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- 1 消費者動向調査2017:ブランドへの信頼を高める体験の切り口が浮き彫りに
消費者動向調査2017:ブランドへの信頼を高める体験の切り口が浮き彫りに
2018年01月18日
【POINT】
- B2Cのマーケティングは、「入り口戦略」と「ファン化戦略」の2つを、同じブランドメッセージの下で実行するべきだ
- 小売分野では、消費者は複数のチャネルで好ましいメッセージに接したブランドを信頼する
- 銀行分野では、4割近くの消費者が、「オンラインサービスの利便性」を他行への乗り換え理由に挙げている
【RESOURCE】
「ブランドの個性」が求められるB2C企業

企業は消費者を引きつけるために、様々な場面を通じてブランドメッセージを展開する。ブランドメッセージは、商品やパッケージそのものから、広告、店頭、ブランドサイトやECサイト、ソーシャルを通じた口コミまで、あらゆる顧客体験を形作る。そして、企業が伝えるべきメッセージを検討するときには、顧客情報をはじめ、自社の商品やサービスの情報、ライバル企業の情報、そして最新のマーケティング施策やその成功/失敗例についても目を通しておかなければならない。これらすべてが、顧客体験を形作るメッセージのアイデアの源になる。
では、競合に先んじて消費者を引きつけるには、どうしたらよいだろう。扱っている商品やサービスの効能/価格にそれほど差がなければ、その優劣は消費者の個人的な好き嫌いに左右される。そもそも“固定ファン”と“固定アンチ”が存在し、マーケティング方針を大きく変えると固定ファンを失うリスクになる。「ライバルと同じことをやる」と没個性になり、ブランドの色を失ってしまう。
”固定アンチ”を作らない施策

消費者の関心を引くには、消費者の感情について深く考えておく必要がある。たとえばある総合飲料メーカーを想定してみよう。市場で「ジュースAでリキュールBを割るとおいしい」という話題が広く拡散し、それほど注目されてこなかったジュースAの売上げが突然伸びたとしよう。喜ばしいことなのだが、酒販部門を抱え、Bと同様のリキュールCを販売している。この場合、リキュールCを大々的にプロモーションした方が良いのかどうか、という問いだ。
プロモーションに成功すると、酒販部門を含めた大きな成果を得られそうだ。しかし、リスクも大きい。顧客が意外性を純粋な楽しみとしている時期に、メーカーの意思が強く入ったプロモーションを受けてしまうと、その感情は急速に冷めてしまうものだ。多くの消費者が拒絶反応を起こしてしまうと、ジュースAとリキュールC、そしてメーカー自身に対する“固定アンチ”を生んでしまうかもしれない。
「入り口戦略」と「ファン化戦略」を同一メッセージで

この例のようにB2C企業は、興味や関心の移ろいやすい消費者の感情をつかまなければならない。感情や印象、あるいは習慣を変えさせるのは、一筋縄にはいかないだろう。とはいえ、方策はある。例えば「チョコレートの新商品が出ると、必ず買う」という消費者はいる。彼らは、たとえライバルのファンであったとしても、一度くらい「お試し」をしてくれることもあるのだ。
そのためマーケティングのアプローチとしては、大きく2つの目標を置くべきだ。1つは、入り口向けのマーケティング。ファネルの入り口にすら立っていない、見えない消費者の関心をつかみ、試してもらう。
もう1つは、ファン化。一度つかんだ顧客の心を離さないマーケティングが必要だ。そして、これら2つを同じブランドメッセージの下で実行する。それは前述したように、メッセージは豊かなアイデアに裏打ちされ、ブランドの個性が込められた、オリジナリティのあるものである必要がある。
ブランディングのアイデアを整理するにあたって、消費者の行動特性について深く考えてみることは、ひとつの解決法だろう。2017年末にアドビは『Adobe Digital Survey 消費者動向調査』を公開した。小売業界が活用できる「商品購入におけるネットの影響」と、銀行のリテール部門にとって役立つ「銀行のサービスに対する消費者の期待」を探った調査の2本立ての構成になっている。本調査レポートから、B2Cマーケティング施策立案のヒントをつかめるはずだ。
消費者動向調査 小売編:マルチチャネル戦略の必要性

小売編では、商品単価の異なる3つの分野として洋服、家具、家電に着目し、商品を買う人たちの購買行動を分析している。認知から始まり、情報収集、比較検討、購入、情報共有へ、というカスタマージャーニーを想定して質問した結果、面白い傾向が浮かび上がってきた。拮抗する分野があるとはいえ、すべての分野で認知を獲得するのは、実体験や意外な出会いを伴う店頭の方がwebより多い。しかし、情報収集をして比較検討する段階に入ると、webを重視する傾向が強まってくるのだ。

比較的高額な買い物をするとき、最も信頼できる情報源はどこですか?
(Adobe Digital Survey 消費者動向調査より)
カスタマージャーニーの前半のポイントはwebと考えてもよさそうだが、もう1つ重要な要素が浮かび上がってきた。それは、「商品やサービスを紹介するwebサイトを充実させることだけが答えではない」というポイントだ。消費者は、複数のチャネルで好ましいメッセージに接したブランドを信頼するようになる。コーポレートサイトの商品ページ、モバイルサイト、SNSなど、複数チャネルでの接触機会をもらさずに、顧客の興味関心に寄り添うアプローチが有効になるだろう。
消費者動向調査 銀行編:「オンラインですべて完結」への期待

銀行編は、メインバンクの乗り換えや窓口での不満を切り口として、消費者が取引銀行を選択する理由を探る、という調査内容だ。
窓口での不満のトップは、待ち時間の長さ。手数料の高さより待ち時間が上位に来た。しかし、それはメインバンク乗り換えの主要因にはなっていない。「手続きが遅かった」「受付対応が悪い」を要因としたのは、10%に満たない。40%近くの消費者は、オンラインサービスの利便性をメインバンクの乗り換え理由に挙げている。

もし、銀行が以下のオンラインサービスを提供するとしたら、どんなサービスに魅力を感じますか?
(Adobe Digital Survey 消費者動向調査より)
また銀行サービスへの期待として、「すべてをオンラインで完結できること」が約7割の支持を集めた。「免許証のコピーを郵送するのは煩わしい、免許証の写真をメールで送るだけで取引できる銀行のほうが便利」と考えているわけだ。さらに、若年層に顕著な傾向として、オンラインで金融知識を得ることへの期待が強いこともわかった。
利便性を提供し、信頼性を高めるために

消費者が望んでいることの詳細は、本調査レポート『消費者動向調査2017』を参照してほしい。この調査で浮かび上がってきたのは、日々の生活にwebを取り入れている消費者の姿だ。webの便利さが浸透し、その便利な体験が当たり前になった結果、旧来のサービス体験は面倒に感じてくる。さらに、日々webに触れることで、そこに出てくる情報を信頼するようになる。接触時間が長ければ長いほど、信頼性は増す。もちろん、逆の意見もすぐに検索できる。
チャネルを増やすと企業の労力はかかるが、小売分野では顕著な結果が得られており、銀行分野では情報提供へのニーズが高いことがわかった。これらは、早急に検討課題に挙げられる項目になるだろう。若年層の傾向など、興味深いデータも得られている。この調査結果を、マーケティング施策の充実に役立ててほしい。
UNITE編集部
関連資料
アドビは2017年6月、小売/銀行分野における消費者の購買行動に関する調査を実施しました。現代の消費者を取り巻く情報環境や消費行動を把握し、カスタマージャーニー、提供している顧客体験のあり方を見つめ直すヒントとしてぜひお役立てください。
アドビがお手伝いします
企業のデジタル変革は、組織横断の幅広い取り組みとなります。これには、新たな経営戦略、組織編成と人材育成、ビジネスプロセスの刷新、そして「顧客体験のための企業システム基盤」の構築などが含まれます。
アドビはこれまでも、グローバルで多様な業界のブランド企業のために、テクノロジーとサービスを提供してきました。それが、顧客体験管理(CXM)のためのプラットフォームであるAdobe Experience Cloudと、アドビコンサルティングサービスです。顧客インテリジェンスやDMP(データ管理プラットフォーム)、リアルタイムCDP(カスタマーデータプラットフォーム)といったデータ基盤の構築、パーソナライゼーションに欠かせない膨大なコンテンツを生成し活用するためのコンテンツ基盤の構築にご興味をお持ちの方は、アドビへご相談ください。