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- 1 基礎から押さえる「コンテンツマーケティング」 (2): 制作体制を確立するには
基礎から押さえる「コンテンツマーケティング」 (2): 制作体制を確立するには
2018年08月09日
【POINT】
- コンテンツマーケティングを推進するにあたっては、コミュニケーション施策全般に関する意思決定が主軸となる
- 制作チームは、さまざまなスキルを持った人材が集まって協働するCoE(Center of Excellence)型の組織として運営することが望ましい
- 社内人材とアウトソース先の社外人材が知恵を持ち寄り、顧客の求めるコンテンツ企画に落とし込むサイクルを確立する
【RESOURCE】
多くの企業が喫緊に取り組みたい課題として挙げる「コンテンツマーケティング」。第1回では、コンテンツマーケティングの価値と役割について述べた。今回はその具体的な制作体制について考えたい。だれが、どんなチームを率いてどんなコンテンツを制作すればよいのだろうか。
ノウハウを持っていないコンテンツ制作に、どう対応するか
第1回で紹介したように、広義のコンテンツマーケティングは幅広い。企業の発信する情報すべてを顧客とのコミュニケーションと考えたとき、そのすべてを包括するコンテンツマーケティングを実行できる人材=コンテンツマーケターを社内に抱えている企業は少ないだろう。

コーポレートサイトやカタログなど、商品やサービスの魅力を伝えるコンテンツ制作では、すでにマーケティング部門が培った知見があるだろう。しかし対象顧客のニーズを刺激する発想で作成されるべきコンテンツについては、手探りで進めていくことになる。
社内人材と外部人材のバランスを取る

では、どうすれば良いのか。方針は3つある。
・100%内製する(人材を育てる、あるいは雇用する)
・一部をアウトソースする
・ほぼ完全にアウトソースする
最後の項目に「ほぼ」が入るのは、完全なアウトソースは不可能と言えるためだ。コンテンツマーケティングを推進するにあたっては、ブランドメッセージ構造の定義から訴求タイミングまで、コミュニケーション施策全般に関する意思決定が主軸となる。これには社内調整業務も含まれる。たとえば、コンテンツマーケティング施策に影響するブランドの方針変更などがあった際、それらをメンバーと共有し、コンテンツ企画を練り直したりコンテンツ内容を修正したりする必要が出てくる。その調整役は、アウトソースを受託する側には務まりにくい。

具体的な体制は、社内で育成するコンテンツマーケターを中心に、クリエイターやライター、web制作者、製品担当者、広報担当者、代理店など、さまざまなスキルを持った人材が集まって協働する必要が出てくる。そして、いわゆるCoE(Center of Excellence)型の組織として運営することになる。
それぞれの体制のメリット/デメリット

内製とアウトソースには、それぞれメリットとデメリットがある。
ほぼ100%内製した場合、目に見える外注費がかからず、臨機応変な対応を取りやすい。一方、施策を担当するチームにコンテンツ制作のスペシャリストがいなければ、コンテンツのクオリティは高まりにくい。また、“同期のよしみ”や以前に所属していた部署の“上司部下の関係”など、社内の人間関係を考慮せざるを得ないケースがあり、商品宣伝を前面に打ち出したコンテンツになりがちな傾向が出てきてしまう。
ほぼ完全にアウトソースする場合は、その逆になる。スペシャリストが制作するため、品質は高く維持することが期待できる。しかし、臨機応変な対応には追加コストがかかるためコストを読みにくい。コンテンツの監査が行き届かないこともリスクだ。また、社内にノウハウがたまらないこともデメリットだろう。

現実的には、意思決定を社内の人材が担い、制作をアウトソースするという落としどころになるだろう。社内の人材が育てば、制作の一部を社内で対応するなど、コストと品質のバランスを見ながらアウトソースの割合を変えていくことができる。逆に、企業のメッセージ構造に対する社外人材の理解が深まれば、コンテンツ企画立案やストーリー作りにおけるアウトソースの割合を増やす、という判断もあるだろう。内製とアウトソースの比率に正解はない。各社の風土や方針、予算、人材流動性、成熟度などに応じて、内製化比率の最適値を探ることになる。
確固たる制作方針のもとに、柔軟なコンテンツ制作を行う

コンテンツマーケティング施策で最も大切なのは、「ぶれない制作方針」と「ぶれても良いコンテンツ内容とスケジュール」のバランスを取っていくことだ。明確な目的やスケジュールを立てていても、社会的事象や社内の事情などにより、コンテンツ制作の方針や優先度は変化する。たとえば、SNSで対象顧客の関心が高そうな情報が話題になった、M&Aや組織変更に伴うファミリーブランドの再編などによってブランドの方針が変更された、などの要因だ。
- 対象顧客となる読者や視聴者を想定し、彼らがどのようなコンテンツに興味を持つのかを検討、メッセージ方針を策定する
- メッセージ方針のもと、ストーリーを組み立て、コンテンツを制作し、配信する
- 対象顧客の反応を見極めながら、メッセージや特集テーマを変化させていく
- 対象顧客の注目が集まる社会事象や、ブランドが発信するべき情報が急遽発生した場合、それを優先度の高いテーマとしてスケジュールを先行させる


社内人材は商品宣伝志向、社外人材は対象顧客の視点で

では、具体的にどのような推進体制にすればよいのか。あるブランドがオウンドメディアの運営を通じてコンテンツマーケティングを実践する例を考えてみよう。
オウンドメディアの目的を、「潜在顧客」~「見込顧客」を発掘し、「検討顧客」へと導くことだと定める。するとコンテンツは、自社のメッセージ構造の該当する領域、想定顧客の興味や関心を引くメッセージ、となる。「検討顧客」も含めながら、検討につなげる動機付けも取り入れたい。あるいは、目的を「新規顧客」の維持と育成を通じた取引拡大だと定めたなら、メッセージもその方針に沿ったものとなる。
いずれにしても、コンテンツに込めるべきメッセージは多岐にわたる。また、想定顧客の接触頻度を高めるには、更新頻度もある一定量を保ちたい。
そこでコンテンツマーケティングチームは、定期的に編集会議を開く。関与するのは、アウトソース先の社外人材をメンバーに加え、製品開発部門や営業部門からもアドバイザーを派遣してもらう。そこでブレインストーミングを実施し、制作方針を決める。
会議前には、以下のものを準備しておきたい。

そしてこれらの情報は、メンバー全員が閲覧できるリポジトリーに集約、保管し、共有できるようにしておく。参考資料や転用できそうな既存アセット、マインドマップのようなアイデアを可視化した情報やプロトタイプなども、一元化するとよいだろう。さらに、過去に制作したコンテンツが達成したKPIや、分析レポートなどの情報も共有した方が良いだろう。
編集会議では、社内人材とアウトソース先の社外人材が知恵を持ち寄る。そして、アイデアを顧客の求めるコンテンツ企画に落とし込む、というサイクルを継続的に繰り返す。社内人材は商品宣伝型のメッセージに強みを持ち、社外人材は顧客視点のメッセージに強みを持つだろう。このプロセスを確立することで、優れたコンテンツマーケターが育ち、意思決定を行う人材として落としどころを正しく評価できるようになることが理想だ。
個々の施策を大きな視点から管理する

広義のコンテンツマーケティングでは、企業が外部に発信するすべてのコンテンツを対象とする大きな施策が常に走っていることになる。すなわち、定義したブランドメッセージ構造のもと、例に挙げたような数多くの施策が、自社内の各組織で回ることになる。そうなれば、各施策メンバーの間で、デザインやコンテンツを流用したいというニーズも出るだろう。
また、コンテンツは作るだけでは見てもらえない。webコンテンツの場合、広告やコーポレートサイトからの流入も期待したいだろう。それらのニーズにこたえるためには、広義のコンテンツマーケティングの対象になるすべてのコンテンツを蓄積し、再利用できるようにする環境を整える必要が出てくる。
第3回では、そのための仕組みについて考えていきたい。
UNITE編集部
関連資料
仮説にもとづいてコンテンツを制作、提供し、その効果を測定して仮説を検証、効果を向上させる。そのような“データドリブンコンテンツマーケティング(DDCM)”を実施する上で求められる考え方や、留意すべきポイント、組織作りについて解説します。