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- 1 基礎から押さえる「広告アトリビューション分析」:顧客育成シナリオを軸に考える、価値を引き出す広告運用とは
基礎から押さえる「広告アトリビューション分析」:顧客育成シナリオを軸に考える、価値を引き出す広告運用とは
2019年7月18日
【POINT】
- 広告はいま、カスタマージャーニー全体を見渡し、「あらゆる段階の顧客体験を適切に管理する」という視点の中に組み込まれるようになった
- しかし多くの企業は、認知を促し関心を持ってもらうという、ファネル上部への投資効果の把握が十分にできていない
- ビジネス目的と広告目的が一致していれば、広告の価値を測る指標はおのずと得られる
広告は、カスタマージャーニーの一部に位置づけるべきものとなった

広告は、企業のマーケティング支出の中でも大きな領域を占めている。そして近年では、ブランド認知や購買につなげる部分だけでなく、カスタマージャーニー全体の中に広告が位置づけられている。あらゆる段階の顧客体験を適切に管理する、という包括的な視点の中に、広告体験を組み込む訳だ。デジタルによってターゲットとメッセージを絞り込んだ広告訴求が実現されたことで、アドテクノロジー領域の専門家として豊富な知見を持つ広告代理店だけでなく、広告主となる一般の事業会社においても、広告がもたらす価値について真剣に検討されるようになってきた。
その広告運用において、ここ10年ほどで最も大きく変わったことがある。広告の「成果」を科学的に分析する手法が確立されたことだ。デジタル広告なら、効く広告と効かない広告、成果の出る媒体と出ない媒体などが、リアルなデータとして詳らかになる。
確かに、データはリアルな顧客の反応をとらえたものだ。しかし、「購買を刺激するために役立ったのはどの広告なのか」を具体的に指摘するためには、適切な分析が必要になる。顧客はカスタマージャーニーを進む中で、複数の媒体や広告に触れる。そこで、広告の貢献度分析の手法が探求されてきた。
マーケティング施策においては、どの施策が成果に貢献しているかを分析することを、「マーケティングアトリビューション分析」と呼ぶ。アトリビューションとは「帰属」を意味する。そして広告施策については、広告アトリビューション分析が有効だ。
広告の貢献度分析
広告アトリビューション分析には、さまざまなモデルが使われてきた。たとえば、ファーストクリックモデル(最初に顧客がクリックした広告を重視)、ラストクリックモデル(顧客が購入の意思決定をするときに接した広告を重視)、加重平均するモデル(顧客が購入前にクリックしたすべての広告を均等に成果ととらえたり、一部に重きを置いたりする)などだ。どのモデルを使うかにより、広告の価値について異なった結果が導き出されることになる。
参考:
購買ファネル下部だけにコンバージョンポイントを設定するリスク

広告アトリビューション分析の手法は、デジタル広告運用において長く議論されている。そして、企業は自社に合った最適な広告運用を目指していく必要がある。では、いまあるべき広告運用の基本的な考え方とはどのようなものか。アドビ エクスペリエンス クリエイション部 マネージャー 山田 智久は、次のようにアドバイスする。
「顧客との関係を育成していくとき、広告の効果、サイトの効果など、チャネル単体の最適化だけを考えていたのでは、顧客を惹きつける体験を創ることは難しい。そうではなく、狙ったセグメントの顧客のことを考え、その顧客が何を求め、どのようなコミュニケーションを行うべきか、一連のシナリオを考えるのが第一歩となる」
ところが、そうした顧客が辿ることを想定したシナリオに沿った、「カスタマージャーニーの一部としての広告」という考えに至っている先進企業は、実はまだ少数にとどまっている。

多くの企業は、何らかのコンバージョンポイントを設定し、それを達成することを広告の目的にしている。そして、そのコンバージョンポイントは購買ファネルの下部であることが多い。このため、予算の多くがリスティング広告やリターゲティング広告に割かれる傾向にある。つまり、認知を促し、関心を持ってもらうというファネル上部へ十分に投資できていないのだ。アドビ エクスペリエンス デリバリー部 ビジネスコンサルタント 齊藤 洋之は、その課題を指摘する。
「コンバージョンが重視されることで、広告担当者は、『いかにCPAを下げるか」『どうすればCVRを上げられるか』について頭を悩ませています。ただそれは、あくまで広告の目的です。もっと大事な、ビジネス全体の目的とのひも付きが見えていないケースも多いようです」
キャンペーンサイトなどへ誘導した後など、広告以外の領域と結び付けて分析するのも難しい。予算がファネル下部に厚いため、偏った情報だけで分析しなければならなくなる。
ビジネス目的と広告目的の関連付けを

ここでは伝統的なファネルモデルを踏襲し、非顧客をファンへと育成していく、というシナリオを念頭におく。すると上部から、「認知」「検討」「コンバージョン」「ファン化」という4階層のファネルが想定される。顧客をこれらの4つの段階に導くにあたって、広告施策を展開しなければならない。それぞれの施策目的は、「ブランディングを通した認知獲得」「製品ページの閲覧による検討」「顧客に何らかのアクションを起こしてもらうこと」「長期的なロイヤルカスタマーの育成」となるだろう。

顧客の育成段階が進み、それに応じて展開する施策の目的が異なれば、施策実行に必要なデータも異なる。そして、そこから得られる顧客の反応を示すデータも異なる。何より重要なのは、これらの施策は育成の各段階における目的の達成が狙いであり、広告はその目的に紐付いているという事実だ。

そうなると、育成の各段階について分析する際、最適な手法やモデルも変わってくる。ビジネスの目的が異なれば、異なる広告が展開されるので、それぞれの目的に沿った最適な手法を用いて分析しなければならないのだ。
たとえば、幅広い消費者をターゲットとするブランディング広告は、認知とファン化には大きな役割を果たすかもしれない。しかし、検討およびコンバージョン段階にある消費者へ直接的に与える影響は軽微だろう。
「予算が余ったので、ブランディングバナーがちょうど仕上がったようだから、それを使ってみよう。そういった、予算どおりに広告を消化しようとするケースをよく聞きます。ただそこで立ち止まって、『広告を出稿することによるビジネスの目的はどこにあるのか』『施策の目的は、どの段階にある顧客にどう感じて何をしてほしいのか』と考えてみましょう。そうすることで初めて、分析のための指標を得ることができるからです」(齊藤)
Adobe Analyticsで広告の価値を測る

ビジネス目的と広告目的が一致していれば、広告の価値を測る指標はおのずと得られるだろう。次は、最適な広告配信を実現するために、消費者が広告を見てどう反応したかというデータを集め、広告が指標を満たしているかどうかを可視化し、分析するという流れになる。
アドビはカスタマージャーニーの各段階に沿ったビジネス評価モデルとして、DDOM(Data Driven Operating Model)を提唱している。Adobe Analyticsを利用すれば、このDDOMの考え方に即してビジネスを定点観測できる。広告指標とサイト内行動指標とを組み合わせ、さまざまな指標軸で多次元的に深掘り分析することが可能だ。たとえば、一見効果的に見えた広告の直帰率が高いことに気づくかもしれない。直接的なCVRはそれほど高くないものの、その後のオウンドメディア回遊率の高い広告を発見できるかもしれない。
Adobe Analyticsでは、ビュースルーのクリックスルーに対する貢献度など、詳細な測定もできる。アトリビューション分析には、アドビの人工知能エンジンであるAdobe Senseiの支援が得られる。そのひとつAttribution IQは、広告やコンテンツごとに、チャネル別の売上貢献を数値化することが可能だ。DMP、パーソナライゼーション、広告自動配信、メール施策なども同一データを共有したデジタル基盤のうえで運用すれば、分析結果から顧客を理解し、改善した施策へとスムーズに反映できるだろう。
広告アトリビューション分析にあたって注意すべきポイントは、「広告運用が究極の目的ではない」ということ。ビジネス目的を達成するための施策のひとつが広告運用であり、広告アトリビューション分析は、広告運用が施策全体にどのように貢献したかを示すのだ。
「広告運用をはじめとする、顧客育成のシナリオのもとで行われた施策一つひとつを分析し、改善を繰り返すことが肝要です。DDOMの考え方を取り入れることで、データという客観的な指標を使い、どうしたらより良い顧客体験を提供できるのか、それがどうビジネス目標の達成につながるのか、というサイクルができあがります。このように、データドリブンな分析と改善に組織全体として取り組むことが、顧客体験管理(CXM)のあるべき姿なのです」(山田)
このサイクルを確立し、最適化を繰り返しながら施策を回し続けるための勘どころは、どこにあるのか。運用型広告関連コンサルティングなどを行うアタラ合同会社の執行役員 シニアコンサルタント 清水 一樹氏と、アドビ コンサルタント山田智久、齊藤 洋之との鼎談からそのエッセンスをつかんでほしい。
UNITE編集部
関連資料
自社の製品やサービスの価値を顧客に納得してもらうことは、重要です。そのポイントは、アトリビューションの活用。顧客がブランドと出会い、惹かれ、選び、情熱を抱くまで、その一部始終を把握するには。テクノロジーによって相手の気持ちをくみ取り、関係を築いていく方法をご紹介します。
アドビがお手伝いします
企業のデジタル変革は、組織横断の幅広い取り組みとなります。これには、新たな経営戦略、組織編成と人材育成、ビジネスプロセスの刷新、そして「顧客体験のための企業システム基盤」の構築などが含まれます。
アドビはこれまでも、グローバルで多様な業界のブランド企業のために、テクノロジーとサービスを提供してきました。それが、顧客体験管理(CXM)のためのプラットフォームであるAdobe Experience Cloudと、アドビコンサルティングサービスです。顧客インテリジェンスやDMP(データ管理プラットフォーム)、リアルタイムCDP(カスタマーデータプラットフォーム)といったデータ基盤の構築、パーソナライゼーションに欠かせない膨大なコンテンツを生成し活用するためのコンテンツ基盤の構築にご興味をお持ちの方は、アドビへご相談ください。