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- 1 アンダーアーマー:コンテンツを軸にCXMを加速しストーリーを紡ぐ
アンダーアーマー:コンテンツを軸にCXMを加速しストーリーを紡ぐ
2019年9月27日
【POINT】
- ブランドの世界観を表現するため、アンダーアーマーはコンテンツ管理に力を入れている
- 属人的になりがちな素材の管理を一元化することで、権限管理にかかる工数が大きく下がる
- 共有コンテンツ管理基盤を通じたチームワークは、ブランドストーリーを紡ぐ活動を促進する
体験を形づくるコンテンツ
CXM(顧客体験管理)を実現するにあたって、体験を形作るコンテンツは極めて重要な役割を果たす。デジタルを通じて顧客が求めるコンテンツを提供することは、リアルな世界で親身な応対をすることと同義だからだ。しかも多くの場合、デジタルコンテンツはリアルな世界でも利用される。最も身近なのはポスターやパンフレットだが、いまやそれだけでなく、店頭のビジュアルディスプレイやPOS端末のスクリーンなどに直接展開される、といったケースも増えてきた。
そして、いまやコンテンツはほぼすべて、デジタルデータとして管理されている。写真や映像のほとんどはデジタルデータで保管される。イラストもタブレットで描かれ、そのままデータ納品される。そして、最適なコンテンツを必要なときすぐに顧客へ届けるためには、それらのデジタルデータを効率的に管理し、それらを利用する関係者が安全かつ自在にアクセスできなければならない。そのような状態を手に入れるには、何に取り組むべきなのだろうか。
CXM実現に向けてコンテンツ管理に力を入れる米国のスポーツアパレルブランド、アンダーアーマーの事例を参考にしてみよう。
ブランドの世界観を表現するコンテンツ制作に力を注ぐ

アンダーアーマーの創業は1996年。創業者であるケビン プランクCEOが、快適で高機能なスポーツウェアを開発したことがきっかけだった。プランク氏は学生時代、フットボーラーとして活躍しており、実体験としてシャツに対する不満を抱いていた。その不満を解消する、画期的なウェアを開発したのだ。友人や知人のプロフットボーラーに着用してもらって改良を重ね、体にフィットする奇抜なウェアは数多くのスポーツプレイヤーから高い支持を獲得するに至った。いまでは世界的なブランドに成長した。
同社のミッションは、「UNDER ARMOUR makes you better(アンダーアーマーはあなたをより良くする)」というシンプルなものだ。優れたウェアを身につけてもらうことで、アスリートが少しでも高いパフォーマンスを出すことを支援する。アスリートたちに、そんなブランドの価値を理解してもらい、試してもらい、気に入ってもらうためにも、ブランドを広くアピールする必要があった。そのため同社は、ブランドストーリーを紡ぎ、世界観を視覚的に表現する「コンテンツという手段」を重視し、その制作に力を注いできたのだ。
コンテンツを共有管理基盤に集約し、多くの手作業を排除

コンテンツ管理において大きな転換点となったのは2015年。それまでも利用してきたAdobe Creative Cloudをコラボレーション型で使用することになった。社内のコンテンツ制作チームと社外のデザイナーが、インタラクティブにクリエイティブツール群を使用し、コンテンツを一元管理する基盤、Adobe Experience Manager Assetsに蓄積する。Adobe Experience Manager Assetsには制作済みデータだけでなく、制作途中のものや、完成版のコンテンツに使用する写真などの素材データもすべて集約し、制作ワークフローのあらゆる工程において活躍する。
この転換により、適切なタグ付けによる検索精度の向上、セルフサービス化の促進、他のデータソースとの統合など、さまざまな成果を得ることができた。中でも大きかったのは、多くの手作業を排除できたことだ。素材の管理は属人的で、ばらばらになりやすい。以前のやり方では、たとえば複数のプロジェクトを束ねる制作チームのマネージャーは、セキュリティへの懸念から、プロジェクトごとにユーザー権限を管理する必要があった。そこへ一元管理基盤を導入したことで、権限管理にかかる工数が大きく下がった。
コンテンツを全社の共有資産へ

Adobe Experience Manager Assetsの本格的な活用にあたり、フェーズを区切ったトレーニングを実施した。十分な試行期間をとってプラットフォームの設定に充て、着実に新たな仕組みを実装。ユーザーに開放するフェーズ1では、写真データに絞って新たな管理基盤の活用を開始した。このフェーズでは、現場に使い慣れてもらうと同時に、必要になるタグを整理し、管理基盤の機能をカスタマイズすることなく最適な設定を行うことで、全範囲に展開する計画を立案した。
こうして土台を整えた上でフェーズ2へと移行。すべてのマーケティングコンテンツと素材をAdobe Experience Manager Assetsに保管した。蓄積されたコンテンツは全社の共有資産として、世界中のあらゆる場所から利用することができ、それぞれの国や地域でマーケティング活動に利用されている。
Adobe Experience Manager Assetsを共有コンテンツ管理基盤として運用するための具体的なプロセスは、以下のようになる。
1:新商品開発プロジェクトの現場
新商品を開発し、販売モデルの仕様を確定する。商品番号を確定させ、カラーバリエーションやサイズ展開など、新商品にかかわるすべての仕様をシステムに登録する。
2:製品マネージャー
クリエイティブにおける方針を定め、詳細を確認して内容を確定。ワークフローに従ってシステム上で承認すると、以降のプロセスで関係者のワークスペースとして使用できる新製品専用のフォルダが自動で生成される。
3:システム管理者
管理するうえで必要な設定を行い、現場へと開放。基本的な項目は自動設定されるが、疑問点などがあればこの段階で現場と連絡を取り合い、修正する。このプロセスにより、運用後に大きな修正が発生するリスクを排除する。
4:素材制作チーム
コンテンツの前段階となる写真やイメージデータ、映像データなど、生のデジタル素材の制作を進め、すべてを管理基盤に登録。その際に正確なタグ付けを行うことに留意する。プロセス全体の効率化のため、ここに手間をかけることは欠かせない。チームは、その事実をよく理解している。
5:クリエイティブチーム
素材をコンテンツへと生まれ変わらせる。以前のように、さまざまな素材データをダウンロードして制作し、全く別のデータとして登録するのではなく、以降ブラッシュアップが必要になる可能性を意識し、元になるすべての素材と関連付けて最終コンテンツを制作する。
6:各国のマーケティングチーム
クリエイティブチームの制作したコンテンツをローカライズして使用する。ローカル特有のニーズがあり、ローカル制作のコンテンツがある場合、それを管理基盤に登録し、グローバルにフィードバックすることもできる。最終化したコンテンツは、Adobe Experience Cloudの各種機能を通じてマーケティング施策などに使用する。
7:パートナー
小売店がチラシに利用したい場合など、販売パートナーがコンテンツの利用を求めるケースも多い。パートナーには、専用のポータルサイトを用意。それぞれに権限を付与し、協業に必要な素材とコンテンツに限り、自由に利用してもらうことができる。ポータルにはFAQも設け、セルフサービス化を促す。
すでに、この仕組みが動き出してから4年が経過した。新たなプロセスは定着したが、より効率的なチームワークを目指して、Adobe Experience Manager Assetsによる共有コンテンツ管理基盤プロジェクトは現在も続いている。現場の声を吸い上げ、日々ブラッシュアップを続けているのだ。世の中にない商品を生み出し、それを求めていた人たちから多くの共感を得たことで、世界的なブランドになったアンダーアーマーは、ブランドストーリーを紡ぐという同社の取り組みを維持し、さらに発展させるために、内部の効率化と外部とのコラボレーションを加速させている。管理基盤はチームを縛るものではなく、チームを解き放ち、自在なストーリーテリングを促進するものなのだ。
UNITE編集部
関連資料
多様な顧客接点を通じて発信される企業の膨大なコンテンツ。もしそれが正確さを欠いていたら、顧客は混乱し、信頼すら失いかねません。組織としてコンテンツの不具合を担保し、適切に保つにはどうしたらよいでしょうか。Adobe Experience Manager Assetsがもたらす利点を解説します。
アドビがお手伝いします
企業のデジタル変革は、組織横断の幅広い取り組みとなります。これには、新たな経営戦略、組織編成と人材育成、ビジネスプロセスの刷新、そして「顧客体験のための企業システム基盤」の構築などが含まれます。
アドビはこれまでも、グローバルで多様な業界のブランド企業のために、テクノロジーとサービスを提供してきました。それが、顧客体験管理(CXM)のためのプラットフォームであるAdobe Experience Cloudと、アドビコンサルティングサービスです。顧客インテリジェンスやDMP(データ管理プラットフォーム)、リアルタイムCDP(カスタマーデータプラットフォーム)といったデータ基盤の構築、パーソナライゼーションに欠かせない膨大なコンテンツを生成し活用するためのコンテンツ基盤の構築にご興味をお持ちの方は、アドビへご相談ください。