一歩進んだDMP活用法:顧客体験管理を強化したBest Buyの事例から探る

2019年10月1日



【POINT】

  • リアルかデジタルかを問わず、顧客に最適な体験を届けるために必要となる情報をすべて集約するDMPを活用
  • 顧客を深く知るためさまざまな顧客接点から得られる顧客プロファイルデータを統合する際、フェーズを踏まえる
  • 計画、実装、最適化のサイクルで、複数デバイス利用者への対応、外部データの活用、および広告配信の最適化などの施策に継続的に取り組む
 

DMP(Data Management Platform、データ管理プラットフォーム)は、デジタルで表されるさまざまな顧客のプロファイル情報を蓄積して的確な顧客像を把握し、適切な顧客体験を提供するための仕組み、として広く認知されている。

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では、顧客を深く理解するため、そして顧客体験の向上に役立てるため、どのようにDMPの活用を推進したらよいのか。取り組むべき領域は、顧客の属性や行動、心理状態などに関するさまざまなプロファイルデータの統合から、顧客体験に携わる社内のさまざまな部門の連携まで、多岐にわたる。そこで、実際のビジネスケースをもとにDMP活用を推進する方法を学び取るため、具体的な企業の事例としてBest Buyを取り上げ、同社の軌跡を探る。

顧客体験管理の基盤としてDMPを採用したBest Buy

顧客体験管理の基盤としてDMPを採用したBest Buy

DMPを巡る議論として、「オープン型とプライベート型のどちらが良いのか」「デジタルとリアルのデータをどう扱えば良いのか」などと交わされたのは、ほんの数年前のこと。いまでは、顧客中心を体現し、顧客を深く理解するための統合プロファイルデータ基盤として、「エクスペリエンスメーカー」である先進企業は当然のようにDMPを活用するようになっている。

ここでDMP活用の事例として取り上げるのは、大手家電量販店Best Buyだ。同社はデジタル変革によって顧客体験管理(CXM)を推進し、V字回復を果たした。

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同社がデジタル変革に向けて舵を切ったのは2013年。包括的な顧客像を把握するため、DMPの導入に踏み切った。リアルかデジタルかを問わず、顧客に最適な体験を届けるために必要となる情報をすべて集約しよう、という野心的なビジョンを満たす選択肢として、DMPにはAdobe Audience Managerを採用したのだ。

ビジネスインパクトの高いデータから段階的に統合

ビジネスインパクトの高いデータから段階的に統合

顧客を深く知るためには、さまざまな顧客接点から得られる顧客プロファイルデータをつなぎ合わせ、統合しなければならないが、その作業を進めるには相応の手順が必要だ。

そこでBest Buyの場合には、自社のビジネスにおいて認識すべき顧客像とは何かを洗い出し、それを形作ることのできるデータがどこにあるかを定義し、統合顧客プロファイルをどのような顧客体験に用いるかを想定。その上で、活用フェーズを4つに分け、優先度に応じて徐々に適用範囲を拡大した。

統合顧客プロファイルを構築するために、フェーズを踏まえながら適用範囲を拡大

統合顧客プロファイルを構築するために、フェーズを踏まえながら適用範囲を拡大

第1フェーズでは、オンラインでの行動データやEC会員データと、リアル店舗における販売データとの統合から着手。IDを用いて顧客の基本情報を一元管理できるようにした。

第2フェーズでは、ロイヤルティおよびライフイベント情報を管理。これらの項目は確定的なものでないケースもあるが、管理項目を設定しておくことで、分析によって類推できる情報を登録できるようにした。

第3フェーズでは、感情データとして、アンケート情報を追加。これにより、同一人物の興味や関心の変遷を追うことができるようになった。

第4フェーズでは、サービス情報を追加。Best Buyと顧客の最も緊密なかかわり合いを、デジタルの世界でも管理できるようになる。

同社では現在、Adobe Audience Managerを大きく3つのシステムと連携している。CRM、ソーシャルメディアやオンライン広告を含むメディア、およびECサイトだ。顧客プロファイルはAdobe Audience Managerで一元化され、セグメントを定義し、それぞれのシステムで利用される。

統合顧客プロファイルを十分活用するためには、体制の整備も欠かせない。同社は、この取り組みをCoE(Center of Excellence)方式で実施している。部門横断型の組織を設置したことで、プロジェクトを一過性のものにせず、DMPの価値を精査しながら、より活用を深めていくことができる。AIのような新たなテクノロジーも、プロジェクトの活動に随時取り入れ、施策を発展させていく。

計画、実装、最適化というサイクルを継続することで、プロジェクトはビジネスにより高い価値を提供

計画、実装、最適化というサイクルを継続することで、プロジェクトはビジネスにより高い価値を提供

6年に及ぶプロジェクトにおいて、同社の達成してきたことはさまざまだが、複数デバイス利用者への対応、外部データの活用、および広告配信の最適化の3つは、DMP活用のロードマップをどのように引くべきか悩んでいる企業にとって、特に参考となるだろう。

一歩進んだDMPの活用(1):複数デバイス利用者への対応

顧客の多くは、個人のPCとスマートフォン、タブレット、および家庭における共有PCなど、デジタル体験としてさまざまなデバイスを利用している。一人の顧客が複数のデバイスからアクセスするにも関わらず、Cookieだけを頼りにユーザーを特定していては、時間軸に沿った顧客動向をきちんと把握できない。これは大きな問題になる。顧客体験を断続的に把握するだけでは、企業側が正しい情報にもとづいて対応できなくなるためだ。そこでDMPの提供するプロファイル機能により、オーディエンスをIDで一意に識別する。Best Buyでは、自社のログインIDにより、異なるデバイスを顧客プロファイルに関連付けている。また家庭における共有デバイスと個人のデバイス、ログイン前とログイン後といった状況もきちんと識別し、適切な対応を心がけている。

デバイスグラフを適切に認識

デバイスグラフを適切に認識

一歩進んだDMPの活用(2):外部データの活用

顧客を深く知る上で、自社保有のデータだけでは足りない場面も多い。そこで、セカンドパーティデータ、サードパーティデータを「顧客プロファイルの解像度を上げる」ために使用する。Best Buyの場合も当初は、自社保有データである会員登録ユーザーの基本情報からスタートした。ただ、外部データを多く使用すればするほど、顧客に対するより精緻なアプローチが可能になる。そこで、データを外販している他社の保有データを、マーケットプレイスを介して接続したのだ。

3rd パーティデータでプロファイルを補完

3rd パーティデータでプロファイルを補完

一歩進んだDMPの活用(3):広告配信の最適化

広告は巨大な投資であり、誤ったターゲットに届いてしまう「広告の無駄打ち」を排除することで、そのROIは最適化される。DMPは、広告を届けるべき適切なオーディエンスを見分けるのに使える。Best Buyでは、「ユーザーの最新の興味に応じた広告を届ける」ことに加え、「すでにコンバージョンに至った広告を排除する」ことを重視した。デジタルにおけるユーザー行動に加え、プロファイル取得済みの顧客についてはオフラインの情報も活用できる。これにより、たとえば「冷蔵庫を買ったばかりの顧客に対して、冷蔵庫の広告をしつこくリターゲティングしてしまう」といった無駄な広告を抑制できるようになった。

顧客プロファイルに応じて広告配信をコントロール

顧客プロファイルに応じて広告配信をコントロール

統合顧客プロファイルを軸にして、パーソナライゼーションを深化

統合顧客プロファイルを軸にして、パーソナライゼーションを深化

DMPによる統合顧客プロファイルを高度化させていくと、一人ひとりの「解像度」が高まっていく。顧客の状態や期待を踏まえた上で、きめ細かいコミュニケーションを展開する際、施策の精度が高まる。顧客を起点にして体験を最適化していく、という顧客体験管理において、DMPの担う役割はとても重要だ。

Best Buyも、Adobe Audience Managerにパーソナライゼーションの基盤としての役割を持たせ、統合顧客プロファイルのさらなる活用に取り組んでいる。機械学習を活用した、より高度なプロファイル分析もそのひとつだ。これにより、セグメントの精度をさらに高め、顧客に直接アプローチするさまざまなデジタル基盤との連携性を高めることで、あらゆる顧客接点での体験をスムーズなものにしようとしている。

提供する顧客体験の改善に向けたPDCAサイクルを繰り返すなかで、DMPに蓄積しておきたいデータの項目は増えていく。「DMP」と呼ばれているソリューションは数多いが、そのほとんどは企業の要件の進展に追従していくことができない。このBest Buyの事例のように、高い発展性を内包しているDMPを優先して検討する必要があるだろう。

 

UNITE編集部


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