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- 1 広告アトリビューション分析を顧客体験管理に活かすための勘どころとは
広告アトリビューション分析を顧客体験管理に活かすための勘どころとは
2019年8月6日
【POINT】
- 企業規模を問わず、広告アトリビューション分析の価値が認識されてきた
- アトリビューション分析には、中立なプラットフォームであることが大切。広告プラットフォーマーによる分析データでは、統合的に分析することが難しい
- 広告アトリビューション分析の本質は、明確なムダを見つけてコストカットすること
アトリビューション分析とは、「コンバージョンに至るまでに顧客が接したすべての施策、接触媒体、順番などを可視化し、何がどのように貢献しているかを分析する取り組み」だ。精緻な分析を行うことで、顧客がコンバージョンに至る道筋を仮説として整え、カスタマージャーニー全体を俯瞰した顧客体験管理が期待できる。広告領域のアトリビューション分析は、2000年代後半に登場し、近年多くの企業が取り組むようになっている。
では、広告アトリビューション分析に取り組む際の勘どころとは何か。また、その本質的な価値はどこにあるのだろう。
運用型広告関連コンサルティングなどを行うアタラ合同会社の執行役員 シニアコンサルタント 清水 一樹氏と、アドビのプロフェッショナルサービス 事業本部、エクスペリエンス・クリエイション部 部長/クリエイティブディレクター 山田 智久、およびエクスペリエンス・デリバリー部 ビジネスコンサルタント 齊藤 洋之が語り合った。
企業規模を問わずに、広告アトリビューション分析の価値が認識されてきている

左からアドビ 山田 智久、齊藤洋之、アタラ 清水 一樹氏
山田:本日はよろしくお願いします。今回、「エクスペリエンスビジネス促進ソリューション(EBAS)」の提供を、アタラさんとアドビで協業することが決まりましたが、アタラさんと言えばアトリビューション分析ですね。

清水氏:アタラは2009年の設立でまだ若い会社ですが、創業時から広告のアトリビューション分析でクライアント企業を支援してきました。「アトリビューション分析と言えばアタラ」と言っていただけるのはうれしいですね。
齊藤:アトリビューション分析は、広告領域、コンテンツ領域とも、大きなトピックになってきました。広告領域では、以前はラストクリックモデル(広告の貢献度の測定において、顧客が購買を意思決定した最後のクリックを重視)が中心でした。いまは変わってきましたね。
清水氏:ラストクリックだけ見れば良いと考えていた人が過半だったのは、2012年ごろまででしょうか。そのころから企業もデータインフラに投資することで、分析をきちんとやらなければならないと考え始めたようです。いまは、企業規模を問わず、広告アトリビューション分析の価値が認められてきています。最近では、「分析することで成果を出しましょう」というところからコンサルティングしなくなりました。ようやく、「分析することは当たり前」というコンセンサスができ上がったかなと感じています。
Cookie依存からの脱却が、アトリビューション分析の進化をもたらす

山田:私たちアドビの顧客層は大手企業が中心で、顧客体験全体を最適なものにしたい、きちんと顧客体験を管理したいということで取り組まれています。広告アトリビューション分析の話が本格化してきたなと感じたのは3年前くらいからでしょうか。そのころは、広告アトリビューション分析ではなく、「広告の貢献度」という呼び方が一般的でした。それ以前のAdobe Analyticsはサイトを分析する製品でしたが、例えば今では、Adobe Analyticsに広告プラットフォームから指標データを直接取り込むことができるようになっています。弊社のソリューション全体がデータインフラを備えたマーケティングプラットフォームという方向性を定めたことで、アタラさんと一緒に面白いことができそうだ、となりました。
清水氏:実は、予算の限られた中で広告を出している中小企業の方が、大手企業より広告の貢献度に切実な思いを持っています。アクセス数もそれほど多くないため、機能の限られた無償のツールなどでも成果を出しやすいのです。
しかし、大企業も本格的に取り組み始めた今、その取り組みにはデータインフラも大規模なものが必要ですし、何よりそのプラットフォームが中立であることが大切になります。アドビは広告のプラットフォーマーではないので、そこが信頼できるところになりますね。広告プラットフォーマーの分析データだけでは、統合的に分析することが難しくなりますから。
齊藤:私は前職でデジタル広告のコンサルティングを長く経験してきました。広告プラットフォーマーによる可視化サービスにおいては、ユーザーIDやCookie単位では見ることができます。ただ、顧客体験全体の統合的な分析となると、ユーザー単位で、複数のデバイスで、かつログインしていない状態であっても、その動きを可視化したいというニーズが強くなります。生のデータを取得できるのはプラットフォーマーだけなのですが、分析も広告プラットフォームで拾えるデータの範囲内に限定されてしまうことが課題でした。実際には、企業が利用している広告プラットフォームはひとつとは限りませんし、セッションをまたいだサイト内行動との掛け算で分析する必要もあります。

清水氏:それこそ、これからのチャレンジでしょう。私は、「広告アトリビューション分析は、10年前から1ミリたりとも進化していない」とよく話すのですが、いまでも広告プラットフォーマーがCookie依存になってしまっていることがその理由です。広告から中立的なプラットフォームを使って、複数のデバイスを使うユーザーの態度変容をリアルタイムに可視化できるようになれば、大きな進化です。
精緻にアトリビューション分析を行えば、広告予算が半分でも成果は半減しない

山田:Adobe Experience Cloudをお使いいただいている企業の中には、まさにその部分にチャレンジしているところも出てきています。広告体験、コンテンツ体験というよりは、顧客体験全体を管理したい、というニーズです。事例もいくつか見られるようになってきました。弊社はコンテンツ領域のアトリビューション分析に力を入れていて、広告領域のアトリビューション分析に取り組みだしたのはここ数年になります。コンテンツと広告をどちらも共通の指標で分析できるようになるという面ではどう考えていますか。
清水氏:カスタマージャーニー全体の中には、広告体験もコンテンツ体験も含まれます。広告体験についても、ユーザーの状況に応じて最適にアプローチすることが理想です。そのため将来は、アトリビューション分析の適用範囲を広告領域から拡大させ、さらなる価値をもたらすお手伝いをできるのではないかと考えています。これまで弊社は広告が中心でしたから、広告のアトリビューション分析でお客様に価値を提供するところからスタートになりそうです。

齊藤:まずは、得意分野でノウハウを持ち寄り、一緒にお客様の成功を支援していければうれしいです。実際に、広告のアトリビューション分析は必ず成果が出ますから。
清水氏:広告アトリビューション分析をしてみると、「貢献度の高い広告施策をそのまま続けよう」という考えに陥りがちです。しかし、広告アトリビューション分析の本質は、明確なムダを見つけてコストカットすることなのです。貢献度の高い広告の予算を増やしても、そのやり方では飽和することが見えていて、成果は限定的です。広告予算を再配分してより成果を出そうというアプローチではなく、コストカットによって余らせた予算で新しいマーケティング活動をやってみるという方向で、広告アトリビューション分析をとらえてほしいです。精緻にやれば、仮に広告予算を半分にしても成果が半減することはありません。
分析結果から「なぜ?」を考え、マーケタースキルを高めて欲しい

山田:一方、コンテンツにしても広告にしても、担当者の思いが詰まっています。やはり自分の担当するものはかわいいものです。成果の「低いもの」と「高いもの」を切り分けたとしても、自分が担当しているコンテンツは消したくないですし、広告を止めたくないという気持ちをだれもが持っています。この部分については、ドラスティックにやりすぎるとうまくいかないケースが多いように感じます。時間はかかっても、組織の文化に合わせて、みんなの納得できる形で進めていくことが望まれます。
齊藤:私は良いところを伸ばすコンサルティングを心がけています。導線など少しの変化だけでも、コンテンツ体験はもっと良くなりますから。コンテンツはアート、分析はサイエンスですが、アートとサイエンス、どちらも大事です。私たちはお客様からも、メディアからも、代理店からも中立な立場で、顧客企業のビジネス成功を後押しできればと考えています。
清水氏:ビジネスの成功を目標に置く、ということは重要です。その上で、KGIがあり、KPIがあります。広告アトリビューション分析では、数字を追いかけますが、担当者が「なぜこのキーワードは何の貢献もしてくれなかったのだろう?」と考えることも大切です。そうやって突き詰めていくことで、マーケターの能力は磨かれるでしょう。
山田:これからの協業が楽しみです。本日は、ありがとうございました。
UNITE編集部
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自社の製品やサービスの価値を顧客に納得してもらうことは、重要です。そのポイントは、アトリビューションの活用。顧客がブランドと出会い、惹かれ、選び、情熱を抱くまで、その一部始終を把握するには。テクノロジーによって相手の気持ちをくみ取り、関係を築いていく方法をご紹介します。
アドビがお手伝いします
企業のデジタル変革は、組織横断の幅広い取り組みとなります。これには、新たな経営戦略、組織編成と人材育成、ビジネスプロセスの刷新、そして「顧客体験のための企業システム基盤」の構築などが含まれます。
アドビはこれまでも、グローバルで多様な業界のブランド企業のために、テクノロジーとサービスを提供してきました。それが、顧客体験管理(CXM)のためのプラットフォームであるAdobe Experience Cloudと、アドビコンサルティングサービスです。顧客インテリジェンスやDMP(データ管理プラットフォーム)、リアルタイムCDP(カスタマーデータプラットフォーム)といったデータ基盤の構築、パーソナライゼーションに欠かせない膨大なコンテンツを生成し活用するためのコンテンツ基盤の構築にご興味をお持ちの方は、アドビへご相談ください。