拡張現実でデジタル体験と直接つながる近未来のリアル店舗

2019年4月19日



【POINT】

  • 多くの顧客は、実店舗を訪れる前にオンラインで情報を検索。膨大な選択肢の中からお気に入りをブックマークし、それらを実際に手に取ってみてから購入したいと考えている
  • 顧客にとって利便性のある体験とは何かを中心軸として、顧客プロファイルや店舗在庫データ、商品アセットなどをつなぎあわせる    
  • 望む顧客体験は人によってさまざま。CXMのためのプラットフォームは、顧客一人ひとりが求める最適な体験を提供する    
 

現実世界かデジタル世界かを問わず、顧客の体験をデータとして把握することは、テクノロジーとして可能となった。ではそれが、顧客にとってどのような利便性をもたらすのか。

来たるべき世界観をわかりやすく示すために、アドビは「近未来の小売店舗」におけるショップピング体験を披露した。アドビ製品を導入している靴の小売企業Foot Lockerの協力のもと、同社のスニーカー販売の様子をイメージした、ビジョンデモだ。CXM(顧客体験管理)」をテーマとするAdobe Summit 2019の基調講演において、アドビのフェロー、デビッド ニューシュラーが実演してみせた。

AIとの対話で店側の仕組みを整える

AIとの対話で店側の仕組みを整える

Foot Lockerはさまざまなブランドの靴を、同社のECサイト、直営店舗で販売している。ニューシュラーはまず、企業側の仕組みから解説を始めた。ECサイトのコンテンツを対話型で決定していくプロセスだ。同社が取り扱うスニーカーなど、ブランドの世界観を表現する画像データや3Dデータなどの商品アセットはすべて、コンテンツ管理システムAdobe Experience Managerデジタルアセット管理(DAM)機能で一元的に蓄積されている。人工知能/マシンラーニングのフレームワークであるAdobe Senseiを使って、DAMの中から望みの商品アセットを探し出す。「もっと鮮やかな色を」のようなアバウトな要求をAdobe Senseiは理解し、意に沿う商品アセットを絞り込む。それらを選択するだけで、ECサイト内の製品詳細ページに商品アセットを貼り付けることができる。AIが人間の試行錯誤や意思決定をサポートしてくれる訳だ。

次に、デジタルの世界から現実世界の体験へと飛び出す。ニューシュラーは、スニーカーの3Dモデルをひとつ選択し、それを店舗での拡張現実(AR)体験としても使えるよう設定した。そして店舗を訪れて、タブレットを使ってみる。すると、さきほどのスニーカーの3Dモデルが、何も置いていない棚の上に現れるのだ。スニーカーをパーツごとに分解して確認できるなど、細部にこだわりたいスニーカーファンに嬉しい機能もある。これは現在ベータ版のProject Aeroにより実現されている。

AIとの対話で店側の仕組みを整える

これで、店舗側の準備は整った。では顧客側から見ると、この店舗でどのような体験をできるのだろう。

お気に入りの商品の在庫情報に、すぐにアクセス

お気に入りの商品の在庫情報に、すぐにアクセス

いま多くの顧客は、実店舗を訪れる前にオンラインで情報を検索している。Foot Lockerの顧客も同様だ。膨大な選択肢の中からお気に入りのスニーカーをいくつかブックマークし、実際に商品を手に取って、履いてみて、購入を決めたいと考えている。

近未来の顧客は、スマートフォンを持って来店すると、まずAR機能付きの専用アプリを棚にかざす。すると、以前ECサイトでチェックしたスニーカーが、棚にディスプレイされた多くの商品の中からAR技術によってポイントされ、購入を検討していたスニーカーをすぐに発見できる。欲しいスニーカーをタップすると、店舗にある在庫数がサイズ別に表示される。これはARアプリが、顧客プロファイルを含むAdobe Experience Platformや、在庫データを含むAdobe Commerce Cloudとリアルタイムで連携しているためだ。

店舗で商品を手に取ることによって、ECサイトでは気づかなかった別のスニーカーの魅力に気づくかもしれないが、それでも問題ない。気に入ったスニーカーをアプリ上でタップすれば、在庫があるかどうかわかるのだ。なお、すべてのスニーカーは、Adobe Senseiの画像認識処理によって特定できる。棚の位置は問わず、RFIDタグも不要、店舗デザインもこれまで通りでよく、システム投資額も最小化できる。

空間にバーチャルな棚を生成し、スムーズな試着体験を叶える

空間にバーチャルな棚を生成し、スムーズな試着体験を叶える

顧客にとって、店舗は広く、試してみたかった商品を特定するために歩き回るのは億劫かもしれない。そんなときには、「自分専用の」棚を呼び出せばよい。何もない壁にARアプリを向けると、そこにバーチャルな棚が現れ、あらかじめブックマークしておいたスニーカーの中から、在庫のあるものだけを並べてくれる。お気に入りのスニーカーの在庫がすぐにわかり、その中から試してみたいものを絞り込んで店員に声をかければ、まとめて持ってきてくれるのだ。店員にスニーカーの場所を聞いて、一つひとつ探して歩き回る必要はない。

店員にとっても、在庫を確認する手間を省けるメリットは大きい。さらにこの仕組みを進化させ、店員用の接客支援アプリも用意すれば、来店客が自社のファンだと知らせ、顧客におすすめすべき商品とそのセールスポイントをAIが示唆し、店員はさりげないトークにその知識を織り交ぜることで、顧客の心をつかむことも可能だろう。

実際に行われたデモの様子を見ると、どのような店舗体験になるのかを確かめることができる。そこで、Adobe Summit基調講演のなかで行われたデモの動画を動画を以下に紹介する。

「近未来のリアル店舗」の実際のデモ動画(英語)

リアル店舗とECサイト、各種システムをシームレスに連携

リアル店舗とECサイト、各種システムをシームレスに連携

今回のデモは、リアル店舗とECサイトの世界を結びつけたものだ。顧客にとって利便性の高い体験とは何かを中心軸として、顧客プロファイルや店舗在庫データ、商品アセットなどをつなぎあわせている。今回は簡略化していたため、ピックアップされたスニーカーはブックマーク済みのものとしていたが、過去の購買傾向やサイトの閲覧履歴などにもとづいて、おすすめ商品を一覧するといった使い方へと発展させることも、既存技術で実現できるという。

何もない空間にバーチャルな棚を出現させる機能は、店舗に行かなくてもショッピングを体験できることも予感させてくれる。自宅ではじっくりと商品ラインナップを調べ、お気に入りを見つけることができるだろう。スニーカーの履き心地や質感などは、手に取って確かめることができるリアル店舗へ足を運ぶ。そこで望みの色の店舗在庫がなくても、ECから買えばよい。またリアル店舗では、思いがけない商品との出会いもある。自分ではうまく言語化できないような微妙なニュアンスも、それを察してくれる店員との会話を通じて提案してもらえる。

このように、望む体験は人によってさまざまだ。ECサイトや店舗といった企業側の都合ではなく、顧客のペースで買い物を楽しめる利便性は、何よりのサービスとなるだろう。

そして、顧客一人ひとりが求める最適な体験を提供するのが、CXMのためのプラットフォームである、Adobe Experience Cloudの役割だ。

リアル店舗とECサイト、各種システムをシームレスに連携

Adobe Experience Cloudは、顧客の属性や行動などの顧客体験データ、顧客に届けるべきコンテンツを一元的に管理し、広告、分析、マーケティングコミュニケーション、コマースなどの各要素を通じて、最適な顧客体験を届けることができる。そう遠くない未来に、私たちは、かつて想像もできなかった体験を得られるようになっているかもしれない。

 

UNITE編集部


この記事を共有する: 

 RSS配信中:

Adobe Insights: RSS配信中

関連資料

顧客に寄り添う

顧客の期待に応える体験を提供するためには、一人ひとりの顧客、つまり「個」客を知ることが前提条件となります。匿名顧客と認証済顧客の双方を対象としながら、顧客ライフサイクルの全般にわたって顧客一人ひとりを理解するためのベストプラクティスを紹介します。


おすすめ情報