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データを集合知へ:チームで分析することで得られる気づきとは
2019年9月25日
【POINT】
- 日々の分析業務では、同じ内容に複数人が取り組むことは少ない。異なる企業から集まった複数人が同じ目的に対してアプローチすることで、新たな気づきが生まれる
- 分析スキルだけでなく、周辺ツールの使い方を知っている、プレゼン資料をまとめるのが得意など、自らの得意分野でチームに貢献し、スキルをシェアすることができる
- 同じテーマに取り組んでも、チームによって抽出の方法やプレゼンテーション作成時の視点が異なる
データ分析は日々のビジネス活動の善し悪しを測るバロメーターだ。企業活動のデータ分析に日々Adobe Analyticsを活用している企業は、データから知見を導き、日々の業務改善に役立てている。そうした企業から構成されるAdobe Analytics User Group(以下ユーザー会)が興味深いイベントを開催した。Experience Jamと名付けられたこのイベントは、2019年7月に行われたAdobe Symposium 2019のイベント公式サイトを生きた教材に、サイト訪問者のデータを分析し、来年のイベントに対して何らかの提言を行う、というハンズオンワークショップだ。参加者は1日だけの即製チームを結成し、チームごとに設定された課題に挑む。かねてよりユーザー会として事例の共有は積極的に行っているが、会員同士が同じテーマで分析するという取り組みの機会は無かった。どんな気づきが生まれるのだろうか。
Adobe Analyticsのユーザーが一堂に

参加者は約60人。10のチームに割り振られ、Adobe Symposium 2019イベント公式サイトのデータを分析する。当然ながら実名の個人情報は含まれていないが、リアルなデータだ。テーマは10個設定され、そのうちの2つがチームに割り当てられる。各チームは制限時間内に、テーマに最適な分析視点を確定させ、使い慣れたAdobe Analyticsでデータを分析。そこから導かれた仮説にもとづいて、翌年にやるべき施策を提案するプレゼンテーションを行うことになる。
今回のワークショップを企画したのは、ユーザー会のリーダーを務めるアスクル株式会社の梶井 健吉氏だ。チームが分析に取り組む前に、会の狙いについて次のように話した。

「日々の分析業務では、同じ内容に複数人が取り組むことはまずありません。今回のワークショップでは、複数の会社から集まった人たちがチームを組んで、同じ目的に対してアプローチすることになります。データ分析の切り口には個性がでますし、業務の中で各自の得たさまざまな知見も渾然一体となり、より実務に活かせる、濃い学びが多く得られるのではないかと考えております」
ユーザー会を立ち上げたときから、このような会の開催が念願だったという。
さらに、アドビのコンサルタントからいくつかのTIPSが紹介された。閲覧重複カウントの除外や、セグメント比較の簡単なやり方、同一訪問内でイベントが複数発生する場合のコンバージョン率を適切に算出する方法などだ。参加者は、さまざまな業種で、それぞれが自らのテーマで分析に取り組んでいる。あらかじめ、今回使いそうな手法を共有しておくことで、個々のスキルレベルをある程度平準化することに役立つ。使ったことのない機能であっても、Adobe Analyticsに慣れた人たちならすぐ理解して実践することができる。

こうして各チームは分析に取りかかるが、わずか1時間半で2つのテーマに取り組まなければならない。そして最後のプレゼンテーションは評価を経て、1~3位まで表彰される。主要な評価ポイントは、以下の3つだ:
- オリジナルな視点で考察や示唆を提示できたか
- 視覚的に分析した結果を表現できたか
- プレゼンテーションの品質
発表に向けて多くのチームは、最初の1時間で分析を行い、残りの30分で気づきをとりまとめ、プレゼン資料をまとめる戦略を立てた。
スキルと知見を持ち寄り、分析を進める

進め方は、大きく2つに分かれる傾向が見られた。1つは、チームメンバー全員で軽い打ち合わせをして、足並みをそろえて取り組む方法。もう1つは、まず各自で分析してみて、気づきをシェアしながら話し合う方法だ。スキルが平準化しているチームは前者、突出したスキルを持つメンバーが居るチームは後者になる傾向があったようだ。

アドビ エクスペリエンス・デリバリー部 ビジネスコンサルタント 齊藤 洋之は、「テーブルを回ってきましたが、それぞれのチームの個性があって面白いですね」と話す。「チーム内のスキルや得意分野の差異をカバーし合うように皆さんうまく進めていらっしゃいます」。

分析は孤独な作業になりがちだが、チームで取り組むことでさまざまな気づきと共有が生まれる。
全員がそれぞれに独特な視点を持っているが故、チームとして分析に取り組むにあたって個々の視点が生かされた。分析スキルだけでなく、便利な周辺ツールの使い方を知っていたり、プレゼン資料をまとめるのが得意だったりするメンバーも居る。それぞれが、自らの得意分野でチームに貢献し、スキルをシェアする様子が見られた。

1つの画面を皆で覗き込み、分析の方向性を定める
さまざまな分析視点から導かれた、次へのアクション

分析を終えるとプレゼンテーションに進む。発表の持ち時間は、各チーム5分。興味深いのは、分析視点だ。10個のテーマのうち2つに各チームが取り組むため、重なるテーマを2チームが分析することになる。しかし、同じ傾向はまったく出てこない。

プレゼンテーションのやり方はさまざま。個性的な発表が続いた
たとえば、「すでにデータを活用している人たちが、どんな講演内容に興味を持っているか」を探る課題では、「データを活用している人たち」をどうやって抽出するかが難しい。あるチームは分析結果から、「アナリストとコンサルタント=データ活用を啓蒙する側の人たち」と想定して抽出することにした。もう一方のチームは、よりシンプルに「ビギナー向け講演に興味のある層」を除外して抽出した。
ほぼ同様の分析結果を得たとしても、プレゼンテーションにおける方向性の違いも見られた。たとえば、「申し込み数の傾向値から、翌年の講演の構成について提案せよ」という課題では、2つのチームがどちらも、講演内容とその講演のフォーカスする業界に相関が見られる、という分析結果を得た。その上で、あるチームは「ターゲットとする業界の講演を増やすべきだ」と提言し、もう一方のチームは「ベンチャー向け講演への興味が高いのは、該当する講演が1つしかないため。翌年はベンチャー向けを増やすべき」とした。前者は主催者的な視点が強く、後者はイベントに興味を持ってくれた人に対してより良いコンテンツを提供したい、という視点と言えそうだ。
気づきの交換が新たなインサイトを生む

その後、参加者全員が投票を行い、上位3チームを選出。最優秀賞1チームと優秀賞2チームの表彰が行われた。半日の即席チームだが、知見を共有しながらアナリティスト同士が一緒に分析に取り組んだことは、今後の業務に大いに役立つことになるだろう。

セッション終了後も、すべての分析結果とプレゼンテーションは、期間限定で参加者だけに共有された。そのため、別の分析テーマに取り組んだチームの視点も共有された。さらに、アドビのコンサルタントが同じテーマで分析した結果も同様。決して、模範解答というわけではなく、別の視点で実行した分析から、何らかの気づきを得られるかもしれない。
「今日は、とても盛り上がってほっとしましたし、私自身も楽しめました。同じ志を持ってやっている人たちですから、気づきを持ち帰ることもできますし、業務へのモチベーションを高めることにもつながるはずです。今後も可能な限り、こうした場を作って行きたいです」。閉会後、梶井氏はこのように語った。
スペシャリストたちが企業を超えて学び合う、集合知の可能性を感じさせるワークショップとなった。同様にビジネスの現場でも、異なる職務、異なる部門の人同士で、気づきを交換することで、新たなインサイトが生まれるだろう。

UNITE編集部
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