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2018年マーケティング予測:大きな影響を及ぼす8つの技術革新
2018年01月16日
【POINT】
- 検索エンジンは、ブランドが消費者の目に触れる機会を作るが、ブランドを消費者の記憶に定着させるのは、レコメンドエンジンである
- 従来的なマーケティングから顧客体験(CX)へのシフトにより、CGOという新役職が台頭する
- マーケティングと販売においてAIを活用するには、人間による介入が必要であり、人的作業とAIの技術を融合した「ブレンドAI」が主流になる
【RESOURCE】
景気は上向きながら、個々の企業は大きな課題に直面している。とどまるところを知らないテクノロジーの変化と、膨れ上がる消費者の期待値。その両方を、Forrester Research(編注:米国の調査会社、フォレスターリサーチ)では、「企業の命運を分ける現実的な脅威」と呼んでおり、2018年は多くの企業にとって「審判の年」になると予測している。
この状況は、マーケティングという言葉がこれまで意味してきたものを根本から変える変化を促した。「CMOという役割は時代遅れになった」という見方さえ出始めている。
これに関連し、Forresterでも、従来的なマーケティングから顧客体験(CX)を核としたフレームワークへの移行が続くと予測している。2018年、こうした大きな変化は、AI(人工知能)の動向とともに、複数の影響をもたらすだろう。
同社の予測によると、マーケティングに最も大きな影響を及ぼすのは以下の8つになるという。
2018年の予測(1):
マーケティングの中心は顧客体験(CX)になる

消費者はわがままになった。2018年のマーケティングはリスキーな勝負になるだろう。顧客は一度嫌な思いをしたら最後、そっぽを向いてしまうからだ。ある意味、これはアマゾンのせいだと言える。Forresterでアナリストのキース ジョンストン氏いわく、アマゾンは今でも小売業全体のおよそ5%という比較的小さな存在にすぎないが、同社のインパクトはあまねく感じられている。
「(サービスの)スピード、利便性、そして、顧客が何を望んでいるかの理解度に対する消費者の期待値は、(アマゾンを基準に)より優れた顧客体験へのデマンドを生み出している」とジョンストン氏は述べる。
「顧客体験へのシフトは今に始まったことではない。大きく変わったのは、顧客の多大なる期待に応えることが、以前ほど難しくはなくなったという点だ。テクノロジーが安定し始め、クラウドのおかげでサービス展開が容易になりつつある」
競争の場が平坦になったということはすなわち、他社より際立つ顧客体験を実現することが難しくなるということだ。
2018年の予測(2):
レコメンドエンジンの重要性が増す

検索エンジンは、ブランドが消費者の目に触れる機会を作るが、ブランドを消費者の記憶に定着させるのは、(個人に特化したおすすめ商品を提示する)レコメンドエンジンだ。この分野でも、アマゾンが市場を牽引している。コンサルティング企業マッキンゼーでは、アマゾンが自動生成する「おすすめ商品」は、顧客が購入する商品の35%にものぼると見積もっている。Netflixでは、レコメンド機能がサービスのキャンセルを防ぎ、年間10億ドルも売り上げに貢献しているという。レコメンドエンジンはまた、顧客体験の向上にも役立っている。
2018年の予測(3):
広告の信頼性を問い直す動きが広がる

2017年は、デジタル広告の透明性に関連し、これまでになく大きな反発があった。2018年は、デジタル広告に対する警戒と、改めて顧客体験(CX)を重視する傾向が広告予算に反映されると、ジョンストン氏は予想している。
「広告予算が廃止されるということはなく、別のところに予算がかけられるようになるだけだ。CMOが媒体広告枠の買い付け以外の分野でも権限を持つようになると、媒体としては苦しくなるだろう。(広告に関しては)リセットの年になると思われる」。
2018年の予測(4):
CMOに代わり「CGO」が台頭する

従来的なマーケティングから顧客体験へのシフトは、CGO(Chief Growth Officer - 最高成長責任者)という新しい役割を生み出した。過去数年の間にこの動きはすでに始まっており、米食品大手のConAgra、Coca-Cola、Hersheyなどの企業がCGOを任命済みだ。
ジョンストン氏によると、これは単なる役職名の変更ではないという。CGOには、市場、売上、製品インパクトといった広範な責任を担い、全体的な仕組みとして動かすことが求められる。確かに、Forresterが調査したCMOのうち半数以上が、「顧客体験に大きな影響力を持っている」もしくは「顧客体験をコントロールしている」と回答している。
「顧客体験のマネジメントは、従来の役職では求められていなかったまったく新しいスキルセットだ」とジョンストン氏は話す。
2018年の予測(5):
「インテリジェントエージェント」が主流になる

デジタルという道具が、ブランドと消費者を仲介するようになった。ジョンストン氏は、この仲介者を「インテリジェントエージェント」と呼ぶ。これには、チャットボットから音声アシスタントまで、様々なものが含まれる。インテリジェントエージェントは、顧客へのサービスと「おすすめ(レコメンド)」提供において、新しいタッチポイントとなる。ここでも、米を中心にすでに一千万世帯で使用されているAI アシスタントのAlexaで、アマゾンが市場を牽引している。AppleのSiri、マイクロソフトのCortana、Googleの音声アシスタントも、家庭用、車載用、個人用機器に進出しつつある。
「マーケターは、消費者とのつながりを構築するための仲介を、こうしたシステムを通じて行うようになるだろう。」2018年には、売上の10%がインテリジェントエージェントを通じて上がってくる、とジョンストン氏は予測している。
2018年の予測(6):
AIが広告ブロックに利用される

インテリジェントエージェントはまた、消費者の防護壁として利用される可能性がある。アドブロックや、Netflix などの広告フリーのプラットフォームが好まれる傾向が続き、消費者は広告のブロックにインテリジェントエージェントを利用しようとするだろう。
消費者は今や、広告を省くようSiriに指示し、望み通りの体験ができる世界を作れるようになった。Googleもまた、自動再生の動画広告や、画面全体に広がるインタースティシャル広告を特定しブロックする広告ブロッカー(アドブロッカー)をChromeブラウザに導入するだろう。言い換えると、AppleとGoogleは、自社のエコシステムに表示される広告のタイプに規制を設け、消費者にとってより好ましい体験の場を創ろうとしている。
「現在すでに、お金さえあれば、インテリジェントエージェントの力を借りて独自の体験を得ることができる。この技術が成熟するにつれ、金は出すから広告は見たくないという選択肢が可能になっていくだろう」(ジョンストン氏)。
2018年の予測(7):
ブレンドAIが主流になる

AI(人工知能)は注目を浴びすぎており、実際役に立っているのか見分けがつき難い。Forresterによると、AIは役に立ってはいるのだが、現在AIが実行できる技術と、実際に望まれている技術にはギャップがあり、人間がこのギャップを埋めることを求められるようになる、という。同社はこの人間と機械の共同作業を「ブレンドAI」と呼んでいる。この表現は、マーケティングと販売におけるAIの活用は、人間の介入がかなり必要になると認識させるものだ。AIは「設定するだけで済む」技術ではなく、AIが約束する理想と現実の間に空いている穴を、投資と人的介入で塞いで行かなければならない。
2018年の予測(8):
AIの現状を認識させられる

ブレンドAIは、「AIに期待されること」と、「実際にAIができること」のギャップ認識から生まれたひとつの結果に過ぎない。Forresterでは、AIプロジェクトのなんと75%が、運用上の想定外の問題により、残念な結果に終わると予測している。同社の見方では、2018年のAI投資は、直接的な事業価値を証明するための個別プロジェクトと事例づくりに投下されることになるという。
これは、AIの応用に対する期待をリセットするものになる。「この傾向は、相場が下がるまで続くだろう。多くのスタートアップ企業が立ち上がり、優秀な頭脳がコストを下げる方法を考えている。しかし、コスト減が実現されるまで、過熱した期待に応えるだけのものは出てこないだろう」とジョンストン氏は述べている。
CMO.com
Todd Wassermanによる寄稿を翻訳
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