揺り動かし、密な関係を作ることに尽きる。AIはそれを大いにサポートする手段の一つとして、上手に活用していくべきだろう。
CMO.com
グローバルソーシャルメディア代理店「We Are Social」のイノベーションディレクター Tom Ollertonによる記事を翻訳
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