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- 1 「顧客体験のためのSoR」を体現するAdobe Experience Platformとは
「顧客体験のためのSoR」を体現するAdobe Experience Platformとは
2018年12月18日
【POINT】
- バラバラなシステムの中に独自の形式で蓄積されている多様なデータを、顧客を軸に統合して自由に活用できれば、より深い顧客理解にもとづいた最適な体験を提供できるだろう
- Adobe Experience Platformでは、あらゆる情報がXDM仕様のもとに標準化され、扱いやすいAPIやクエリーを通して自在にデータを活用することができる
- Adobe Experience Platformは、市場にある唯一の「Experience System of Record(顧客体験のためのSoR)」だ
ITエキスパートにとって、System of Record(SoR)とSystems of Engagement(SoE)は、システム設計における2つの大きな指針になる。SoRは、データを活用しやすい形で蓄積し、的確にアウトプットするためのシステムを指す。一方のSoEは、SoRに蓄積したデータからビジネスに高い価値をもたらす、顧客と企業を結びつけるためのシステムだ。では、顧客中心のエンタープライズアーキテクチャ(EA)を整備し、より顧客体験を高めるために、企業はどのようなSoRとSoEを目指していけばいいのだろう。デジタル変革を実現するためのEAとして、両者にはどのような関係が望まれるのか。
「CRMをはじめ、ERP、ロジスティクス、倉庫管理――。すべてのシステムに顧客データが蓄積されています。では、これらの中で顧客体験を高めるために最適なデータ保管場所になり得るのはどれでしょう?」
アドビのクラスジャン タッカーは、こう問いかける。

「そうした既存のシステムは、顧客を中心に設計されておらず、それらの中に適切なものはありません。すなわち、各種システムは顧客情報を蓄積してはいるものの、顧客体験を高めることを目的とするSoRとしては機能しないのです」。
アドビはこれまで、SoEに該当するソリューションを提供し、企業が蓄積したデータにもとづき、ビジネスに高い付加価値を提供してきた。これまでもAdobe Experience Cloudのソリューション間でデータは統合され、共通のデータを使って顧客体験を高めるための施策を立案し、実行することはできた。ただ、より優れた顧客体験の提供を目指すためには、さらなる進化が必要だった。Adobe Experience Cloudの導入企業は、さまざまなシステムを運用し、多種多様な顧客データを、さまざまな形式で、複数のシステムの中に蓄積している。それらも緊密に連携させて自由に使うことができれば、より深く顧客を知ることができる。そして、顧客にとってより最適な体験の提供を期待できるのだ。
そんなニーズから生まれたのが、各ソリューションの共通基盤となるAdobe Experience Platformだ。
各データを「ハーモナイズ(調和)」させ、利用しやすい形で蓄積


Adobe Experience Platformは、Adobe Experience Cloudを支えるSoR部分を担い、様々な企業システムを活かしつつ、分散している顧客関連データを統合し、活用しやすい形で蓄積できる。
アドビが提唱するExperience Data Model(XDM)と呼ばれるデータモデルは、オープンな仕様だ(GitHubで公開)。あらゆるシステムのデータ構造の違いを埋めるための標準スキーマを提供し、システム間のデータの透過性を高め、個別のニーズがあれば自在にスキーマを拡張することもできる。しかも、アドビはマイクロソフトとのグローバルなパートナーシップを発表し、同社の「Common Data Model(CDM)」とアドビのデータモデルを、XDMという単一の標準データモデルに統合したのだ。
「各種システムからデータを集めてくるだけでなく、それらを『ハーモナイズ(調和)』させ、利用しやすい形で蓄積できることが特長です」(タッカー)

いくつか特筆すべき構成要素を挙げる。
- Adobe I/O: デベロッパーによるインテグレーションサービスの開発を支援するための、RESTfulなAPI、SDK、開発環境、ノウハウなどを提供
- Launch: 次世代のタグ管理技術をコアにwebデータ収集などを管理
- Auditor: webサイトを自動的にスキャンおよびスコアリングし、実装済みタグの状況を監査
- Adobe Sensei: 人工知能(AI)およびマシンラーニングのフレームワークと各種ツール
インサイトをもたらす仕組み

Experience SoRの役割を果たすAdobe Experience Platformは、アーキテクト、デベロッパー、データサイエンティストといったITエキスパートのために役立つ機能を提供し、SoEであるAdobe Experience Cloudを活用して顧客インサイトを施策に活かしたいマーケター、顧客体験によって差別化を図りたいビジネスリーダーの要求に応える。
●Query Service機能
以前からSQLに親しんでいたアーキテクトにとっては、Query Service機能が最適な選択肢。Adobe Experience Platformでは、多様なデータソースがXDMとして標準化されているため、APIやJDBCなどを利用するアプリケーションから一般的なSQL文を通じた一般的なSQL 文で、アプリケーションからデータを活用できる。
ここで大切なのは、データガバナンスを保つ仕組みによってデータ項目が統一されていることだ。たとえば、顧客IDの数値がシステムごとに違ったり、データ項目名が「CustomerID」「CustCD」などと違っていたりする心配はない。整合性の保たれたデータに対してSQLを直接発行することで、極めて使い勝手が良く、自由度の高いデータ活用が可能になるのだ。
●Data Science Workspace機能
さらに高度にデータを活用したいデータサイエンティストには、Adobe SenseiによるAIサービスを利用し、インサイトにたどり着く時間を短縮する一連のフレームワークを提供する。その中核になるのがData Science Workspace機能だ。

上図のように、Data Science Workspaceは、データ探索、オーサリング、実験、運用というサイクルを高速に回すために機能する。時間のかかるデータ準備プロセスの半自動化や、実験結果の良好だったモデルを運用段階へ容易に移行できる仕組みなどは、作業負荷の削減および作業時間の短縮に役立つ。最も重要になるAIも、アドビが用意するレシピだけはない。Data Science Workspaceに含まれるJupyterLabを統合した開発環境とPython MLやRなどを用いて自らレシピを作成したり、インポートしたりすることも可能。その有効性分析やチューニング、実運用時のシステム負荷予測などもData Science Workspace上で行える。
●Experience Platform Unified Profile機能
Experience Platform Unified Profileは、顧客プロファイルデータの個別管理を実現する。顧客一人ひとりを多面的に深掘りし、GDPRに対応するなど顧客個人のセキュリティとプライバシーを保護しながら、高度にパーソナライズするための原動力となるのだ。
SoRは「守りのIT」と呼ばれることもあるが、実はそうではない。「Adobe Experience Platformは、市場にある唯一のExperience System of Record(顧客体験のためのSoR)なのです」とタッカーは話す。顧客中心のビジネスは、顧客中心のITから始まる。Adobe Experience Platformは、SoEをさらに飛躍させるための基盤であり、デジタル変革と経営革新を支える未来のSoRとして、新たなEAの姿を描こうとしているのだ。
UNITE編集部
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マーケティングの中核概念は、いつの時代にも普遍的です。デジタル時代におけるマーケティングの中核概念をひとつずつ整理し、アドビはそれをどう捉え、Adobe Experience Cloud をデザインしているかを解説します。