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- 1 見直される電子メールマーケティング:先進的な企業が重視する施策目標
見直される電子メールマーケティング:先進的な企業が重視する施策目標
2019年2月25日
【POINT】
- 顧客体験向上が問われるいまこそ、電子メールマーケティング施策の見直しがビジネスを顧客中心型に変える契機となる
- 受け取った電子メールに満足している顧客は8%しかいない
- 顧客中心型の企業の約9割は、電子メールマーケティングプログラムを、イノベーションのための戦略的資産と定義している
「デジタルを活用した顧客体験向上」というテーマは、もはや普遍的なものだ。あらゆる企業がそれを実現するためにさまざまな施策を検討している。ある企業は顧客コミュニケーションのワンツーワン化構想を描き、それを実現するために全社的に利用するコミュニケーションのためのIT基盤を検討する。またある企業は、顧客情報に的を絞ってその一元化を実現しようとする。すばらしい成果を挙げている企業はある。一方、その構想が大きすぎてプロジェクトが進められない企業も多い。
「デジタルを活用する」というテーマは、IT基盤の活用という方向へ思考を限定させるきらいがあるようだ。しかし、本質は、「顧客体験向上」の方にある。「顧客体験を向上させるためには、ビジネスを顧客中心型に変えていく必要があり、そのためにデジタルが不可欠になる」という三段論法が圧縮されたため、デジタルという言葉が強調されすぎてしまった。「デジタルを活用するのだから、強力なマーケティング基盤を使ってビジネスを変えることを考えなければならない」。もしそう考えていれば、一度考えをリセットしてほしい。「顧客中心型のビジネスを実現するために、いま始められるのはどのようなことか」と。
電子メールプロモーションに満足している消費者はわずか8%

そのアプローチのひとつが電子メールマーケティングだ、と言えば驚かれるかもしれない。「10年以上前からやっている」「古くさい手段」「当初は成果が出たが顧客はすでに慣れてしまっている」「マーケティングにおけるルーティン業務」など、ネガティブに捉える人もいるだろう。
デジタルという言葉が与えるインスピレーションと、電子メールマーケティングから想起されるイメージには、大きな乖離があるかもしれない。確かにマルチチャネルを構成する1つではあるけれど、電子メールの存在は、SNSやメッセージアプリなどの次々と登場する新チャネルに押され、片隅に追いやられているのが実情だ。しかし、電子メールも立派なデジタル。そして、いまでも、いや、いまだからこそ、電子メールを使ってビジネスを顧客中心型に変えていくような施策を実現できるのだ。
現実を見てみよう。消費者側とマーケター側を対象として行われたForrester Consultingとアドビの共同調査によれば、受信したプロモーション目的の電子メールに満足している消費者は、わずか8%にすぎない。一方でマーケター側は、約7割が電子メールをプロモーション目的のためだけに利用しているものの、回答者の過半は、開封率やクリック率だけをマーケティングパフォーマンスの指標とするにとどまっている。にもかかわらず、マーケターの6割が、「自社の電子メールはインタラクティブである」と自己評価しているのだ。ところが、受け取った電子メールがインタラクティブであることに同意する消費者は26%にすぎない。このギャップは大きい。
電子メールマーケティングの施策目標を考え直す

さらに深掘りするために、顧客中心型ビジネスへの変革において、その成熟度の高い企業と低い企業を比較した。その結果、両者の電子メールに対するアプローチに顕著な差異が見られることがわかった。成熟度の高い企業の約9割は、電子メールマーケティング施策を、「イノベーションのための戦略的資産」と定義している。
施策の成果は、「実行した結果」にとどまらず、「目標をどの程度満たしたか」で測られるべきだろう。調査によれば、「電子メールマーケティングのパフォーマンス目標を定め、それを達成している」と回答したマーケターは、成熟度の高い企業で4割を超える。対して成熟度の低い企業では、わずか14%。両者の違いはどこにあるのだろうか。それは思考の差にある。すなわち、「顧客を満足させる」という目標を満たすために、「どのようなコミュニケーションを図るべきか」と捉える戦略的思考と、「顧客に情報を伝えたい」という意識が先行し、メール配信という手段を使うことが目的だと捉えてしまう近視眼的思考、という差であろう。逆に、手段によって達成すべき目標を自覚することが、メールマーケティング施策の成熟度を向上させる契機となるだろう。
メールマーケティングの成熟モデル
メールマーケティング施策を顧客中心型で捉えると、コンテンツの変革も重要だ。実際、メール受信者の8%しか満足させられていないわけで、ここにメスを入れなければならないことは明白だ。「自社の電子メールコンテンツが、過去2年間に大きく進歩した」と回答した企業は、成熟度の高い企業では過半を占める。一方、成熟度の低い企業では18%にとどまった。消費者を満足させるコンテンツを届けるためには、事前に相手の状態や期待値などを把握していなければならず、それを満たすコンテンツも用意しておかなければならない。コンテンツの点でも、目標を明確に持つことが大事だ。
歴史ある手段のため、すでに資源は確保されている

本調査から、成熟度の高い企業、すなわち顧客中心型ビジネスにとっては、電子メールマーケティングが戦略的な役割を果たしていることがわかった。また、成熟度の低い企業が成熟度を高めるために必要なことも明らかになった。古くから使われてきた手段のため優先順位を下げられかねない電子メールマーケティングだが、もう一度その施策目標を見直すことで、顧客体験を向上させる優れたツールになるはずだ。長く使われてきた手段であり、体制、行程、制作費などの資源が確保されている、という面でも安定したツールと言える。受け取った電子メールに満足している顧客は8%しかいない、という事実を肝に銘じて、電子メールマーケティングの成熟度向上に取り組んでほしい。そして、古くからの手段である電子メールを「顧客を満足させるという目標を達成するために活用する」という戦略的思考は、他のあらゆるチャネルについても横展開できるだろう。
調査結果と共に、Forrester Consultingはいくつかの提言を行っている。詳しい調査内容とその提言は、調査レポート『電子メールマーケティングで始まる顧客中心型ビジネス』で紹介しているので参考にして欲しい。
UNITE編集部
関連資料
電子メールは、企業が顧客に働きかけるチャネルとして歴史があります。一方で「顧客中心」へシフトすべき今、そのあり方も見直しを迫られています。Forresterによる市場調査から、今後の電子メール戦略をご紹介します。