位置情報活用の可能性:プライバシーに配慮ながら適切なサービスを提供するには

2019年10月4日



【POINT】

  • モバイルの普及により、企業は「適切な人に」、「適切なタイミングで」、「適切な場所で」、「適切な体験を」提供できるようになる
  • 顧客のリアルな行動にもとづいた施策は、通常なら知り得ない顧客の興味や関心に応じて、より適切な提案をすることにつながる    
  • プライバシープラグマティストの割合は、全体の58%と半数を超えており、今後も増えてくと予想される
 

ビジネスとテクノロジーに通じた人たちにとって、「場所」「位置情報」は大きなテーマであり続けてきた。配送ルートの最適化、新店舗出店にあたる商圏分析、エリアマーケティングなど、デジタルな位置情報を活用する範囲は幅広い。

そしていま、最もホットな分野は、消費者の生活をより便利で豊かなものにするための、位置情報の活用だ。スマートフォンの普及で、多くの消費者はGPSを常に携帯している状況にある。彼らの居る場所に応じてきめ細かく、「適切な人に」、「適切なタイミングで」、かつ「適切な場所で」、任意の体験を提供できるようになるのだ。

顧客のプライバシーに配慮しながら、適切なサービスを提供

顧客のプライバシーに配慮しながら、適切なサービスを提供

米調査会社451 Researchの調査によると、約80%のマーケティング担当者が、今後2年以内に「位置データの活用をさらに増やしたい」という意向を持っている。モバイル広告市場では、すでに顕著な動きが出ており、米調査会社BIA/Kelseyはその動向を踏まえ、「2022年の位置ターゲティング広告市場は、2017年に比べて少なくとも倍増する」と予測している。

マーケティング担当者にとって位置情報は極めて有用だ。顧客のリアルな行動にもとづいた施策は、通常なら知り得ない顧客の興味や関心に応じて、より適切な提案をすることにつながるためだ。

位置情報は個人の行動をつまびらかにする可能性を秘めた、極めてセンシティブなものではあるが、節度のある利用方法ならば、時とともに好意的に受け入れられるようになる可能性は高い。データソリューションを提供するAcxiomとDMA(Data & Marketing Association)の調査によると、プライバシーファンダメンタリスト(プライバシー原理主義者。プライバシーが失われることに強い抵抗感を持っている)の割合は若年層になればなるほど減少する傾向がある。一方、プライバシープラグマティスト(プライバシー現実主義者。プライバシーの重要性は理解しているが、それを公開することで利益を得られることに好意的)の割合は、全体の58%と半数を超えている。これは米国における調査であり、日本はプライバシーを守ることに慎重である向きもあるが、今後近い傾向を見せることが予想できる。

米におけるプライバシーとデータ提供に対する捉え方の割合

一方、位置情報を活用するメリットは数多い。顧客が居る場所に応じて、施策を打てるからだ。特定の場所を訪れた人は、もちろん偶然通り過ぎただけの可能性もあるが、何らかの意思を持っているかもしれない。そうした実世界の顧客の行動に、企業から新たな選択肢を提案する訳だ。

そして、プッシュ型のプロモーションへの期待も大きい。たとえば、「紫外線の強い日に、交差点で信号待ちしている顧客に、日焼け止め商品を提案する」といった内容について、先進企業では真剣に検討を重ねている。リアルタイムな位置情報と組み合わせれば、こうしたアプローチが可能になる。

ここで、プライバシーファンダメンタリストたちが離反するのではという懸念もあるだろう。しかし、以下のようなケースではどうだろう。気象予測データと連動すれば、店から300メートル以内を歩いている顧客に対して、「もうすぐ通り雨が来そうです。20分程度で上がることが見込まれますから、ぜひ近くの当店で雨宿りはいかがですか」といった案内をできる。来店促進ではあるのだが、顧客にとってもメリットの大きい情報だ。近くの喫茶店に居る顧客は「一定時間動いていない」ため対象から外すことができ、彼らにとって不要であろう案内を届けずに済む。リアルタイムな位置情報を使うからこそできる案内だ。

位置情報活用の可能性

位置情報活用の可能性

今後、いくつかの成功事例が生み出されることで、消費者の慣れが促され、プライバシープラグマティストが増えるかもしれない。そして、そのときに位置情報活用分野で先頭に立っていることは、大きなアドバンテージになるだろう。アドビは、顧客の位置情報を活用したマーケティングにいち早く取り組みたい企業に向けて、Adobe Experience Platform Location Serviceを提供している。これは、Adobe Experience PlatformAdobe Experience Cloudで位置情報に応じた施策を実施できるようにするサービスだ。

Adobe Experience Platform Location Service

Adobe Experience Platform Location Serviceは、大きく3つの要素から構成される。場所の情報を定義するデータベース、ユーザーの現在位置を活用するアプリを開発するためのSDK、特定エリアにユーザーが入った際に実行するアクションを規定するエンジンだ。顧客のデバイスに自社の提供するアプリをインストールしてもらい、位置情報の利用について同意を得ることができれば、顧客の位置情報に応じた施策を提供できる。同意の条件によっては、アプリがバックグラウンドで実行されている場合でも有効となる。このアプリと位置情報の組み合わせにより、たとえば、以下のようなサービスを実現できるだろう。

・特定エリア内の顧客へのサービス提供

顧客が特定のエリア(たとえば、駅から50m以内)を訪れた際に、自動的にプッシュメッセージを送信する。2度目、3度目でメッセージを変える、1ヵ月に1度だけ実行する、といったルールも設定。これにより、「宿泊客が最寄りの駅を出た瞬間に、ウェルカムメッセージと道順案内を送る」、「駅に着く時間に合わせて迎えの車が着くようにする」などのサービスを提供

・施策対象の抽出

「1ヵ月に2度以上空港を訪れる人はビジネスパーソンである可能性が高い」という仮説から、該当する顧客だけを施策の対象に設定。リムジンサービスや荷物配送サービスなどを案内

・オンライン/オフライン連携

オンラインで商品情報を閲覧した顧客が、パーソナライズされたアプリの誘導で、在庫のある店舗を訪問。気になっていた商品のある棚を知らせ、手に取って確認できるよう支援

・競合店への対策

バックグラウンド通知を受け取れる設定の顧客が競合店舗に近づいたとき、お得な自店舗のクーポンを通知

Adobe Experience Platform Location Serviceによる位置情報機能を実装したアプリからは、位置情報そのものが送信されることはない。企業が文字通り「顧客の位置を知る」のではなく、アプリはあくまで、あらかじめ設定されたエリアに「顧客が来た」というイベントを通知するだけだ。位置情報を利用したアプリのサービスを受けるかどうかの選択権も、完全に顧客側にある。GDPRにも対応しており、気になる人は一括でオプトアウトできる。どれも、顧客のプライバシーへの配慮を前提とした、節度ある設計だ。

センシティブではあるが、魅力の大きい位置情報分野。顧客のプライバシーを守りながら、より良い顧客体験を提供するために、「まず始める」ことを検討してほしい。

 

UNITE編集部


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